放送内容
- 「さよなら“男らしさ”!? イマドキ男子の育て方」2025年9月25日放送
「さよなら“男らしさ”!? イマドキ男子の育て方」2025年9月25日放送
NHK放送文化研究所が2022年に行った世論調査の結果です。
学校では出席簿の男女混合や家庭科や体育などの男女共修などジェンダー平等を目指す施策が進む中、多くの親が「男の子には男らしく育ってほしい」と考えているようです。おとなりさんから寄せられた疑問をもとに考えていきましょう!
おとなりさんのギモン①「息子が赤いランドセルを選ぶことに抵抗感。なぜ?」
はちめさんの息子は、来年、小学生。ランドセルは「赤がいい」と言われました。息子の意見を尊重したい一方で、赤いランドセルを購入できない気持ちもあります。いったい、どうしたらいいんでしょう?
今回番組で、小・中学生の保護者500人に「ランドセルの色についてどちらにより抵抗を感じるか?」アンケートをとったところ、「女の子が黒や青を選ぶほう」よりも「男の子が赤やピンクを選ぶほう」が圧倒的に多い結果となりました。
なぜ多くの親が、男の子が“女の子っぽい”ものを選ぶほうにより抵抗を感じるのでしょうか?
《きょうの先生》1人目は、“男らしさ”をテーマにたくさんの本を書いてきた文筆家の清田隆之さん。
「ランドセルの色はあるあるな問題。男の子が赤色を選ぶと『自分の息子が少数派になる』という心配があるのでは?」と言います。
《きょうの先生》もう1人は、長年小学校教諭としてジェンダーを考える授業を行ってきた、ジェンダー教育実践家の星野俊樹さん。星野さんの見解は・・・「日本は“男性優位社会”。男性が女性っぽいものを選ぶのは優位性からおりる“下降”を意味し、逆に女性が男性っぽいものを選ぶのは、劣位から優位に上昇することで、むしろ社会から好意的に受け止められると感じます。」
どうしてピンクは「女の子の色」なのか?
そもそも「男の子っぽい色」「女の子っぽい色」はどう決まったのでしょうか?東京都江東区にあるかえつ有明高等学校で星野さんが行ったジェンダーの特別授業にお邪魔しました。この日のテーマは「男の子の色、女の子の色がどうできたのか」について。
例えばピンク色は今から70年ほど前、時のアメリカ大統領夫人マミー・アイゼンハワーがピンク色が大好きで、それに目をつけたファッション業界の人たちがピンクを婦人服のトレンドにしようと決めました。 そのことがきっかけで、ピンクが女性の色というふうになっていったそうです。
高校生たちからは“男らしさ”についてこんな意見も・・・
「赤色っぽいランドセルを背負う男子が、からかわれていたし、自分もちゃかしていた。」
「なぜ男の人が『かわいい』とか『愛らしい』のはダメ、みたいな風潮があるんだろう?」
「父親に『男だから泣くな』と言われるけれど、自分にとっては不安を解消する手段。なんで男は泣いちゃダメなんだろう?」
「『あの人、動きが女々しいよね』とか『マジ男っぽい』みたいに分類するような考え方は友達の中にもある。そう言われたら、自分も『そうだよね』と同意しないといけない空気もある。」
なぜ父親は男の子を“男らしく”育てたいのか?
父親に「男なんだから泣くな」と言われたという高校生の話もありましたが、タカさんトシさんも息子には“男らしく”育ってほしいと考えているようです。
タカさん:アニメのヒーローも全部男らしくかっこいい。弱いものを命がけで守る。「“男らしさ ”=憧れ」。自分がそうなりたかった。そうなりたい自分になってほしいと、息子に夢を託している部分もある。
トシさんも・・・
清田さん:トシさんは「自分は男らしくなれなかった」と言うけど、期待値が高いのでは?あれもできてこれもできて、っていうイメージに自分が追いついていないっていう。多分みんなそう思っているんじゃないですか?だから息子にはこうしてほしいという思いがあるのかもしれない。
星野さん: 男社会において“男らしい”ことが 男性同士の間で評価される 。企業や政治のトップを見ると圧倒的に男性が多い。お父さんはこの男社会で、わが子が出世したり、高収入を得たり、高い社会的な地位を得るために“男らしく”あってほしいと願っているんです。
男はつらいよ!?男社会の「同調圧力」とは・・・
ただ、男同士の間には「同調圧力」があるという意見も・・・。
清田さん:罰ゲームで肩を殴る、お尻を蹴る、一緒にちょっと悪いことをする、盛り上げるために一発芸をやる、でも中にはそれがしんどかった、という体験談を男性から聞いているんですね。そこで感じるのが「同調圧力」。「俺らは仲間だよな」という横並びの意識とともに、うっすら「ちょっとみんなを上回ってすごいと思われたい」という意識も働いている。仲間のなかで抜け駆けしてもダメ、劣ってもダメ、と難しい。
星野さん:“戦いごっこ”で下に組み敷かれた子を呼んで「本当に楽しかったの?」と聞くと、「本当はイヤだけれど、友情が終わるので友達には言えない。」と。我慢して自分なりに消化して、友達同士のつきあいをだんだん優先していくわけです。そうすると今度は、やられていた子がやる側に回る。最初は「自分の境界線を侵害されたくない」という繊細な感覚を持っていたにもかかわらず、男子の同調圧力の中で鈍化していく。それが自分自身や他人を傷つけ苦しめるふるまいにつながることもあり、そういうものを「有害な男らしさ」と言うんです。
世界が注目「有害な男らしさ」とは・・・
星野さんによれば、「有害な男らしさ」には、以下の4つが挙げられるそうです。
「有害な男らしさ」は海外でも注目されていて、「有害な男らしさ」をテーマにしたインターネット配信のイギリスのドラマ「アドレセンス」が世界中で大ヒット。13歳の少年が同級生の少女の殺害容疑で逮捕されるところから始まるフィクションで、男の子がSNSや友達関係から、いかに「女性蔑視」や「男性優位」の考えに染まるかが浮かび上がってくるドラマになっています。なぜこのドラマが世界中で注目されたのでしょう?
