作:綾小路君をTSヒロイン化した作品がみたい
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島につく俺たち1年生は、船内アナウンスよりカバンなどの荷物、スマホを持ちデッキに集合させられた。また、島に上陸するにあたりジャージでの活動をするらしく、指示に従い着替えてもいる。トイレを済ませておくのを推奨もしていたから、長時間の活動を行うのも予想できるだろう。
そして、アナウンスで指定された場所には教職員がいて、荷物とスマホを回収される。
Aクラスから順番に降りるようで、Bクラスである俺たちはその次に続いて降りる。
降りた島の先でも整列させられ点呼をとるあたり、どこか、この島でバカンスを楽しむというには不自然であると感じられた。
程なくして、準備されていた白い壇上に、普段英語を担当しているAクラスの担任真嶋先生が上がる。
「今日、この場所に無事につけたことを、まずは嬉しく思う。しかしその一方で1名ではあるが、病欠で参加できなかった者がいることは残念でならない」
Bクラスは、全員参加できているから他クラスの誰かが欠席しているのか。しかし、それよりも周りの先生の雰囲気が堅いことが気になる。
「ではこれより───本年度最初の特別試験を行いたいと思う」
「え? 特別試験?」
その疑問は近くにいた柴田だけでなく、ほぼ全てのクラスで等しく巻き起こる。
…どうやら学校側による夏休みのバカンスは嘘だったということらしい。
各クラス緊張感が高まる。
そして、真嶋先生による説明は続く。特別試験とは何か説明の内容は以下の通り。
【無人島サバイバル試験】
・試験期間
試験は1週間(8月7日正午終了)。
生徒たちは無人島での集団生活を強いられ、これが試験内容となる。
・試験の目的
この試験は、実在する企業研修を参考にした実践的かつ現実的なもの。
生徒たちは島内で生活しながら、ポイント管理やクラスの統率力を問われる。
また、この試験のテーマは『自由』らしい。
・スタート時の支給品
- テント(8人用)×2
- 懐中電灯×2
- マッチ×1箱
- 歯ブラシ(1人1本)
- 日焼け止め(制限なし)
- 生理用品(女子は無制限で支給)
・試験のルール
1. 試験専用ポイント(300ポイント)
- クラスごとに300ポイントが支給される。
- 生活に必要な物資(食料・水・道具)を購入可能。
- 試験終了時に残ったポイントはクラスポイントに加算される。
2. ペナルティ
- 体調不良や大怪我でリタイア:-30ポイント
- 環境汚染(ゴミ放置など):-20ポイント
- 点呼(朝8時、夜8時)に不在:-5ポイント(1人につき)
- 他クラスへの妨害行為(暴力・略奪):クラス即失格、個人のプライベートポイント全没収
3. リーダー制と占有スポット
- クラスごとにリーダーを1人決定。
- 島内のスポットを占有すると8時間の使用権が得られる。
- スポットを占有するには専用のキーカードが必要である
- 占有したスポットは自由に使用できる。
- 1スポット占有ごとに1ポイント加算(試験終了時に反映)。
- 他が占有しているスポットを許可無く使用した場合50ポイントのペナルティを受ける
- キーカードを使用することが出来るのはリーダーとなった人物に限定される
- 正当な理由無くリーダーを変更することは出来ない
- 他クラスのリーダーを見破ると+50ポイント、逆に見破られると-50ポイント。
- 誤ったリーダーを指定すると-50ポイント。
4. 設備と生活環境
- 監督役の担任が各クラスと行動を共にする。
- 島には学校側の監視があり、腕時計による体調管理・GPS追跡が行われる。
— 配布されたマニュアルにはポイントを使って物品が交換可能。
特に、仮設トイレは20ポイントで購入可能とある。
この試験のポイントとなるのは、おそらくリーダーの存在だろう。これを他クラスから守り通し、また見抜ければこの試験の勝ちと言えるはずだ。
そんな説明を受け、俺たちBクラスはどうするか。議論が起こり始める。
「え、つまり……1週間ここで生活するってこと?」
「バーベキューとかできるって言ってたよね? でも試験ってなると……」
