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日本はトップが反科学となったら批判できるのか?(1/5)

Last updated at Posted at 2025-09-24

概要

筆者は、PyCon APAC 2023 の開催過程で生じた一連の不正を2024年9月22日に告発した。(PyCon JPの技術に対する不正の告発、並びに技術者と大衆に対しての警鐘

PyConと呼ばれるイベントでは「公平な技術審査を行い、公募された多くの予稿案から日本を代表するに相応しい登壇者・企画が選定され」、優れた技術者が登壇し、Python の知見を国内に共有する場として毎年大規模に開催されている。

告発の核心は、PyCon側が掲げていた採択プロセスは実態と全く乖離している、という点にあった。筆者は、ビープラウド社の関係者らが自らの利害関係者を優先的に採択し、そもそも投稿予稿に十分目を通さず、投稿者名や企業名による選考が中心となっている実態があると主張した。

本稿は、当該告発に対して寄せられた反論への再反論である。結論として、筆者はイベントの母団体である一般社団法人 PyCon JP Association が現在に至るまで情報の捏造や虚偽の発表を繰り返していると結論づける。これは大衆の信頼を裏切るのみならず、技術者に対する社会的信頼を著しく損なうものである。さらに同団体は集団思考に陥っており、健全な運営が不可能な状態にある。

本稿は以下の二点について、再反論を行うものである。

  1. ビープラウド社による捏造を含む調査報告
  2. 内部調査委員会の集団思考を反映した調査報告

本記事の各主張は以下の4つの手順によって構成される

①概要
②筆者が行った告発の主張
③告発に対する反論
④筆者の再反論
⑤解題

1. ビープラウド社が捏造した調査報告

①概要

筆者が2024年9月22日に公開した告発に対して、株式会社ビープラウドは『PyCon APAC 2023に提出したプロポーザルに関する調査報告』を2024年9月26日に発表し、筆者の告発の内容を否定した。しかし、同社の主張には不整合があり、筆者は再反論を提示する。

②告発の内容

告発文章において、筆者は以下の事実の提示をした。

  • チュートリアル枠で、特定企業が営利目的の活動を図った。
  • 株式会社ビープラウド取締役・PyCon JP Association代表理事の鈴木たかのり氏が、当該予稿について「自社のプロポーザルだから採択にする」と表明した。
  • 当該企画の進行役は自ら作成したプロポーザルであると述べ、強行採択を試みた。
  • 筆者の反対意見が不正に漏洩し、やむなく進行役へ直接に反対意見を伝えたところ、進行役から恫喝を受けた

③ビープラウド社の反論

上記の告発に対し、同社は以下の声明を発表した。

a. 事実関係をPyCon JP運営事務局へ照会して確認済み
b. 鈴木氏は採択会議に不参加
c. 同社名義でチュートリアルにプロポーザルを提出
d. チュートリアルは企業が格安で学習コンテンツを提供する形式
e. 企画内容はpandasの3時間のハンズオン
f. 関連書籍の無償提供について事前確認済み
g. サイン会は出版社主催で同社は不関与

④筆者の再反論

a. 「正当性確認」の捏造

同社は「運営事務局に照会し確認した」と主張するが、筆者が記事公開当日にPyCon JP Association理事の寺田氏に事実確認を行ったところ「ビープラウド社からの事実確認は受けていない。同社の主張は捏造である」との回答を得た。

b. 採択会議への出欠

この点は筆者の立場からは未確定である。筆者の認識は当日の音声情報に依拠しており、人物特定には確証を持たない。詳細は後掲「補足:人物同定」を参照。

c. 提出名義の相違

同社は「同社名義で提出」との主張であるが、実際の提出名義は『斎藤努』であった。

d. チュートリアル枠の位置づけの捏造

同社はチュートリアルを『企業が格安で学習コンテンツを提供する形式』と位置づけ正当化を試みている。
しかし実態として、当該枠はPyCon JP運営が確保した大規模会場を、選ばれたOSS開発者や研究者など特定の個人が占有し、参加者(参加費18,000円)にPython活用を教授するための場であった。
したがって、価格の多寡にかかわらず、特定企業が営利目的で情報商材の宣伝を行うことは不適切であった。

e. 企画内容の捏造

同社は「pandasの3時間のハンズオン」と主張するが、同社サイト上の企画案は2時間30分であり齟齬がある。
提出された予稿では30分は同社社員らが情報商材に関連するジャンケン大会やサイン会等を行い、集団心理を煽り情報商材の購入を促す販促的行為が予定されていた。
そのため審査では、「利害関係者であるため採択とする」と鈴木氏が評価を付した一方で、他の4名のレビュアーは社会通念上の懸念を指摘した。

