『あんたは、鈍い男だ。でも、それは……精神のタフさを示している』
夏休みに、レイちゃんとの死闘を繰り広げるために一時帰国した恭子さんが……オレにそう言った。
場所は、お屋敷の食堂。
みんなで取った夕食後……夜の7時過ぎだったな。
恭子さんが居ると、イーディが食堂に近付かないから……。
寧やアニエス、マナたちと……別の部屋で遊んでいたはずだ。
メグは、克子姉と……台所。
ミナホ姉さん、マルゴさん、瑠璃子は……まだ帰宅していなかった。ジッちゃんの家の方へ行っていたんだと思う。
『タフさってのは、大切なのさ……肉体的にも、精神的にもね』
真夏の東京の暑さは、ブラジル育ちの彼女にも堪えるらしい。
緑のタンクトップに、白いホットパンツというラフな格好で、グビグビとビールを飲んでいる。
『あんまり本気にしちゃダメよ……恭子さん、あなたをからかって楽しんでいるだけなんだから』
克子姉が、台所からおつまみの入った小鉢を恭子さんの前に運びながら……オレに言った。
『プハァッ!やっぱり……日本のビールを飲むと、この屋敷に戻って来たって感じがするねっ!』
恭子さんは、そう言う。
『……お好きなんですか?日本のビール?』
オレが尋ねると……。
『別に。酒なんてのは……その国ごとの味を楽しんだ方がいいのさ。その国の風土、気候、そこに住んでいる民族の文化に合わせて……そこの土地で飲んだら、一番上手い酒に洗練されてきたんだからさ』
恭子さんは……そう言う。
『だから、日本では日本のビールを飲む。そんだけのことさ』
なるほど……世界中を渡り歩いている人の言うことは深い。
『ま、これはあたしの持論だから……別に、信用してくれなくてもいいよ。人によっちゃ、世界中どこに行っても、いつもと同じ食事がしたいって人もいるだろうしさ。でも、実際の話……世界中、どこへ行っても売っているコーラやチェーン店のハンバーガーだって、国によっては微妙に味が違ったりする。それぞれの国に合わせて、味付けを変えるし……何たって、作っているのはそこの国の人間だからね。やっぱり、味は変わる』
……そうなんだ。
『それを……外国から来た人間が、『この国の連中の舌は、劣っている』とか勘違いするんだよ。自分の方が異邦人で……そこの土地ので暮らしている人たちとは、舌の感覚が違うということが判らない。馬鹿な人ほど、自分の感覚を世界基準だと思い込んでいるからね……』
恭子さんは、またビールを煽る。
『あらあら……この人が鈍いとか、心がタフとかの話はどうなったんですか?』
克子姉が、恭子さんのグラスに瓶ビールを注ぎながら……言った。
うん、ちゃんとラベルを上にして注いでいる。
『あ、そうだった、そうだったっ!』
恭子さんは……ニカッと笑った。
『あたしらみたいな仕事だとさ……タフってことは、とても重要なんだよ。身体が資本て言うか……心も身体も強靱でないと、すぐに死んじまうからね』
それは、そうだろうな……。
世界中の裏社会の人たちと……接触しているんだから。
敵対したり、仲間になったり……時には、裏切りも。
『でもさ……このタフってのと、打たれ強いってのは、ちょっと違うのさ』
……恭子さん?
『生きている限りさ……絶対に、傷を負わないってのは、やっぱり無理なんだよ。どんなに気を付けていても、思わぬ時に大ケガをすることもある。無傷のままで生きていける人間なんかいやしないのさ』
恭子さんは、オレに背中を見せる。
『ほら、あたしにだって……ここに大きな傷があるだろ?』
肩甲骨の間に……白い大きな傷があった。
『それ……敵にやられたんですか?』
オレが尋ねると……。
『うんにゃ……痴情のもつれで、その頃付き合ってた女の子にヤられた』
……はい?
