メタバースの熱狂はなぜ消えたのか。生成AIの普及から考える"普及への突破口"【後編】
今回取り上げるテーマはメタバースです。
1本の記事にまとめるには深く、正しく内容が伝わらないと感じたため、
3部構成の記事として公開します。本稿はその3本目です。
この記事を読み進める前に
この考察は現状を多角的なデータに基づき冷静に分析したものです。
刺激的な内容・立場も含みますが、議論の活性化を目的としており、
関係者や個人への誹謗中傷意図はありません。
前回記事
本記事を読み進める前にまず前回記事をお読みいただければ幸いです。
「過去2本の記事」に対する総評
これまでの2本で、
・なぜブーム終焉→普及停滞→“閉じたコミュニティ”化したのか
(物理・社会・コミュニティ・体験価値・広報活動の限界)
・スタンミ現象のように、
“外向け”インフルエンスが“内輪ノリ”を破れた事実とその要因
(参加型ストリーミング・FOMO・体験価値の可視化・ネット拡散力)
について検討して来ました。
連載3本目となる本稿では、
「今後どうすれば“メタバース/ソーシャルVR”は一般社会に根付くのか」
「どのような施策や発信形態が期待されるのか」という
“提案・展望編”を生成AIとの対比を含めて考察します。
「参加型体験」のさらなるデザイン
これまでソーシャルVR・メタバースは、
「高額な機材」「一定のITリテラシー」を前提とした体験を
主として設計されてきました。
一方で、スタンミ現象が示した通り、
参加のハードルを下げることで未経験者にも“自分ごと化”された瞬間、
急激な流入が生まれました。
今後は、デバイス依存(PCVRのみ)から脱却し、
デスクトップPCのみ(非VR)でも楽しめるコンテンツの増加や、
機材の低価格化、スマホでも気軽に参加できる仕組みのさらなる改良など、
体験手段の増強と体験コストの低廉化、
業界標準を押し付け過ぎないコミュニティ設計など、
“一人でも安心して体験できる”ソーシャル設計が普及拡大のカギを握ると
考えています。
“実用的価値”や“日常接点”の創出
・生成AIが全世代に普及した理由のひとつは、
「社会のどこでも誰にでもすぐに役立つこと」が明確だった点です。
・メタバースもゲーム・エンタメ一辺倒から、
教育現場での遠隔授業、企業での仮想会議、医療・リハビリ、
地域コミュニティなど、実生活への接点を創出することが不可欠です。
・身近な業務や日常に“バーチャルでしかできない価値”を示すことで、
一部の趣味層を越えて普及の裾野を広げることができます。
UI/UX・価格・体験品質のさらなる進化
VR酔い対策、デバイスの軽量化・低価格化、直感的操作の普及は、
非エンタメ層への普及に不可欠です。
技術進化は着実に進んでおり、
今後は「複雑な設定不要」「誰でもすぐ使える」ユーザー体験こそが、
生成AI並の圧倒的低ハードル化につながります。
つまりはVR内外を問わない「チュートリアル」、「解説」、
関連ウェブサイト(個人法人を問わない)など、
既存の社会的リソースを総動員した、体験品質の向上、
及び価格改善の全方位政策が求められると考えています。
“業界外”との連携と合意形成
スタンミ現象は「見る→やってみる」参加型体験への誘導・SNS拡散、
コミュニティ外からの人材流入を生み出しました。
今後も継続して娯楽的メタバース(ソーシャルVR)や、
その関連技術であるVRが普及していくには、
YouTuber/ストリーマー型インフルエンサーとのコラボ、
企業・自治体による体験型キャンペーン、「一緒に始めよう」型の
社会的合意形成の促進が有効です。
現時点で既存の有識者によって行われている
「技術やサービスの“PR”」のみでは、
一般認知層への広報力に欠けることが既にデータから明らかなのですから、
「自分も参加できる・したくなる」ストーリーを共創することが
社会定着の重要なアプローチだと考えます。
自称有識者たちによる歪な文化錬成の抑止
自称有識者の台頭
特段の広報力または知見を持たないにもかかわらず、
自らを「有識者」と称して発言の影響力を拡大しようとする人々の存在が
最近よく社会問題となり、
現在もそうした問題によって論争がたびたび引き起こされています。
ソーシャルVRやメタバースも例外ではなく、
それらの人々が「マナー講師」的な立ち振舞いをしていることが原因で
一般層に普及しないのではないか、
そういった点も、今一度確認しておくべき論点だと考えます。
これらの「自称有識者」は、
業界の本質的な課題や正確な知見ではなく自らの名声や承認欲求を優先し、そのためには手段を選ばず、時にはデータさえ注目を集めるために
利用し、自らの知名度と自己承認欲求を満たすことそのものを
目的化している場合が少なくありません。(※あくまで一般論です)
文化錬成の危うさ
文化とは、
時間をかけて多様な人々の試行錯誤や交流によって形成されるものです。
しかし、
自己顕示欲の強い個人が自らの価値観や思想を業界全体へ強引に流布