f. 関連書籍の無償提供等の事前確認

同社は「参加者全員への無償提供を事前確認した」と繰り返すが、実際はジャンケン大会の勝者に配布可能かといった販促的施策について、審査側へ事前確認はなされていない。
そもそも筆者が問題視したのは、予稿審査の手続と権限行使における不正である。同社の主張はプロポーザル会議の議決経過に対する抗議であると思われる。
採択会議で筆者が社会通念上の問題を提起したにもかかわらず、進行役はこれを無視して採択を強行しようとした。これに対し他のレビュアーから「我々には物販許可の権限はないし、ここはその許可を出す場でもない。よって本プロポーザルは審査できず落選にせざるを得ない」 との意見が出され、進行役以外の全員が賛同し落選となった。同社の主張は、当時の棄却理由を事後的に否定するものに見える。

g. サイン会・物販への関与の否定

「サイン会は出版社主催で同社は関与していない」との主張だが、PyCon JP の会場においてビープラウド社の社員のサイン会や著作物の物販が恒常的に行われている現状は異常である。採択権限や会場の物販を独占することで、同社はイベントを私物化し営利活動の場としている。
採択会議前の段階で出版社と物販やサイン会に関する取り決めがあり、サイン会直前に当該社員が登壇するよう調整されていることの示唆が進行役からあった。

補足:筆者による採択会議での人物同定について

同定が困難である事情

筆者は定刻に Zoom 経由で参加を試みたが、他の参加者は全員遅刻しており開催が延期した。約2時間後に再接続した時点で自己紹介が終了しており、現地映像は不鮮明で音声中心の同定となった。このため個人特定は未確定である。

推定方法

会議では、強い影響力をもつ進行役が、自身の利害関係者からの投稿を「良い人だから採択する」等の独断で採択をしていた。またSlack上では鈴木氏が審査基準を単独で変更するなど同様に強い権限を行使していた。そのため当該人物を同氏と推認した。
仮に鈴木氏の代理として同社社員が進行役をしていた場合でも、部外者が代表権に相当する行為を行い、機密資料(プロポーザル・評価)にアクセスしたことになる。いずれにせよ、審査の独立性・公正性に重大な懸念は残り、内部統制上の欠陥および不正の疑いが生じる。

⑤解題

文章が公開された2024年9月26日、同日、筆者と一般社団法人PyCon JP Association 理事の寺田学氏は同社への対応を協議した。その結果、筆者個人はビープラウド社の主張に対して対応しない。一般社団法人PyCon JP Associationから『ビープラウド社の声明の内容は事実ではない』という声明を、2024年9月28日に開催されるPyCon JP 2024が終了した後に出す、という合意に達した。
しかしPyCon JP 2024 の閉幕後、筆者は履行を求めたものの寺田氏はコミットメントを果たさなかった。このため筆者は名誉回復と事実関係の明確化のため本稿を公開するに至った。

同協会は寺田氏と鈴木氏の共同代表制であり、鈴木氏はビープラウド社の取締役でもある。寺田学氏は法人運営において、共同代表者の私的利益に配慮せざるを得ず、団体名義で「捏造」と断ずる発表は困難であったと推測される。しかし事実を発表することで告発者の名誉回復を行う、と自ら提案し宣言した以上、合意を履行されるべきだった。
一般社団法人PyCon JP AssociationはPythonの普及活動を行うための団体とされているが、特定企業との癒着は活動のすべての意義を損うに十分である。筆者は人事刷新、運営実態の情報開示などの改善に必要不可欠な施策を提案したが同協会は拒絶している。

2. 集団思考に陥った内部調査報告

①概要

筆者が2024年9月22日に公開した告発に対し、一般社団法人PyCon JP Associationは内部調査報告書を公表した。
しかし当該報告は、事実調査の適切性を欠いたまま組織の無謬性を自己正当化し、逆に外部(敵対者)側の不正を捏造することで組織の無謬を支持する構図が見られた。作成プロセスでは同調行動が観察され、内容にも集団思考(groupthink)の兆候と、それに起因する欠陥的意思決定が確認された。