清田さん:女性にモテないとか、お金が稼げないとか、集団の中でバカにされがちだとか、弱いポジションに立たされた男性たちがその鬱屈、憎悪、嫉妬心などを女性に向ける現象、恨みつらみが女性へ向くように煽動するSNSの動きが世界中で多くて、実際に女性であるというだけで憎悪、暴力の対象にされてしまう事件が世界中で起きている。
「感情の表し方」を学ぶ男子校の授業
兵庫県神戸市にある男子校、灘中学・高等学校では、ジェンダーの授業の一環で「自分の感情をどう表現するか」について教えています。
例えばこんな場面。「友達がふざけて自分のペンを取り上げて逃げたとき、それが嫌ならどう行動するか?気持ちを相手に伝えたいときどう言葉にするか?」一緒に考えます。
授業の最初に「自分の感情はすべて大切」であることを生徒たちに伝えるそうです。
清田さん:安心感がないとしゃべれない。日頃から感情を言葉にしやすい関係性作りをしておかないと。
星野さん:私のオススメは大人が楽しそうな姿を見せること、例えば夫婦が感情をお互い言語化しあい、こんな気持ちだと交換しあう。その楽しそうな姿を子どもに見せる時間を積み重ねることが子どもを変えていきます。
おとなりさんのギモン②「男の子と女の子、そもそも脳が違うのでは?」
一方、おとなりさんのベニクラゲさんからは「そもそも男性と女性とでは脳が違うから、“男らしさ”や“女らしさ”が生まれるのはしかたないのでは?」という疑問の声が…。
認知神経科学が専門の東京大学大学院教授・四本裕子さんによると、脳は「男女差」よりも「個人差」の方がはるかに大きいそうです。
四本さん: 男性と女性の脳は平均値をとれば差が出るところもある。けれども1つの脳を取り出して「さあ、これが男性の脳か女性の脳か当ててみましょう」と言われても当てられないくらいの、とても微妙なわかりにくい差です。
男性の脳と女性の脳が全く違うとして、『男性脳』、『女性脳』と名前をつけるのは正しくないとのこと。男の子だからこれが得意・苦手というのは、「生まれつきの脳の違い」よりも「育つ中で受ける影響が大きい」そうです。
「ランドセルの色を選ぶのに、子どもが親の影響をどれほど受けているのか?」については、おととしランドセルメーカーが制作したインターネット動画が話題を呼びました。
最初に子どもたちに、保護者が好きそうなランドセルを選んでもらうと、黒いランドセルを選んだ男の子の姿が・・・。次に子ども自身が本当に好きな色のランドセルを選んでもらうと、まったく違う結果に!中には白やピンクを選んだ男の子も。
清田さん:子どもたちは日々大人や友達の様子、スマホや絵本の中で見る光景を見て「こういうほうがいいんだ」「これはやめておいたほうがいいんだ」という期待や規範を取り込んでいる。そうやって蓄積してできたのがジェンダーの影響 だと思うんです。
星野さん:自分の心の中にある「男らしく、女らしくあらねばならない」という呪いに自分で気づけると、自分でその呪いを解除できる。そうすると自分自身と健全な関係を結べるようになる。自分と健全な関係が結べれば他者とも健全な関係を結べるようになる。豊かで健全な関係を築くことは幸せですよね。
(※記事の内容は放送当時のものです)