4年前、老人ホームの女性職員が入所者に殺害された事件で、施設の運営会社に損害賠償を求めた遺族の訴えがおおむね認められました。

 孫の成長を見守りながら遊ぶのが大好きだったという榊真希子さん。4年前、榊さんの命は突然奪われました。

 2021年11月、大阪市平野区の老人ホームで1人で夜勤をしていた榊さん(当時68)は、入居者の男(当時72)にハンマーで殴られて殺害されました。

 男は榊さんを殺害した後、建物から飛び降り、自殺。殺人容疑で書類送検されましたが、容疑者死亡のまま不起訴となりました。

 大阪府内に住む榊さんの長女は、今も母のおだやかな笑顔が忘れられないといいます。

 (榊真希子さんの長女)「本当にいつもニコニコしていました。人のためにすることが生きがいじゃないけど、そういうのはあったのかなと」

 長女は事件後、警察から「母と男の間にトラブルはなかった」と説明を受けていましたが、捜査関係者によりますと、男は施設内で周囲とトラブルを起こし、退去手続きの途中だったということです。

 事件後、長女は老人ホームに何度も足を運び、入居者らから話を聞いたといいます。

 (榊真希子さんの長女)「明るく人気者だったよなどを言ってもらえたり」

 母親の働きぶりを知る一方で、事件当日の午後10時以降は、約40人の入所者がいる施設で1人で夜勤に当たっていたことや、事務室には内カギがなく誰でも入ることができる状態になっていたことなどを知りました。

 事件は防ぐことができたのではないか。長女らはおととし2月、施設側に対し約3900万円の損害賠償を求めて提訴しました。

 (榊真希子さんの長女)「もう少し働く人が守られていけるような環境を整えてほしいと思います」

 長女らが施設側の安全配慮義務違反を訴えた一方、施設側は入所者による暴力行為については認めたうえで「犯行までは予見できず賠償責任はない」と主張しました。

 9月25日の判決で大阪地裁は「粗暴行為に及ぶ危険性があることを知らせ、内カギを施錠するなどの対応をしていれば死亡という結果を回避する可能性があった」などと安全配慮義務違反を認め、施設側に、請求額とほぼ同額となる約3900万円の賠償を命じました。

 判決をうけ長女は、「一定の責任を認めていただけたのは本当に良かったです。しかし、防げたはずの事件だったのではないかと複雑な気持ちです」とコメントしています。

 一方、施設側の代理人弁護士は「内容等に関し第三者にお答えすることはいたしかねます」としています。