調査報告に関する時系列

②告発で示した主要論点と、調査報告が取り上げた範囲

筆者が提示した不正のうち、同報告が対象としたのは次の2点のみであった。

a. 鈴木たかのり氏による不正なレビュー行為
b. 会議進行役による筆者への恐喝行為

a. 不正なレビュー行為の詳細

レビュー・プロセスの取り決めは次の通りであった。

- 『同僚であるから』という理由でポジティブな評価をつける行為は禁止。
- 自身のプロポーザルに評価することは禁止。
- 自身には評価できないと判断した予稿に対して評価をしない。

同協会の代表理事であり株式会社ビープラウド取締役でもある鈴木たかのり氏は当該審査に参加し、同社が企画したと主張しているチュートリアル企画に対し「私は関係者なので採択にする」との評価を付した。これは明確にルールに反している。

b. 恐喝行為の詳細

2023年7月9日の採択会議で、筆者はビープラウド社が社として提出したと主張する予稿に対し『社会通念上、問題のある予稿を採択するべきではない』と反対した。
(なお、副座長への事前相談という限定的な確認行為が全体にリークされ、筆者は会議で反対意見を述べざるを得ない状況に置かれていた。)
それに対し進行役は「俺が書いたにも関わらず、反対意見を出された」と長時間、不満を述べ続けていた。

その後のPyCon JP 2023副座長・高井陽一氏が投稿した予稿の審査において、筆者は当該の予稿は技術コミュニティに対して有害であることを指摘した。
当該議論の全容は PyCon JPの技術に対する不正の告発、並びに技術者と大衆に対しての警鐘における③. 審査プロセスの不履行と恣意的な採択における2. 採択するべきではない予稿に対する私の意見表明 に記載されている。
ここで筆者が述べた「悪いところがない」という意見に対しては、私は強く反対し、有害な内容であることを詳細に説明し続けました。とは、世界各地のPyConやSNS等でパッケージマネージャーついての誤った説明が拡散され、コア開発者への誹謗中傷が相次いだことから、パッケージマネージャ開発が長期中断され、業界全体の停滞が起きた歴史的経緯の一次情報を紹介した行為のことである。
それにより一部の賛同を得たが、進行役は筆者を恫喝し「高井氏は我々の仲間で良い人であるため採択する」と強制採択を行った。筆者は進行役が前件への逆恨みに基づく反対意見の封殺だったと認識している。

③調査報告書の反論

a. 規則違反のレビューの「正当化」

調査報告書は鈴木たかのり氏がビープラウド社予稿の審議に参加した事実を認定し、下記の評価を下している。

- 『代表理事は自身が利害関係者である旨を他のレビュワーにも意識的に伝達する行動をとっている。』
- 『本調査インタビューにおいても複数の関係者から「評価に主観が入り得るという前提を踏まえた上で、利害関係があるレビュワーのレビュー内容を受け止めるべきである」という趣旨の発言が得られた。』
- 『このように、「利害関係があるレビュワーの評価には主観が入り得る」という前提を理解した上での運用は、これまでレビュワーおよびスタッフの良心と信頼に基づいて行われていた。』
- 『調査の結果、当初指摘されていたような重大な不正や、意図的に不透明な運営が行われていたとは認められなかった。』

b. 恐喝の矮小化としての「注意」

調査報告書の主張は以下の通りである。

- 同社が提出したと主張する予稿は『 「点数の下位、かつ、強い賛成意見がないもの」に該当していたため採択可否の議論対象にはならなかった。』
- 同社が提出したと主張する予稿は『時間の都合上、審査対象にはならず審査は行われなかった。』
- 『チュートリアルの応募数も少なく、また、採点・事前のコメント共に採択に関する大きな議論のポイントがなかったことから、簡単な確認を行なって採択が決定され』同社が提出したと主張する予稿は不採択となった。
- 『一部の外部レビュワーからトーク応募者や会議参加者に対して適切とは言えない表現や議論の進行を妨げる発言が複数回みられ、その都度、複数名のスタッフから発言の表現について注意があった』
- 『あくまで議論が白熱するなかでの不適切な発言とそれに対する注意であり、恫喝とは捉えていないという趣旨の回答を全員から得ることができた。』 

c. 新たに発覚した告発者の問題行為

調査報告書は新たに以下の主張を展開し重大な不正があった、としている。

(1) 告発者が採択会議中に採択結果を応募者に伝えたことが判明し、採択の公平性が損なわれた
(2) 告発者は「このプロポーザルは約20年前のアマチュアの趣味の水準でそこから進歩した形跡がない。ただの白骨化した死骸である。」とコメントしておりCoC違反があった
(3) 告発者は「書いた人は脳みそが蕩けてるんじゃないか、とすら感じる。」とコメントしておりCoC違反があった。
(4) 告発者は「『しょうもな』というのが感想でした」とコメントしておりCoC違反があった。
(5) 告発者にはヒアリングの実施が叶わなかったため、当該人物がどのように捉えているかについては確認ができていない

