「夜職フェミ」「女衒フェミ」は左派フェミニズムの主流に躍り出るか?:作家から革命家まで
SNSでの「夜職フェミ」「女衒フェミ」の勃興
近年、夜職スカウト――女性を水商売や風俗に斡旋するのが仕事の、昔ながらの言い方をすれば女衒――がインフルエンサーとして台頭しており、「ツイフェミ」として認識される勢力のなかでも一番大きな集団を形成しつつある。こういった傾向は数年前から確認されており、私の2023年の記事でも指摘していたが、この数年は「女衒フェミ」という名称が定着しているように思う。
バズるとリプにぶら下がりで「稼ぐならこのアプリ」みたいなダイマがつくのはよく見ると思う。イケメンへの推し活やハイブランド購入を煽る(得てして非イケメンや安ブランドを過剰にディスる)女性風アカウントは、女性を売春に沈めたい業者による煽りが混じっているのは注意が必要だろう。
代表格である「パキちゃん」の旧アカウントや「おめぐ」(凍結済み)あたりは固定ツイでおおっぴらにパパ活アプリへの誘導を書くなり性産業のスカウトと公言するなりしており、「友達を、売ろう」というキャッチコピーのアプリを紹介していたりするので、このあたりを「女衒」と呼ぶことに差支えはなかろう。なお、これらのアカウントの運営者については下記の漫画のように風俗スカウトの男であると考える人が多く、今までも部屋の写真や性病検査の結果写真などのポストで男説がよく取りざたされている。
5年前の記事を見てみると小宮友根やら清水晶子やら千田有紀やら学者フェミニストが男女論壇の中心にいて3~4桁のリツイートを得ていたが、今や彼女らはすっかり後退して1~2桁がせいぜいとなり、4~5桁リポストの常連は女衒フェミになっている。
女衒"フェミ"である理由
これらのアカウントは「女衒フェミ」と呼ばれているが、性産業は女性から性的収奪の最たるものして扱われており、中身も男ではないかと疑われているのにそう呼ばれるのは不可解という人もいるだろう。しかしながらいわゆる男女論の中心に座し、しかも間違いなくフェミニズムである。
例えば作家の小野美由紀は自他共にフェミニズムの要素が入っているとする作品を書いているにも関わらず、彼女が夜職スカウトであると知ったうえでファンであり「風俗やパパ活に否定的…じゃないフェミニスト」と公言したことはかなり驚きをもって迎えられた。だが彼女は決して例外ではない。これらのアカウントは10万の桁のフォロワーを抱え、夜職に限らず女性から幅広く支持を得ている。仮に男によるエミュレートでしかないとしても、多くの女性が共感し、効率的にスカウト活動につながるからこそやっているのである。
女衒フェミや夜職フェミの主張の内容は、偏見を恐れずに言えば大量リポストを獲得しやすいのは「男は女に金を払え」「いい男、メロい男に夢中、キモい男、弱男は近寄るな」の2種である。このあたりは夜職女性でなくとも、人口割合的に多い婚活女性界隈ないし主婦がこの内容に共感しやすいため大きくなりがちである。他に流行りものに手を付けることも多く、最近は絵にかみついている人やTERF的主張、男児叩きも少なくない(男児叩きは韓国過激フェミニズムのメガリアでもそうだが)ので、炎上しやすいということもあるだろう。
女性の自立を言ってきた20世紀のフェミニズムの終着駅がこれか、と嘆く人も多かろう。夜職も昔は「生活に困窮して身を売らざるを得なかった被害者」という枠でフェミニズムが扱うことも可能だったが、近年の報道(例1、例2)から①動機の大半がホスト遊び、整形手術、ブランド物購入などであって生活困窮等で売らされたわけでないこと、②コロナ禍以降の国内需要の減少に伴い海外遠征売春が急増し積極的に買い手を求めていることなどから、受け身の被害者としての描像も成り立ちにくくなっている。これらは最近の傾向ではあるが、100年前に与謝野晶子が似たようなことを言っているので、実は昔から変わらないのかもしれない。
私娼とてもこれを奨励するのでなく、むしろ出来るだけ減少せしめようとするのであるから、政府が売淫周旋業者が悪辣な手段を用いて純良な処女を欺き、その意志に反した売淫を行わしめるような行為を防止し、それを犯す者は厳しく罰することも必要である。今日はどん底まで糊口に窮して売淫する悲惨な女は尠い。太抵は労働を避けて些細な物質的贅沢の中に遊惰な日送りをしようとすることが動機であるから、政府は世の社会改良家、教育者、慈善家と共に、それらの無智な女に勧めて何らかの正しい労働に服させるような方法を講じ、出来るだけ下層階級の女の堕落を防ぐべきである。
女衒フェミの「その次」:レンタル怖い人
