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くすぐりRPG 40. 海底ダンジョン攻略 (3)/Novel by SwastikA

くすぐりRPG 40. 海底ダンジョン攻略 (3)

41,974 character(s)1 hr 23 mins

年下責めとなると、文量とテンションが上がる。

あらすじ novel/18975303

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 シオンが海中でシーサーペントと格闘し出したあたりで、探索する気が失せたシロエとクラゲ。
 前衛で盾として機能してくれる戦士職なしでは、海底ダンジョンの探索は難しい。シーサーペントにいじめられているシオンを助ければなんとかなるだろうが、ダンジョン専用装備である水着なしに潜ったところで、ミイラ取りがミイラになるだけなのは目に見えていた。
 早々に見切りをつけたクラゲとシロエ。もっともシオンも大好きなくすぐり責めに遭っているので、ある意味夏を満喫していると解釈できないでもない。同一のパーティーではあるが、重度のM気質を持つシオンと、S気質のクラゲと、SM双方の気質を持ち合わせているシロエでは、取り組み方がまるで違う。つまるところ、まじめに攻略する気分ではない。
 ゲームオーバーとなったシオンを放っておいて、シロエはひとり波に身をゆだねていた。沖の方まで流されたとしてもVR世界からログアウトしてしまえば布団の上に戻るのだから、無鉄砲と無計画に身をゆだねても問題ない。

「あー……極楽……仕事さぼって、ずっと……」

 魂の抜けたような表情で、浮輪の上で腕枕を組んで、仮眠をとろうとするシロエ。
 彼女はといえば、黒色のノースリーブニットからクロスホルター・ビキニに衣替えしていた。紐を首の前で交差させたあとで首の後ろにひっかけて固定するビキニである。布面積が大きいにもかかわらず、バストアップからデコルテ廻りの情報量が多く、なによりも零れ落ちんばかりの巨峰を抱えているため、視線を集めやすい。
 下は黒のローライズをチョイスしており、股上が浅い。水着の上から着込めるマーメイドスカートを上に着用しており、ちょっとした裾の広がりがどことなく人魚の尾ひれを思わせる。徒に布面積を狭くして開放的にしているわけでもないのに、色気を醸し出すのが上手く、それを生来の恵まれた体型が助けている。
 股上が浅い水着のためにウエストに視線が集まりやすいのが必定であろう。ノースリーブニットから解き放たれた体側。通常装備であるノースリーブニットから受ける重々しい印象を裏切って、体側の輪郭線は意外にも華奢な印象がある。胸郭から骨盤にかけてゆるやかな曲線美をなし、やせていながらほどほどに肉感がある。
 シオンやクラゲと同様に、学生時代には周囲から色のこもった熱視線を浴びてきた身の上だ。人に見られることを前提として服装には細心の注意を払うものの、人のいない沖合まで流されに行くことで、シロエはようやく一息つける環境を手に入れる。教育実習生でありながら激務の日々――慰めと癒しをVRに求めて何が悪い。
 体側をぐるりと囲うように浮き輪が嵌められている。水着装備とは別に有償だったのだが、店の裏にあったぼろい宝箱から入手した一品である。
 鳶色の髪を水面に浸しながら、このまま微睡んでしまおうと考えるシロエ。職員室の机に突っ伏す要領で、浮き輪の上で腕を交差し、顔の枕にしかけたとき――

「ん、ふぁぅっ!?」

 脇腹の肉に何かうずめられたような感覚に、不意に驚きの声を上げた。

「ん、な、なにっ……?」

 慌てて周囲を見渡し、水面に視線を泳がせるシロエ。しかし、モンスターや罠などの敵影は見えない。

「まさか、透明な――んひゃぅっ!?っく、なにっ?」

 再度脇腹につつくような刺激が加わり、立ち泳ぎの姿勢のまま上背を仰け反らせる。
 透明な敵でもいるのか、あるいはVR外(現実世界)からのくすぐり責めかと思いかけた矢先のことだった。

「っ、っ……!?」

 影が揺らめいた視界の端に意識を向けると、複数の突起がーー浮き輪の内側に生えそろっているのを認めた。
 なによこのモンスターは、と言いかけた矢先に、

「が、ふっ――っ?」

 浮輪の内側のトーラスがぐっと内径を狭め、シロエの胴体を強烈に圧迫した。ベルトをきつめに巻いた時のように、くすぐったさというよりは、お腹が絞られるような苦しさが先行した。

「ま、さかっ――あ、ふっ、んんんっ!?」

 シロエは、浮輪を見つけた時のことを思い起こしていた。
 最初から空気が入っていて膨らんでいたように見えたのだが、実際には空気が入っていたのではない。空気投入口の狭い空間を介して、スライムが入っていたのだろう。
 通常の浮輪と異なり、そもそも空気が充填されていないのだから、思うがままに変形したり圧縮膨張するのも容易だろう。スライムにとって海水は天敵だが、ポリ塩化ビニルでできた浮輪の外壁で海水から身を守っているようだった。

「なっ、こんなところにスライムなんてっぎゃふっ!?あっくくくくくくっ、こ、のっ……!」

――無料の装備は訳あり品、もしくは罠。

 くすぐりRPGと揶揄されるこのゲームにおいて、軽々に防御力を上げてくれる装備などあるわけがなかった。
 脇腹を周方向に囲まれて一斉に指圧するスライム。それでも冷静さを保つシロエ。脇腹を締め上げられては脱出が困難。ならば浮輪の栓を外して中に海水を導入してしまえばいい。栓に指かけたシロエだったが、スライムが自身の粘着質で以って、蓋を内側から塞いでしまっていた。

「っの、は、ぁぁっ……!っ、っ、のっ……スライムなんかに……っ。『救急如り――ふぎゃぅぅっ!?」

 マドハンドで浮輪の外壁を食い破らせる。その策は、スライムからのくすぐり責めに妨害された。
 浮輪の内壁越しに、脇腹を揉みしだかれて、たまらず術式を組むための集中力がほどけてしまう。

「っの……っっっ、は、ぁあっ、あ、あ、あ、あっ……ッッッ!〜〜〜〜っ、く、あぁぁぁぁ……っ、っっっ……!」

 浮輪の中のスライムが、複数のイボのような突起を押し当ててぐりぐりと肉の土台を掘削していく。

「んぎっ!ひゃふっ、く、っっっ、んんっ、ん、く、く、ふぐっ、んんんんんっ……!」

 艶かしい声を漏らしながら脇腹をぐねぐねと左右に振り、隙間を確保できないか、あわよくば脱出できないかと悶えていた。
 しかし、胴体をぐるりと取り囲むトーラスは、シロエを開放する気はないようだ。ポリ塩化ビニルでドーナツ型の基本形状を保っていれば、ある程度変形は可能なのだろう。

「ふぎゃうっ……!?あ、あ、あ、っっっ……、、っっっ、〜〜〜〜〜っっっ、は、あ、っっっ、こんな、スライム、なんかにぃっっっ……!」

 先ほどまでは身体をつつかれた程度なので、まだ余裕があっただろう。だが、手首を拘束されてしまっては、召喚状を取り出すことができない。
 ゲル、マドハンド、そして最近手に入れたドッペルゲンガー。誰の助けも借りずに、身一つでこのくすぐり責めから脱出しなければならなくなった。
 スライムと手首の間には浮輪の素材が挟まっているため、接着しているわけではない。しかし、森・草原ダンジョンや洞窟ダンジョンよりも個体としての力が強いため、なかなか拘束部のHPが減ってくれない。
 だが、時間が経てば拘束部のHPも切れることだろう。あわよくば責め疲れたタイミングを狙ってマドハンドを召喚して脱出できれば――

「っく、ふ、ふ、っっっ、……、!?!?ふぎゃぁぁぁっ!?」

 浮輪の表面をぐねぐねと蠢かせながら、腰の出っ張りを――腸骨棘を揉み立てたのだ。

「んぐっ、く、ふぁぁっ!?こ、腰ぃぃっ……!?」

 ふだんノースリーブニットで隠された弱点を暴き立てられ、たまらずシロエの口から悲鳴があがり、大きな胸を震わせながら背を海老反りに跳ね上げてしまう。

「っは、ぁっ、くっふふふふふっ……や、めなさっ……、あ、く、ぁぁぁっ、んひひひひひっっっ……!」

 笑い声を必死に押し殺そうと悶えるシロエ。彼女の指は浮輪の内壁と胴体の間にあてがわれ、隙間を探し当てようとしている。
 しかし、胴体にめり込まんとばかりに浮輪が密着してしまっており、隙間を探り当てるどころではない。空しい抵抗にすぎないことを知らない……あるいは敢えて認めまいと抗っているのか。
 これまでより大きな反応を引き出したスライム。気丈に振る舞っているシロエを観念させるべく、円を描くように腰の出っ張りを揉みほぐし、無数のイボで脇腹を周方向にぐりぐりと揉み転がす。

「っは、ぁ、っっっ、〜〜〜っく、ふ、……、っ、っ、っ……〜〜っははははははははははははははははははははっっっ!だめっ、だめぇぇぇっあっははははははははははははははっっっ!やめっ、やめなさっ、離っふふふふふふっ、あっははははははははははっっっ!」

 スライムに腰を揉み立てられるたびに、脊椎にばちばち電流めいた疼きが走り、たまらずシロエは笑い出す。

「このっ、っはははははははははっっっ、スライムやだっ言っへへへへへへへっ、あああああっ、あっはははははははははははははっっっ!」

 怜悧で涼しげな目元。そこから溢れる涙が浮輪に落ちて雫をつくる。
 効き目がある、と判断した浮輪の中のスライムたちは、腰回りにスライムを結集させていき、どういう責め方をすればこの餌から強い反応を引き出せるのか研究していく。

「ん、くっ、ふ、あああっ、あっははははは、は、あっ、あ、ああっ、あっふふふふふっ!ふひゃうっ、や、めぇぇぇっ、あ、ああっ、あっはははははははっっっ!」

 突起を中心にぐりぐりと捏ね回すように、僅かに乗った皮膚を捏ね回す。
 腰の出っ張りを全周から包み込んで、ごりごりという音が聞こえてきそうなほど強く揉み転がす。
 指のような突起を形成して、骨盤と肉の境目を探るようにつんつんつついたかと思えば、一気に指を沈めてぶるぶると震わせる。
 鼠蹊部のラインに沿って高速で往復する。
 マッサージ機のように腰の出っ張りを包んでぶるぶると強弱で陰影豊かに震わせる。
 
「ふひゃひゃひゃひゃはははははははっっ!い、つまでっ、腰っ、もうやへへへへへへっ、腰やめっふぎゃははははははははははははっっっ!くすぐったひひひひひっ、くすぐったいからぁっははははははははははっ!!」

 電動マッサージ機のように間断なくぶるぶる震わせるのが最も効き目があると判断したスライム。
 腰にあてがったスライムが浮輪の材質越しに、シロエの腰を微細に、しかし休みなく震わせる。

「あっあっあっ、ああああああっ、あっはははははははははははははははっ!!やめてぇぇぇっ!やめ、ふひゃひゃひゃひゃひゃははははははははっっっ!もう、分かっひゃっ!わかったかりゃっははははははははははっっっ!腰止めへへへへへへッッッ!せめて脇腹とかひしへよほほほほほほっ!」

 水面に細波が立つほどの高速振動に、たまらずシロエは屈服する。腰の一点責めがこんなにも辛いとは思わなかったシロエ。せめて脇腹責めにしてほしいと訴えかけたところで、くすぐり責めで語らう生物に会話が通じるはずもない。
 そして刺激に慣れさせないように、シロエの腰にこれでもかというほどイボを集め、ハンバーグの手捏ねの要領で、腰の出っ張りを揉み回す。

「んぎゃぁぁぁぁっ!!揉みしだっっ、もう揉まなひでへへへへへへっ、ああああっ!あああっ、あ、あ、あっははははははははははははははっっっ!!」

 スライムのような軟体にとって、人間の骨のような固いものは、得体が知れないところでもあり、興味の尽きない箇所なのだろう。
 骨の出っ張りただ一点だけで様々な切り口でくすぐり込まれ、人形を扱うかのごとくに弄ばれるシロエ。
 あと少しで快感を受け取ってしまうような箇所には責めの手が及ばないが故に、くすぐったさを誤魔化すこともかなわない。

「ひいっひひひひひひひっ!このっ!このぉぉぉっ、いい加減離れへへへへへへっっっ!!このっ、もうだめええええっあっハハハハハハはははははははっっっっ!!」

 骨盤全体に響くようなくすぐったさの電流に、水中だというのに腰が勝手に暴れ回る。なまじ浮輪の直径が大きく、胴と浮輪の間に隙間がないために、手が届かないのだ。
 せめてもの抵抗とばかりにぺしぺしと浮輪の表面を叩き、ポリ塩化ビニル越しにスライムに打撃を加える。
 浮輪越しとはいえ叩かれるのが鬱陶しかったか、あるいは優位を知らしめるためか、スライムが次の行動に出る。
 べちべちと浮輪を叩いて無謀な抵抗を試みるシロエの手首がずぶりと沈んだのだ。しまった、と思わせる間さえ与えないまま、シロエの手首を掴み込んで、抵抗を封じ込める。