『コンバットナイフで。就寝中で、こっちは全く無警戒だったから、危うく死にかけたよ……!』
……は、はぁ。
『やっぱり、女心を理解するには……いっぺんぐらい、背中に切られ傷を負わないとダメだって、その時に感じたねえ』
うんうんと大きく首を振りながら、また恭子さんはビールを飲む。
『本気にしちゃダメよ。それ、カワシマ・ユウゾウのエピソードだから』
克子姉が……苦笑する。
『もうっ、克子……いいとこなんだから、バラさないでよっ!』
恭子さんは、ケラケラ笑う。
『あんたは、台所で仕事があんだろ?恵美ちゃん1人だと可哀想だよっ!』
『はいはい』
克子姉は、オレに微笑んで……台所へ戻って行く。
すると……恭子さんは。
『……話を戻すよ、いいね?』
グラスをテーブルに置いて、真顔で言った。
『あ……はい』
雰囲気の変化に、オレはドキッとする。
『どこまで話したか……覚えているかい?』
『えっと……人間は無傷のままではいられない。それと……タフと打たれ強いは違う……?』
『よっし、気は緩んでないね……上等上等』
ニカッと、恭子さんはオレに微笑んだ。
『ボクシングでさ……顔の綺麗な選手の方が強いって話、聞いたことないかい?』
『……いえ』
『ほら、殴られたら……やっぱり、顔は腫れるんだよ。試合ごとに、殴られる数が多い選手の方が……やっぱり、だんだん腫れた顔になっていく。ダメージは蓄積していくからね』
あ、そうか。
『で……良い選手は、殴られないように相手のパンチを躱す技術が優れているから、顔の腫れも少ない。もちろん、ノーダメージでずっといけるわけじゃないよ。あくまでも、相手のパンチを受けた割合の問題だけどさ』
恭子さんは、ビールをゴクッと飲み……手酌で注ぎ足す。
『それに……脳へのダメージもあるしね。たくさん顔を殴られた選手の方が、脳へのダメージが大きい。このダメージは蓄積する。パンチドランカーになる確率が増える』
……うん。
『だからさ……自分は打たれ強いボクサーだって、頑張って相手のパンチを受けて耐えちゃうような選手の方が……やっぱり、選手寿命は短いんだよ。どんなに回復力に優れていても……身体にダメージは残るから。元が頑健でも、どんどんダメになっていく。やっぱりさ……なるべく相手のパンチを受けないように、躱す技術があった方が良いんだよ。だから、結果的に……顔を打たれずにすんだ選手の方が、大成することが多いんだ』
そういうことも……あるんだ。
『だからね……打たれ強くなっちゃダメなんだよ。躱せるパンチは、可能な限り躱さなきゃ。そういうことができる人間が……タフなんだって、あたしは思うのさ』
恭子さんは……そう言う。
『ボクシングの世界のことだけじゃなくって……人生においてもさ。まともにゲンジツに立ち向かおうとすれば、不意打ちでパンチの2、3発も食らうことは常に覚悟しないといけないだろ?それは、しょうがない。あたしのこの背中の傷と一緒さ。絶対に、躱せない一撃ってのは……ある』
……躱せない一撃。
『もちろん、その不意打ちの2、3発を食らったことぐらいで、ノックアウトされるわけにはいかないよね。そんな、最初の一撃で負けちまうようじゃ……生き残っていく価値は無い。あたしは、そう断言するよ』
真っ直ぐに、恭子さんは……オレの眼を見て言う。
『だから、大事なのは……その次のパンチなのさ。最初の2、3発の不意打ちを食らったとして……それ以上のパンチをもらっちゃいけないんだ。ガードで受けるのもダメ……全て、躱すんだよ。パンチが当たらなきゃダメージは増えないんだから』
……当たらなければ、それ以上ダメージは増えない。
『ボクシングの……タフであることと、打たれ強いことを同じだと思っている馬鹿と一緒さ。自分は頑強だからって、不意打ちの後のパンチまで耐えきろうとしたら……どんどん、ダメになっていく。本人には、きちんとダメージ・コントロールができていると思えても……ゲンジツのダメージは、どんどん蓄積する一方だからね。いずれは、崩壊する』