④筆者の再反論

a. 規則違反の事後合理化

『本調査インタビューにおいても複数の関係者から「評価に主観が入り得るという前提を踏まえた上で、利害関係があるレビュワーのレビュー内容を受け止めるべきである」という趣旨の発言が得られた。』
『このように、「利害関係があるレビュワーの評価には主観が入り得る」という前提を理解した上での運用は、これまでレビュワーおよびスタッフの良心と信頼に基づいて行われていた。』
『調査の結果、当初指摘されていたような重大な不正や、意図的に不透明な運営が行われていたとは認められなかった。』

調査報告書における上記の主張は、公表済みの採択規則に反する行為を「従来からの運用」「良心と信頼」を根拠に事後的に正当化するものである。

まず、公表されている採択規則から逸脱した不正審査が常習化していたことを『これまでもスタッフの良心と信頼に基いて行われていた』と正当化することは通常の論理では不可能である。
それはただの、スタッフや団体には規則を遵守する姿勢、規範を遵守する態度は全く存在しなかった、という事実を告発後調査において事後合理化することで、集団的正当化を試みた帰結である。
その帰結から 『調査の結果、当初指摘されていたような重大な不正や、意図的に不透明な運営が行われていたとは認められなかった』と主張するのは錯誤であり、調査報告の論証は誤りである。

慣行が規則に優越してはならず、利害関係者による評価は原則として排除されるべきである。にもかかわらず、「慣行」を根拠に規則の趣旨を反転させた報告の内容は集団思考における自集団の無謬性への依存である。
とりわけ同協会の代表理事かつ株式会社ビープラウド 取締役である鈴木たかのり氏が、ビープラウド社が会場を占有し営業活動を行うことを企画した予稿に『私は関係者なので採択にする』とコメントした行為の意味は、平等な評価のための適切な評価行動ではなく、利害関係を周囲に明かすためでもない。ただ『私は代表理事としてビープラウド社の不正を是認する』という意味である。
当該予稿の審査を担当した鈴木氏以外の4人は全員、当該予稿の内容に対し「社会通念上の懸念がある」とコメントしている。
その上で調査報告書は鈴木氏の不正行為を『代表理事は自身が利害関係者である旨を他のレビュワーにも意識的に伝達する行動をとっている。』と規則に沿った適切な運用と評価している。
これは、規則違反の許容を常態化させる集団思考の兆候であり、自己検閲によって規範の基準が反転している。調査委員会には黒も白に見えている。

b. 集団思考による団体の正当化

(1)「審議の有無」をめぐる自己矛盾

調査報告は「そもそもビープラウド社の予稿の採択審議自体が存在しなかったのだから、審議に不正があったという告発者の主張は捏造である」と説明している。これは集団思考において異論や不都合な一次情報を遮断するマインドガードである。
調査報告は採択審議が存在しない理由として、当該予稿が審議されずに不採択に至った経緯を三度説明する。そしてその説明内容は三様に異なっており相互に衝突するトリレンマに陥っている。

  • 時間が十分だった/不十分だった
  • 審議が行われた/行われなかった
  • (代表理事が採択意向を示した)/強い賛成は存在しなかった

また報告書には「団体内には『PyConらしさ』というカルチャーがあり、それは代表理事らコアスタッフが独断で採否を決定する権限がある(逸脱の常態化)。故に、外部参加者には不自然と思われた決定も団体内部においては不正ではない(無条件の信念)」という説明がある。
最高権力者である代表理事が「採択とする」と主張したことが認定されている当該予稿が審査外であったとの説明と「カルチャー」は整合しない。
なお、筆者は該当会議において当該予稿の審議が行われ、相当な困難がありながらも否決決議となった事実を確認している。
カルチャーの語源はcoloreで、カルトと同じである。

(2)「注意」への矮小化への批判

報告書は「状況的文脈」を理由に「全会一致」で集団の権力者の『注意』は非難されるものではなかったと正当化し、むしろ、その行為は議論の進行を妨げ、団体内の均一性、連帯を乱す不適切な発言をした者への適切な道徳的懲罰であった、と客観的判断のプロセスを経ずに、トーン・ポリシングによって結論づけている。

