たなかようたろうくん(小学2年生・兵庫県)からの質問に、「動物」の小菅正夫先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)
【出演者】
小菅先生:小菅正夫先生(札幌市円山動物園参与)
ようたろうくん:質問者
――お名前を教えてください。
ようたろうくん:
ようたろうです。
――どんな質問ですか?
ようたろうくん:
馬はなぜ脚の骨が折れると死んでしまうのですか? あと、馬にはAEDは使えないのですか?
――ようたろうくんは馬が好きなんですか?
ようたろうくん:
はい。
――身近なところに馬がいるのかな?
ようたろうくん:
馬を見るのが好きで、競馬を見ているときに脚の骨が折れて死んじゃったり、心房細動で死んじゃう馬がいるので、どうして死んじゃうんだろうなと思ったからです。
――そうなんですね。では早速、小菅先生にお答えいただきましょう。お願いします。
小菅先生:
ようたろうくん、こんにちは。
ようたろうくん:
こんにちは。お願いします。
小菅先生:
馬、好きなんだ。
ようたろうくん:
はい。
小菅先生:
どうして脚の骨が折れると死んじゃうのかという質問だね。馬は、4本足で立って暮らしているよね。せいぜい草の中で脚を折り畳んで、ちょっと横になるけど真横にはならないで寝ているよね。
ようたろうくん:
うん。
小菅先生:
それが彼らが一番楽な姿勢だから、その姿勢がとれて、あとはとにかく走ることに特化した体を持っている。特に骨格ね。それで体重はどのくらいあるかな、競馬の馬だったら。
ようたろうくん:
400kg後半から500kg前半くらいがたぶん一番多いと思う。
小菅先生:
すごいな、よく知ってるねぇ。競走馬はみんな大体そのくらいだよね。そのくらいの体重なのに、あの足先の細さって、どう? 足先まできれいでしょう? 特に地面に着くあたりになったらかなり細くなっているよね。
ようたろうくん:
うん。
小菅先生:
500kgもの体重を、あの細い脚で支えなきゃならないということなんだよ。もしも骨折してしまったら3本の脚で支えなきゃならない。これは非常につらいことなの。それと、ようたろうくんが知っているように、馬はものすごくかんが強いというか、のんびりしていない生き物だよね。
ようたろうくん:
うん。
小菅先生:
自分の折れてしまった脚を振り回したりするんだ。
ようたろうくん:
えーっ。
小菅先生:
自分で異常だとわかるから。おじさん、1回ね、動物園でシマウマが指の骨を骨折した例があったの。そしたらその脚をわざわざ木にぶつけたりして、何か変だと思うんだろうね。結局そういう状態になっちゃって、一応、おじさん、麻酔をかけてやったんだけど、骨がつくことはなかった。
ようたろうくん:
えっ……。
小菅先生:
動物園ではなんとしても治そうと思うから、いろいろ必死にやって最後まで努力したんだけど、そのあと食欲が落ちてきて、最終的にはそのシマウマは死んでしまったの。
ようたろうくん:
えーっ……。
小菅先生:
競馬の馬は、シマウマよりもさらに厳しい。本当に走ることだけに特化して作られてきた馬なので、もしも骨を折ってしまったら、そのままじっと治るのを待つことはたぶんできないと思う。それを人がやってやろうとしても、馬はものすごく苦しむと思う。さっき言ったように、自分で脚をぶつけたりして暴れてひっくり返ってみたりして、人間はそういうことを過去にずっと経験してきたと思うんだよね。
ようたろうくん:
うん。
小菅先生:
基本的に、脚を折ってしまった馬は、先のことを考えたら治って現役に復帰することはほとんど不可能。だったら、苦しませて苦しませて死に至るよりは、「安楽死」というんだけど、ここで死を選択するのが今の競馬の世界の人の考え方で、おじさんも、そのほうが馬にとってもいいと思う。ただただ苦しんで苦しんで命だけ長らえて死ぬよりは、そこで一生を終わらせてやるのも、しかたのないことなのかなと思うんだ。骨を折ったからといって、それが直接死に……結局は結び付くんだけれども、骨を折ったのが原因でそのまま死ぬというよりも、それで体が弱って死んでいくということだから、結構時間がかかるんです。
――自然治癒というか、馬本来の力で治るということは?