ああ、耐えきれるってことは無いんだ。
心と肉体には……限界がある。
『若い内は、休息さえ取れば回復できるって思い込むんだろうけれど……元に戻らないものも多いからさ』
恭子さんは、再び……オレに背中の傷を見せる。
『この傷のせいで……あたしは、左手での射撃が使えなくなった。昔は、左右どちらの手でピストルを撃っても……確実にターゲットを捉えることができた。そこまで訓練したんだ。だけど、今は無理。あたしの左は、牽制にしか使えない。昔、確実にできたことが……できなくなっているんだよ』
恭子さんは、左右の手をギュッと握りしめる。
オレには……左の手が不調なようには見えない。
しかし、射撃みたいな正確な作業が要求されるものに関しては……恭子さんの感覚では、安心して使えなくなっているんだろう。
『ナイフ投げは、まだ右と同じぐらい当たる。でも、そのうち……ダメになってくるんだろうね』
恭子さんは、クスッと笑った。
『普通に年を取るだけでも……どんどん、若い内にできたことができなくなっていくんだよ。あたしは、そろそろ自覚がある。あんたは、まだ10代だから……こういう感覚は判らないだろうけど?』
『あ……はい』
『いや、いいんだよ……だから、あんたに伝えておきたいのさ。若い子にこういう話をするのが、年上の人間の仕事だからね』
恭子さんは、また……グビリと、ビールを飲む。
『誰でも……生まれてきた時は無傷だ。でも……どんなに親が注意していたって、成長する中で傷を負っていく。心も……肉体も。人間が生きていくってことは、傷を増やしていくってことだからさ』
……傷。
オレの……傷。
オレたち『家族』の……傷。
『そして、それぞれの負った傷は……自分でも癒やせる。家族や、仲間、恋人の存在によっても癒やすことができる。でも、癒やしても癒やしても……新しい傷は、どんどんできる……』
生きていれば……何かにぶつかり……また、何かに不意打ちされ……傷は増えていく。
『子供の頃から、苛酷な環境で育った子供は……傷付くことに慣れているから、タフになる。それは別に……どれだけ傷付いても平気ってことじゃないよ?それじゃ『打たれ強さ』を誇っている馬鹿と一緒さ。本当のタフさってのは……傷付くことから、回避する力のことさ。不意打ちはくらっても、その続きは受けない……全て躱す。当たらなければ、ダメージにはならない』
……うん。
『人間の心や肉体は……どんなに鍛えていようと、突然、パキッと砕けてしまうような脆いものなんだ。水晶みたいなものさ。それなりの硬さを誇っているはずなのに、特定の角度からスパンと力を入れると……あっさり割れてしまう。そりゃ、ある意味……人間て強いな。凄いなって思う時もあるよ。それでもさ……自分自身や、自分の周りの人間については……その強さより、脆さの方を基準にして考えるんだね。心も肉体も……一度、治癒できないレベルの傷を受けてしまったら、もう元通りには戻らないんだから……あたしの左手みたいに』
恭子さんは……言う。
『あたしが見たところ……あんたっていう人間は、まあ、タフな方なんだと思う。心が多少の傷を負っても、ビクともしない。不意打ちの2、3撃くらいは平気で耐えられる。だから……そこまでにしておきな』
……そこまで?
『それから先は……もう、真っ正面から受けとめるなってこと。そりゃ、あんたなら……さらに何発かのパンチを受けても平気だろうさ。だけど……』
ギロッと、恭子さんの眼がオレを見る。
『そうやって……不意打ちのダメージを負っているところに、さらに不意打ちを食らったら……あんたの心と肉体は、耐えきれるだろうか?判らないよね。耐えられるかもしれないし、耐えきれないかもしれない。結果が判らないなら……リスクは犯さない方がいいよ』
『でも、オレは……』
自分の『家族』のためなら、どんな危険にも飛び込むべきだと思う。
『ね……もし、今、突然……あんたが、無茶をやって死んだとしたら、それはあの子らにとってどれぐらいのダメージになると思う?』
……え?