しばらく前に「レンタル怖い人」なるサービスが宣伝され、3.5万リポスト、30万いいねという破格の記録を出した。リポストの波の前半は肯定的、後半は否定的といったところだが、仮に肯定が1/4に過ぎなかったとしても1万近くが肯定的にリポストしたことになり、これでも破格である。
当たり前だが否定的なほうの反応も大きく、バズった当日には、すぐにコミュニティノートで特定商取引法に基づく表記がないことが指摘されたほか、反社会的勢力に関する著作で知られるフリーライターの鈴木智彦氏が「俺はものすごく抵抗あります」と言及するなど、問題が指摘されている。その後の記事でも当然ながら弁護士からその両面が指摘されている。
森實法律事務所の森實健太弁護士に話を聞いた。
「通信販売事業者として特定商取引法の適用があると考えられるため、そうした場合、原則として事業者の氏名(名称)、住所、電話番号等の表示が必要となります。これに違反した場合は、行政指導、社名公表や業務停止等の行政上の措置を課せられる可能性もあります。 インターネット上には脅迫等の違法行為はしないとは書いているものの、スタッフの言動等によっては、恐喝罪等が成立することも考えられます。また、民事でも場合によっては脅迫による意思表示の取消等も考えられます
この宣伝アカウントであるが、①女衒活動 ②ミサンドリー寄りのいわゆる「ツイフェミ」言動 を繰り返してきた典型的な女衒フェミである。それが ③「レンタル怖い人」の広告 をポートフォリオの一つに加えてきた格好である。女衒と民事介入の両方をやっているという点で運営母体が同じなのは不思議ではない、というような声も少なからずあった。
私人逮捕系Youtuberの時もそうだったが、女性に「一見すると自分の味方っぽい暴力」に強く惹きつけられる人が一定割合いて、「私だけに優しいヤクザ」ものはかつてのレディコミあたりの時代からのド定番でありつづけていて、その手の人には夜職は「いいお客」なのかもしれない。
夜職フェミの「その次」:全学連の革命闘士
最近「警察庁が『極左暴力集団』と呼ぶ『中核派全学連』に初めて女性委員長が誕生した」という記事が出た(署名記事だが、過去履歴を見る限り活動家の類にシンパシーを抱く記者のようだ)。その記事の中で、整形中毒だった過去があり夜職で働きながら全学連の闘士として参加している女性(委員長ではない)が出てくるが、現代の夜職フェミに典型的な履歴を持っているようだ。
一方で、これまでの環境により自己肯定感が低かった。高校卒業後は整形手術を繰り返し、総額400万円ほどを費やした。だが全学連と出合ってからは、外見の美しさや美意識を押しつけ高額な医療費を負担させる社会のあり方に疑問を抱くようになり、一度も整形をしていない。
現在はSMクラブでいわゆる「女王様」として働きながら、全学連の活動を続ける。この仕事を選んだ理由は、高収入を得られ、身体的接触がなく男性に媚びずに済むため、自らの主体性を保てると感じたから。この働き方は、夜間労働や不安定な仕事を強いられる多くの女性労働者の現状とも重なる、という。
この人は自発的にやっており、女衒フェミのような男の騙りと言える要素もない。間違いなく女による女のための「夜職フェミ」である。それが夜職のまま(大学を中退したとはいえ)学生運動をやっているわけだ。
フェミニストを自認される方は「女衒フェミはフェミニズムの名を騙る偽物」と思う方も多かろうが、このように女による女のための夜職フェミがあり、女衒フェミはそのエミュレーションであることを考えると、これら夜職・女衒フェミが左派フェミニズムの本流の座に登るため着々と地歩を固めている段階であるように見える。歌舞伎町で活動していることを売りにしている左派フェミニズム団体もあり、「あれは例外」と言っていられる段階ではないのだ。
p.s.
念のためだが、「外見の美しさや美意識を押しつけ高額な医療費を負担させる社会のあり方」というのはむしろ女性コミュニティ内での圧のほうが強いことは別項でも書いている。下記記事ではコルセットはその全盛期、男は気持ち悪がっていて女社会の中でだけもてはやされていたという話を紹介したが、ふくらはぎ神経遮断手術(さすがに例外的らしいが)を大半の男が気持ち悪がる中、現代の纏足などと言われており、男の関係ないところで行われるルッキズム競争のほうが過激であることはご承知いただきたい。
フェミニズムが女性を解放したら、整形と売春が大流行してるの、寓話的ですね。なぜ「パターナリズム」や「男尊女卑」が必要だったのか、答え合わせをしてるのが令和です。
「太抵は労働を避けて些細ささいな物質的贅沢ぜいたくの中に遊惰ゆうだな日送りをしようとすることが動機であるから」「何らかの正しい労働に服させるような方法を講じ」 こういうやり方…
与謝野晶子が与謝野晶子を引用している