しかし、実際に行われた会話は告発文に載せた通りである。筆者の発言には不適切な言動はなく、筆者が不同意者への直接圧力を受けたことを客観的に正当化可能な説明は存在しない。
『採択会議の中ではレビュー観点には現れない「PyConらしさ」が採択の観点の一つになっていたことが窺われる。』と調査報告書に記載されている。
筆者は、ビープラウド社の利益を代弁する者から威圧による利益脅迫を受けたと認識しており、その帰結として、当該人物と利害関係がある者が提出した一部の予稿が採択に至ったと認識している。
恐喝行為の成否はカルチャーや文脈で左右されるものではなく、本来は構成要件に即した検証が必要である。調査報告書では検証はされておらず、ただ調査者らの「不死身の幻想」が展開されている。

c. 敵対者の不正を捏造することでの団体の正当化

調査報告書が告発者の不正として挙げた以下に対し、それぞれ反論を行う

(1) 告発者が採択会議中に採択結果を応募者に伝えた問題行為が発覚し、採択の公平性が損なわれた
(2) 告発者は「ただの白骨化した死骸である」とコメントを記載しておりCoC違反
(3) 告発者は「書いた人は脳みそが蕩けてるんじゃないか、とすら感じる」とコメントを記載しておりCoC違反
(4) 告発者は「『しょうもな』というのが感想でした」とコメントに記載しておりCoC違反
(5) 告発者にはヒアリングの実施が叶わなかったため、当該人物がどのように捉えているかについては確認ができていない
(1) 採択結果のリークが発覚し、採択の公平性が損なわれた

当該の主張はマインドガードの作用が捏造したものである。
まず、予稿の応募フォームのウェブサイトにはキャッシュ挙動に不備があり、画面の再読み込みを行うと一部の入力がデフォルト値に戻るときがあった。
おそらくそれを原因として、LT枠と通常枠を間違えて応募した予稿が確認され、それらに対する処置を会議中に確認したところ、審査対象外とすると進行役が回答した。筆者は投稿者本人への再確認をするべきだと主張した。筆者が投稿者らのSNSを確認するとオンライン状態であったため、会議にて「ダイレクトメッセージで投稿者に対し意思の確認をしたい」と提議を行い全参加者から異議が出なかったことから、今から連絡を取り回答が届き次第、共有すると全体に伝え、予稿の投稿者らに応募枠に関する意思確認を行った。連絡に対し即座に返信があったため、その返信内容を会議に共有した。
筆者は当該の行為が採択の公平性を損うものであったとは認識していない。もし仮にそれが問題行為であったのだとしても、筆者は適切なプロセスを踏んで全参加者の了承を得た上で外部に連絡を取ったのだから、問題行為の責は進行役を含むスタッフらが負うべきものであり筆者の責任ではない。

(2) 「白骨化した死骸である」

筆者がコメントを残した当該予稿の主張は次のようなものであった。
「投稿者は自然言語処理における画期的なアルゴリズムを発明した。それを用いた新しいビジュアライズを作成すれば文章理解が飛躍的に高まる。また、このアルゴリズムは計量経済学を含むあらゆる人文科学・社会科学に革命的進歩をもたらす」

しかし、投稿者が「発明」と称したアルゴリズムは、実際には1954年から知られる古典的手法 Bag-of-Words (BoW) であり、そのビジュアライズも、一般に tag cloud(または word cloud)として既知のものであった。tag cloud は2004年に企業CMで用いられたことで一時的に流行したが、実際に読み手に与えるのは「情報の理解」ではなく「印象操作」にすぎないことが即座に判明し、CM製作者からも「この手法を使うべきではない」と公表された経緯がある。
当該プロポーザルを他のレビュワーは「大発見だ」と高く評価していた。筆者は一応、説明を書き残した方がよいだろうと思い、以下のコメントを残した。{}内はコメント文単体で文意が通るように編集をした。

