Chronicoとは
Chronico は、Bluesky上に投稿するあなたの作品を守りやすくするためのサービスです
Chronico を使って イラストなどの作品画像を Bluesky への投稿をすると、
画像に電子透かしを埋め込んで、どの投稿で公開された画像なのかを示す来歴情報を生成・公開してくれます。
こんな見た目のサービスです。
なぜ作ったの?
背景
イラストや写真などの作品をSNSなどのインターネットで公開することは、良いこともたくさんある反面、次のような懸念もあります。
- 無断利用: 作品が、許可なく他者のウェブサイト、SNS、出版物などに利用されてしまう
- 無断改変: 作品の一部を切り取られたり、色を変更されたりするなど、著作者の意図に反する形で改変(同一性保持権の侵害)されてしまう
- 盗作: 第三者が、著作物を自らが作成したかのように公表(氏名表示権の侵害)されてしまう
- 学習: 生成AIで取り扱えるよう学習に利用されてしまう
著作者は、こういった懸念の予防策として次のような対策を行うことがあります。
- サイン: 銘を入れて著作者がわかるように表示をする
- ウォーターマーク: 無断利用や改変・盗作などをしないよう意思表示をする
- ノイズ: 利用や学習を阻害するノイズやクラッター、QRコードを入れる
生成AIが登場してからは前述の 学習
に対して、技術的に有効性があるとされる ノイズ
の利用に関する話題を目にする機会が多くなりました。有効性の程度や真偽はともかく、生成AIという技術に、人の努力と心がけではなく簡単に利用できる技術で対応しようとする構図になっています。
一方で、無断利用
と 無断改変
に対しては、サインやウォーターマーク、公開時に注意書きを添える方法が一般的な対策なので、人の努力と工夫だよりで負担が減らしにくいです。
多くのクリエイターは 創作に努力と工夫をしたい のであって、権利保護のための取り組みに努力と工夫をしたいわけではありません。
もっと楽に、無断利用や改変を予防する目的で使ってもらえる技術があれば良いと思いました。
発想
無断利用
と 無断改変
を予防するには、電子透かし
(ウォーターマークと呼ばれたりもします) を画像に埋め込むことが有効です。
電子透かしは大きく分けて以下の2種類があります。
- 透かし(ウォーターマーク)やサイン: 人が目視して内容を理解できる文字や絵を透かしとして絵に乗せたり、添えたもの
- 電子透かし(デジタルウォーターマーク): コンピュータが読めるデジタルデータを埋め込んだもの
前者の透かしやサインは、努力と工夫をすれば使うことができますし、おしゃれなデザインのウォーターマークを作って使う事で、それ自体を創作にされているクリエイターさんもお見かけします。また CLIP STUDIO PAINT や Photoshop などの著名なアプリは、ウォーターマークを楽に入れられる機能を備えています。このため、わざわざ仕組みを作る必要は無いと思いました。(実は、電子透かしではなく透かしを入れるサービスを作ってみたのですが途中で思い直してやめたことがあります)
しかし、後者のデジタルウォーターマークを入れて、無断利用
と 無断改変
から自衛する用途で簡単に使うことができるツールやサービスはあまりない事がわかりました。
SNS に作品を投稿するクリエイターさんは多く、無断利用
と 無断改変
の問題もSNS上で話題として多く見かけますので、Bluesky 上で電子透かしを入れて投稿できるサービスを作ってみようと思いました。
対策
このため、以下の機能をあまり労力を使わずに使ってもらえるサービスとして開発したものが Chronico です。
- Bluesky に電子透かしを埋め込んで画像を投稿できる
- 投稿時に画像の来歴ページを作成し、電子透かしから辿れるようにできる
- 画像の電子透かしに埋め込まれた来歴ページを表示できる
- 画像が改変されても電子透かしが失われにくい
Blueskyを使う理由
電子透かしから来歴を辿れるようにする仕組を、専用のサイトを作って呼び込むことはせずに、クリエイターさんが作品公開の場として普段使いしているSNSの利用と紐づけて提供する事が、この機能の特徴です。
Bluesky は、運営のされ方や機能は頻繁に変化していくでしょうが、技術仕様は公開され大きな変更は事前に予告がされてきており、他のSNSほど運営側の都合で一方的・急にサービスを利用不能にされてしまう心配が低いです。また、開発者向けの機能も無料で利用できるので、試作や利用が少ない段階では無料提供できる形で開発ができます。運営や開発元も、クリエイターさんをリスペクトし好意的に見受けられるなどの点から、他のSNSよりも向いていると思いました。
利用技術
当アプリでは、電子透かし技術に Adobe が開発した Trustmark を利用しています。
Adobe Content Authenticity が利用する コンテンツクレデンシャル という考え方を推進する CAI という活動の中で、Adobe社が開発した技術です。当アプリでは、このTrustmarkを オープンソースソフトウェアとして公開されたもの を利用しています。
当アプリでは、編集されても失われにくいウォーターマークの付与を可能とする目的で Trustmark を活用しています。
この技術を使ってできること、できないこと
Trustmark は本来、metadata, watermarking, fingerprinting の3要素で耐久性を実現することができる技術ですが、当アプリでは fingerprinting の要素は実現していません。
このため、次のことができます。
- ✅ 編集や改変による失われにくいウォーターマークを付与する
- ✅ ウォーターマークに埋め込まれた情報からどのBlueskyユーザーのどの投稿で公開された画像なのかの証明する
しかし、本来 Trustmark 技術を使って可能になる次のことはできません。(身分証明や個人情報の提示を頂くような仕組にしていないため)
- ❌ ウォーターマークに埋め込まれた情報が嘘ではないことを証明する
- ❌ ウォーターマークから作者の本人証明をする