「なっ、そんなの……っ!」

 反則、と言いかけたタイミングで、シロエの腰の出っ張りを集中的に責め出した。

「ふぎゃぁぁぁぁっ!?あっ、あ、あ、あ、あ、あっはははははははははははははははははははははっっっ!だめだめだめぇぇぇぇぇっ!やめ、や、あっはははははははははっっっ!もう無理ひひひひひっ、こしっ、こしぐにぐにしないでへへへへへへへへっっっ!」

 腰の出っ張りを起点に、ゲームコントローラーのスティックを回すかのように、ぐりぐりと揉み回す。びくびく痙攣する胴体を、浮輪全体を使って締め上げる。
 しかし、脇腹にはくすぐり責めを施さない。
 腰の骨の出っ張り――人体の表面でも比較的硬いところを徹底的に張り付くことに決めたようだった。

「あああああっ!あっはははははははははっっ、もう無理っ!腰ぶるぶるしないれへへへへへっ!ああああっあっはははははははははっっっ!!もうイヤりゃああああぁぁぁぁぁっ!!」

 ゲームを遊んでいるのはシロエだというのに、大の大人がスライムなんかに弄ばれて遊ばれている。
 屈辱を感じるほどの理性も残っておらず、ただただ下半身を不随意に暴れさせるばかり。拘束されていない両脚も、最初はばたばたと必死に動かしてくすぐったさを誤魔化そうとしていた。しかし、水中での抵抗でスタミナを消耗しきったのか、いつしか腰へのくすぐり責めにあわせて時折びくつかせる程度にまで弱ってしまっていた。

「っははははははははははっっっっ、も、だめへへへへはっ、ゆるひへへへへへへへっ、ああっはははははははは、っっっ!」

 腰のマッサージで疲労回復などと誰が宣ったか。二度とマッサージマシンは使うまい。
 自分の知らなかった弱点を責め込まれながら、シロエは全てのHPを吐き出し、彼女の視界は暗転しつつあった。
 薄れゆく意識の中で捉えたのは複数の女の声。

――
「お、こんなところでくたばってるのがいる。珍しいな」
「そうね……こんなところまで流されに来るなんて物好きな人がいたものねえ?」
「なにこれ。浮輪の中にスライムが詰まってる。状況がまったく分かんないけど、陸まで連れて行こう」

 手遅れとはいえ、助けがきたのだろうか。
 蘇生系の魔法持ちだと助かるけれど、今日はもう探索する気力が湧かないわね……そう思いながら、今度こそシロエの意識は闇に落ちた。

「ん……ぅ」
 
 目蓋をゆっくり開けると、日陰にいるにもかかわらず、海面からの反射光が目に飛び込んできて、知らず眉をひそめてしまう。
 寄せては返す波の音。
 開けた空間を走り過ぎていく、熱気を帯びた風が頬を撫でている。
 突き刺さるように温かく、瞼をも貫通してきそうなほどに明るい陽の光。
 夏の昼空に、漂う初夏の熱気、水着姿の自分自身――どうやらまだログアウトしていないままゲーム空間内で目を覚ましたらしい。

「っく……どこ……ここ……たしか……」

 確か自分は、スライムを充填した浮輪に腰を重点的に責めほぐされて――
 触覚に意識が向いた瞬間に、気絶する前の記憶がずるずると芋蔓式に引き出されていく。

「はぁ……あんな、」

――スライムなんかに。
 だが、低レベルモンスターの代表格とはいえ、自由自在に変形できる性質ゆえに、責めの種類は数知れない。
 かく言うシロエも、責の多彩さゆえに、スライム娘であるゲルをいつまでも使役している。

 これでもかと言うほどツボを押し込まれたためか、身体が言うことを聞かない。力無く掌をグーパーできる程度で、四肢や胴体は痺れているのか動けない。

(このまま、じっとしているしかなさそうね……クラゲちゃんも居ないし……シオンは、おそらく”落ちた”わね)

 クラゲがいないので回復もできない。居たら居たで、無防備なシロエに何をしてくるか分かったものではないのだが。
 白いビーチパラソルが真上で花開き、シロエの身体を直射日光から守っている。
 硬い板が当たっている感覚が体の背面全体に、足裏には熱砂のざらざらとした感覚が伝わってくる。
 どうやらビーチチェア――それもサンラウンジャーに寝かされているらしい。長さ140センチほどの長台に、そこから15度傾いて斜め上に70センチほどの4脚椅子に仰向けに寝かされている。
 傍目には、妙齢の水着の女性が浜辺でくつろいでいるように見えなくもない。

(っ……く、砂浜にいるってことは……まだゲームオーバーには、なってないってことなのかしら……)

 しかも、周囲を見渡すと、三々五々に人の姿がちらほら見られる。浜辺をそぞろ歩く者、水遊びで姦しくしている者、シロエと同じようにパラソルの下で憩う者もいる。

(よかった……拷問部屋……ではなさそうね)

 浜辺に打ち上げられたのではなく、ビーチチェアにわざわざ寝かされているあたり、誰かが助けてくれたのだろうか。
 数十メートルおきにビーチチェアが並んでおり、寝かされた女性プレイヤーが、他のプレイヤー――おそらくはパーティーの他の面子だろう――にくすぐられている様子も窺えるが、このゲームの性質上、そういった”遊び”の風景はそこかしこで認められる。

(そう言えば、気絶する前に誰かが……)

 話しかけてきたような、と思いかけ――

「あら、もう目が覚めたの?早いわねえ」

 声がした方におもむろに首を傾ける。
 くすり、と余裕のある笑みを浮かべながら少女が近づいてきた。髪は桃色だが、染めているわけではなさそうだ。長髪の毛先に弱目のウェーブがかかっており、手触りが柔らかそうに見える。長髪という点でシロエと共通しているが、ストレートヘアーならではの重たさを与える点で印象は180度異なる。
 パラソルの下まで立ち寄ってくる少女。逆光で影が顔に落ちているが、シロエと同じ美人系のようだ。笑顔よりも澄ました顔が似合うだろうし、大笑いするよりもくすりと微笑むタイプなのだろう。シオンよりは年上そうだが、シロエのように社会の味見を終えた年齢でもなさそうだ。

「……、どちら様?」
「失礼な言い草ね。ぐったりしていた貴方をここまで運んできたプレイヤー様なのだけれど」

――はあ。

 そう言って髪をかき上げる仕草があまりにも自然なためか、不自然な髪色にもかかわらず、リアルな印象を醸し出している。
 自分を含めたパーティー一向は、わりとリアル寄りのキャラメイキングをしているためだろうか。彼女のようなビビッドで彩度の高く、そして癖のついた髪を見かけると、視線が吸い寄せられてしまう。
 なまじ現実での見目が整っている分、己のセンスを頼りに架空っぽいキャラメイキングに振り切れないのだろう。
 ちゃんとものを食べているのかと疑いたくなるほど細い脚が真っ先に目に入る。白樺の枝のように真っ白な脚は、箱入り娘というレベルを超えて病弱さを疑う。
 コンパスのような脚の細さを裏切って、面積の少ない白の三角ビキニに包まれた上半身は、実に曲線に満ち満ちている。グラビア雑誌の巻頭を飾れそうなほどに出るところが出ていて、引っ込むところが引っ込んでいる。痩せ型ながら筋肉質というわけでもない。魅せるための脂肪が乗っており、駄肉がついているという印象はない。運動を怠っては決して辿り着けないようなプロポーションをなしている。海水客が多くいる中で、シオンとシロエのいいとこ取りをしたような上半身を惜しげもなく晒しているあたり、人に見られることを仕事としている人間とみえる。
 VR慣れしているのか、見た目にも年上のシロエに対しても舐めず臆せずの態度で話しかける。

「あなた、ひょっとして――」

――私の妹だったりする?

 シオン、クラゲ、そしてシロエ。各々に妹がいて、同年齢で、しかも学校と学外で繋がりがあるのだと聞く。
 シロエの妹は、”サヨ姉” ――サヨコか、サヨリか――ではないものの、話し方の雰囲気は瓜二つである。
 言いかけた台詞を、喉元でぐっと押し殺す。あくまで知らない人間として押し通した方がいい。この人が何者であれ、進んでリアルの身元を明かすべきではない。

「あ……いえ、とんだ無様を見せてしまったようで。申し訳ないわね、御礼は――」
「別にいいわよ、御礼なら――」

 この少女の実際の年齢は分からないが、外見が年下の子のまえで醜態を晒していたことを思うと、少しばかり面映い。
 シロエの返答を聞き流しながら、しゃなり、しゃなり、と砂を踏みながら近づいてくる少女の歩く姿は、艶然としている。モデル歩きが堂に行っており、リアルでもそういった職種の人なのだろうか。

 シロエを見下ろしている少女が礼を固辞しかけたところだった。

「サヨ姉、ただいま」
「おかえり、イワナ……その人起きたんだ?」

 目の前の少女に向けてだろう、別の声が割って入る。
 金砂の短髪に、吊り目気味の顔貌は、中性的で少年のような印象を持ち合わせている。髪とあわさって、夏の青空の下で輝いているように見える。妖艶に微笑むような”サヨ姉”と違って、表情がころころ変わりそうだし、おそらくニカッとした笑い顔がよく似合う……気がする。
 スポーティな身体をしており、胸郭と骨盤のランドマークが浮き出るほどに痩せている。逆光のなかでも筋肉の継目や骨肉の境目で陰影がくっきり出ている。細いながらも色香に富んでいる。呼吸のたびに薄い胸が膨らんで、細いながらも色香に富んでいる。上は白の三角ビキニで、下は濃紺のデニムショーツパンツといったラフな出立ちがよく似合っていて、ガサツそうな見た目ながらも整った容貌を引き立てるチョイスだ。
 しかし、ショートパンツからのぞく太腿はやはり細く、”サヨ姉”ほどのアンバランスさはないにしても、同世代人と比べれば筋肉にしても脂肪にしても、肉感に乏しい。
 顔の造形や印象は異なっているが、水着の上の部分は同じで、身体の形質が似通っているように思える。

「……あなたたち、ひょっとして姉妹で遊んでるの?」

 シロエの問に対して、そうよ、と首肯して、一拍おいて自己紹介をする。桃色の髪のモデルみたいな娘はサヨリ、スポーティな金髪の少女がイワナというらしい。
 少なくとも悪い人ではなさそうだと判断したシロエは、一応プレイヤー名だけ名乗るにとどめた。交流を深めるには物足りないコミュニケーションだが、あいにく気絶明けで身体の重いシロエにとって、口を開くことにさえ疲れる有様だった。

 ともあれ、サヨリという少女が自分の妹なのかと思ったが、そうでもなさそうだ。
 シロエの妹は10代前半だが、その手の”遊び”を長けているとも思えない。

「いえ、なんでもないわ……」
「アタシらが見つけたときにはぐったりしていたけど。身体、動きそう?」

 イワナと呼ばれた少女が覗き込みながら、シロエの容態を窺う。

――どう答えるべきだろうか。

 シロエが少しばかり逡巡してしまうのは、目の前の少女がPK(プレイヤーキル)を仕掛けてくる人間かも知れないからだった。
 助けてくれたであろう相手に対しては、ふてぶてしささえ感じさせるほどの用心。
 だが、自身もPKを仕掛けたことのある身の上であるため、そういった警戒心が働くのも無理はない。

「だめね。身体がだるくて、今は動かす気になれないわ。麻痺状態なのかも」

 言外にしばらくしたら動ける――抵抗できるというニュアンスを含ませておく。

「スライム相手にして麻痺になるもんかね」
「さあ、分からないわ?戦ったことないし」

 指先に引っ掛けた帽子をくるくる回しながら、イワナが自問する。

「肌赤くなってるから熱中症かなって思ったんだけど」
「シーラも戻ってきたら、一応施術だけさせて、帰りましょうか」

 シーラ。
 知らない人の名前が出てくる。自分たちと同じ三人パーティーで、しかも三姉妹なのだろうか。

「シーラっては、アタシらの妹な。魔法使えるのはアイツくらいでさ……」

  噂をすれば、だろうか。
 黒髪の娘が走り寄ってきたのを視界の端で認めた。

「あ、おねーさん、おはよう?さっきまで気失ってたみたいだけど大丈夫そう?身体、まだ火照ってるみたいだし、一応、応急手当てしておく?」

 舌足らずな感じの声といい、見た目の齢といい、末妹とみて間違いなかった。
 黒くウェーブのかかった髪は腰元まで無造作に伸びていて、カールしている。黒の長髪なのに重苦しい印象を与えないのは、本人の幼さで中和されているからだろう。
 全てのものを初めて見たものであるかのように捉えており、犬のようにころころ表情を変えている様が脳裏にありありと思い描ける。くりくりとした瞳に、なんとなく犬の人懐こさを期待してしまう。
 やはり白の三角ビキニを着用しており、くびれのない寸胴の脇腹がすとんと落ちていて、しかし、異様なことに、玉の肌にはぷつぷつと細かな水滴がびっしりと付着していて――

(結露?)

 少なくとも汗よりは細かく、先ほどまで泳いでいたから肌が濡れているというわけでもなさそうだ。
 冷えた缶ビールの表面を室温下で放っておくと、びっしりと水滴がついているのと同じことが、肌の上で起きている。
 弾力のある若い肌は、撥水性でもあるのかと思うほど水を弾くのだが、そういった現象ではない。
 よく見ると身体の周り――ー冷気のようなものを纏っており、シロエに近づくごとに暑気が中和されているように感じられる。
 ひんやりしていて気持ちよさそうだが、この少女は、何をするつもりなのか。

(……で、わたしが、熱中症……?)