しようとする「文化錬成」を行うと、
そのバランスは容易に歪められてしまいます。
・一面的な価値観の押し付け
・他者の自由な創造活動の萎縮
・多数派のように見せかけた同調圧力
これらは、健全な文化的発展を阻害する深刻な要因となり得ます。
また筆者は、
「ソーシャルVR」が一般層に普及しないその要因の1つには、
この「自称有識者たちによる独善的で歪な文化錬成」があるのでは
ないかと考え、また危惧しています。
コミュニティの“開放”と持続可能性
前編・中編で明らかになった最大の壁は、
「知人や趣味つながり中心で広がる内輪文化」でした。
VRChat新規参入者の74%が“知人経由”、
また、外部布教まで行うユーザーは全体の2%未満という現場データは、
コミュニティ外の人々が、
「自分から入りたくなる」設計がまだ足りていないことの表れです。
今後、メタバースやソーシャルVRが日本で普及していくには、
広報戦略の見直しはもちろんのこと、
「質の高い有識者の育成」、
「自称有識者が業界を掌握することの阻止」、
「1人で気軽に参加できる体験」や「内輪ノリに頼らない居場所づくり」が課題解決には必須であると感じています。
生成AIとメタバースの普及率とその違い
ChatGPTやGoogle Geminiなど生成AIは、
「無料・即導入・利用用途の具体性・拡張性」で爆発的に普及しました。
生成AIは社内業務・学習・趣味・生活あらゆる場面で“誰もが使える”
価値があり、端末の制限や不文律もなく、
多くの人にとって「明確なメリット」が分かりやすかったことが、
メタバースとの圧倒的な違いです。
日常生活へのアクセス性も、
スマホやブラウザから手軽に使える生成AIとは違い、
メタバースは専用機材・高額な初期投資が必須でした。
この事が生んだ差は、
2024年時点で生成AIの利用率がメタバースの数倍~10倍超となっている
ことが総務省(令和6年版 情報通信白書)から読み取れる通り、明らかです。
生成AIの利用率・ユーザー数(2024)
・総務省「情報通信白書」「ICT総研」等によると、
・個人での生成AIサービス利用率は「9.1%」(総務省2024年白書)
・ネットユーザーの29%が直近一年以内に生成AIの利用経験あり、
推定ユーザー数は約1924万人(ICT総研調査)
・ChatGPT単体でも日本のユーザー数は「約600万人以上」(2024年)
メタバース/ソーシャルVRの利用率・ユーザー数(2024)
・メタバースの利用経験がある国内利用経験者は"6.1%"
(JTB総研による消費者調査)
・実際の積極的なソーシャルVR利用層(VRChatやclusterなど)は
さらに限定的と総務省資料から推定可能(令和7年度 情報通信白書)
(市場規模や利用率は生成AIの約1/3~1/10程度)
このように、
メタバースは「閉じた趣味・コミュニティ型」から突破しきれず、
「実生活の便利さ」「参加してみたい体験」の提供が圧倒的に足りず、
また有識者でさえ内輪的広報に終止し、業界外への発信が足りなかった。
単に露出を増やしただけでは発信力は増強されない。ということは
このことからも明らかです。
一方生成AIは、
「今すぐ、誰でも使える/いつでも使える/役立つ」という強力な
メリットにより、問題解決型の社会的合意を形成でき、
自然な普及モデルへとつなげることができました。
“未来像”と現実的“突破口”
そして、それらを社会へ実装するための提案
・誰でも参加できる設計に舵を切る
「VR機材がなくても楽しめる設計」に移行することで、
PC+VRがあれば完全版、なければ機能制限版といった制約を
できる限り廃すことが、結果的にメタバース、ソーシャルVR普及率の
向上に貢献すると考えます。
実用的利活用事例を量産・拡大する
・教育(バーチャル教室・遠隔授業)、
・ビジネス(仮想会議・職場研修・採用面接)、
・医療(リハビリ・健康管理)、
・地域(コミュニティ交流・行政サービス)など、
エンタメ以外にも“実生活で役立つ事例”を増やすことが
社会全体への浸透力につながることは
生成AIが急速に普及したことからも明らかです。
コミュニティの入口・定着支援に取り組む
初心者や新規参加者が孤立しないよう、
既存のガイドやチュートリアルなどのリソースを今一度活用し、
コミュニティによる支援や有識者によるサポートを充実させることで、
閉じたコミュニティから開かれたネットワークへ転換することが
重要であると考えます。
あとがき
3部作を通じて見えてきたのは、“閉じたコミュニティ”の限界と、
「外向き」体験誘発や実用的価値づくりこそが突破口だということです。
現実的な課題と技術的・社会的挑戦を乗り越え、新しいつながり、
居場所、学び・仕事・遊びの新地平を、日本独自の価値も含めて
一緒に模索できればと思います。
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