クラスの中でも意見が分かれる中、このクラスの実質的なリーダーである一之瀬は腕を組んで考えた。理想としては、与えられたリソースをうまく使いながら過ごし、できるだけポイントを残すことが目的のはずだ。
「ってことは、無駄遣いしないようにしないといけないってことか……」
柴田が呟き、周囲の生徒たちもうなずく。
「ねえ、帆波ちゃん。どうする? ポイントを節約するのがいいのか、それともある程度使ったほうがいいのか……」
「うーん……」
一之瀬はマニュアルのリストをざっと確認しながら考える。
仮設トイレや調理器具、寝具など、最低限のものは確保したほうがいい。しかし、むやみに使いすぎれば試験終了時にクラスポイントが減る。
「とりあえず、今は動きながら考えないか。具体的には水などの生活必需品をどうするか考えるにはまず、どこに拠点を作るか、スポットに何があるかで決めたほうがいいと思う」
突然の事態でも冷静な頼もしい友人である神崎が意見を告げる。
そして、一之瀬がひとまず指針をまとめる。
「無理にポイントを節約しすぎて、体調を崩しては意味がないと思うんだ。最低限のものは確保しながら、慎重に判断しよう、みんな」
「そうだな。まずはこの島を探索して、必要なものを考える。そして、スポットや安全な場所を見つけることが最優先だろうな」
一之瀬の言葉に、俺は同意しクラスメイトたちも納得した様子で頷いた。
Bクラスの方針が固まり、いよいよ探索を始めようとした矢先だった。
「神楽坂くん、ちょっといい?」
俺の名前を呼んだのは、Bクラスの担任である星之宮先生だった。
「はい?」
俺が振り向くと、先生は手にした小さな袋を軽く掲げる。
「あなたが普段飲んでいる薬なんだけど。朝の点呼の時間に渡すから、その場で飲むようにしてほしいの」
「ああ……わかりました」
島での生活に不安を感じていないわけではないが、こうして健康管理に気を配ってくれるのはありがたい。先生がいる限り、少なくとも薬を飲み損ねる心配はなさそうだ。
「問題があれば遠慮なく言ってね。試験とはいえ、健康を損なうようなことがあっては本末転倒だからね」
「ありがとうございます」
先生は軽く頷くと、すぐに他の生徒たちの方へと向かっていった。
俺も遅れないように、クラスメイトたちのもとへ戻る。
こうして、俺たちBクラスは無人島試験の第一歩を踏み出すこととなった。
Bクラスのメンバーで島を探索しながら、俺たちは適切なキャンプ地を探していた。ポイントを節約するためには、水源の確保が最優先だ。
クラスの後ろの方で俺はテントを運びながら続いていった。浜口と渡辺が気づいて手伝ってくれるから楽に運べている。
「浜口、渡辺。ありがとうな。重くないか?」
「そんなことないよ、神楽坂くん。神楽坂くんが真ん中で支えてくれるから大丈夫だよ」
「水臭いぜ、神楽坂。しかし、大丈夫か、これ15キロあるって書いてあるが相当負担になってないか?」
「ああ、大丈夫だ二人とも。ここ、4か月の学校生活で体力には自信がついてきたからな」
そんな、会話を続けながらクラスの集団についていく。
「おっ、あれ井戸じゃないか?」
柴田が指さした先には、木々に囲まれたきれいな井戸があった。
「水が確保できるなら、ここを拠点にするのが良さそうだな」
神崎が冷静に判断を下す。一之瀬も頷いた。 とりあえず、俺たちはテントを地面に置いておく。
「うん、日陰も多いし、ここなら過ごしやすそう。でも……井戸水って飲めるのかな?」
確かに、それが一番の問題だ。もし汚染されていたら、飲んだ途端に体調を崩す可能性もある。
「とりあえず、飲めるかどうか試してみるしかないか……」
誰もが躊躇する中、俺は一歩前に出た。
「じゃあ、俺が飲んでみるよ」
「えっ、神楽坂くん? 本当に大丈夫?」
一之瀬が驚いたように声を上げる。周囲の皆も心配そうにこちらを見る。
「まあ、誰かが試さないと分からないし、俺は体が丈夫なほうだからな」
そう言って井戸の滑車を動かし、バケツに水を汲み上げる。手ですくい、匂いを嗅ぐ。特に異臭はしない。透明度も高く、一見問題なさそうだ。
「……いくぞ」
皆の視線が集まる中、俺はゆっくりと一口含んだ。
舌に広がる冷たい感触。
ゴクリ、と喉を鳴らして飲み込む。
「……大丈夫そうだな。変な味もしないし、なんなら冷たくて美味しいよ」
一瞬の沈黙の後、クラスメイトたちが安堵の息を漏らした。
