作:綾小路君をTSヒロイン化した作品がみたい
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学校二日目、授業の初日だからか勉強方針の説明で済んだ。先生たちは進学校とは思えないほどフレンドリーで堅いイメージのあった俺は少し驚いた。
といっても、俺としてはこの雰囲気のほうが好きだからありがたい。
そういえば、記憶喪失で少し勉強に不安があったときも、栄一郎兄さんがフレンドリーに教えてくれたなぁ。おかげで、なんとかこの学校に入れたし、改めて感謝を伝えたいな。...元気にしてるかな2人とも。
昼休みになった。
教室内は活気づき、みんな思い思いに席を立ち、友達と一緒に昼食を取るために移動していく。特に、隣の一之瀬は人気者だから人だかりができていて驚いた。
そんな中、創はふと昨日友達になれた神崎を見る。
神崎隆二はまだ席に座ったまま、手元のスマートフォンを眺めていた。
特に誰かとつるむ様子もなく、一人で行動するつもりらしい。
(神崎は、あまり他人とつるむタイプじゃないのか?)
とはいえ、昨日は普通に話せたし、別に俺を避けているわけでもなさそうだ。
だったら──
「なあ、神崎。一緒に飯食わないか?」
創が軽く声をかけると、神崎は一瞬だけ考え込むような間を置いた。
「……構わないが、どこで食べる?」
「あまり行ったことがないし、食堂に行ってみようと思ってるんだが、どうだ?」
神崎は少しだけ考え、やがて静かに頷いた。
「いいだろう。俺もまだ食堂の様子は見ていない」
「よし、じゃあ行こう」
二人は席を立ち、賑わう教室をあとにした。
廊下には昼食へ向かう生徒たちの流れができており、会話や笑い声がそこかしこで飛び交っている。
食堂へ続く道を歩きながら、創は神崎に尋ねた。
「何か、食べたいものとかあるか?」
神崎は特に迷う様子もなく答える。
「食堂のメニューを見てから決める」
「そりゃそうか」
そんな他愛もない会話を交わしながら、二人は食堂へと向かった。
食堂についた俺たち二人はメニューを吟味する。スペシャル定食といった高めのメニューやラーメンなどの定番メニューなど多岐にわたる。すると、神崎の視線がある定食メニューに留まる。
「山菜定食...無料?」
神崎は眉をひそめ、メニュー表を指でなぞる。
創も隣から覗き込む。
確かに、他のメニューには「○○ポイント」と値段が記載されているが、山菜定食の欄だけは「無料」とだけ書かれていた。
「……昨日、日用品の無料ワゴンがあったけど、それと同じようなものか?」
「可能性はあるな。支給ポイントを使い切った生徒への救済措置……そう考えるのが妥当か」
神崎は腕を組み、考え込む。
創は軽く肩をすくめる。
「とりあえず一回頼んでみるか? 味がまともなら、節約にはなるしな」
「……そうだな。試しに食べてみるのも悪くない」
二人は山菜定食を注文することにした。
食堂のカウンターで食券を渡し、待つこと数分。
運ばれてきたのは、シンプルながらも栄養バランスの取れた定食だった。
ご飯、味噌汁、小鉢の漬物、そして山菜がメイン。
見た目には特に違和感はないが……果たして、味はどうなのか?
創と神崎は互いに視線を交わし、箸を手に取った。
二人は互いに視線を交わし、箸を手に取った。
創はまず、ご飯を一口。
……ご飯はまあ普通だ。
次に味噌汁をすすってみるが、出汁の風味が薄く、どこかぼんやりした味だった。
(うむ、これは……)
そして、肝心の山菜。
箸でつまんで口に運ぶと、妙な食感が舌に残る。
クタクタに煮込まれすぎているのか、歯ごたえがほとんどなく、味付けも薄味というより、ほぼ出汁の風味だけといった感じだった。
「……正直、微妙だな」
思わず、ぽつりと漏らす。
隣を見ると、神崎もほぼ同じタイミングで箸を止めていた。
「……同感だ」
彼もまた、味噌汁をじっと見つめ、ゆっくりと溜息をつく。
「食べられないほどではないが……これを毎日食べるのは厳しいな」
「まあ、無料だからこんなもんか……」
期待していたわけではないが、予想以上に味気ない食事に、二人とも箸の進みは鈍かった。
「ごめんな、神崎... 付き合わせてしまって」
「いや、俺自身気になって選んだものだ。気にする必要はない。それにしても、妙だな」
「...何が?」
「周りをざっと見渡してみろ。結構、食っている人がいるんだ。おそらく、上級生だろうが浪費する人間がこんなにいるのかと改めて気になってな」
周囲を見渡すと、他にも山菜定食を頼んでいる生徒がちらほらいるが、やはり似たような表情をしている。
「ポイント支給は月の始めだから、普通のメニューを頼むくらいの余裕があるはずだと思うんだがな...」
神崎が小さく呟いた、その時。
「おーい、神楽坂くーん! 神崎くーん!」
弾むような明るい声が響き、振り向くと、一之瀬帆波を先頭にBクラスの面々がこちらへ向かってくるのが見えた。
