【判決】「パンツのにおいを嗅ぎたい」…供述とは違う主張を繰り返す〝パンツ強奪男〟に下された審判
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「性欲を満たすための自己中心的な犯行」
「殺されたくなかったら、パンツ脱いで」 夜道で偶然見かけた女子高生Aさん(当時16歳)にそう言って脅し、下着を奪ったとして強盗と不同意わいせつの罪に問われていた伊藤智彦被告(26)。別の女子高生Bさん(当時17歳)にも、やはり夜道で追いすがりながら「騒ぐな、とりあえずパンツ脱げ」と、下着を脱がせようとしたとして不同意わいせつ未遂の罪にも問われていた。 「ものすごく気持ち悪かったです」…女子高生のパンツのにおいを嗅ぎたかった男〝戦慄の無表情〟 9月22日、東京地裁で伊藤被告に判決が下された。 高森宣裕裁判官は「いずれの犯行も『パンツのにおいを嗅ぎたい』などという、被告人の性欲を満たすための自己中心的な犯行であり、強い非難に値する」などとして、求刑6年に対し「懲役3年6ヵ月」の実刑判決を言い渡した。 起訴状や冒頭陳述などから明らかになった伊藤被告の犯行は、あまりにも卑劣なものだった。 「’24年9月8日の午後8時ごろ、被告人は自宅最寄り駅で前方を歩くBさんを発見すると、『パンツのにおいを嗅ぎたい』などと考えてあとをつけ、突然『静かにしろ』などと声をかけて下着を奪おうとしました。しかし、Bさんがその場から逃げ去ったため、その目的を果たすことができず、被告人もその場から逃走しました。 そして3日後の9月11日の午後6時半ごろ、被告人は帰宅途中のAさんを発見すると、再び『パンツのにおいを嗅ぎたい』などと考えてあとをつけ、突然Aさんの右手首をつかんで下着を脱ぐように迫ったのです。 Aさんが逃げだすとさらに追いかけ、人けのない場所に連れ込み、『殺されたくなかったらパンツを脱いで。においを嗅ぎたいから』と脅してAさんから下着を受け取りました。さらに、そのにおいを嗅いだあと、さらにAさんの陰部に触れるわいせつな行為に及びました」 伊藤被告はBさんへの犯行は認めたものの、Aさんへの犯行については「『殺されたくなかったら』という言葉は使っていません。またAさんの陰部には触れていません」と一部否認し、次のように述べていた。 「Aさんに、『叩いたり、危害を加えたりはしないよ』とか『ひどいこととか、殺したりはしないからパンツ脱いで』と言いましたが、『殺されたくなかったら』という強い言葉は使っていません。また、Aさんの太ももを触ったことは間違いありませんが、陰部には触れていません」 また、Aさんへの犯行時には右手にビニール手袋を装着していたのだが、その理由について弁護人に聞かれると、このような説明をしていた。 「スマホでゲームをやる時、手汗でべたつかないように、普段からショルダーバッグの中にビニール手袋を入れていました」 ◆かたくなに否認し続けた伊藤被告 6月6日に行われた被告人質問では、伊藤被告の主張について検察官が次のように指摘していた。 「被告人は警察や検察の取り調べのなかでは『体を触ると指紋が付いたりしちゃうから、ビニール手袋を準備した』と説明してるんですが覚えていませんか? 『女の子の太ももや女性器を触りました』と話していますが、違うんですか?」 伊藤被告は「覚えてません」と答えるだけだった。 その後、保釈が認められ、関東にある回復施設の寮に入って問題行動の治療に取り組んでいた伊藤被告。8月13日に改めて行われた被告人質問では、検察官が「治療」の効果について質問する場面があった。 検察官「Aさんの証言とあなたの言い分は食い違っているところがありましたが、治療を受けて、何か変わりましたか?」 伊藤被告「前回、話したことと同じです」 検察官「治療を受けて考えが深まったと思いますが、結局、何が動機でこのような事件を起こしたのですか?」 伊藤被告「……」 検察官「何もお答えしないので質問を続けますが、なぜ『女性のパンツのにおいを嗅ぎたい』などと考えたのか、何か説明できることはありますか?」 伊藤被告「ないです」 ◆事件は被害者と家族の生活を大きく変えた 最後まで、取り調べ時の供述とは違う主張を続けた伊藤被告。Aさんは5月8日に行われた証人尋問の中で、伊藤被告に対する怒りをこのように述べていた。 「普段、生活している中で、突然あの気持ち悪さを思い出すことがあります。犯人のことは絶対に許せません。(社会に)出てきた後が怖いので、あまり出てきてほしくありません」 また、8月13日に開かれた第5回公判では、Aさんの母親の代理人弁護士が意見陳述を行った。その内容は強い処罰感情を感じさせるものだった。 「娘は被告人から急に声をかけられ、殺されるかもしれないという恐怖を味わいました。被告人が自分の衝動を抑えてさえいれば、こんなことにはならなかったのです。被告人には、自分がつい我慢できずにした行為が、まったくの他人である娘や私の生活をどれだけ大きく変えてしまったかということを真摯に理解してもらいたいと思います」 論告弁論の中で弁護人は、伊藤被告に発達障がいの傾向が見られることを指摘した上で、「伊藤さんに必要なのは刑務所での服役ではなく、支援体制のもとで生活を続けて、二度と同じ犯罪を起こさないように治療を続けることです」と執行猶予付きの判決を求めていた。だが、前述のとおり実刑判決が下されることとなった。 次の犠牲者を出さないためにも、治療を続けることは確かに重要だ。しかし、伊藤被告が更生するためには、なぜこのような犯行に及んでしまったのか、認知の歪みはなかったのか、反省する時間も必要ではないだろうか。 自身の欲望のおもむくままの行動が、少女とその家族の人生を大きく変えてしまった事実と、真摯に向き合ってほしい。 取材・文・写真:中平良
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