『そんな不意打ちのダメージは……あの子たちの、何人かの心を確実に壊すよ。再起不能になる子もいるだろうね』
……それは。
『……自分のためでなく、『家族』のために自分を大切にするんだよ。ヤバかったら逃げてもいいのさ。一旦退いて……他の『家族』の知恵や力を借りてもいいだろ?』
『でも、オレは……なるべく、みんなに迷惑を掛けたくないんです』
オレは正直に……言った。
『バーカ。あんた、ホント……タフだけど、鈍いよね』
恭子さんは、苦笑する。
『人間……生きてりゃ、必ず誰かの迷惑になるんだよっ!さっき言った、人生の不意打ちの過半数は、誰かから食らわされた迷惑だ。だから、迷惑を掛けることも、掛けられることも……そんなに重く考えるんじゃないよ』
……でも。
『家族ってのは……お互いに、迷惑を掛けられるために存在しているんだから……』
……え。
『どんなに迷惑を被っても……『家族なんだから、しょうがねぇなっ!』て笑って対処してやるのが家族さ。他の人には頼めないけれど……家族だから、申し訳ないけれどお願いができるんだよ』
迷惑を掛け合うことを……肯定的に受けとめられるのが、『家族』……。
『だから、あんたの本当の両親は……あんたの『家族』にはなれなかったんだろ?あんたが、両親からどれだけ迷惑を被っても……あんたは、自分の両親に迷惑を掛けられなかったんだから』
……そうだ。
オレが、オレの父親と母親を……憎んでさえいないのは……。
あの人たちが、オレが迷惑を掛けてはいけない存在……。
つまり……『他人』だからだ。
『これからはさ……盛大に迷惑を掛けな。そんで、あんたも盛大に迷惑を掛けられなよ。だって、あんたには今や……こんなにたくさんの『家族』がいるんだからねっ!』
恭子さんは……大きな声で笑った。
『もう、1人で抱え込むのは、馬鹿らしいってこと……あたしの話は、それだけさっ!』
✕ ✕ ✕
「ああんっ、ああーんっ……ヨッちゃぁぁん……ヨッちゃぁぁぁん!!!」
オレは……パン工房の『仮眠室』で、寧と正常位で繋がっている。
2人とも、制服を全て脱いで……全裸だ。
オレたちの横で、全裸のイーディが、ニコニコ顔でオレたちを見ている……。
「気持ちいいよおっ……ヨッちゃんのオチンチンがね……あたしの気持ちいいところをゴシゴシしているのっ!あはっ……そこおっ!そこ……いいよっ!」
オレの背中に手を廻して……ギュッとオレを抱きしめる。
オレは腰を大きく突き動かしながら……寧の豊満な胸に舌を這わす。
寧の乳首を……舐める。
「ヨッちゃん……あたしのおっぱい好き?」
「好きだよ……ヤッちゃん」
「あたしも……ヨッちゃんが好きぃぃぃ!!!」
すっかり汗に濡れた火照った顔で……ニコッとオレに微笑みかける。
……オレは。
そんな寧を見ながら……あの夏の夜の恭子さんの話を思い出していた。
「……あんっ、あんっ、あんっ!」
パンパンパンと下腹を叩き付けるように、寧の膣奥を突く。
「いいよっ、いいよっ……いいっ!!!」
人間の心も肉体も……どんどん傷付いていく。
癒やしきれないダメージを負えば……いつだって壊れる可能性がある。
「ヨッちゃん……あたしのヨッちゃぁぁんっ!!」
寧はすでに……心に大きなダメージを負っている。
この上、もし、再び大きなダメージを負えば……間違いなく、崩壊する。
だから、オレは死んでも……寧を裏切ることはできない。
オレへの信頼が……寧の心を、ゲンジツと繋ぎとめているんだから……。
「ねぇ、お姉ちゃんて呼んで……お姉ちゃんて」
「……お姉ちゃん」
寧は……ニッコリと安堵の笑みを浮かべる。
「……あたしの……ケイちゃん……!」
そうだ……アメリカでケイさんの戸籍を引き継いだオレは……。
寧の弟……奈島景人でもある……。
「……お姉ちゃん……お姉ちゃん!」
「ケイちゃん……お姉ちゃんの中、気持ちいい?お姉ちゃん、ケイちゃんの役に立っている?」
「気持ちいいよ……お姉ちゃん。オレ、お姉ちゃんがいないと生きていけないよ……好きだよ、好きだよ……お姉ちゃん!!!」
「……嬉しい。ケイちゃん……お姉ちゃんの中に出してね。お姉ちゃんのことはいいから……いつでも、お姉ちゃんの中で気持ち良くなって」
オレは、腰の動きをスパートさせる……。
「一緒にイケないと嫌だよ……お姉ちゃん!」
「……ケイちゃん!」
「お願いだから……オレと……オレと一緒にイって……寧子お姉ちゃん!!!」
「もう……甘えん坊さんなんだからっ!」
これが……愛し合うということ。
迷惑を……掛け合うということ。
「ああっ、ああっ、ああーっ……お姉ちゃん……もうすぐ、もうすぐだよ……!」
「オレも……オレも……もう……!」
「待って……待って……待って……あああ、ケイちゃん、ケイちゃん……!」
寧の手が、オレの腰をギュッと掴む……!!!