 イワナ――金髪の次女が言うには、シロエが熱中症でぐだっているのではないかということ。
 そして、目の前のシーラと呼ばれた黒髪の少女は、明らかに体温が低く、そして――

「おねーちゃん、身体、あつくなってるから、冷やしてあげるね?」
「なにを……ひぅっ!?」

 シロエの口から鋭い悲鳴が漏れ出る。
 火照った首筋を、シーラの冷たい手が挟み込んだからだ。
 擽感でも性感でもなく、温度差のある刺激が首筋から背中を貫くように流れ込み、シロエの身体が跳ねそうになる。

「えへへ( ´ ▽ ` )こうするのが熱中症に効くってお姉ちゃんに教えてもらったんだけど、どう?」

 10度を下回るであろう温度が、首筋からじわりと流れ込む。夏の昼下がりという舞台設定だというのに、冬の海水のようなものがあてがわれ、首筋から縮こまりかける。

「熱中症にかかったら、真っ先に冷やさなきゃいけないんだっけ。学校で習った気がする」
「ふ、待っ――!」

 ノースリーブニットという厚ぼったい服装から解き放たれたのは、胸や脇腹だけではない。 ほっそりとした蛇の腹を思わせるくびすじ。左右の掌、人差し指から小指は組まれたまま、シロエの首の裏側――脊椎を支えている。そして親指は、シロエの首が掌から逃れないようにするためか、首筋の肉を押さえ込んでいる。

(お、ちついて……絵留……ただの、善意っっっ、なんだからっ……ッッッ、ふ、〜〜〜〜っっ……!)

 外面の無表情の仮面には、ぴしりとヒビが入りかけていた。
 首筋から入り込む冷たさに、身体が適応しかけてきて――引き潮のように冷たさが引き上げられていく。
 それと入れ違いでくすぐったさが代わりに首筋へと流れ込む。

「んっ……!?ん、く、く、っっっふ、っっっ……!くっ、す……っ、……は、ふっっ、っ、っ……!」

 反射的にくすぐったいと悶えかけるシロエ。
 シーラの指先は、シロエのほっそりとした首筋を、左右からゆるく押さえ込んでいるだけで、蠢いているわけではない。
 しかし、自分のものではない肌から、指先の柔肉から、異物感が与えられている。

「ん?お姉さん、へーき?身体、びくんってなったけど」

 仰向けにビーチチェアに寝かされた状態のシロエ。まるで歯の点検をする看護医のように、彼女の背後上方から寝顔を覗き込むシーラ。

「だ、大丈夫よ。ちょっと、っっっん、びっくりした、だけだか、っっっらっっ……!」
「ほんとかよ、よっぽど身体あったまってたんだな。すげえビクッてなってたけど」
「イワナ、歳上の人への態度がなってないわよ」

 言葉の割に、シロエは大丈夫ではなかったようだ。シロエの反応をせせら笑う次女イワナに、軽口を諌めるサヨリ。

「なあ、姉貴。腹へったんだけど」
「いいから……待ってなさい」

 邪気がないながらも、くすぐったさを与えてくるシーラ。それで横目で見つつ会話しているサヨリとイワナ。
 PKプレイヤーに捕まったかと思ったが、単なる邪推なのだろうか。
 笑わせにくる責めでもなければ、性感を弄うような責めでもない。焦らすにしては、邪気がない。
 だが、それにしては――

(今の『待ってなさい』って、なにか含むところがある、ような……っ)

 シーラの指先は動いていない。おそらくはただの善意で、あるいは学校で習った知識を実践する楽しみからか、何であれ首筋を冷やしているだけだ。
 だというのに、シロエはもぞもぞと芋虫のように蠢くせいで、指が胸鎖乳突筋に当たりにいって新たな擽感がじわりと脊髄に染み込んでいく。
 指先のほんの僅かな接触だというのに、既にシロエに余裕はない。

「っ、っ、……っ、そ、うねっ、いっ、い、いいと、っっ思っうっ、っ、っ」

 それでも、他愛もない児戯ごときで、大の大人が――十年ほど長く生きているであろう大人が狼狽えてはならない。年長たるものの威厳と余裕、泰然とした態度で臨むべきである。
 ただプライドが許さないだけだが、それを矢鱈と修飾するのが大人の流儀。
 子供には分からないでしょうね、と心中で嘯くだけの余裕は、まだシロエの頭の片隅にはあった。

「……………、――さわさわ……」
――首筋にあてがわれた指が動くまでは。

「んぁ、ふっ!?は、ぁぁぁっ、だ、っっっ、――」

 左右から首筋をはさみこむシーラの親指が、首筋を舐めるような、ねぶるような指先に変貌したのだ。

――だめ。

 ギリギリで歯を食いしばり、喉に力をこめて吐き出される声を押し戻す。

「っっっ、は、っっ、な、にっして……っ」

 半笑いの顔ながらも、眦をきっと吊り上げてシーラに詰問するものの、当の彼女は柳に風といった風体で、シロエの首筋を指先で上下に震わせる。

「?なにをそんなにおこってるの?」
「……っ、っ、っ!な、んでもっ、な、ぁくくくくっ……!」

 別にくすぐっているつもりはないのか。あるいは、そういう体裁で、シロエを揶揄っているのか。

「あっ、ちょっと、暴れちゃダメだよぉ……ぎゅーっ」
「んぐっ、ふぐぉっ!?」

 もごもごと芋虫のようにビーチチェアの上で暴れ出す身体。もがく身体がビーチチェアから落ちないように、首筋にあてがった親指を左右から押さえ込む。
 左右の人差し指から小指までを組んで、お皿のようにしてシロエの首筋を支えながら、頸動脈のある部分をゆるく圧迫する。
 いつになく敏感なのは、事前に冷たいものをあてがわれて、神経が驚いてしまっているからだろうか。普段感じにくい場所さえ、くすぐったさを感じてしまう。

「んぐっ、ふ、くくくくっ、っっっ!?ん、くっ、や、あっふふふふ……っ!っくぅぁ……っ!」

(っく、たまにっっっ、こ、ういう子がっっ、いいるってっ……知ってるでしょ絵留、教育実習体験VRっっっでっ、――く、ぅぅぅっ、)

 善意でやっていることなのだ。決してシロエをくすぐろうとかそういう意図は、働いてはいないはずだ。だから、こんなことで悶えたりくすぐったいなどと苦言を呈するべきではない。第一、こんなことで子供なんかに屈服してはならない。
 自身にそう言い聞かせて、必死に悲鳴を押さえ込む。幸いにも首筋を左右からゆるく圧迫されたせいか、喉元が微妙につっかえてくれて、笑い声を押さえ込むのに一役買ってくれている。

「んひひ、暴れちゃだめだよぉ」

 熱中症でダウンしているシロエの首筋をさわさわと指先でなぞり、時折ぐっ、ぐっ、とツボでも探しているのか、親指が弱く食い込む。

「〜〜〜〜っ、ふ、っ、っ、ん、んんっ、ん、く、く、くくっ、ふ、っっっ!っっ、っ!」

 シロエの我慢とシーラの指の圧迫感のために、笑い声はかろうじて防げている。しかし、くすぐったさを我慢するだけでなく、シロエのなかで色々な懸念が生まれていた。
 逆さまになったシーラの顔が上から覗き込んでくる。まるで触診でもするかのように。たかが首筋を指でなめられた程度で、変な顔をしてはいないだろうか。
 息継ぎのたびに酸素が入っていき、二酸化炭素が出ていく。そのやりとりが薄肉薄皮を一枚隔てた指先に伝わってしまっていないだろうか。
 とくん、とくん、と脈打つ速度がはやくなっていくのを、そして余裕がすり減っていくのを、シーラの十指が嗅ぎ取ってはいないだろうか。
 子供に対しては大人ぶりたい、というプライドが、余計な懸念を頭の中で生産し、脳のバッファを削っていく。

「んー、身体、冷めないどころか、どんどん温かくなってるような?」
「シーラ?そこだけじゃなくてもう少し広く冷やしてあげなさい?」

 サヨリがシーラに教導する。うん、わかった、と短く答えたシーラの指が、首筋をさらさらと滑り出す。

「ンンンンっ、ん、なんでっ、くっ、あ、っふふふふふっ……っ、ふ、だいりょぶだからっ、身体冷えてきひゃぅぅぅっ……!」
「ひゃぅぅっ、ですって。意外にかわいい声出すものねえ」

 素っ頓狂な悲鳴を揶揄うサヨリ。外野が見ているせいで、子供に――シーラにぞんざいな態度を取るのは格好が悪いという意地があるのだろう。心中で毒づきながらも首筋をさわさわ弄ぶ指をやり過ごそうとする。

「っん、っぬ、くくくくくっ、ふ、っふ、……っっっ、ん、くぅぅぅっ、や、めっ……ん、んっ、ふふふふふふっ……!」

 首の筋肉は、鎖骨にくっついており、そこから左右に分かれて首の側面を伝っていき、耳の裏側まで伸びている。
 その経路にそって、首筋の肉をやわやわとゆるく揉み転がしていく。

「んぁ、あ、ふっ、くぅぅぅん……っっ、っ、」

 主人と迷子になった犬のような切ない声が、喉から漏れて、それと同時にシロエの身体が急激にあつくなる。下腹に溜まった熱は、紛れもない快感の疼きだった。くすぐったさとは異なる桃色の電流がシロエの総身をざわつかせる。

「シーラ、その……そこは触ってやるな、いろんな意味で熱中症対策になってねえから」

 くつくつと笑いながら窘めるイワナ。意味は分かっていつつも、積極的に止めにかかるつもりはないような態度。だが、姉妹間での上下関係がはっきりしているのか、名残惜しそうにしつつも指が離れていく。

「っふ、っくっひひっ、っ、っ、〜〜っ……っ、っ……っ」

 だが、ねちねちと胸鎖乳突筋を按摩する指は止まらない。頭部から離れた指がしきりに首筋を舐め回していく。肩をすくめて指の動きを止めてしまいたいという誘惑が、頭の中でガンガン鳴り響くものの、くすぐったいということを認めたくないのか、理性で強烈に押さえ込む。
 抵抗しないのをいいことに、シーラの指が鎖骨にむかって滑り落ちる。

「んひひ……ここ、すっごくきれい……」

 うっとりするような声が頭上から落ちてくる。
 スポーツと言って差し支えないほどに発汗するゲーム体験なだけあって、角質ケアをはじめとしたボディケアには余念がない。人前に立つことの多い職業柄とも相まって、服の下に隠れた部位であっても美容には手を抜かない。
 仰向けに寝そべっていることで、鎖骨のラインがより浮き彫りになりがちである。押せば沈むほどの肉もなく、骨のラインに皮がついている程度だ。横長の√のようなラインから肩甲骨に向かってなだらかに伸びていく鎖骨。指一本伸ばせば腋の下。そんな危ういラインを指先でつつつ、と滑らせる。

「んぁ、っ、っ、ふっ、ぐぅぅぅっ、く、く、っっく、ふふふふふっ、も、やめっ、んぎっ、ひっひひひひひひひっ、……っは、ッッッぅぅ…、っく、のっ……!」

 鎖骨のさらに下側のわずかな凹みにさえ指を伸ばす。大胸筋の上部に指の腹が触れると、知らず色のこもった喘ぎ声が漏れてしまうのをどうすることもできない。
 シーラ、と再度呼びかけて窘めるイワナ。指が鎖骨の稜線をさらさらと走る。じっとりとした汗が太陽の光を浴びて白色のハイライトをなし、シーラの指遣いがシロエの上体をひくひく戦慄かせる。動脈の部分からだいぶ離れてしまっているが、くすぐったいことに変わりはない。
 客観的に見て、シロエがくすぐったさに悶えているのは明らかだった。シーラ自身は身体を冷やすという役割を果たそうとしてくれており、シロエの反応には気づいていない――あるいは体調不良と誤認している。しかし、サヨリ、イワナの両名の目を欺くことはできておらず、小学生ほどの子供の手遊びに、大の大人が悶えているという痴態を晒しているようにしか見えていまい。

「おねがっ、も、からだっっっ、冷え――」
「あはっ、首わしゃわしゃわしゃ〜〜っ」
「んっくくくくくっ!?ふ、んんっ、くぁっ、ま、たぁぁっ……!あっふふふふふふふっ……、っく、んんっ、ん、ぁ、あ、あっ、、!」
「おねーちゃん、さっきから『あっ、あっ』とか『ん、ん』ばっかり。変なの」

 いひひ、と悪辣そうな、しかし悪意のない笑い声が降ってくる。
 うるさい、と返そうものなら大人として狭量につき、ばか正直にくすぐったいことを伝えるには無警戒の謗りを免れない。
 結局のところ、歯を食いしばり、なるべくシーラと視線を合わせないようにすることしかできないのだった。

(っく、っっっ、にしても、っっっ、く、く、くっ、くすぐったいっ……普段はっ、こんな……っ)

 首筋は別段弱いところではない。げらげら理性を失うほど笑い転げることはない。子供が戯れているのにすぎない。だが、氷のように冷たい手指をあてがって神経を無理やり起こさせられ、直下に動脈が走っているところを延々と触られているうちに、じわじわと全身の感度が上がってしまっているような気がしてきた。

「っ……っ、ふ、ンンンンっ、く、くくくくっ……っふ、っっっ……んぐっ、ふ、くっ、ふふふふふっ……!」

 もじもじと擦り合わせてくすぐったさを誤魔化そうとする、左右の太腿。背中に当たっているビーチチェアの木板の感触。口の中でひくひく震える舌が、口内の粘膜をざらりと擦れあう感触。気にも止めずに流してしまう感触が、なぜだか無視できない。

「んひひ、おねーさん、身体びくびくしちゃってる。そんなに動いてると、余計にからだ熱くなっちゃうだけだよ〜?」

 シーラの懸念の声が頭上から降りかかる。
 実際のところ、シロエも首筋を延々と刺激され、笑い声を押さえ込むために身体の節々に力をこめていたのだった。暑気だけではない身体の火照りが、じっとりとした汗となって首筋を湿らせていく。

――そもそも私は熱中症なのだろうか。

 そんなことを思いかけた矢先だった。
 シーラだけでなく、次女イワナと長女サヨリも歩み寄ってくる。

「なあ、姉貴、もういいよな」
「はいはい……この方、魔法耐性が高いのかしら。シーラ、ちゃんと冷やしてるの?」
「冷やしてるってば。そんなに言うなら、お姉ちゃんも手伝ってよぉ」

 はいはい、と雑に返事した2人。そして、シロエを囲む輪がぐっと狭くなり、視界に3人の顔が入り込んでくる。

「んくっ、くっ、くくくくっ、な、なにっ……?」

 頭の中で黒い疑惑がもわもわと膨らんでいく。そして――

「シーラ。前に教えてあげたでしょう?人間の身体の仕組み」

――人間の身体。
人体の仕組みではなく、人間の身体の構造?

