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二次元裏@ふたば

画像ファイル名:1748187738153.png-(672924 B)
672924 B25/05/26(月)00:42:18No.1316625975そうだねx7 04:12頃消えます
心臓が激しく動いて、身体が熱い。
血と気持ちが一箇所に集まって、顔が焼けるよう。
胸の内にある空気を全部吐き出したようで、息継ぎをするみたいに息を吸う。
「はぁっ…はぁ…」
横に佇む祥ちゃんを見た。
にこりと私に向かって微笑んでくれて、涙が出るほどホッとする。
「燈も叫べましたわね」
「……う、うん…! い、言えたっ…!」
私の内側でずっとずっと抱えていたものが、歩道橋の上、沢山の車が流れていく向こうへ飛んでいった。
けれどすぐに車の音によってかき消され、透明な叫びはもう無い。
祥ちゃんが微笑みながらうんうんと頷く。
「その調子ですわ。このまま歌ってしまいましょう」
「えっ!?」
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
125/05/26(月)00:42:35No.1316626076+
歌えないままバンドの練習が終わった夜。
私の家の近くまで祥ちゃんといっしょに歩いて、そして歩道橋の上で立ち止まって。
ここでなら誰も聞いていないから、と私なんかの背中を押してくれて。
そうして、人間になりたいと叫んだ。
それだけで私の足は立っているのもやっとなくらい震えているのに、歌う…。
「叫べたんですもの、歌うなんて簡単ですわ」
「で、でも…」
ごうごうと車がすごいスピードで通り過ぎていく。誰も私の声を聞いている人はいない。
それが分かっているのに、私はそんなこと出来ないと思う。
みんなの前で歌うことすら出来ないのに。
私は欄干をぎゅっと握った。
「燈は恥ずかしいのですか?」
「ぇ…」
「それとも、怖いの?」
「……分からない」
225/05/26(月)00:42:55No.1316626222+
この場で私を見ているのは祥ちゃんだけで。
足元の車は1秒もしない内に視界の外へ走り抜けて。
その走る音でか細い声は消えてしまう。
なのにどうして歌えないんだろう。
分からなくて首を振った私を見て、祥ちゃんはふむ、と少しだけ考える。
そうして、またにっこりと笑ってなんでもないように言い放つ。
「それじゃあ、私と歌いましょう」
「祥ちゃんと…?」
「ええ。一人で歌うのが心細いなら、私と歌えばいいですわ」
「…うん」
どうしてか分からないけど、それなら出来る気がした。
恥ずかしくて、怖くて、心細いけど、祥ちゃんとなら。
私は早速カバンからノートを取り出して広げる。
「え、えと…『人間になりたいうた』?」
けど、祥ちゃんは首を横に振る。
325/05/26(月)00:43:27No.1316626396+
「それは燈が歌うべきものですわ。私と一緒ではなく」
「ぁ…」
じゃあ、何を歌えば良いんだろう。流行りの歌なんて何も知らないのに。
「燈、キラキラ星は知っていまして?」
「う、うん…知ってる」
「じゃあ歌いますわ。せーの…」
祥ちゃんは私の手を引くように、音頭を取ってくれた。
いきなりのことで私はあわあわしてしまって、そしたら祥ちゃんが私の背中にそっと手を当ててくれた。
大丈夫ですわ。隣りに居ますわ。
そう伝えてくれるように。
『きらきらひかる おそらのほしよ──』
そしたら声が自然と出てきて、その声は歌声になった。
『まばたきしては みんなをみてる──』
歌声が重なって、車の音にかき消されながら伸びていく。
『きらきらひかる おそらのほしよ』
425/05/26(月)00:43:40No.1316626468+
歌い終わって、私はたまらず祥ちゃんを見る。
歌えた。声が出せた。
さっきまで胸の内にあった重たかった気持ちは消えて、違う気持ちに代わっていた。
祥ちゃんは私に笑いかけてくれる。
「歌えましたわね、燈」
「うん…! 歌えた…!」
「ええ!」
眩しくて、温かい笑顔。
夜でもそれは確かに輝いて、縮こまっていた私を照らして勇気づけてくれる。
私でも歌えるんだ。そう思わせてくれる。
「それじゃあもう一回行きますわ!」
「え?」
525/05/26(月)00:43:55No.1316626575+
「きらきらひかる──」
聞き間違いじゃなくて、祥ちゃんはすぐにまた歌いだして。
一緒に歌おうと声をかけてくれた祥ちゃんを一人にさせたくなくて、私も慌てて歌い出す。
『おそらのほしよ──』
それからもう一度、キラキラ星を一緒に歌った。
歌い終わって、力が抜けそうになって欄干を掴んでもたれかかる。
ようやく心臓が痛いほど脈打ってることに気付いた。
「ど、どうして…もう一回…」
祥ちゃんはちょっとだけ申し訳無さそうに、けれど上気した顔で笑った。
「燈。歌うことは未だ怖い?」
「ぇ…えと…」
祥ちゃんにそう言われて、私はすぐに答えられなかった。
怖い気持ちは未だある。現に今も足が震えて力が入らない。
625/05/26(月)00:44:13No.1316626680+
「怖い…だけじゃ、なくて…」
けど、それとは違う、正反対の気持ちがあって。
「分からないけど…ドキドキして…身体が浮くようで…」
歌っている間はなにかが私の中から紡がれて、歌声に乗せて飛んでいくような感覚。
その感覚に引っ張られるように、次へ次へと歌が気持ちが溢れてくる。
じわりと視界が滲んだ。
「燈、その気持ちを忘れないで」
優しい声で、祥ちゃんはまた私の背中にそっと触れた。
「このまま、『人間になりたいうた』を歌いましょう」
「……うん」
725/05/26(月)00:44:27No.1316626770そうだねx1
私は自分の胸に手を当てて深呼吸した。今なら歌えると、そう思えた。
この鼓動が、背中から伝わる温かさが、隣に居てくれる眩しさが。
全部全部、溢れて歌になりたがっている。
スッともう一度だけ息を吸って。
「自分はここにいない 居場所がないって──」
そして私は、一人で歌い出した。

──過ぎ去った、分かれ道の前、春の夜のお話。
825/05/26(月)00:56:30No.1316630643+
禁断のきらきら星二度打ち…
925/05/26(月)01:03:58No.1316632639+
光の祥子すぎてつらい…
1025/05/26(月)01:05:51No.1316633078そうだねx3
ともさき美しい…
美しかった…
1125/05/26(月)01:10:39No.1316634262+
いつもクライシック話書いてくれてる「」か…
助かってはないけど助かる
1225/05/26(月)01:12:35No.1316634744+
なんかもうどんな顔で祥子が歌ってるのか想像つくくらいの光
1325/05/26(月)01:20:22No.1316636649+
光の祥子はこういうことする…
1425/05/26(月)01:57:01No.1316643934+
すごい良かった
良かったけどその分ダメージがデカいな…
1525/05/26(月)01:59:28No.1316644274+
こんな風にいつまでも支えてくれそうな子が今もう隣にいない


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