「あーあ、移住者が帰っちゃった」30代夫婦が「いじめ」で田舎暮らしを断念。後に自治会で起きた醜い「罪」の着せ合い【専門家解説】
人口減少と人口の東京一極集中により、地方は近年あまり元気がない。一方で2024年の東京は、10代と20代合わせて13万人以上の転入超過となったそうだ。内閣官房によれば、若年層が進学や就職を機に東京圏に転入する傾向があるという。 「近年、地域おこし協力隊や各自治体独自の活動などにより移住者誘致がますます活発になっています。全国各地への移住を相談できる専門的機関もできており、物価の高い東京圏から生活拠点を移すため、地方移住を検討できる環境が整いつつあるのです」 こう話すのは危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏。 「しかし一方で、せっかく憧れの地へと移住したにもかかわらず、理想と現実のギャップに失望して、田舎での生活継続を断念する人がいるのも事実です。 慣れない環境での生活のしづらさや、地方独特の習慣・近隣とのおつき合いに悩み、移住してから『こんなはずじゃなかった』と後悔する人もおられます」 今回取材に応じてくれたのは、とある地方の町で暮らすパート従業員のYさん。数年前、お住まいの地域に移住してきた若い夫婦のことが忘れられないと話す30代の女性である。 Yさんが暮らす町に移住してきたのは、のどかな環境で育児をしたいと望んでいた妊活中の夫婦。不妊治療や育児への助成が整っていて、なおかつ東京までの通勤圏にある自治体を探した結果、その地に辿り着いたそうだ。 若い夫婦が移住してきたばかりの頃は、町は歓迎ムードだった。歓迎会が開かれたり、自治会の幹部や町内会長などが頻繁に夫婦の家を訪れ、自治会のルールや近隣住民・行事の紹介などを細やかに行っていたという。 Yさんは、移住夫婦に対し、地域の人々が見せた反応についてこう語る。 「移住してきた夫婦のダンナさんはリモートで仕事をしていて、時々東京の会社に通勤するスタイルで生活していました。 すると、自治会の上の方の人が『移住してきたなら、この辺りの会社や農家で働いて地域に貢献してはどうか』と余計な口出しを始めました。 また、不妊治療助成の申請を予定していることを誰かが漏らしたらしく、一部の高齢者が『これで頑張って』と精がつくとされる食品をお裾分けしたり卑猥な冗談を言ったりするなど、夫婦は私生活に介入されたり不快な発言を受けたりし始めたのです」 また、自治体の中では有名なある伝統行事への参加を断った夫婦に対し、『助成金ばかりがっぽり貰って、地域行事に参加しないとはどういうことか』と町内会長が強く抗議したという。 さまざまなストレスが重なったのか、夫婦はわずか1年で憧れだった田舎暮らしを諦め、東京近辺で再び住まいを探して出ていってしまった。 Yさんによれば、貴重な移住者が忽然と消えたことで、その後の自治会は「移住者いじめの犯人」の追及の場となり紛糾したという。 夫婦と仲良くなった数少ない住民の1人であるYさんは… 「『いじめの1番の犯人は町内会長だよ。あーあ、移住者が帰っちゃった』と町内会長を叩く高齢者が現れたのですが、そう言った本人は、Yさん夫婦に『引っ越しの時の挨拶が不十分だった』と嫌味を言っていたそうで、『お前こそ何だ』と言われ、場は大荒れになりました。 みんなが罪を着せ合って、非常に見苦しかったです。補助金も要件が厳しいらしいので、それほど貰ってなかったと思いますよ。誰も出ていった若い夫婦の気持ちなんて考えていなかった気がします」 と述べた。移住者を受け入れる側にも、する側と同様に心や環境整備といった準備が必要なのではないか。 【関連記事】「いちばん許せなかったのは…」30代夫婦が移住生活を見限った最大の理由。あなたの町は大丈夫ですか 【取材協力】平塚俊樹:危機管理コンサルタント【聞き手・文・編集】川路詠子 PHOTO:Getty Images【出典】内閣官房:地方創生 2.0 基本構想
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