 シロエの中に疑問符がひとつ。しかし、それを問いただす時間も隙もなかった。

「ふぎゃっひひひひひひひっ!?」

 今までのそれとは異なる、強烈なくすぐったさと冷たさが背骨をぞくりと侵食する。
 指が、シロエの太腿の間に割り込んで、ぐっと押し込んだのだ。自身のそれとは異なり、圧倒的に肉感に富んだ太腿の扱いに苦慮しているようだが、パン生地を捏ね回すようにてのひら全体で太ももを鷲掴みにすると、たまらずシロエの背中がビーチチェアから浮く。

「ふひぃんっ!?あ、あ、あ、あ、っぐくくくくくくっ、な、にひひひひひひっ、ひいっひひひひひひひっ!」

 首だけ起こすと、前屈みになったサヨリと視線が合う。
 三角ビキニがはち切れんばかりの巨峰を見せつけるようにシロエの正面を陣取っている。
 艶やかでどこか官能的な顔だったが、舌なめずりをすると、どうにも小悪魔的に見えなくもない。
 無遠慮にシロエの太ももを左右に開かせる。そして、かき分けるように忍ばせた細長い指先がぐっと肉に埋められる。

「熱中症対策の基本のキ。動脈の通ってるところを冷やす」
「どーみゃく?」

 無邪気に首を傾げるシーラ。

「首筋、太腿、そんで――」

 寝そべるシロエの右側面に立つイワナ。彼女の指が、腋の下に捩じ込まれる。

「んぶふっ!?は、っ、やっ、あっくくくくくくっ、ふぅぅぅぅっ、いっっっっひひひひひひひひっ、や、あ、あ、あ、あ、あっくくくくくくくっっっ!?!?」

 腋の下に捩じ込まれたのは人差し指1本に過ぎない。それでも小魚のようにひくひくと指を曲げ伸ばしして皮膚をかき分けると、これまでよりも一段大きな悲鳴がシロエの口から漏れていく。

「ひょっとして、この程度で、もうくすぐったいのか?」

 横目でチラチラ盗み見ていたイワナが、核心に斬り込むような問いを投げてくる。

「っく、っ!っ、っ、っ、っふ、……ん、ん……まだ、身体、っっっ、だるいの、かもっ、しれなっ、は、っ、っっっ……!」
「ま、そりゃそうだよな。大人なんだから、くすぐったくないよな、こんなもん」

 奇怪なダンスをするように身体がひくついてしまうのは、あくまで熱中症だからと強がるシロエ。
 意地を張ってしまうのは、イワナ、サヨリの年長組が、ちょうどシオンやクラゲのような年齢と近しいように見えたせいでもある。

「ッッッ、は、あひゅひゅひゅふふふふっ!……ふぐっ、く、ンンンンっくっくくくくくくっ……ふっ、あぁぁぁっっっ!」

 しかし、強がってみせたところで、シロエの呼吸は徐々に短くなり、口数は少なくなっていくばかり。そして身体の反応は、徐々に大きくなっていき、責め手の目には隠せないものになっていた。

「は、ぁっ、くくくくくっ、や、んんんんっ、んっふふふふふふっ……!く、ぁ、っっっ、んんんんっ、んんんんんんんっっっ……!」

 首筋、太腿、腋の下。
 熱中症対策だなんだとかこつけて、動脈の通る箇所を押さえ込まれ、もはや身体がびくびく震えるのをどうすることもできないシロエ。
 当初の体を冷やしてあげるという目的は何処へやら、3人の指はシロエの身体を弄ぶ動きに変わっていた。

「んっ、ん、ん、ん、ッッッく、ぁふぁぁぁ……っっ、は、あっひひひひひひひっ、や、めなさっ……はっ、あ、ぁぁぁっ……っっっ、〜〜〜っ!」

 シーラの指が首筋から左右の鎖骨のあいだの窪みまでを往復していく。責めの指は虫の這われるようなぞっとする感覚を流し込んでいく。
 爪先で触れるか触れないかのタッチでうなじをさわさわくすぐられ、たまらず左右に首をすくめて、自身の肩と首でシーラの指を挟み込む。すると、もう片手側の指が伸びきった胸鎖乳突筋をするりと舐めまわし、新たな擽感が首筋から背筋へ、臀部へと抜けていく。

「んひひ、おねーさん、ほらほら、こっちの首がお留守でちゅよ〜〜あはは、おねーさん顔真っ赤♪熱中症なのかな?」

 あろうことか小学生ほどの女子に赤ちゃん言葉で揶揄われ、大学生で教育実習生でもあるシロエの頬がぱっと赤くなる。
 続く二言目のばかにした物言いに思わず怒りの言葉がでかけたが、首筋をなぞる指のまえにたまらず屈服してしまう。

「ふひゅっ、くっ、や、わきひひひひひっ、こっ、の……っ、くっあぁぁぁぁっ、くにくにひひゃふふふふふっ……!」

 イワナの指はシロエの腋窩にふれながら15度くらいの角度で指をぴこぴこ蠢かせているだけだった。本格的な責めとはほど遠いながらも、腋から胸の横を含む体側は、シロエの弱点だ。笑い出さないように我慢するだけで、既に肺がはち切れそうだ。

「ひひ。ほらほら、もみほぐすように、っっと……!」
「んぎひひひひひっ、く、んんんんんっ、や、めっ、くっ、ふふふふふふふっ。だ、めっだかっ……あふっ、んくくくくくっ……!」

 にひひ、と悪童の笑いで見下してくるイワナ。ルビーのような赤色の眼光は鋭く光っており、狙いを定めた猛禽か肉食獣か。それでいながらRECボタンのようにシロエの一挙一足を見逃さない。我慢の限界すれすれを狙って、責めの強度を加減している。

「うっふふ♪ここ弱いのねえ。さっきからビクビクしっぱなし。手に取るようにわかるわね」
「あっ、くっ、ぐぅぅぅっ、くっふふふふふふっ、あ、や、めなさっ、くっ、ぁぁぁっ、くっふふふふふっ、っっっっ……!」

 パレオの水着に巻いていたスカートの部分もはだけさせられ、剥き出しにさせられた太腿。白く長くゆるやかな曲線をえがいた太腿は、エンタシスの柱か。その柔らかな肉の柱を、サヨリの指がねちねちといじめ倒す。
 電極を刺されたカエルのように、下肢は不随意にひくひくと跳ねてしまう。太腿の間に割り込んで内転筋を揉みしだく指がたまらなくくすぐったい。下肢のなかでも駄肉のわずかに乗ったマシュマロに指が突き込まれる。
 べちゃりと五指を広げて太腿に張り付くサヨリの指は、糊で接着したかのように吸い付いて離れない。洗濯物をもみ洗いするかのように、太腿の柔らかいところをわしわしと揉んでいくと、シロエの身体がひときわ大きく跳ねる。太腿は人体の中でも大きな筋群なだけに、隠しきれない反応が責め手の指に伝わってしまう。

「ふふ、ホント弱いのねえ。どうしてこんな大胆な水着なんか着ているのかしら?っふふ。あ……こことか、このへん?」

 つん、と両の親指が水着で覆われた際どいところの肉をぎゅっと押し込む。

「ぎゃひひひひひっ、っ、くっ、ふ、んんんっ!!や、めなさっ、!っは、あっ、くくくくくくっっっ……!」

 快楽とくすぐったさの混じった強烈な刺激に、たまらずシロエの背中がビーチチェアから浮く。

「っふふ、こうされると……このやり方だと効くのねえ。じゃ、もっとやって……冷やしてあげましょうねえ」

 くすぐったさを誤魔化そうと、笑い声を堪えようと力む太腿。内燃機関のように太腿の内側には熱を帯びていた。
 三人の指がシロエの弱点をたちどころに暴いていき、どうすれば大きな反応を引き出せるか探り当てていく。「熱中症対策」という名目はどこへやら、三人の指はシロエをくすぐりいじめる色合いを帯びてきた。本気のくすぐり責めではないものの、シロエの身体を冷やす意図はもはや微塵もない。
 だが、責め手側の状況を慮ると、腋窩を責めーー冷やしているイワナとしては面白くない。サヨリやシーラと違って、腋窩だけは指の動きを封じようというシロエの抵抗が感じられる。辛うじて自由な人差し指がくにくにと腋窩の柔肉を掻き回している。しかし、他の指はシロエの体側と腕にがっちり挟み込まれて動けず、まるで拘束されているかのよう。

「にっひひ、おねーさん、腕ばんざーい、ってしてくれないと、腋の下冷やせねえんだけど♪」
「っの、あげるわけ、なっぐっくくくくくっ、ふひゅひゅひゅふふふふふふっ、や、あっくくくくくくくくっ……!」

 おそらくは弱点であろう部位を満足に責められない憤懣が爆発しかけたイワナ。
 しかし、金髪赤目で少年らしい顔貌が、悪巧みを思いついたかのように歪む。

「にひひ、『ウォーターバインド』っ!」

 次の瞬間、水色の鞭がシロエの四肢を掴み込む。

「んなっ、魔ほっ……づ、ぁっ!?」

 圧力かなにかで水を一定の形状に捏ね、それを触手のように操る魔法なのだろう。鞭の端々が水滴となってシロエの四肢や周囲の砂浜を濡らしていた。
 ビーチチェア直下の砂浜から出てきた4本の鞭がシロエの四肢に巻きつくと、そのまま互い違いの方向に引っ張ってしまう。
 結果としてシロエの身体は、ビーチチェアに寝そべりながらもX字に引き伸ばされてしまい――

「いい感じに縛れたな、どうよ、動けねーだろ?」
「っく、なによっ、これっ……っ!こっのっ……っっっ、〜〜〜っ!!」

 材質は間違いなく水のはずなのに、セメントで固められてしまったかのように、びくともしない。
 さらに手首と足首を押さえ込んだだけにとどまらず、そこから水の”枝”を伸ばし、シロエの手首とビーチチェアの脚や背中の板に巻きついてしまう。

「ぐっ、くぅぅぅぅっ、はっ、なしてっ、こ、のぉぉぉっ!!」

 ビーチチェアとひとまとめに縛られたシロエ。これでは、どんなにシロエが暴れても拘束から抜け出すことができない。
 そして術師であるイワナの両手が、シロエの眼の前でわきわきと蠢く。五指をがばっと開いて第二関節から先を前後させる動きは、これから思いきりくすぐってやる、という宣告以外の何物でもない。
 ひいっ、と恐怖のこもった息がシロエの口から漏れる。

「あは♪ひびり散らかしてやんの。じゃ、覚悟しろよ♪おねーさん」
「ま、待ってっ、もう分かったってばっ。だから、や――っっっふぁ、っっっっは、あっ、くっぐっ!っっんっふふふふふふふっ、もう、っっっこ、っのっ……〜〜〜〜っっ!」

 無遠慮に腋窩をかすめた人さし指が、シロエの窘める声をくぐもらせる。
 先程と責めの指は変わらない。ただ違うのはX字に縛り上げられて、薄桃色に染まった腋の下が無防備にさらされているだけだ。
 こそこそと腋のくぼみを撫で回す人さし指。その先のロングネイルがちいさく円をえがいて、シロエの弱いところをかりかりと引っ掻いて狂わせる。
 たまらぬくすぐったさと新しい種類の責め。力をこめて腋の皮膚を、肉を、神経を、内側に引っ込めようとするものの、その程度で指の追随が緩むはずもない。

「ふっひひひひひひひひっっっ、や、あっっくぅぅっふふふふふふふっ、も、だめっ、や、やめなさっっっ、んっくふふふふふふっ、あんまりっっ、大人をぉぉぉっふひゅふふふふふふっ、なめっ、なめっ……!は、ぁぁぁぁっ、ぶるぶるしっひひひひひ、しないでっっっ」
 