「ケイちゃん……お姉ちゃん、イッちゃう……イッちゃう……イクぅぅぅぅ!!!」
「オレも……オレも、オレも……お姉ちゃん……あああ、出るぅぅぅぅ!!!」
オレの愛が……寧の子宮の壁に降り注ぐ……!!!
熱いシャワーとなって……。
「ああんっ!来てるぅぅ!!!ケイちゃんの……熱いよぉぉっ!」
「出るよ、まだ出るよ……もっと出るよ……お姉ちゃん!!!」
「お腹の中……温かいよおっ……温かいのが、拡がっていくよおっ……ああああ!!!」
寧の全身が……歓喜に痙攣する……。
「どうするの……お姉ちゃん、妊娠しちゃうよぉぉ……!!!」
「ごめん……ごめん、お姉ちゃん……!」
「あ……孕んじゃうよおっ、ケイちゃんの赤ちゃん……できちゃうううっ!!!」
膣がキューッと締まって……オレのペニスから、精液を絞り出す。
寧の子宮が……ゴクリゴクリと、白濁液を呑み込んでいく。
「……はぁ、はぁ、はぁ……ああん、ケイちゃん」
「……はぁ、はぁ、はぁ……お姉ちゃん」
「好き好き……大好きっ!」
寧は、オレに熱いキスを求めた……。
オレたち……セックスで癒やされていく。
セックスが無ければ……心も身体も、もどかしいままだろう。
「ああーん、もう今日からピル飲むのやめて……ホントに妊娠しちゃいたいよっ!」
オレのペニスを受け入れたまま、寧がオレに言った。
「でも……卒業までは、我慢ていうのが約束だろ?」
「もう……判ってるよっ!そんなことはさっ!」
オレは、もう一度……寧を抱きしめる。
「だけど好きなの。ホントに好きなのっ!あー、ホント……ヨッちゃんに食べられるか、あたしがヨッちゃんを食べちゃうか……どっちかになりたいっ!」
寧は、無茶なことを言う。
「オレは……ずっと一緒がいいよ」
オレが、そう言うと……。
「えへへ……あたしも、そっちの方が良いなっ!」
寧は、汗ばんだ顔でニッコリと微笑んだ……。
「……次、アタシ!」
そろそろ離れろと……イーディが、オレたちを睨む。
◇ ◇ ◇
結局……オレたちの『家族』は、2種類に分かれる。
寧のように……心に大きなダメージを負っていて、『家族』の庇護下でなければ生きていけない女……。
マナもそうだ。
マナも……オレのセックス奴隷だという認識の中でしか、生きていけない。
『家族』から離れて、外の世界に出せば……心が壊れる。
メグも……。
メグは、普通の女の子だから……。
自分の生まれや、『黒い森』との関わりが……受けとめきれないでいる。
おそらく山峰家に戻したら……自分の過去に取り殺されるだろう。
メグの中の心の中のギャップ……誘拐拉致され娼婦にされた母が、レイプされて生まれた娘が自分だと言うこと。しかも、自分の実の父親から、ずっと虐げられてきたというゲンジツは……外の人間では、癒やせない。
メグは……同じ背景を持つ『黒い森』の人たちの中から出られない……。
オレが責任を持って、一生、側にいてやるしかない。
逆に……心はタフだけれど、普通の生活が送れないという女たちもいる。
みすずと瑠璃子がそうだ。
2人とも、ジッちゃんの支配と香月家のプレッシャーの中で育ったのに……タフだ。
いや、そういう育ちだから……かえってタフになったというか。
だけど……特別な育ちをしたあいつらには、居場所が無い。
オレとの関係だけが……裸のあいつらが、何もかも忘れてリラックスできる時間なのだ。
だから、オレは……あいつらを甘やかせてやりたいと思う。
美智とイーディも、こっちのタイプだ。
精神はタフ……しかし、この時代に闘う女として鍛え上げられた2人は、普通の生活ができない。
やっぱり……オレが側にいてやるしかない。
「……Darling、早くネ」
この『仮眠室』の壁の一方は……鏡張りになっている。
これは、自分たちのセックスがよく見えるように。
イーディは、鏡に向かって四つん這いになって……オレを招こうとしている。
「バックがいいのか?」
