ガザ戦争への対応めぐる抗議、イタリア各地で発生 警官との衝突も
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イタリア各地で22日、数千人がパレスチナ・ガザ地区での戦争に対する抗議活動を展開した。労働組合がこの日を、パレスチナへの連帯を示す日に設定していた。抗議活動では警官との衝突も起きた。ニューヨークの国連本部では同日、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が、パレスチナ国家承認を正式に発表した。
22日のストライキには、教師や港湾労働者、学生らが参加し、全国80の町や都市で展開された。ミラノとローマで、特に大勢が集まった。ミラノ中央駅周辺では緊張が高まり、警官約60人が負傷したと報じられている。
公共交通機関にも広範囲で混乱が生じ、リヴォルノやジェノヴァの主要な港も影響を受けた。ミラノでは主要な地下鉄路線が閉鎖され、トリノやボローニャでは学生が講義棟へのアクセスを遮断した。
フィレンツェ、バーリ、シチリア島パレルモでも抗議活動が起き、「パレスチナを解放せよ」、「すべてを封鎖しよう」といったスローガンが掲げられた。
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ミラノとローマの鉄道拠点の周辺では、最大規模の群衆が報告された。ローマのテルミニ駅には少なくとも2万人の抗議者が集まった。
ミラノ中央駅の外では、ガザでの停戦を求める抗議者がアメリカ国旗に火をつけるなど、衝突が起きた。抗議者が駅構内に入ろうとした際には、黒装束の小さい集団が石や発煙弾などを警官に投げつけた。
ボローニャでは主要な環状道路が封鎖され、警官は放水砲や催涙ガスを使って抗議者を解散させた。
ミラノのジュゼッペ・サラ市長は、破壊行為は正当化できるものではなく、「ガザの大義にもまったく寄与しない」と述べた。
イタリアの閣僚らは、警官が攻撃されたことに強い憤りを表明。ジョルジャ・メローニ首相は、ミラノの状況は恥ずべきものだと非難し、「暴力と破壊は連帯とは無縁の行為で、ガザの人々の生活に何ひとつ変化をもたらさない。むしろ、イタリア市民に明確な影響をおよぼすことになる」と述べた。
メローニ首相はガザ戦争への立場をめぐり、政敵から批判されている。メローニ氏はイスラエルによるガザ攻撃について、批判的な姿勢を強めているものの、フランスのようにパレスチナ国家を正式承認するには至っていない。
イタリアのメローニ政権は最近、存在しない国家を承認するのは「逆効果」になるとの見解を示していた。メローニ氏がイスラエルに関する自分の立場を議会で説明していないことに、左派の政敵は激怒している。
21日にイギリス、カナダ、オーストラリアがパレスチナ国家を承認すると発表した一方で、メローニ首相が国営放送RAIで祖父母との思い出の食事について穏やかにインタビューに応じていたことに、イタリアの中道左派の野党「民主党(PD)」のエリー・シュライン党首は不満を漏らした。
フランスはパレスチナ国家承認を発表
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エマニュエル・マクロン仏大統領は22日、パレスチナ国家を正式承認するという自国の決定は「必要な」対応だと述べた。
イギリス、カナダ、オーストラリア各国に続くかたちで正式承認を発表したマクロン氏は、この動きが「政治的プロセスと、すべての人々のための平和と安全の計画の始まり」になるだろうと述べた。
仏政府は、ベルギー、マルタ、ルクセンブルクなどの国々からも支持を得ているとしている。一方で、主要7カ国(G7)のうちイタリアとドイツは同調していない。
イスラエルは、ハマスへの報酬になるとしてマクロン氏の決定を非難している。イスラエルの国連大使は22日の動きを大騒ぎと形容した。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ヨルダン川西岸の西側にパレスチナ国家は存在しない」と強調し、イツハク・ヘルツォグ大統領も国家承認は「闇の勢力を勢いづかせるだけだ」と批判した。
フランスのジャン=ノエル・バロ外相は、今回の決定は「ハマスへの断固たる拒絶」であり、マクロン氏による宣言は「我が国にとって大きな外交的勝利」だと述べた。
スペインやノルウェーなど多くの欧州諸国はすでに、パレスチナ国家を承認している。
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マクロン大統領の発表に先立ち、パリでは21日夜、エッフェル塔にパレスチナとイスラエルの旗が掲げられた。フランス各地の複数の市庁舎も22日にパレスチナの旗を掲げたが、政府は地方自治体に中立を保つよう指示している。
マクロン氏の今回の発表に、仏国内の一部の政敵からは批判が上がっている。
極右政党「国民連合」のジョルダン・バルデラ党首は、パレスチナ国家の承認は「ハマスが依然としてイスラエル人人質を拘束している状況では間違っている」とし、「イスラエルが経験した史上最悪の攻撃である、2023年10月7日の残虐行為に報いることに等しい」と述べた。
欧州連合(EU)当局はここ数週間、イスラエルに対する発言を強めている。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は先週、「ガザで日々起きている恐ろしい出来事」を終わらせるべきだと訴えた。
欧州で特に緊密にイスラエルと連携するドイツのフリードリヒ・メルツ首相も、イスラエルの軍事対応に対して次第に批判的な姿勢を取るようになっている。
それでもドイツ政府は、パレスチナ国家承認は現時点では議論対象ではないという姿勢をとっている。ヨハン・ヴァーデプル外相は22日にニューヨークへ向かう際、「ドイツにとって、パレスチナ国家承認は(和平)プロセスのもっと終盤で行うものだ。しかし、そのプロセスは今すぐ始めなくてはならない」と述べた。