 両の腋に両の人さし指をあてがって、ぶるぶるとマッサージ機のように振動させる。ついに大人の威で脅そうとしかけたシロエだが、たまらず屈服し静止を求めてしまう。

「はぁ?大人がなんだって?おねーさん♪大人なら、子供のくすぐりなんかで、げらげら笑ったりしないもんな、こんなふう、にっ!!かりかりかりかり、かりかりかりかりかり〜っ♪」

 挑発混じりに剥き出しの腋の下を爪でかきむしる。鋭い刺激が電流となって上半身をびくつかせる。

「ふぎゃひひひひひひひっ!?はっ、あ、あ、あ、あ、あ、っっっだ、めっ、おねっ、ぎっひひひひひひっ、やめっ……やっ、ふっくくくくくくっ、はぁっ……!あぁっふふふふふふふふふふっ!や、めなさっ、は、ああああっ!」

 くすぐったいとは言い出さないシロエ。しかし、自身の手足を縛る水の縛鎖から逃れようとあらん限りの力をこめて抵抗をしていた。
 仮にこれが金属の鎖であったならば、じゃらじゃらと音が鳴ってしまうことだろう。音が立たないから、抵抗を激しくしても責め手を興奮させるリスクが低い。それだけがシロエにとっての唯一の救いではある。

「なあ、姉貴、シーラ。あれやろうぜ、なんか人間のさあ……」

 シロエの顔を覗き込んでいた3人が顔を見合わせ、悪辣な笑みを浮かべる。

「またやるの?好きねえ、じゃあ今日はシーラが合図係ね」
「ぐっひひひひひひひっ、なにをっ、は、ぁっ!?」

 次の瞬間、シロエの肘と膝と耳の裏を触られて、ぴくりと身体が驚いてしまう。
 X字につながれたシロエ。
 両の肘には、イワナの人差し指。
 両の膝には、サヨリの人差し指。
 耳の裏には、シーラの人差し指。
 合計6本の指が降り立った。
 別段くすぐったいところではないが、と訝しんでいるシロエだったが――

「いっぽんば〜し」

 幼い声が降ってきて、シロエの蕩けた笑顔が、次の瞬間、強烈に引き攣る。
 耳の裏に陣取っていたシーラの人差し指が、そろそろと降りていき、首筋へと向かったからだった。
 遅れてサヨリの指が膝から徐々に胴体に向かってよじのぼっていく。膝から、太腿の肉畑を踏みしめて。
 そして肘からはイワナの人差し指が、腋に向かってじわじわと迫ってくる。柔らかな肉蕾めがけて、じりじりと。

「なっ、ぁ、っっっっ!?」
「熱中症対策ね。脳血流を確保するために、手足の末梢から中心に向かってマッサージ」

 サヨリがにっこり笑って一言加えるが、シロエの身体に突き立てられた指が「マッサージ」であるはずがない。
 責めの名前は、一本橋こちょこちょ。
 よりにもよって、子供向け――否、乳児向けのくすぐり遊びでもって、大の大人を屈服させにかかる気か。

「ふ、ざけっ、は、あ、あ、あ、あ、あ、っ、おね、がっ、それっ、以上はっはぁぁぁぁっは、ふっふふふふふふふふっ、やめっ、やめっ、ぎっひひひひひひひひひっ!」

 膝から太腿へ、おそらくは鼠蹊部へ。
 耳裏から首筋へ、そして鎖骨の狭間へ。
 肘から二の腕へ、腋のくぼみの最奥へ。

 蟻の速度で歩む人差し指が、身体のなかで加速度的にくすぐったさを増長し、シロエの身体の中で自己主張を始める。
 脳内の防衛本能が逃れろとひっきりなしに警鐘を鳴らすが、水の鎖で縛られたシロエになす術はない。

「っふ、は、あっ、あっ、あ、あ、あっ、〜〜〜〜〜っ、っふ、んんっ、〜〜〜っっっ!」
「ふふ、こういうことされるのが好きなのねえ。一向に反撃してこないなんて」

 くすくすと笑うサヨリ。前屈み気味に太腿を指でねちねちとねぶる様は、妖艶な風情であるが、それを楽しむ余裕はない。
 笑い出してしまいそうなほどの刺激がシロエの神経をざわざわと刺激していく。
 身体がふわりと浮くような感覚、制御が効かなくなっていく感覚。
 くすぐったいのは辛いことなのに、そこそこ強い被虐嗜好ゆえか、その刺激の波に呑まれることを是と捉えていた。もう我慢せずに笑い転げてしまえよ、と頭の中の悪魔が囁きかけてくる。
 同盟仲間であるシオンは、限界まで昇り詰めさせられる感覚や、ランナーズハイに似た幸福感+疲労感を好むのだが、それと似ているのかもしれない。

「っっっ、あっぐっくくくくくっ、ふぅぅぅぅぅぅっ、っっっっくっひゅふふふふふふっ、あ、あ、あ、あっ、あっあっあっぶふっ、ぐっ、く、く、くっ、ふふふふふふふっ……!」

 そういう甘い陶酔に身を浸すべきではない。シロエは先生なのだ、と彼女の頭の中の天使が諭してくる。
 生徒に翻弄されることがあってはならない。先生に対してちょっかいをかけてくる生徒なんかで声を荒げてはならない。

「んっひひ、おねーさん、まだ一本橋こちょこちょの一本目だよ?」
「ふ、もう限界じゃん。五本行く前に気ィ失っちまうんじゃねえの?」
「縛ったり焦らしたりしてるからじゃない?これだけされたら、どれだけ鈍くても笑ってしまうものよ」

 だが、仰臥しているシロエを上から覗き込むような姿勢。シロエから見た3人の少女は、まるで歯医者か外科医か。
 大きくくりくりとした可愛らしいシーラの瞳は、逆光のせいで、シロエの一挙一足を漏らさず記録するカメラのレンズ。
 こども、なのに。
 こども、なんかに。
 その矜持ひとつで、悲鳴と笑い声を喉元ぎりぎりで押し殺していた。

 余裕のないまま身悶えしつつも、体のなかの全ての神経が6本の指に集中してしまっている。
 だからだろう。

「ふ〜」

 無防備な耳の中に、不定形の吐息が吹き込まれる。幼く甘ったるいシーラの吐息は、人の理性を溶かすほどに魔的で。

「んぐっ!?っふ、ぁ――」

 知らずシロエの身体がぐったりと脱力する。

 一本橋こちょこちょの定石。往路はじわじわ責めて、復路で激しくくじり立てる。
 行きは良い良い、帰りは怖い。
 んひひ。くひひ。うふふ。
 三者三様に、シロエの蕩けた顔を一瞥し――

「「「こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ!!」」」

 人差し指の先で、腋のくぼみを、太腿の付け根を、首筋の付け根を激しくくじり立てる。
 ジェットコースターの落下の瞬間のように、擽感の暴風雨がシロエの体内に炸裂した。

「あっひひひひひひひっ!!やめっ、や、あっ、あ、あ、あっっっ……〜〜〜っ、――っははははははははははははっ!!やっ、やめなさっ、ふっひひひひひひひひひっっっ!!おねがっ、やめなさひひひひっ!!これっ、命れっぎゃっひひひひひひひひひひっっっ!!指離ひへへへへへへへへっあっはははははははははははっっっ!!」

 6ヶ所とはいえ、人差し指一本。それでも、無数の虫に集られているような不愉快さと、それを上回る強烈なくすぐったさを前に、ウォーターバインドの下でシロエの身体がびくびくと跳ね回る。

「うふふ♡元気ねえ」
「はは、一本橋でこのザマかよ。五本でやったらどうなるんだか」

 嘲る声に逆らう余裕も既にない。焦らしに焦らされ、脱力させられ、その直後に人差し指限定とはいえ激しいくすぐり責めを加えられたのだ。
 感度は限界まで上がり、手心を加えているはずの弱い責めにさえ笑い声を漏らしてしまう。

「んっふふふふふふふふっ!!や、めっ、ふひゃひゃひゃひゃはははははははははははははっっっ!おふゅへへへへへへへへへへへ、あなひゃひゃひひひひひひひっ、もうやめなさひひひひひひひひっっっ!!めいれっ、歳上の言ふぐっふふふふふふふっ、あっはははははははははははははははははははっっっ!!」

 肘から腋へと向かったイワナの指は、その半分にも満たない速度でまだ腋窩の周辺を彷徨っている。
 鎖骨の間に至ったシーラの指は、顎にまで戻らず鎖骨の筋――皮膚の薄いところをねちねちとねぶる。
 太腿の内側という脂肪のたまったところには、秒速数ミリの凄まじい鈍足でサヨリの指が捩じ込まれる。

「おねがっ、も、はなひてへへへへへへへへっ、こんなの熱中ひょほほほほほほほっ、ちがっ、違うれひゃはははははははははははははっっっ!!あぁぁぁだめだめだめへへへへへへへへへへへっっっ!」

 熱中症対策と称してシーラの手指で冷やされた身体は、再び熱を帯び出していた。パラソルの下で日陰になっているというのに、シロエの顔は風呂上がりのように茹ってしまっている。

「はひゃひゃひゃひゃははははははっっっ!はぁっ、あ、あっふふふふふふふっ!!も、やめなさっ、は、あひひひひひひひっ、くぅっ、ふぅっ、ふ、ふ、んぐくくくくくっ……!」

 長い長い一本橋の復路も終わりを迎えつつあり、6本の人差し指は両肘、両膝、耳の裏付近に戻っていた。
 二度と経験したくない焦らしくすぐりも、しかし全体に対して進捗は1 / 5。それも――

「それじゃ、いっくよーっ!2〜〜ほんばーしっ♪」

――徐々に負荷が強くなる。

「ふぎゃひひひひひひひっ!!や、そん、なっ、あ、あ、っっっは、あ、あっ、あああぁぁぁぁぁっ、く……ぅぅぁぁぁぁぁぁっ、や、ぎっひひひひひひひっ……!」

 人差し指に加えて、シロエの肌に中指が降り立つ。
 この手の責めに手慣れているのだろう。イワナは敢えてくすぐったくするのを控えているのか、人差し指と中指を人間の二足歩行に見立てて、ゆっくりと腋窩に進行させていく。
 肘を踏んだ中指。その反動で浮かせた人差し指を二頭筋の膨らみに沈ませる。そしてその反力で中指を浮かせ、長い腕のピークへ。
 無防備な腋の下にむかってひたひたと歩み寄る指先に、シロエの背筋がぞくぞくと粟立つ。

「くっひひ♪もー、おねーさん、こどもじゃないんだから、イヤイヤしちゃダメでしょ♪」
「ぎゃひっ、くっ、ふひひひひひひっ、や、あっふふふっ、くっ、び、かりかりしひひひひひひひひっ、ふひゃふふふふっ、んくくくくくぅっ、ふひゃひゃひゃひゃひゃっ!」

 シーラの人差し指と中指。その爪の先で切なくシロエの肌をかりかりと切なくかき乱す。モデルのように長くほっそりとしたシロエの首は、いまや4本の指に挟まれて、子供のようにぶんぶんと左右に振り乱す。責め手の外見が児童で、受け手がいかにもなキャリアウーマンであることも相まって、滑稽な絵面ではある。

「ふっくくくくくくくっ、お、ねがっ……ちょ、長女っっっなんれひひひひひひっっっ、この2人っっっ、止めっ、止めっあふぁっ!?あっぐっふふふふふふふふっ!」

 太腿の責めが緩いように感じたシロエ。妹達と比べて良心があることを期待した彼女が懇願しても、責の手は止まらない。
 というより、上半身の責めを強調するつもりなのだろう。実際シロエの集中力は上半身に逃げていて、シーラとイワナの責めに悶えてしまっている。

「ほらほら、アタシの指、腋の窪みにたどり着いちゃったぜ、ほら、つん、つん♪」
「ぎゃっひひひひひっ、ゆ、びっ、とめっ、離ひっくくくくくくくっ!」

 腋の窪みをえぐる4本の指がシロエから断続的な笑い声を吐き出させる。

「ふふ、太腿くすぐったい?くすぐったいのに、こんな水着なんか着ちゃって、もう、本当に……ふふ、ぐにぐに、ぐにぐにぐにっ」
「ふぎゃひひひひひひひひっ、や、あ、あ、あ、あ、っっっっふ、くひひひひひひひっっっ!!」

 はだけたロングスカートの下、妖艶な色と光を反射する太腿にかぶりつく4本の指が、シロエの下肢を戦慄かせる。
 そして――

「もー、おねーちゃんったら。ほら行くからね、せーのっ」
「「「こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ!!」」」

 容赦のない総計12指が腋窩と太腿と首筋をくじり立てる。

「ぎゃっはははははははははははははははははははっっっっ!!あああああああっあ、あ、あ、あ、あ、あっひゃひゃひゃひゃひゃはははははははははははははっっっ!!や、もう無理だかっ、ぎひぃっひひひひひひひひひっ、あぐっふへへへへへへへへへへへへへっっっ!!もう死んじゃうれへへへへへへへへっっ!!」

 火照る身体は既にじっとり汗ばんでいる。くすぐられている箇所が動脈付近ゆえに、腋窩やうなじ、太ももはすっかり湿っている。自身の汗が潤滑油となって責め手の指の摩擦を軽減する。