「……ドギースタイルで犯されるアタシを、アタシが見てみたいのネ!」
イーデイは……笑う。
後ろから……イーディに侵入する。
ううっ……湿った肉の圧力が凄い。
「もっと……押し込んでェッ!!」
オレはイーディの褐色のお尻を、グニュッと掴んで……。
ムニムニムニッと剛直を……押し込んで行く。
「うはぁッ……入って来たねッ!!!」
イーディの中へ……。
鏡の中で、イーディのおっぱいが……ぷるんと揺れている。
「ううっ、奥まで入ったぞ!」
オレが、根元まで入れると……。
「待って、繋がってるところ……見たいネ!」
イーディは、犬のように片足を上げて……鏡に結合部分が映るようにする。
「ワーオ!ホントに、アタシ……犯されてるゥッ!」
嬉しそうに、イーディは言う。
「……Darling、動いてネッ!」
オレは、腰をゆっくりと……。
「ああっ、スゴイネ。鏡の中……アタシ、犯されテル……Darlingに、ガシガシ揺さぶられてるネェッ!!!」
イーディは、うっとり……後ろからオレに責められている自分を見ている。
「気持ちイイヨ……Darling!Darling!いいのネッ!!!」
ああ、褐色の武闘少女を……オレは犯している。
後ろから、揺れる乳房を……揉む。
「もうっ、牛みたいに……おっぱい絞らないでネッ!」
乳首をクリクリしたら、イーディがそう言った。
「嫌なのか……これ?」
「嫌じゃないけれど……アタシ、動物みたいネ」
イーディは言う。
「だって……そういうのがいいんだろ」
オレは……腰の動きを速くする……。
「イーディ……もっと腰を上げられるか?膝じゃなくって……足の爪先で四つん這いに……」
「……こうネ?」
イーディは、両手をベッドに付いたまま……尻を高く上げる。
「あん、何……アタシ、もっと動物みたいネ!」
膝立ちでなく……つま先立ちで尻を突き出す姿は、カモシカのようなシルエットを作り出す。
いや、実際……イーディの足や太ももは、カモシカのような優雅さと、しなやかさがある。
「Darling、これ……嫌……恥ずかしいねっ!」
口では、そう言いながら……イーディの身体は、悦んでいる。
トポトポと愛液を内ももに滴らせながら……尻をオレの腰にグイグイ押し付ける。
イーディの狭い膣肉が、キュキュッと……締まった。
「……ねえ、Darling」
「うん……どうした、イーディ?」
鏡の中のイーディは……快感で、眼を潤ませている。
「このドギー・スタイル……とっても恥ずかしい……恥ずかしいネ……だから」
また、トプッと愛液が零れる……。
「今度……外でしたいネ」
外……屋外セックスか。
「判った……お屋敷の中庭でやろうな」
オレが、そう言うと……。
「お屋敷は嫌……学校……昼間の学校の中が良いネ……!」
……イーディ?
「さっきの……体育館の裏がイイネッ!!」
……ええっと。
授業時間中に……ミナホ姉さんに、監視カメラで近くに誰もいないことを確認しながらすればいいか。
「……判った。約束するよ……今度な」
「……YES……NEXT TIMEネ!!!」
イーディは、すっかり興奮しているようだった……。
「ああん、Darling……アタシ……アタシ……」
「……イキそうなのか、イーディ?」
「うん、アタシ……イクのね……イッちゃうヨ、Darling!!!」
「ああ、いつでもイッていいぞ」
「ヤダ、ヤダ……Darling!Darlingも一緒でないとイヤ!!!」
オレは……一気に快感をスパートさせる。
「ああ、オレも……オレもイクぞっ!イクぞ……イーディ!」
「HOTなの……たくさん欲しい……欲しいヨ……Darling!」
……そして。
「あああっ、Darling!!!アタシ……アタシィィィ!!!!」
鏡の中のイーディの顔が、歓喜に震えている……。
「ほらっ、受け取れっ……イーディ!!!」
オレは、思いっきりイーディに射精するッッ!!!