小菅先生:
ないです。とにかく体重を支えて生きていくので、草食動物はほとんどそうですけれども、横になって治そうというのは……。犬とか猫は結構横になってじっとしていて、肉食動物は毎日食べなくてもいいので。
ようたろうくん:
えーっ?
小菅先生:
肉食動物は、ただじっとして自然治癒というのはあるんです。でも草食動物は食べ続けなきゃならないので、要するに草を消化するのは大変なことだからね。だからそれで、もたないんじゃないかなという気がするんです。
――あと、ようたろうくんの「馬にはAEDを使えないのか」という質問もありました。
小菅先生:
そうだ。さっき、「心房細動」って言ってたね。
ようたろうくん:
うん。
小菅先生:
よくそんな言葉、知ってるねぇ。馬は結構、心房細動が多いよね。
ようたろうくん:
うん。
小菅先生:
でも心房細動にはAEDは効かないと思う。AEDの効果があるのは心室細動。どちらかというと心房細動は、ときによってはそのまま治ることがあるんです。心室細動はほっといたら絶対に死ぬので、それで今、人間社会では、AEDで刺激を与えてそのけいれんを取るという作業をするんだよ。心臓のけいれん、心室のけいれんを取るためにAEDは使われるので、心房細動にAEDは効かないんじゃないかな。おじさん、専門じゃないからわからないけど、たぶんそう考えられるので使えないと思う。それともう1つは、心臓の大きさなんだ。ようたろうくん、人間の心臓の大きさはどれくらいか、知ってる?
ようたろうくん:
……何ぐらいか、って?
小菅先生:
あのね、これ覚えといて。よく言われるんだけど、握りこぶしくらいの大きさと言われてるの。だから、ようたろうくんの握りこぶしくらいが、ようたろうくんの心臓だって言われているの。
ようたろうくん:
へぇ~。
小菅先生:
おじさん、馬も解剖したことがあるので心臓の大きさがわかるんだけど、たぶんようたろうくんの頭くらい、ある。大きいんだよ。だから人用に開発されたAEDが理屈としてそのまま馬に使えるかどうかは別としても、例えば電気の量とかアンペアというか電流の強さだとか、それは相当例数を重ねていかないと、たぶん出てこないと思う。そういう意味で、馬のAEDは世の中に存在していないんじゃないかと、おじさんは思うんだけどね。でも、心房細動には効かないんだ。心室細動に効くんだ。「心房」というのは、体から巡ってきた血液が心臓に戻るところ、「心室」というのは、心臓から動脈で血液を体に送り出すほうね。
――受け取るほうと、送り出すほう、ということですね。
小菅先生:
そう。それで左心房とか左心室があってね。
ようたろうくん:
はい。
小菅先生:
わかった? わかってるよね、君は。
――ようたろうくんはわかっていると思いますけどね。
小菅先生:
心室細動のほうは、馬の場合はちょっと時間も短いし、結構難しいと思う。
――馬以外でも動物にAEDを使うのはなかなか難しい?
小菅先生:
私は聞いたことがないです。やっぱり人は症例数が多い。一応いろいろやって、経験則でこれはいけるというのでやるんだけれども、動物はそういうのはないですね。馬は早いし。心臓がピピピッとしたら死んじゃった、というくらい。もしかしたら、ようたろうくん、その様子を見たことがあるの?
ようたろうくん:
あるよ。
小菅先生:
えっ、本当?
ようたろうくん:
うん。
小菅先生:
あらーっ。おじさん、見たことない。競馬場ではそういうこと、結構あるの?
ようたろうくん:
競馬場じゃなくてテレビで見た。
小菅先生:
あぁ、そうか。おじさん、見てないなぁ。すごいな。
――ようたろうくん、大丈夫でしょうか。わかりましたか?
ようたろうくん:
はい。
――質問してくれてありがとうございました。さようなら。
ようたろうくん:
ありがとうございました。さよなら~。
小菅先生:
さよなら~。
【放送】
2024/06/16 「子ども科学電話相談」