「ほらほら、やっぱり腋の下は弱ぇなぁ」
「ふぎゃぁあああああっははははははははははっっっ!!しっ、いっひひひひひひひひひひっ、やめっ、なさっひゃっはははははははははははっ!!だめっ!それダメへへへへへへへっ!!ぐりぐりしないでへへへへへへっ!!」

 人差し指と中指をドリルに見立てて、腋の窪みをぐいぐい押し込む。繊細ではない力技だが、新鮮な擽感を流し込まれ、身悶えしながら笑い転げてしまう。

「えへへ、おねーさん、ここもくすぐったいでしょ?」
「ぐっくっくひひひひひひひひっ!!お、となをっっ、なめっ、なめへへへへへへへっああああああああっだめだめだめへへへへへへへっ!!爪っ、つめだめりゃへへへへ反則っ、はんぶふっぐっくひひひひひひひひひっ!!」

 人差し指と中指の4本の爪が首筋を蹂躙する。シーラの小さな掌では責めの範囲こそ狭いものの、そのぶん見つけ出した弱点には執拗なまでに指を這わせていく。

「ふふ、腰浮いちゃってるわよ?」
「あっ、しはっ、ぎゃっひひひひひひひひっっっ!!そんなとこ、触んぎゃっひひひひひひひひひっ!はああああぁぁぁぁぁっはひひひひひひひひひひっ!?」

 サヨリの指も太腿の膨らみを豪快に押し込んでいく。責めの指が増えたことで、シロエの中に流れるくすぐったさも倍化したのだろう。指が押し込まれるたびにビーチチェアから腰が浮く。際どいところをぐにぐにと指で押し潰し、しかし快楽ではない嬌声をあげさせる。

「あらあら、2本橋でこんな悶えちゃって……♡」
「こんなビクビク跳ねるんだな。胴体ごと縛っときゃよかった」
「いっひひ。おねーさん、まるで魚みたい♪」

 ぞわぞわとしたくすぐったさと弾けるようなくすぐったさが身体の中でぐちゃぐちゃに混ざり合って、シロエから新たな反応かより強い反応を引き出していく。
 目尻からはとうに涙が滂沱と溢れ出し、ただただ泣き笑うシロエ。いまや子供達の玩具だった。みじめな有様に成り果てた彼女の外見には、もはや畏敬すべき教師像など感じられない。

 さらに狂わせるべく関節の節々にまで降りてきた指が、とってかえして――

「3ぼんば〜しっ♪」
「ふへぇへぇへへへへへへへへへっ、おねがっ、もうやめてっ、ゆるひへへへへへへへっあっははははははははっっっ!!」

 18本の指が胴体の急所に向かっていくのをどうすることもできない。
 シーラとイワナは人差し指、中指に加えて薬指をあてがい、腋窩と鎖骨へとのぼっていく。本腰を入れてくすぐっているわけでもないのに、壊れた水道管のように笑い声を撒き散らすシロエ。さわさわとした弱い刺激であっても許容量を遥かに超えていたと見える。
 長女サヨリは、人差し指と中指に加えて、親指を太腿にあてがっていた。あてがった親指と、3回目の往路を迎えた2指で、太腿の柔らかな肉を鷲掴みにする。

「ぎゃひひひひひっっっっ!?や、あ、あ、あ、あっだめっ、だ、掴んぎゃっひひひひひひひっ、ゆらっ、は、ぶるぶるしちゃやひゃははははははははははははははっっっ!!」

 鷲掴みにしたシロエの駄肉を親指の腹をあてがって、強烈に揉み回したのだ。弱く切ない刺激から一転して、神経すべてを根こそぎ揺らすような刺激が引加され、シロエの腰がびくんと跳ね上がった。
 四肢を縛るウォーターバインドさえもが軋むほどの激しい抵抗に、サヨリはくすくすと笑いかけた。

「ふふ、やっぱり人間の脚みたいに柔らかいところには、強い刺激を加えてやるのが良さそうねぇ。ほら、これはどうかしら?」

 てのひら全体を太腿の内側にあてがって、肉食動物が牙を突き立てるかのように、親指一本をねじこむ。

「んぎっひひひひひひっ!?しょ、れっ、それダメダメダメだめへへへへへへへへっっっ!!おふへへへへへへへへっっっ、おね、がっ、」

 懇願虚しく、突き立てられた親指が太腿の内側に食い込んだままずるずると股関節に向かって進行していく。
 ローラーで押し潰されていくように太腿がぐいぐいと圧迫され、そのたびに電撃じみたくすぐったさが下半身から下腹にかけて暴れ回る。

「あがっぎっひひひひひひひひひっっっっ!!んぐくくくくくくっふひゃひゃひゃはははははははははははははははっっっ!!や、も、まっ、は、ぁぁぁぁあああああああっっっっ!!」

 不随意に浮き上がった腰は、ただサヨリの指を振るい落とそうと不随意に持ち上がったり左右に捩れたりする。そのたびに縛られていない胴体の――曲線に富んだボディラインがくねくねと淫らによじれて、責め手の目を愉しませる。

「んひひ、おねーさん、おっぱいぶるぶる震えてる……ねーえ、触っていい?」
「後でな。とりあえず一回くすぐって落としてからな」

 熱中症対策という名目さえ捨てたイワナ。実際シロエの身体は汗と熱気で湿っており、サンオイルでも塗りたくったかのよう。

「はは、ぐちょぐちょじゃん。しっかり洗ってやんねえとな――く、す、ぐ、り、で♪」

 早くも腋窩にたどり着いたイワナの指は、シロエの腋の下にたまった汗をすくいとる。そのまま指の腹でさわさわと撫で回し、シロエから笑い声を吐き出させる。

「んひひ、おねーさん、3本橋で限界なんだ。もうやめてほしい?」
「ぎっひひひひひひひっ、ふひゃははははははははははははははははははははっっっ、や、めっ、いひぃっひひひひひひひひひっっ、やめへへへへへへへっ!もう限界りゃからっはははははははははははははっっ!」
「んっひひ、やーめないっ、せーのっ、」
「「「こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ」」」

 三本橋の帰り道。凄まじい刺激が身体の中を突き抜けて、頭の中が一瞬スパークする。
 シオンと違って近接戦闘のセンスの代わりに体力で劣っているためか、意識が一瞬とびかける。

「っは、っっっっはぎゃぁぁぁぁぁぁっひひひひひひひひひひひっっっ!?や、んげへへへへへへへへへへっ、ひぃっ!ひ、ひっひひひひひひひひひっ、やめっ、やっ、ふひぇへへへへへへへへへへへへっ!!」

 合計18本の指が、腋を、首を、太腿を蹂躙する。
 腋も首筋も堪え難いくすぐったさだ。
 純粋に弱点である腋は、何の工夫もなく指や爪が関節の可動範囲が許す範囲で往復しているだけで、背中がびくびく浮いてしまう。
 力をこめてくすぐったさを軽減しようとすれば、首筋に触れたシーラの指が、ぞくぞくとした悪寒にも似たくすぐったさを流し込んで、内側から抵抗する力を削いでいく。

「うっふふ、ここのふ・と・も・も♡ふふ、ここを〜っくふふ、ぐにぐに……ぐにぐにぐにぐにぐにぐに……♪」
「ふぎゃっひゃっひひひひひひひひっっっ!きっ、っっ、ついっ!きついか、っっっぎっひびゃひゃひゃひゃひゃひゃははははははははははははははははっっっ!!」

 だが、特にきついのはサヨリの指ーーそれも親指だろう。
 ひき肉をこねるかのように、親指を太腿の付け根にあてがって時計回りに、反時計回りに揉み解すと、ツボを押されたかのようにシロエの身体は脱力させられる。
 そして、それを上回るくすぐったさが流し込まれると、シロエの逆ハート型の豊臀がビーチチェアから浮いて海老反りになる。抵抗しても無駄よ、と言いながら、中指、人差し指、親指で太腿の内側に宿った駄肉をーー世の女子がなくしたいと思っている肉を摘む。

「ぎゃひぃっ!?」

 すると、シロエの宙に浮いた腰がひくひくとくすぐったさに震えると、力尽きたのかビーチチェアにぽすんと落ちる。気持ちよくさせないギリギリの範囲を狙って責める。その技巧の高さに、ただただシロエは笑い声を弾ませるのみ。
 既に身体は汗ばんで、曲線に富んだ体側のラインを淫猥に光らせる。
 それを肴にじっとりとシロエの弱点を弄ぶイワナとシーラ。
 鎖骨のあたりから耳の裏あたりまで。腋の窪みから肘まで、太腿の付け根から膝まで。定規と同じか、少し長い程度の距離を、たっぷり3分かけて走破する。まるで尺取虫の速度でシロエの肌を舐めそぼっていく。

「いやははははははははははははっっっ!!もうやだっ!やめへへへへへへへっ、おねがっ、おねがいよほほほほほほほっっっ!!ぎっひひひひひひひひっっっ!?!?」

 腋窩から指を離したというのに、息継ぎする間さえ与えずにーー

「よんほんば〜し〜っ♪」
「ふぎゃひゃひゃひゃひゃはははははははっっっ!!お、っふひぇひぇへへへへへへへっっ!!せ、めへへへへへッッッや、ふぎゃははははハハハハハハッッッ!!」

 一本橋と二本橋とは違い、もはや往路の焦らしでさえも堪え難い。というよりも、往路と復路で責め方の種類が異なるだけで、シロエの中で暴れ回るトータルのくすぐったさはなにも変わらなかった。

「お、責め?なんだ。もって責めてほしいのか?」

 言葉尻を捉えたイワナが煽るようにシロエに問いかける。もちろんシロエの要求は、「せめて休ませて」以外の何者でもないのだが、都合のいいように懇願を跳ね除ける。

「はは、がっつくなって。せっかく焦らしてんだからさ。こ、ん、な、ふ、う、にっ、こちょこちょこちょこちょ……こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょっっっ!!」
「ぎゃっハハハハハハははははははははっっっ!!やめ、やひゅふふふふふふふふっっっ!!やす、ませっ、休ませへって言っひゃっはははははははははははははははははっっっ!!死ぬっ、死ぬぅぅぅうっふふふふふふふふっっっ!!ぎゃひひひひひひひひひひひひっっっ!」

 親指をのぞいたすべての指が腋窩の窪みに向かって滑っていく。まるで獲物に向かって走り寄る肉食動物のように腋窩に群がる4本指は、さながら獣の手脚であると同時に、くすぐったさを叩き込む牙。腋の肉をかりかりと爪の先で引っ掻き回したかと思うと、指の腹を突き立ててぶるぶると震わせる。

「んひひ、おねーさん、首だってくすぐったいもんね♡ほら、さわさわ……さわさわさわさわさわ……♡」
「あ、あ、あ、あ、あっははははははははははははははははっっっおねがひひひひひひひっ、もうサワサワしにゃひでへへへへへへへへへへっっっ、あたっ、頭おかひくなっひゃふふふふふふふふっっっ!!わわたしが悪かったかりゃははははははははっっっ、もう許ひぇへへへへへへへっ!!」

 歳上の人間を征服する快と悦に身をどっぷり浸したか。この場ではいちばん幼い顔立ちのシーラが、首筋の血管のあたりをなぞりながら、耳元で「さわさわ」と囁いて、シロエを内側から炙っていく。
 幼子は遊びの天才である。首筋という円柱を指で往復する遊びに飽きてきたのか、シロエの耳の中に吐息を流し込んでいく。
 イワナやサヨリが強烈にくすぐって身体を浮かせ、シーラが耳元に息と声を流し込んでむりやり脱力させている。

「ふふ、今更だけど、いい按配の太さねえ、鷲掴みしがいがあるわね、こんなふう、にっ♡」
「ひっ、ぎっ、っはははははははははははははははははっっっ!や、あひっ、ひぃっひひひひひひひひひひひっっっ!だ、めっ、や、壊れちゃっぎゃっはははははははははははははははははははっっっ!!揉み、もむにゃははははははははははははははははははははははっっっ!!おねがひっ、ゆるひへへへへへへへへへへへへへっ、おねがいよぉぉぉぉぉっ!!」

 くすくすと笑いながら指4本で太腿を揉みしだくサヨリ。小指をのぞく全ての指で、シロエの駄肉をぐにぐにと揉んでいく。
 実習生とはいえ立ち仕事をしているためだろう、シロエの太腿にはそこそこに分厚さがあり、しかし肥えているわけではない。絶妙な太さと柔らかさを兼ね備えた美脚をねちねちと4指で揉み転がす。

「ふふ、お姉さん、もう壊れそう。無様ねえ」
「ほら、ここ、思いきりくすぐってやるからよ」
「いっひひ、おねーさん、もう気絶しちゃいそうだね。顔真っ赤」

 合計24本の指が、腋窩や太腿や鎖骨の間から引き返していく。思い思いにこちょこちょと耳元で囁きながら、シロエをくすぐる。

「ふひゃひゃひゃひゃひゃははははははははははははははっっっ、も、許っ、限界っ、限界だっへへへへへへへへへっ!言っぎゃっははははははははははははははははっっっ!!そこだめっ、そこだめなんだっへばはははははははははははははっっっっ!!」

 腰がバスケットボールのようにビーチチェアの上で弾んで、壊れたスプリンクラーのように笑い声を吐き出すシロエ。
 身体の神経が剥き出しになっているのではないかと思うほどにくすぐったい。にもかかわらず、視界の片縁がぼぅっと黒くぼやけてくる。口からは狂ったように笑い声を弾けさせながらも、ようやく気絶できると頭の片隅で実感しかけ――