「良かった! これで水の心配はしなくて済むね」
「一応、初日はマニュアルにある水を使うが、もし神楽坂に問題がないなら俺たちも使おう」
そう、神崎が指針を示す。
「神楽坂くん、ありがとう。無理しないでよ?」
一之瀬が微笑みながら礼を言う。
「これでキャンプ地は決まりだな」
神崎の言葉に、皆が頷く。こうして、俺たちBクラスは井戸のある木陰を拠点とすることに決めた。
井戸の水も安全そうだと確認でき、Bクラスはこの場所を拠点とすることに決めた。しかし、特別試験ではリーダーを決めることが求められている。
「それで、リーダーだけど……どうする?」
一之瀬がクラス全体に向けて問いかけると、周囲の生徒たちは顔を見合わせる。リーダーは試験の要となる役職だ。他クラスに見破られれば大きなマイナスとなるし、逆に守り切れればクラスにとって大きな得点源となる。
「うーん、やっぱり一之瀬が適任じゃないか?」
「いや、それは目立ちすぎるだろう。一之瀬はクラスの中心的存在だし、他クラスからマークされやすい」
柴田が意見を述べると、神崎が冷静に反論する。確かに一之瀬はBクラスの象徴ともいえる存在だ。そのため、リーダーとして名前を登録すれば、すぐに目をつけられてしまうだろう。
「じゃあ、どうする? 目立たず、なおかつ信頼できる人にするべきだけど……」
「そうなると、比較的目立たない方がいいかもしれませんね」
浜口が考えながら口を開く。クラスの中での立ち回りを考えると、普段そこまで目立たず、かつ冷静な判断ができる人物が適任だろう。
「…だったら、白波はどうだ?」
俺の言葉に、一瞬の沈黙が生まれる。
「千尋ちゃんか……」
「え? 私ですか!?」
白波が驚き、一之瀬が考え込むように視線を送る。白波は普段からあまり目立つタイプではなく、どちらかといえばおとなしい性格をしている。だが、それがこの状況では利点になり得ると思った。
「白波は普段、一之瀬と一緒にいるから注目されることは少ないと思ったんだ。いざという時に一之瀬を頼るとき不審に思われることもないはずだ。それに、嘘をつくのが得意そうなタイプではないから、疑われにくいんじゃないか?」
「リーダーを隠し切るのがこの試験の重要なポイントだからな。白波なら悪くない選択だ」
神崎も賛同する。一之瀬も考えた末、白波に視線を向ける。
「千尋ちゃん、お願いできるかな?」
白波は少し驚いた表情を見せたが、すぐに静かに頷いた。
「……わかったよ帆波ちゃん。私で良ければ引き受けるよ」
こうして、Bクラスのリーダーは白波千尋に決まった。
Bクラスのリーダーが決まり、拠点となる場所も決定した。俺たちは早速、テントを張ったり、また寝る場所を確保する手段としてハンモックも購入した。木々に囲まれた場所だから有効な使い方になるはずだ。
そして、俺は夜に向けて焚き火用の薪を浜口と一緒に回収していた。
しかし、こう自然豊かな森に囲まれた場所に入るのは、記憶を失ってから初めての経験だからか、胸がざわざわする。
浜口とたわいない雑談をしながら、薪を集め帰ろうとしていた時の頃。
「……ん?」
ふと、俺は木々の間に違和感を覚えた。
何かが、もしくは誰かが、こちらをじっと見ているような──そんな視線を感じる。
俺は警戒しながら、その方向へと足を向けた。
すると、木陰の奥に、地面に座り込んでいる人物がいた。
「おい……大丈夫か?」
近づいてみると、その人物は見るからに衰弱し、顔には腫れている痕があった。服も転んだせいなのか土まみれだ。
「……あなたがたは……」
弱々しく声を絞り出したのは──眼鏡とマッシュヘアが特徴的な男子生徒だった。
「お前は? 俺は神楽坂創だ。Bクラスだ」
「同じく、Bクラスの浜口哲也です。名前とクラスを聞いてもいいかな」
俺たちが問いかけると、金田は肩で息をしながら、絞り出すように答えた。
「金田悟、Cクラスです……」
その言葉に、俺は眉をひそめた。
(Cクラス、か……)
俺にとってCクラスは少しガラの悪いイメージがあり、喧嘩のイメージがある。もしかしたら、そういったトラブルに巻き込まれたのかもしれないな。
「とにかく、立てるか? 怪我の手当てしないとまずいだろう」
俺は金田に手を差し伸べる。
このときの選択が俺にとって凶と出てしまうのを──まだ、知らなかった。