彼女の後ろには確か、柴田、白波、網倉、渡辺と、昨日のホームルームで見かけた顔ぶれが揃っている。
「やっぱりここにいた! もし一人だったら誘おうと思ったけど、神崎くんと一緒だったんだね!」
一之瀬は人懐っこい笑顔を浮かべながら、軽やかに創たちの席に近づいてきた。
「二人でご飯か? なんか渋い組み合わせだなー」
爽やかな男子──柴田が、からかうような笑みを浮かべて言う。
「ふたりとも、食堂のご飯どうだった?」
網倉が優しい口調で問いかけると、渡辺がすかさず創たちのトレーを覗き込む。
「ん? ……なにこれ、山菜定食? しかも無料のやつ?」
その瞬間、柴田が「マジで!?」と驚きの声を上げた。
「創くん、神崎くん……初日から節約モード?」
そう言いながら、一之瀬は自分のトレーを見せつけるように持ち上げる。
そこには唐揚げ定食が乗っていた。
「……いや、別に節約したくて選んだわけじゃなくてさ」
創が苦笑しながら答えると、一之瀬が興味深そうに身を乗り出す。
「もしかして、試しに食べてみた感じ?」
「まあな。そしたら、ちょっと……」
創が言葉を濁すと、神崎が淡々と補足する。
「味気ない」
「なるほどねー」
一之瀬たちは顔を見合わせ、微妙な反応を返した。
「でも、意外と食べてる人多いよな?」
渡辺が周囲を指しながら言うと、一之瀬は「確かに」と頷く。
「うん、上級生にも食べてる人いるみたいだし……気になるよね」
「上級生ならポイント管理も慣れてるだろうしな」
神崎が考え込むように腕を組むと、柴田が「まあ、色々事情があるんだろうなー」と肩をすくめる。
「でも、あんまり無理して節約しすぎると辛いよ? ちゃんと美味しいもの食べないと」
網倉が心配そうに言うと、一之瀬が冗談めかした口調で続けた。
「にゃはは、創くん、神崎くん! もし困ったら私が差し入れしてあげるよ!」
「いや、別に困ってるわけじゃないんだけどな……」
創が苦笑する中、一之瀬がニコッと笑った。
「まあまあ! せっかくだし、一緒にご飯食べようよ!」
その提案に、創と神崎は顔を見合わせた後、軽く頷いた。
「そうだな」
「……別にかまわない」
一之瀬たちの明るい雰囲気に包まれながら、昼休みは和やかに過ぎていった。
山菜定食を食べ進めていると、スピーカーから音楽が流れてきた。
「本日、午後5時より、第一体育館の方にて、部活動の説明会を開催いたします。部活動に興味のある生徒は、第一体育館の方に集合してください。繰り返します、本日──」
可愛らしい女性の声と共にそんなアナウンスがされた。
部活動か。
そう言えば、記憶をなくす前の俺はどんな部活をしていたのだろうか。
自分で言うのもなんだが、体つきは悪くない。鍛えていたのかもしれないが、何をやっていたのかは思い出せない。
(……運動系の部活に入っていたのか? それとも、全く別の何かか……)
考え込んでいると、隣で神崎がふと呟いた。
「……部活動か」
「神崎は何かやるのか?」
創が問いかけると、神崎は少し考えてから答えた。
「正直、あまり興味がないな」
神崎は腕を組みながら淡々と答えた。
「部活動は時間と体力を消費する割に、見返りが少ない場合が多い。
学業との両立や、今後の生活にどこまで役立つかを考えると、無理に参加する必要もないと思ってしまうな」
「なるほど、合理的な考え方だな」
創は苦笑しながら頷いた。
確かに、部活は必須ではないし、無理にやる必要はない。
ただ、自分が何をしていたのか思い出せない以上、何か手がかりがあるかもしれないと思っていたのも事実だった。
(まあ、だからって無理に入るのも違うか)
そう考えていたところで──
「ねえねえ、神楽坂くんたちも部活の話してるの?」
突然、明るい声が横から聞こえてきた。
振り向くと、一之瀬帆波がニコニコと微笑みながら聞いてきた。
柴田、白波、網倉、渡辺もこっちをみている。
「なんだ、一之瀬たちも部活の話か?」
創がそう問いかけると、柴田が「そうそう」と笑う。
「俺たちもちょうど、どんな部活があるのか話してたんだよ」
「神楽坂くんたちは何か興味ある部活ある?」
網倉が優しく尋ねると、創は少し考えてから肩をすくめた。
「今のところは、特に決めてないな」
「ふーん。じゃあ、説明会に行ってみる?」
一之瀬が軽く首を傾げる。
「ほら、せっかくの機会だし、みんなで覗いてみるのもいいかなって思って!」
「……まあ、そういうのもアリか」
創が頷くと、柴田が「いいじゃん!」と手を叩いた。
「せっかくだし、気になる部活があれば体験してみるのもいいかもな!」
「運動系も文化系もあるみたいだし、色々見てみるのもいいと思うよ」
白波も優しく微笑む。
「神崎くんはどう?」
一之瀬が神崎を覗き込むと、彼は少し考えてから答えた。
「……興味はないと言ったが、説明会に行くくらいなら構わない」
「おっ、じゃあ決まりだな!」
柴田が笑いながら言い、渡辺も「何か面白い部活があるかもしれないしな!」と楽しそうに頷いた。
こうして、創たちは部活動説明会へ行くことになった。