熊本県最低賃金、1034円に決定 審議会が異議退ける 2026年1月1日発効
熊本地方最低賃金審議会(会長・倉田賀世熊本大教授)は22日、2025年度の熊本県の最低賃金を時給1034円に改定する審議会の答申に対する異議申し出3件を退けた。全国最大の82円引き上げが決まった。改定額は10月2日に官報公示され、来年1月1日に発効する。 答申に対しては、県経営者協会など経済関係4団体が使用者側としては異例の異議申し出を行い、「引き上げ額の根拠に疑義がある」と主張。労働者側も、県労連と県医労連が「来年1月の発効は労働者が不利益を被る」などと再審議を求めていた。 審議会では、改定額の再検討の是非で意見が分かれ、会長を除く13人の出席者で採決。再審議すべきとする委員が使用者側の5人、不要とする委員が労働者側と公益代表の8人となり、異議申し出を退けた。発効日の再検討を求める意見は出なかった。 終了後、使用者側委員の原山明博・県商工会議所連合会専務理事は、消費者物価指数のうち食料費が上げ幅の根拠とされたことに疑問が残るとし、「最低賃金の大幅な引き上げに対する事業者の危機感は大きい」と訴えた。労働者側委員の山本寛・連合熊本事務局長は「今回の引き上げが物価高に追いついているとは言えない」と話した。
倉田会長は「経営者側への影響の大きさは受け止めた。企業が賃金支払いができるよう支援、補助が必要だ」と述べた。 審議会は、金谷雅也熊本労働局長に対し、中小企業や小規模事業者が継続的に賃上げできる環境整備も求めた。(横川千夏、古東竜之介、関本百合恵) ●経営者から悲鳴、労働者側は時間抑制の不安も 熊本県の最低賃金が年明けから1034円に引き上げられることが決まった。全国最大の上げ幅82円に、原料費高騰や8月の記録的大雨の影響で苦しむ経営者からは悲鳴が上がる。一方、働く側は大幅アップを歓迎するが、労働時間を抑制される不安も。さらなる物価高の進行も懸念する。 熊本市内に3店舗を展開する飲食店「銀シャリ亭」。10月から、アルバイトのスタート時や高校生の時給を1036~1111円に引き上げる予定だ。1店舗当たりの人件費の増加分は、年間100万円を超えるという。 米代の高騰も著しく、10月は平均40円ほどの値上げにも踏み切る。荒木雪社長は「賃上げは悪いことではないが、ここまで上がるとつらい。商品の値上げも心苦しい」と打ち明ける。