「あああっ、熱いッッ!!!熱いデスぅぅ!!!!」
身体の最奥に、男の熱液をくらって……イーディの身体がゾクッと震える。
「ほら……まだだ、まだだ……まだ出るぞ、イーディ!!!」
オレは、さらに思い切り……イーディの弾力のある尻に、自分の腰を擦り付ける。
擦り付けながら……ピュッピュ、ピュッピュと射精し続ける。
「ああーん、アタシの身体……Darlingでいっぱいになってイクのおっ!!!」
イーディは、オレの精を受ける自分の姿を鏡で見て……激しく興奮している……。
◇ ◇ ◇
オレの残りの女たち……。
ミナホ姉さんも、克子姉も、渚も……娼館の犠牲者だ。
辛い体験が……タフな精神力を作った。
でも、その正体は……可愛い女性たちだ。
オレは……あの『姉』たちに思いっきり、甘えたい。
そしてまた……オレも、あの人たちに甘えられたいと思う。
それから、レイちゃんと翔姉ちゃん……。
普通の男たちよりも強すぎたあのお姉さんたちは……。
やっぱり、自分の居場所を失っていた。
廻りの男たちが、あの2人に……勝手なイメージを押し付けたから。
だから、オレの元では……素顔のまま、気楽に過ごして欲しいと思う。
さらに……アニエス。
心も身体も……まだ無垢なままのアニエス。
精神的には、幼女の真緒ちゃんと同じだ。
なのに、セックスの知識だけを植え込まれた……12歳のハーフ美少女。
やっぱり、外には出せない。
悪い大人に掴まったら……酷いことになる。
オレたちの元で、ゆっくりと普通の女の子にしていくしかない。
そして……オレ。
オレは……壊れているっていうより、欠けているんだと思う。
普通の人間が普通にもっているものが……オレには無い。
だから、やっぱり……。
オレも、この『家族』の中で癒やしてもらうしかないんだろう……。
オレだって……ここしか生き場の無い人間なのだから。
「……ヤッちゃん、オレ、ここに居ていいんだよね?」
イーディと3人で、裸で川の字になって……ベッドに横たわっていた。
「うーん……ていうか、あたしこそヨッちゃんの側に居ていいんだよね?」
寧が、オレに答える。
みんな……自分のことに関しては、不安なんだ。
「……Darlingも寧も、居てくれないとアタシが困る」
イーディが、そう答えた。
……と。
「……2人とも、何でヨシくんと一緒に居るのよッッ!!!」
ガバッと『仮眠室』のドアを開けて……メグが入って来た。
「やっぱ、本妻さんに怒られたッ!!!」
寧が……笑う。
「えっと……メグ?」
「5時間目が終わったから、走ってここまで来たのよっ!イーディが授業に来ないからっ!!!」
……あ。
「アタシ……英語は別に困ってないネ」
イーディは澄ました顔で、オレの胸に裸のおっぱいを擦り付ける。
「だからって、何でヨシくんとエッチしているのよっ!!!」
メグが切れる!