「ふふ、だめよ。気絶なんて。――『ヒール』」

 サヨリが唇をすぼめて魔法を唱えると、シロエの身体が薄緑色の靄で包まれる。まるで興奮剤を打たれた鼠のように、気力は萎え果てているのに身体だけが妙に軽い。視界もクリアになって、にまにまと下卑た笑いを浮かべるサヨリ達の顔さえ見てとれる。
 回復魔法。味方にとっては文字通りの癒しだが、拷問の受け手に対しておこなうのは、責めの延長でしかない。
 つまりは、もっと苦しめ、と言外の命令で。

「や、う、嘘っ……もう、や、やだっ……って言っ――っぎゃっははははははははははははははははははっっっ!!ああ、っ、っ、あっあっはははははははははははははははははははははははははははははっっっ!!しぬっ、死ひひひひひひひっっっっ!!」
「うっふふ。大丈夫大丈夫。死なせないわよ……暫くは、ね♪」
「はは、姉貴、鬼畜だな。ま、このまま四本橋で終わらすのも半端だし」
「いっひひ、それじゃいくよ♪ご〜ほんば〜しっ♪」

 さわさわと5本の指がシロエの素肌に降り立ち、なめらかな皮膚に介して直下の神経に擽感を流し込む。
 親指から小指まで全ての指がシロエの急所を暴き立て、激しくくすぐる。

「あ゛ぁ゛ぁ゛っっっっははははははははははははははっっっっ!!や、死っ、ぎゃっはははははははははははははははははははははっっっ!!ひぃっ、ひ、ひ、ひっ、ひっひひひひひひひひひひっっっ!」

 楚々とした佇まいのOLという印象だったが、今では大人らしい立ち居振る舞いなど望むべくもない。
 鳶色の長髪を振り乱し、痩身をビーチチェアから浮かせては打ちつける。余裕のあって楚々とした印象など見る影もない。ウォーターバインドの縛鎖から逃れようと、ただ四肢に満腔の力をこめるが、どうすることもできずに30本の指に蹂躙されるのみ。

「ほらほら、腋はやっぱくすぐったいよなぁっ!!」
「っははははははははははっっっ!!もう、やめっ、無理ひひひひひっ、ギブっ、ギブだってばっははははははははははははっっっ!!ぎゃっひひひひひひひひひひっっっ!!おねがっ、わきこちょこちょしないでへへへへへへへへへへっっっ!!」

 X字に縛られて、無防備に開いた腋の下を、イワナの指が蹂躙する。人差し指から小指まで、爪の先でかりかり鋭い刺激を加えたかと思えば、指の腹で神経丸ごと捏ね回していく。残る親指は、腋のような複雑な箇所を責めるには、いささかずんぐりむっくりしているかに思えたが、肉の布団にずぶりと突き立て、強引に揉み転がすのにうってつけだろう。切ない刺激から強烈なくすぐったさまで、よりどりみどりだ。
 腋窩に突き立てた親指を体側に沿って――脇腹のラインに向かって力を込める。そして引き伸ばされた腋の皮膚に、残りの4指を突き立てておもいきり掻きむしる。引き伸ばされた分だけ腋窩の皮膚が薄くなり、よりくすぐったさが身体の中に伝わって、シロエの身体のなかで散弾銃のように擽感が爆ぜる。

「あら、太腿ぐにぐにすると、ほんと面白いくらいびくついちゃってるじゃない。ふふ、大人なんだから、これぐらい堪えてもらわないと困りますわねぇ」
「ぎっひひひひひひひひっっっっ!!あ゛、ぁ゛、あ゛っ、あ゛、っは、あ゛あ゛あ゛っははははははははははははははははははははっっっっっ!!ふともも、っっっ!!ぐにぐに、し、やっひゃははははははははははははははははははははははははははっっっっ!!」

 五指の解禁に伴い、てのひら全体を使ってシロエの太腿を揉みほぐしていくサヨリ。しかしこれまでの責めでシロエの反応を学んだサヨリは、ぜったいに気持ちよくさせないつもりか。敏感な箇所を避けて、ただひたすら擽感を流し込んでは、シロエを内側から悶えさせる。
 指先に込めた力で太腿の脂と肉を押し潰し、弾力で指が突き返される。寄せては返す波濤のように、シロエの太腿が指の動きに合わせて波打つ。それとともに、シロエの背中はビーチチェアから浮いては沈んでを繰り返す。

「ほらほら、首ぶんぶん振っちゃって、どうしたの?」
「ふひぇひぇひぇへへへへへへへへへへっっっ!!だっめぇぇぇっ、くびわしゃわしゃひひぇへへへへへへへへへっっっ!やっ、あ、あっくふふふふふふふふっ、ひぃっひひひひひひひひひっっっ!!だめっ、あたま、おかしくなっひゃふふふふふふっ!」

 ほっそりとした首筋を包み込む5本の指の蠢きは、宝石を扱うかのように繊細で、それが余計にシロエを苦しめる。分かっていて責めこむあたりは確信犯か。
 容赦なくねちねちと爪の先で首筋を舐め回したかと思えば、猫と戯れる容量で鎖骨のあたりをわしゃわしゃと爪先でくすぐる。鎖骨から耳の裏にかけて筋肉があって、シロエがひいひい笑うたびにそこが引き攣って、僅かに膨らむ。首筋は単なる円柱と見せかけて意外にも複雑な構成をしていることを思えば、責めこむのもなかなか面白い。
 喉をぐっと親指で押さえこんで、呼吸を封じこむ。首筋を切なくかき乱して、イワナとサヨリの責めを引き立てる。三姉妹でもっとも幼いながらも、責め筋は姉に勝るとも劣らないのだから、行く末が恐ろしい。

「あっはははははははははははっっっ!!もうだめっ、ゆるしへへへへっ、もう限界なんリャへへへへへへっ!許さないかりゃははははははははははっっっ!おぼえへへへへへへへっ、ぎひぃっっひひひひひひひひひっっっ!!」

 長時間に及ぶ責めで頭が茹ったシロエ。責め手3人に許しを乞うたり、報復を宣告したりと、言っていることに一貫性はもはやない。

「「「こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ!!」」」

 堪え難い五本橋の復路は、肉食動物の捕食か、往路にも増して激しくくじり立てるものの、既にシロエの許容量をはるかに超えているためか、笑い声に変化はない。

「あっははははははははははははははははははっっっ!!もう、いやぁぁぁっはははははははははははははは!!ふひゃはははははははははははははははっっっ!!」

 回復した体力も既に風前の灯。それでもようやくこの責めが終わるのだと頭の片隅で希望を持ちかけ、そしてその通りに責めの指が中断される。

 ビーチチェアから胴体を浮かせてブリッジに近い体勢になっていたシロエ。唐突にくすぐったさが止み、それと同時にビーチチェアにぐったりと総身が落ちる。
 熱中症対策と言いつつ、身体はすでに火照り、くすぐりによる呼吸困難で意識は飛びかけていた。
 きりりとした大人の風貌はどこへやら、遊び疲れた幼児のようにぐったりとした表情を浮かべていて――

「ははっ、もうくたばりかけてやがる。まだまだ途中だってのに――ぁ、なんだよ?」

 イワナがなにかを言いかけ、突然横を向いて、誰かに話しかける。
 楽しみを中断された子供そのままに、声色に不機嫌な気配が混ざる。
 シロエも視線のあとを追っていくと、そこにはもう3人の少女がいた。サヨリ、イワナ、シーラと同じく、顔立ちは整っているものの、上半身に対して下半身の肉付きが乏しい。水着姿の観光客といった風情ではある。
 新たに加わった彼女たちが何者であれ、先ほどまでシロエを責めていた三姉妹と同族だなと思いかけ――

(……同族?)

「サヨリ、その人、あとでこっちにも分けてくれない?」

 その人、と言ったときにちらりとシロエを一瞥していた。

「さっきまであっちでプレイヤーをひとり食べていたでしょう?」
「マジのガキだったから、すぐにくたばったんだよ。この人、少なくとも五本橋まではもったんだから、メシとしては上等だろ?残り滓でいいから分けてくれない?」

 割って入ってきた3人組は、シロエから数十メートルほど離れたところで1人少女をくすぐり虐めていたらしい。遠目でしか分からないものの、ビーチチェアにX字で手足を縛られており、いまのシロエと状況は似ている。くすぐり責めの余韻が激しいのか、むず痒そうにひくひく戦慄いている。

 食うだの、メシとしては上等だの、酷い言われようだ。内容はよく分からないが、ろくな目にあわないことだけは直感した。
 サヨリが、ふ、とシロエを見下すように笑う。

「もちろんいいわよ?残り滓でよければ。ええ、このお姉さん、ソロじゃなくてパーティーで来てるし、うまく立ち回れば当分の食事は困らなさそうだし♪とはいえ、あっちの女の子、まだ意識が残ってるんだから、しっかり味わってからにしなさい?」

 はいはい、と言って闖入してきた3人組が立ち去っていく。
 元の通り、ぐったりくたびれたシロエを、サヨリ、イワナ、シーラの三姉妹が取り囲む。

「ふふ、じゃあこっちも楽しみますか」

 そう言って、わきわきと指を蠢かす3人。

 病的なほどに細い下肢。
 時折、些細な違和感を感じさせる言葉遣い。
 異様に冷たい掌。
 シーラ→シーラカンス。
 イワナ→岩魚。
 サヨリ→細魚。

「ま、さか――」

 色々な違和感が組み合わさって、一つの説に思い至る。
 最初は親切心のある三姉妹プレイヤーで、PKだと思っていたが。彼女たちは人型のモンスターなのではないか。

「あら、ようやく気づいたの?お姉さん、あの浮輪のなかのスライムに責め立てられてとっくに体力は尽きていたのよ?」
「で、ここまで――アタシら人魚の拷問場まで連れてきたってわけ」
「っっっ、人魚……っ!?」

 人魚。マーメイド。
 上半身は人間で、下半身は魚という水生生物。
 ローファンタジーやゲームでありがちなモンスターだが、このVRゲームにも実装されていたらしい。

(っく、足が生えてるのは、擬態ってこと?)

 おそらくプレイヤーをーー餌を見定めるための偵察のために進化したのだろう。海底ダンジョンはいろいろな生物の縄張り争いが激しいときく。ならば人体の構造を有していて、曲がりなりにも肺呼吸のできる人魚が陸にあがってしまえば、競合に対して有利に立ち回れる。人魚「の」拷問場、というイワナの台詞も、この説を補強してくれている。……とっくに捕まった哀れなプレイヤーには、何の意味もないのだが。
 そして先程からメニュー画面が開けないのも、異様に身体がだるいのも、既にゲームオーバー済だからだろう。
 今のシロエは、人魚たちが満足するまで弄ばれる玩具に過ぎない。

「んひひ。さっき割り込んできたのも、お隣さんなんだよ?あっちで力尽きてるのもお姉さんと同じ人間さんでーーんひひ、こっちまで聞こえてくるとか、すごい笑い声」
「なあ、こっちもそろそろ、こいつで補給しよう」

 ぐっと親指でシロエを指差すと――

「それじゃ、行くよっ、『6本橋』ねっ!」

 逆さ向かいになってシロエの顔を覗き込むシーラ。天真爛漫そうな顔の横で、がおー、と威嚇するように広げた手には、指が6本生えていた。

「!?っ、!?!?!?」
「ふふ、なにをそんなに驚いているの?5本橋の次は6本橋でしょう?」

 サヨリの指にも片方6本の指が生えそろっている。
 
「なっ、あ、なたたち……!?」
「シーラはまだ幼いから8本で終わりさ。アタシは片手で14本、姉貴は片手で20本指生やせるから――ああ、覚悟しろよ?」

 んひひ、とだれかが笑う声がして――その直後、合計36本の指が肌の上に降り立った。

「ふ、あ、あ、あ、あ、あ、あぁぁぁぁぁぁっ、っっっ、っ、〜〜〜っっっふ、ぁっ――――っはははハハハハハハははははははははっっっ!や、あっふふふふふふふふふっ!!おふひぇひぇひぇへへへへへへへへへへっっっっ!!たひゅへへへへへへへへへへへへへへへっ、シふぉっ、くらへへへへへへへへへへひゃはははははははははっっったふへへへへへへへっっ、あっハハハハハハはははははははははっっっ!!」

 我慢できたのもほんの数瞬。
――太腿を強引に揉み解すサヨリの指が、下半身を暴れさせ。
――腋の窪みを余すところなくねちねちとくじり立てるイワナの指が、くすぐったさとなって、上半身を貫いてめちゃくちゃに暴れ回り。
――首から鎖骨を舐め回すシーラの6指と耳朶を打ってじわりと染み込む吐息が、シロエの身体を内側から溶かして、手足にこめた力が萎えていき。
 んぐっ、んぐっ、と喉で堰き止めていた笑い声もあっという間に爆ぜてしまう。
 いや、いや、と身体を激しく捩ってはビーチチェアの上でバウンドする身体。もはや大人として楚々とした振る舞いを見せる余裕などあるはずもない。

「いやひゃははははははははははははははははっっっ!!もふ無理っ、無理らへへへへへへへっっっ!!ふぎっひひひひひひひひひっっっ!たすっ、ゆるひへへへへへへへへっっっあぁっはははははははははははははははははははっっっ!!」