プロポーザルの内容としてまとまっている。

だが、技術面や応用面や社会にもたらす効果、という観点では評価できない。
機械学習系の分野では2つ以上前のパラダイムの時代、例えばseq2seqの時代の話はもう大昔だが、この提案はそこから更に5世代くらい前の話である。
彼が提案する{実質的にはtag cloudである手法}は{現代の手法}と比べると、実社会に与える影響力や応用可能性が極めて低い。
{投稿者の主張するある特定のデータ活用の想定事例}は{時流から甚しく乖離しており}、いわゆるビッグデータの活用などとも関わりがない。
社会への応用可能性が低く、持ち帰れるものが少なく評価できない。
入門者に関心を抱かせるテーマかもしれないが、それ以上のレベルには知見が広がるものではない。
独自性・新規性、という観点でいうと独自だが、ジャンルとしてビジネスとして成立しない強さの独自性である。
マイナーな試みを取り上げる、という観点で採択の議題に上がるかもしれないが、ただ永遠にマイナーなだけで技術・チャレンジ、社会に対するアプローチとしては化石。しかも『失敗』というラベルが貼られたものなので今、採択する必要はない。
もしここに、通時的構造の変化とか{...}とかそういう新規性が含まれ、アカデミックな文脈で評価できるのであれば検討の余地もあったと思うが、このプロポーザルは約20年前のアマチュアの趣味の水準でそこから進歩した形跡がない。ただの白骨化した死骸である。
私がこの手の話を最初に聞いたのは、Python2.5くらいのときで当時は再現実装するのにユニコードの取り扱いが大変だった覚えがある。今さら、冬ソナとかイナバウワーの話します?

古い、古くないを別にしても、この内容で計量経済学{などの諸学問体系}に革新をもたらすと主張するのは、率直にいって失礼。やってることは中学2年生の自由研究の水準であって昨今の計量系の論文を読んだことがある、もしくは昨今の高い水準のデータサイエンス教育を受けた人間が書くプロポーザルではない。現代の水準からかけ遠くかけ離れている。
著者が主張する「可視化によって情報を分かりやすくする試み」には価値があると思うが、このプロポーザルが提案する手法はそうした試みとは関係がないし、将来的にも結びつく余地はない。
事前知識がなくとも、{著者が提案する手法に本当に価値があるのか検討したり}、調べることをすれば、現代において、この手法に価値がないと看破することはできたはずなので、他のレビュワーはちゃんとレビューして欲しい。
Strong Strong Reject

(3) 「脳みそが蕩けてるんじゃないか」

筆者が当該のコメントを残した予稿は、一般社団法人PyCon JP Association会計理事であり、ビープラウド社所属の清水川貴之氏が投稿したものである。
清水川氏は投稿に際して違法行為をしており、それはここで他と併記するような事案ではないため詳細は個別に記載する。なお、清水川氏は2023年のPyCon APACに提出した予稿案を自ら公開している。2023/10 PyCon JP 2023 のトークネタメモ - 清水川のScrapbox
清水川氏が投稿した予稿は平均評価が低く、すべて採択審議ラインに到達していなかったが、ビープラウド名義で出版された本のサイン会を考慮し予稿は採択された。

(4) 「『しょうもな』というのが感想でした」

当該プロポーザルはビープラウド社の社員によって投稿されたもので、その主張は「Pythonには、正しいコードを書いてもバグが発生してしまう深刻な実装上の欠陥が存在する。それを新発見した」というものであった。

ただし、登壇内容の詳細については「雑誌の連載を転用する」としか記載がなく、筆者は当初、好意的なコメントを残し、後日その連載記事を確認した。その内容は「タイプヒンティングを誤った形式で記述すると、mypy が型推論に失敗する」という公知の現象を「新発見」として取り上げたものであった。Python公式ドキュメントでは、まさにその誤用例が「このような書き方をしてはならない」と明記されている。連載記事はその公式ドキュメントに記載された誤用を引用しながら、既知の事実を隠し「深刻な問題の新発見」と強調していた。
筆者はこの点を踏まえ、連載記事の内容に関する感想をコメントに追記した。他のレビュワーは依然として「PyConにふさわしい登壇だ」と最高評価を与えていた。

よいテーマだと思う。
こういう調べないとわからないノウハウには魅力を感じる。しかし、その部分のトークだけでよい。
なので5分のLTでよい内容だと思う。

追記(記事読んだ後)

「しょうもな」というのが感想でした。PythonやMypyのコア開発者にとっては対応するべき内容かもしれませんが(言語仕様として確立されてることなので対応する必要はないけど)、これをユーザーが知ってて役立つ機会、100万回に一回くらいだと思うし、知らなくても直せるし、正しくコード書いてれば直面することは論理的にない。

新発見でもなんでもなく、公式ドキュメントにも「正しく使え、さもなくば問題が出る」と注意書きされている、ただの仕様。投稿者のノウハウではなかった。
『問題ないコードなのに問題が起こってしまう』ではない。問題あるコードに問題が起きるだけ。
細かいこと語りたいのはいいけど、こんな大嘘つくのはちょっとありえない。私の{当該の雑誌}に対する信頼がなくなった。
この心象を抜きにしても、この内容は意味がないのでStrong Reject