「ヨシくんも、ヨシくんよっ!あたしには、パン工房の仕事があるって言ってたじゃないっ!」
「いや、それはホントにあるんだ……でも、イーディには、さっき助けてもらったから」
「……寧お姉さんは?」
ジロッと寧を……見る。
「確か……授業へ行くって、一緒に校舎へ戻りましたよね」
「あはははは……ごめーん、メグちゃーん」
「ゴメンじゃないですっ!!!!」
……メグ。
「もう、みんなバカぁあぁ……大嫌いっ!!!」
◇ ◇ ◇
それから、メグの機嫌が直るまで必死で謝って……。
寧とイーディは、次のオレとの時間を……メグに譲ることで許してもらった。
オレはメグと……次の連休に一泊旅行することになった。
「じゃあ、あたしたちは授業に戻るわっ!」
「……次、古文。アタシ、よく判らないよ」
「判らなかったら、あたしが教えてあげますっ!」
「でも、ヨッちゃん1人で準備するのは大変でしょ?あたし、手伝おうか?」
「寧お姉さん……また留年するつもりですかっ!」
メグが……睨む。
「判ったよーん!ごめんね、メグちゃーん!」
結局、寧とイーディは……メグに連行されて行った。
オレは……急いで『仮眠室』のシャワーを浴びて……。
『パン工房』へ戻る。
昼休みにできなかった片付けをしながら……放課後の『パン部』の仕込みも。
……と。
「……ねえ、入ってもいい?」
不意にドアを開けて入ってきたのは……。
「時間が開いたから学校に来たけれど……あたし、やっぱり居場所が無いから」
金髪の……雪乃だった。
「……入れよ。その辺座ってろ」
オレは……椅子を示す。
「……恵美は?」
「授業に出てるよ」
「そうね……あの子、真面目ちゃんだもんね」
雪乃は、安心した素振りで椅子に座った。
「お前……出席日数足りているのか?」
オレが尋ねると……。
「大丈夫よ……ちゃんと、計算してサボッてるから。卒業しろってのが、弓槻の命令だけど……別に皆勤しろとは言われてないもの」
雪乃は……そう言って笑う。
実際のところ……。
雪乃はたまに、こうやって……オレのところに来る。
確実に、メグや寧が居ない時を見計らって。
今の雪乃は……1学期までの寧みたいに、授業をサボるのが当たり前の不良少女になっているから……。
雪乃の姿が見えなくても、メグは気にしていない。
もしかしたら、オレのところに来ているのかもと……思っているかもしれないが……。
まあ、さっきの寧やイーディのようにムキはならない。
それが、オレの本妻としてのメグの意地なんだろう。
「ほら、これ……食えよ」
オレは、パンを一つ……雪乃の前に置いた。
「何これ……売れ残り?」
「売れ残りなんかねえよ。おかげさまで、今日の昼は完売だ」
メグと寧が揃って売り子をやっているんだぞ。
売れないはずがない。
黒髪に戻してからの寧は……各学年に熱狂的なファンを作っているし……。
「……じゃあ、何?」
「試作品だよ」
オレは……答えた。
「……へえ」
元・良家の娘らしく、小さくちぎって……雪乃はパンを口に含む。
「……ふん。そこそこ美味しいじゃない」
「……そうか?」
「これ……売り出すの?」
雪乃が、オレに尋ねる。
「……いいや。それはボツだって」
「……ボツ?」
「克子姉に、ダメだって言われた」
雪乃は、さらに一口食べて……。
「何でダメなのよ……結構、食べられるわよ」
「しょうがないよ。オレのパンの師匠は克子姉だから……克子姉の方が、オレより舌も良いし」
「はん、すっかり尻に敷かれちゃって……だらしないわね」
雪乃は、工房の中を見渡す。
「……で、あんた、何をやってんのさ?」
「今日は放課後に、『パン部』があるから……その仕込み」
「1人で?」
「ああ、1人で……」
雪乃は……うつむく。
「あたし……ここに居てもいいのかしら?」
ほんの数秒……間が開く。
「居たけりゃ……居ればいい」
「……え?」
「まあ、いいからさ……パン食えよ。パン」
オレは……言った。
……雪乃は。
「……そう言えばさ?」
「……何?」
「あたし……あんたの名前って、知らないままだったわ」
オレの……名前?
「いや……吉田だけど」
「そっちは知ってるわよ……今は、黒森だってことも」
雪乃が……オレを見ている。
オレという人間に……関心を持ってくれている。
「あたしが知らないのは……下の名前よ」
……雪乃。
「あんた……あたしの名前は知っているわよね?」
「当たり前だろ……白坂雪乃」
「そうよ……あたしは、白坂雪乃……」
自分に納得させるように……穏やかに自分の名を告げた。
「で、あんたは……吉田……何なの?」
……ああ、そうか。
ここから……始まるんだ。
オレたちは……今、やっと……友人になる。
お互いの名を知って……対等な立場になる。
「吉田良信だよ……忘れんなよ!」
……雪乃は。
「は、そんな名前だったんだ。吉田良信ね……」
雪乃は……クスッと笑った。
「ま……覚えておくわ」
※本編・終わり