 くすぐりという実に幼稚な責めに屈服したシロエ。人魚たちの激しいくすぐり責めに曝されているシロエは、ただただ「まな板の上の魚」そのもの。

「――――――もう、げんかいっ、おねーさんのここ、わたしがこちょこちょするっ!」

 シーラが言い放つや否や、彼女の指がシロエの首から離れて――直後、胸の側面にがしっとかぶりつく。

「あっはははははははははははっっっ!!っは、あ、あ、あ、あ、っっっ、あっ、ひゃっはははははははははははっっっ!!あっひひひひひひっ、どこ触っ……!!や、そこ弱っ、やぁっははははははははははははははははっっっ!!やめなさっ、そんなとこくすぐっひゃやだあっはははははははははははははははっっっ!!」

 自分にはない部位がぽよぽよ跳ね回る様に、指と好奇心が誘われたか。サイズにして100cmにもなる豊乳の側面に、左右の指を突き立てて柔肉に沈めるや否や、手首に力をこめて指先をぶるぶると震わせる。

「あっはははははははははははははっっっ!!おっぱひひひひひひっくすぐひゃひゃひゃははははははははははっっっっ!!だあああああぁぁぁぁっははははははははははっっっ、そこだめ、だめやめへへへへへへへへっふぎゃはははははははははははははははははっっっっ!!」

 豪快だが弱点を見逃さない繊細さを有した責め。まるで携帯電話のバイブ機能のようにシロエの乳房が波打ち震える。スペンス乳腺に食い込むほどの強引な指遣い。性感に喘ぐかと思われたが、シロエにとってはくすぐったさを感じるところだった。
 責める部位が異なるとはいえ、一転力強い責め苦にさらされ、たまらず悶えながら笑い声があたりに響く。

「あはっ、変な反応。お姉ちゃんと違って、『あんっ♡あんっ♡』って言ったりしないんだね。変なのっ、ほらほら、ぶるぶるぶる……ぶるぶるぶるぶる〜っ……♡」

 横乳から下乳にかけて、たわわに実った水風船のような胸肉を片手8本の指でいじめ倒す。6本橋と宣言したはいいが、自身の欲求を満たすべく、生やせる指すべてを手甲からはやしてシロエを悶えさせる。

「ふひゃひゃひゃはははははははははははははははははっっっ!!ひひぇひぇひぇへへへへへへへへへっ、そこくひゅぐっひゃひひひひひひひっっっ、くすぐっぶふっ!?ふぐっふヒャヒャハハハハハハハハはっ、太腿っ、わきっ!!だめっ、くすぐったいっ!くすぐったひひひひひひひひっっっ!あっははははははははははははははははははははっっっ!!」

 デリカシーのないシーラに、己の痴態を知られたサヨリ。腹いせか、恥ずかしさを紛らわすためか、左右の太腿に計40本の指がねじこまれる。
 サヨリの責めの手は、もはや人間の手の構造をなしておらず、指でつくったイソギンチャクのよう。触手のように1本1本が滑らかにシロエの肉海を滑る。
 そして、指1本1本が骨と関節を有した構造をしているのか。ほっそりとした脚の肉が半球をくり抜くかのように凹んで、奥の神経を揉みしだく。
 太腿のほぼすべてに指のような触手が伸びるものの、薄桃色になった太腿の内側の膨らみをびっしりと指が埋め尽くし、ぐにぐにとひき肉を捏ねる要領で、シロエの太腿を、揉み込む。
 サヨリは3本橋のあたりからこの部位に終始している。擬態で人間の下肢を模擬できるとはいえ、本物の脚にはやはり興味が尽きないのだろう。

「あっあっあっははははははははははははははははっっっ!!やっ、太ももっっ、揉まなっはぁぁぁぁぁっっっっ!?!?やぁぁぁぁぁあっははははははははははははっっっ!!」

 ほっそりとしたシロエの細腰は、限界まで高く突き上げられ、ビーチチェアの上でブリッジを組んでいるかのようだった。ビーチパラソルの下で太陽に向かって突き上げられた腰。それに追随して持ち上がる、痩せた腹部。引き締まっている、というよりは痩せているタイプなのだが、腰回りにうっすらと乗った駄肉がふるふると震えていて、サヨリの視線はそこに釘付けになっていた。

「だりぇか助けへへへへへへへっっ、おねがっ、お願いりゃからぁぁぁっははははははははははっっっ!!わひひひひひひひっ!わきやめっぎゃふふふふふふふふふっっ!!あひぃっひひひひひひひひひひひひひっっっ!!」

 イワナの片方14本の指も、姉や妹に負けてはいない。腋の窪みをねちねちと責めあげる。筋肉の継ぎ目に沿って切なく指を這わせたかと思うと、窪みに指を突き立てて激しく震わせる等してシロエを悶えさせる。
 腋という狭い範囲に、ありとあらゆる種類の責め方でシロエを慣れさせない。
 X字に繋がれたまま無防備に曝け出された腋は、長時間に及ぶ激しい責めで赤くなってしまっている。
 10本の指のうち、5本の指で腋肉のまわりを上下左右に引っ張る。剥き出しになった腋窩を残り5本の指で存分にくじり立てる。

「いっひひ、おねーさんっ♪ここかな、ここ?ほらほら、ここがええんか〜っ?」

 首筋しかくすぐれなかった鬱憤を晴らすべくシーラの指がわきわきと蠢く。
 ふにふにと指で押し込むたびに、気持ちよさではなくくすぐったさで身体が浮くのをどうすることもできない。自身の姉とは異なる反応を返すことが面白いのか、あるいは長姉に負けず劣らず曲線と隆起に富んだ身体を屈服させることに楽しみを見出したか。
 なんであれ、シーラ自身の興奮が、くすぐる指を加速させる。

「ふぎゃははははははははははっっっ!!や、あっ、あ、あっははははははははははははっっっ!!やえへへへへへへへっ、むねくしゅぐりゃひゃひゃはははははははっっっ!!」
「くっふふっ、おっぱい横からぐりぐりするのだめなんだ。じゃあ、もっとやってあげるっ!!」

 第二次性徴を迎えていない少女期の外見のシーラ。それに「陸の人」をいじめるのも、これが人魚人生ではじめての体験だった。
 はじめての狩り。はじめての獲物。
 初体験ゆえの興奮が指先に乗って、シロエの胸の横はめちゃくちゃにかきむしられて、徐々に赤みを帯びていく。

――たぷたぷ。
――ぐにぐに。
――ぽよぽよ。

「――っは、ぁぁぁぁぁあっっっっっ!!???っそ、こっ、やめっやっあっははははははははははははははははははっっっ!!おねがっ、そこ弱いからっ、やめへへへへへっおねがっ、頭おかしくなぎゃっはははハハハハハハハハハハハハはっっっ!!」
「あはっ、すげー声。この後、どーすんの?」
「どうするの、も何もないわ。果物みたいに大きくて柔らかい胸、しなやかで弾力のある脚、一本橋で屈服するほど敏感な腋。気絶するまでくすぐって平らげてしまいましょう?」
「そっちじゃねえよ。この人が一本橋こちよこちょの何本目でげらげら笑うか、事前に賭けてただろ?」
「ちっ……そうねえ」

 太腿を揉み込みながら、イワナの問いに舌打ちで返す。

「姉貴が3本橋で、アタシが2本橋、んで今日が初めて狩りのシーラが1本橋だから、シーラが勝って、姉貴が負けだろ?」

 耳に吐息をふきこんで、強制的に脱力させたために、シロエは一本橋こちょこちょの一本目で爆笑してしまったのだった。

「……はいはい。私がストックしてる人間さんの取り分を分ければいいんでしょ?」
「何言ってんだか。くすぐりで賭けたんだから、くすぐりで――姉貴の身体で払うんだろ?」
「――は?」

 太腿を揉みほぐす指を止めて、腋責めをするイワナを仰ぎ見る。下半身を責めこむ指が止まってくすぐったさは軽減されるものの、依然として許容量を超えた擽感を流し込まれているのに変わりはない。
 シロエの腰がびくびくとバウンドしなくなっただけで、ウォーターバインドに縛られた四肢をめちゃくちゃに動かして、一瞬でもいいからくすぐり責めから逃れようともがいている。
 
「な、シーラ?……聞いてる?」
「ん!後でお姉ちゃん達もこちょこちょするねっ!」
「だってさ。姉貴をくすぐるの久々だなあ。『果物みたいに大きくて柔らかい胸をくすぐって気絶させていい』ってよ」

 シロエの巨乳を爪の先でかりかり弄びながら、幼子にあるまじき悪辣な笑みを浮かべるシーラ。

「っひひ。シーラ、お姉ちゃん『達』って言ったか?」
「言ったよ?イワ姉も2本橋だからハズレなんじゃないの?」
「なっ……そもそもシーラが耳ふーなんてしなきゃ、この人は一本橋で笑ったりしなかったって。な、おねーさん、ほら、人差し指で、つつつつーっ」
「ふぎゃははははははははははははははっっっ!!わきやめてって言っぎゃひひひひひひひひひひひっっっ!!」

 指一本では笑わないだろうと思っていたイワナは、人差し指一本を腋窩に突き立てて、(自身の説を実証すべく)手加減してくすぐった。
 笑わないでくれ、と願うイワナだったが、長時間の責めで「仕上がった」被食者には、手心を加えたうえでの指一本での責めにさえ堪えられない。

「くそっ、笑ってんじゃねえよ、雑魚っ」
「ふふ、イワナも罰ゲームね。もういいわ、この際……あとで拷問場ね」

 イワナが自己弁護するが、言い訳としては苦しい。「賭け」に負けたサヨリは覚悟を決めたのか、旅は道連れの精神か。

「な、あっ、くそっ、やだっ。姉貴のマジのくすぐりはやだっ。シーラも耳ふーってしたんだから反則だろ。3人とも罰ゲームなら、賭けはノーカンだろっ?」

 しどろもどろになって言い訳をするイワナ。この期に及んでシロエの腋窩をくすぐっているのだがら食い意地が張っているものの、サヨリとシーラに注意が逸れているためか、指の動きは単調になっていた。

「え、わたしはお姉ちゃん達にこちょこちょされてもいいもん!だから、イワ姉もサヨ姉も――限界までくすぐってあげるね?昨日サヨ姉がイワ姉にやってたみたいに、ヒレをビクビクってさせて失神させてみたい!」

 長年の狩と縄張り争いで、くすぐりを拷問と捉えているサヨリとイワナ。
 一方で狩猟初心者であるシーラは、くすぐりを遊びとして捉えているのだろう。自分がくすぐることにも、自分がくすぐられることにも等しく抵抗がない。

「……まあ、これはシーラの社会経験というか教育として捉えるべき……だろうな……?」
「イソギンチャクもクラゲも知らないからそういうことが言えるのよ、シーラは……族長様にも面通しをしてないし……ま、過保護すぎたのは、認めるけど……」

 人魚といえども縄張り争いから無縁ではいられないらしい。族長という言い方からして、人魚には社会共同体があるらしい。

「ちっ、姉貴……昨日のお返ししてやるから、覚悟しとけよ?シーラと一緒に胸くすぐりしてやっからな」
「くっふふ。いいわよ?そのぶん報復が激しくなるだけなんだから。無理やり足を生やさせてから、太腿ねちねちくすぐってあげる」
「いっひひっ。お姉ちゃんがイワ姉にやってたみたいに、サヨ姉のからだ……かいはつ?してあげるねっ」

 お互いに罰ゲームの中身を膨らませていく。
 だが、そんなことをまな板の上の魚には知る由もないし、そもそも自身に加わっているくすぐったさで限界に達していた。

「っっっ、はははははははははははははははっっっ!!わき、むねっ、あしひひひひひひひっっっ!全部くすぐっひゃっははははははははははははははっっっっ!!あっはははははははははははっっっ!あああああああああっっっ!!あっはははははははははははっっっ!!――――――っっっ!――――〜〜〜〜――ッッッ!!」

 これまでにないほど海老反りに背中を反らせて、宙に浮いた胴体をびくびくと戦慄かせる。ラストスパートとばかりに指の動きを激しくした人魚3姉妹の責めの果てに、ついにシロエは意識を手放した。
 第2ラウンドは「お隣さん」に責め抜かれて、おはようとおやすみを迎える。断末魔に似たシロエの笑い声にあてられたサヨリ、イワナ、シーラが責めの輪に加わって、第3ラウンドは人魚6体に囲まれて限界までくすぐり拷問を受けたのだった。
 まな板の上の魚が調理されて、ぴくりとも動かなくなるまで計3度。2時間を凌ぐくすぐり拷問の果てに、ようやくシロエはログアウトという名の安息を手に入れたのだった。

シオン(戦士職):レベル25
技能:体術強化、縮地、影分身、マッサージハンド
アイテム:招待状(ツリーサーペント、アルラウネ、ナーガ、ドッペルゲンガー)、手錠、筆、耳かき、長袖服

クラゲ(魔法職):レベル23
技能:ファイア、ウィンド、ヒール、マジックハンド(4つまで)、アイマスク、サイコキネシス、触手(4本まで)、ウィスパー
アイテム:招待状(エルフ)

シロエ(召喚職):レベル29→30
技能:召喚状(ゲル、マドハンド、アイアンメイデン、ドッペルゲンガー)、急速召喚
アイテム:経験値2倍バフ

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