なお、該当の予稿も清水川氏の予稿と同様に採択された。

(5) 当該人物がどのように捉えているかについては確認ができていない

筆者に対して上記のように調査報告書は述べているが、そもそも経緯として、最初に物的証拠を提示しながら団体側に共同調査を呼びかけたのは筆者である。しかし、その後の調査過程において寺田氏は、筆者と交わしたコミットメントを繰り返し破り、不誠実な対応を続けた。
また、調査委員会が私に通告した予定ヒアリング内容は「なぜPyCon JPに関与しようとしたのか」「告発者のバックグラウンドを教えてほしい」という調査目的とは無関係な質問であった。
それらに対する改善要求を出したが拒否されたため、ヒアリングへの参加要請は断らざるを得なかった。(なお、調査委員会に対し、寺田氏と筆者のメールのやり取りは無断で共有された)

⑤解題

(1)委員会編成の失敗

第一に、内部調査委員会と一般社団法人PyCon JP Associationの理事・スタッフは重複しており、利益誘導の構造が存在していた。
委員会の構成員は、文学部出身のセールスや採用人事の従事者であり、PyCon JP内での活動を自己の業務やブランディング活動としている人物らであった。
そのため、当該事案の検証に不可欠な以下の要件を満たす者は存在しなかった。

  • 議論や手続きを公平・中立に検証できる専門性
  • 団体の利害から独立して評価できる立場
  • 技術的な議論を適切に評価できる知見
  • 認知バイアスに配慮した調査の遂行能力

結果として、報告書には集団思考に起因する過度なバイアスが認められる。

第二に、調査者は団体から「女性活躍支援」を名目に、主催するイベントへの開催支援金や海外イベントへの渡航費補助を受けていた。さらに、調査対象である団体の理事に任命され、将来的に団体の社員とする趣旨の決議が提案された直後に調査を担当することとなった。すなわち、調査担当者は団体から金銭給付を受ける立場であり、また、将来の団体内での地位の保障が提供されており、そうした状況で行われた調査の独立性・公正性には深刻な疑義がある。

第三に、ヒアリング期間中には慰労会や飲食を伴う会合が頻繁に開かれ、ヒアリング対象者・調査委員会・被疑者が同席していた。利害関係者らが繰り返し接触し、内容調整を行いながら作成した報告書は「第三者調査報告」ではない。

https://media.connpass.com/thumbs/bb/02/bb02d4230925e6c30b841d850556346c.png

PyCon JP 2024主催メンバー打ち上げ - connpass
PyLadies Caravan & Python Boot Campミートアップ 2023 - connpass

(2) 当該コメントはCoC違反ではない

筆者はいずれのコメントも正当なものであったと考える。また採択会議や事前審査の過程において、当該コメントに関する注意や修正依頼を受けた事実はない。

また、筆者は事前に「強い主張をコメントとして残すことは他の審査者を威圧するのではないか」と懸念を運営スタッフに伝えていた。これに対し、担当者からは「客観的なコメントであれば正直に記載して問題ない」との回答を得ていた。
(cf. PyCon JPの技術に対する不正の告発、並びに技術者と大衆に対しての警鐘 #Python - Qiita

個別の指摘も、正当な評価に基づくものであった。たとえば、50年以上前に確立された手法(Bag-of-Words)を「新発見」と称し「諸学問に革命をもたらす」と主張する予稿に対し筆者は、それはすでに陳腐化した手法である、との見解を示して低評価を付した理由を明確にした。
審査中、当該予稿に対し意見を求められた際に筆者は次のように述べた。
「私は若手ではあるが、この分野で一定の知見と経験を有する専門家である。その立場から判断して、本提案手法には新規性は認められない」
これに対し、副座長の高井陽一氏は「それは偏見に過ぎない。根拠を示すべきだ」と反論した。

筆者は自然言語処理の可視化に関する分科会のURLを提示し、以下の説明を行った。
「この分野で新規性を主張するには、学生発表であっても一定の専門性が求められる。しかしこの予稿はその水準にも達していない。提案された手法は2000年頃に広く用いられたものであるが、現在では利点がなく使用されていない」

これに対し高井氏は「学会や専門家が評価していない手法であっても、それが無価値であると証明されたわけではない。そうでない可能性は残されている。あなたの論理は破綻しており、不採択の理由にはならない」と再度反論をした。さらに、PyCon APAC 2023コンテンツチームリーダーの小山哲志氏も「その通りだ。お前の発言は論理が破綻している」と発言した。
最終的には「mecabの使い方に関する話を聞いてmecabを使えるようになりたい」という意見が複数のスタッフから出され、座長の片寄里菜氏がそれに賛同したため座長権限で当該予稿は採択された。座長権限の採択は当該の一件のみである。

