「日本の高額献金、韓国に」旧統一教会総裁逮捕、2世ら実態解明要求
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の韓鶴子(ハンハクチャ)総裁(82)が韓国の特別検察官に逮捕された。尹錫悦(ユンソンニョル)前大統領の妻や側近への不正な金品授与に関与した疑いがある。教団では、日本の信者の献金が韓国に送られてきた構図が指摘される。解散命令の是非が東京高裁で審理される中での教団トップ逮捕に、実態解明を求める声が上がった。
「教団にとって大きな転換点を迎えたと思う」。教団のもと合同結婚した両親の間に生まれ、2世として育てられた30代男性は、韓氏の逮捕についてそう話す。教団側が用意した漢字が使われた本名に生きづらさを感じ、「野浪行彦」という通称名で生活する。
韓氏、「信者の中ではカリスマ的存在」
幼い頃から、自宅に飾られた教団創始者の文鮮明(ムンソンミョン)氏と韓氏の写真に向かい、土下座の姿勢で祈りを捧げさせられた。小学5年生のころにブラジルでの教団行事に参加し、両氏と一緒に写真を撮ったこともある。韓氏と言葉を交わした覚えはないが、信者の中ではカリスマ的な存在だった。野浪さんは「逮捕によって現役の信者たちが衝撃を受けていることは間違いない」と言う。
2世として育った別の30代男性は「逮捕は当然の結果ではないか」と話す。2022年7月の安倍晋三元首相銃撃事件で注目されている中でも、教団は信者から多額の献金を集め続けていたという。「組織として反省する姿勢は一切見えなかった」
東京地裁は今年3月、教団に解散を命じる決定を出した。地裁は、教団の信者が遅くとも1980年代以降、困難な事情を抱える人に生活を維持できなくなるほどの献金をさせたと指摘した。教団は即時抗告し、東京高裁で審理が続いている。
献金、「教団の身勝手な影響力拡大のため違法に使われた」
「全国統一教会被害対策弁護団」は23日、声明を発表し、献金について「日本の被害者に戻されるべきものであり、韓国において教団の身勝手な影響力拡大のため違法に使われていたなどというのは言語道断」と指摘。「教団の日本法人だけでなく、韓国の教団本部も日本の被害者救済のため責任を果たすよう求める」と訴えた。
韓国の特別検察には「日本からの資金の流れや日本法人への指示なども含め、教団の日韓両組織の実態や違法・不正行為の内実についても徹底的に解明するよう強く期待する」とした。
「全国霊感商法対策弁護士連絡会」(全国弁連)も声明を発表。捜査を「教団が日本での資金力を背景に、政治家に不当な手段で影響力を行使しようとした実態を解明しようとするもの」とし、日本でも教団と政治の関係の徹底調査を求めた。
「韓国検察の本気度を感じる」
教団を長年取材してきたジャーナリストの鈴木エイトさんは「幹部の逮捕だけではなく、韓氏の逮捕にまで至ったところに、特別検察の本気度を感じる」と話す。
安倍氏銃撃事件で殺人などの罪に問われた山上徹也被告(45)は警察の調べに、19年10月に韓氏が来日して愛知県での教団イベントに出席した際、「襲おうと思って会場まで行った」と供述。警備で断念し、「教団と深い関わりのある安倍氏を撃った」と供述したとされる。山上被告の初公判は10月28日に予定される。
事件をきっかけに自民党を中心とした政治家と教団とのいびつな関係が浮かんだが、鈴木さんは、全体像は依然として明らかになっていないと指摘する。「(韓国では)教団による政界工作が摘発されるところに、日本との違いを感じる」
教団の日本組織は韓国本部からの上意下達の構造だといい、鈴木さんは「韓氏の逮捕によって指揮系統の乱れから教団運営には混乱が生じる可能性がある」とみる。「短期的には国内の結束が強まるが、その後は脱会者が増えるのではないか」と言う。
教団の日本本部は取材に「このような事態となったことは誠に遺憾。当法人としては、韓総裁のご健康を深く心配しており、一刻も早く釈放されることを願っている」などとコメントした。
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- 【解説】
旧統一教会の現在のトップ・韓鶴子氏の逮捕。もちろんまだ「逮捕」段階であって有罪と決まったわけではありませんが、いずれにしても教祖の妻、教団のトップとして多くの人の人生に大きな影響を与えてきた人物です。その教団の2世に「逮捕は当然の結果ではないか」とまで言わせてしまうような教団と指導者のあり方とはいったいどういうことなのか、あらためて考えてみる必要があると思います。 そしてまた、全国統一教会被害対策弁護団・全国霊感商法対策弁護士連絡会の声明などにもあるように、結局は、韓国・統一教会と韓氏のこうしたさまざまな活動やふるまいは、日本からの献金と積み重ねられてきた被害などに大きく下支えされてきたものだという視点も決して忘れてはならないでしょう。
…続きを読む - 【視点】
人々を食い物にして財や権力をほしいままにしようとするこの教団と政治家との関係に対して、韓国の特別検察官は一切容赦しなかった。それこそがまっとうなあり方である。他方で日本はどうか。 高額献金や合同結婚で一生を破壊された人々が多数にのぼるにもかかわらず、特に政治家との関係に関する追究や解明はきわめて緩くぬるい。政党や政治家に対する団体や個人からの金品や便宜の供与に対して、不正な「賄賂」とみなすかどうかの基準の相違が根本にあるのではないか。マスメディアの上層部が政権党の議員や閣僚と飲食を共にすることさえ禁忌とされていない日本では、権力の専横への監視や牽制の機能はきわめて弱い。何を政府の責任とみなすかについてもきわめて甘い(参考:https://honkawa2.sakura.ne.jp/5184.html)。 国政選挙において自民党は後退傾向にあるとしても、他のより悪質な政党に別途依存するのではこの国の将来に何の希望もない。賄賂も嘘も差別も、許してはならないものは許してはならないという、単純な立脚点の徹底から図らねばならない。そこからですか、と嘆息する。
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