調査報告書は筆者のコメントを「他の専門家に対して不適切な行為に該当する」との理由でCoC違反と認定している。
しかし内部調査委員会、予稿審査会、レビュワーのいずれにも技術者や専門家は存在せず、当該コメントが適切な評価であったか否かを判断すること自体が不可能であった。

(3) 調査報告書は指摘された不正行為を無視し、捏造のみを繰り返している

大量の不正行為があったという筆者の主張に対し、それに対応した検証を行うのが調査委員会のあるべき姿であったと考えられる。実際の調査委員会の報告内容は、告発者である筆者の不正行為を新たに捏造する記述に終始し、筆者が告発した不正行為については調査を行ったか否かすら明らかにしていない。
回答が示されたのは、以下の二点のみであった。

a. 鈴木たかのり氏による不正なレビュー行為
b. 会議進行役による筆者への恐喝行為

しかし、この点に関する記述も極めて不適切である。報告書は「会議進行役が恫喝に近い『注意』を行った」とは認定しつつも、その人物が誰であったのかを特定していない。ただ「PyConらしさ」を体現する鈴木氏らが、「PyConらしさの継承」を実現するために強い権限を持っていた、と説明するに留まっている。さらに、ビープラウド社の報告によれば、当該人物は会議に参加していなかったとされており、それとは整合しない。
また、報告内容は全編に渡って典型的な集団思考に陥り、合理性が欠如していることから調査報告としての信頼性はない。

(4) 「PyConらしさの継承」について

以下は調査報告書の結論である。

3-2-3. PyConコミュニティらしさの継承 

PyCon JPではトークの採択にあたってスタッフ以外の外部レビュワーの参加を呼びかけるなど、 意図してオープンに多様な意見を取り入れる仕組みに取り組んでおり、これはPyCon JPの特徴のひとつであると言える。ただし、外部の意見を取り入れながらも、採択を最終的に決める権限は座長やコンテンツリーダーにあった。 
スタッフのうち、座長やリーダーの役割を担うようなリーダーシップを発揮するスタッフは長年運営に関わってきたメンバーが多い。また、日本におけるPyConというだけではなく、スタッフやレビュワーの中にはPyCon USやEuroPython、アジア各地のPyConや関連イベントに参加している者も多く、コミュニティ内の会話として「他のイベントではこうだった」といった情報が日常的に流通している。トーク採択にあたってはレビュー観点を設けて、できるだけ公平に判断できる仕組みを構築していた一方で、このようなコミュニティ内のコンテキストを含めた「PyConらしさ」が存在しており、採択会議の中ではレビュー観点には現れない「PyConらしさ」が採択の観点の一つになっていたことが窺われる。 
このようなコンテキストは、新しい参加者(レビュワー)に伝わりきれていなかった。 
PyCon JPはコミュニティであり、こういったコンテキストの存在やコミュニティとしての特徴やカルチャーを構成する一つの要素である。

調査報告書では「カルチャー」とされている、常態化した規則からの逸脱行為は「PyConらしさの継承」のためであり正当化される、と主張している。
また、誰を採択するかの最終決定権は座長およびコンテンツリーダーにあり、参加者の意見は表向きの審査項目とは関係がない、と主張されている。
しかし、実際の運用では、座長およびコンテンツリーダーでもなく、会議の進行役であった代表理事の鈴木氏(もしくは代表理事が取締役を務めるビープラウド社の社員)の独断で採択が決まった。

コンテンツリーダーの小山哲志氏はSlackの議論に一度も参加しておらず、採択基準に関する質問対応や告知は副座長の高井陽一氏が代行していた。
小山氏はPythonの実装経験や関連知識が全くなく、常に審査基準との整合性を欠く判断を繰り返していた。会議中に筆者が「どのような評価基準で審査しているのか」と確認したところ、小山氏は「俺は技術の話は一切聞きたくない。だから技術的内容を含む投稿の採択に一貫して反対している」と述べた。

不適切なコンテンツリーダーに採択権限を与えるべきではないし、実際にはコンテンツリーダーでも関係者でもない者が採否の結果をプロポーザルに一切目を通さず、独断で決定していた。
当該の採択プロセスは幾重にも不適切であった。

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