李登輝演説草稿(2002年)について
李登輝が植民地時代の嘉南大圳と八田与一について語りながら、植民地支配そのものについて語らないのはなぜか。2002年慶応大学で予定されていた李登輝講演の草稿には、日本による植民地支配については、一言「私はかつて日本の植民地・台湾で生まれ」と語るのみで、完全に封印している。
この草稿は台湾の政治家李登輝の「政治的文書」であり、八田与一生誕地では素朴に受け止められたが、歴史修正主義はこの講演を利用して、台湾植民地支配を正当化する根拠にしている(自由社の歴史教科書など)。
李登輝講演草稿を単純に台湾の世論・意志として読むことはできない。当時、命がけで植民地支配とたたかいぬいた人々は決して嘉南大圳と八田与一を手放しで称賛することはないであろう。「八田与一物語」の虚構性を明らかにするためには、当時の台湾農民に語ってもらうのが一番である。(『現代史資料 台湾(一)』みすず書房390P )
埤圳管理権奪回の闘争
農民大衆よ! 一斉に起て!
埤圳管理権を奪回し! 乱掘乱鑿に反対し! 水租減免運動に立て!
(略)台南州下に於けるが如き民衆の生死を顧みず、恰も秦の始皇帝が万里の長城を造りしが如き残酷なる手段を用ゐて莫大な資本を絞り出し、嘉南大圳を開鑿し一望際涯なき十五万甲の地を変じて田とせる目的も亦此の問題を解決せんが為であり、又一面土地を集中して工業化政策を達せんとして居ることも其の理由は極めて明瞭なことである。
看よ、帝国主義の手段を! 大正八(1919)年特に法律を発布して嘉南大圳組合を組織し、台南州下の土地所有者を強制加入せしめ現在の大圳を開鑿したのである。其の組織法は此の大組合の中に更に百五十甲を以て単位とする小組合を設け、其の小組合を更に三区に分って居る。其の組合長評議員其の他事務を取り扱ふ者は総て政府が自由に任命せるものである(故に全部が官の狗である)。
其の目的を描けば興味津々、容易に「水租負担額表」を作り得るのである! 大正九(1920)年度は一甲十円、同十年は一甲六円五十銭、大正十一年より本年までの八ヶ年間は毎年一甲五円五十銭で、明年よりは一甲三十円であるが、注意すべきことは明年よりは給水をうけるのであるけれ共、三年一回(三年輪灌)灌漑で、灌漑せざる年も一甲三十円を納めねばならぬのである。又此の外に小給水路負担金として一甲二十二円がある。斯様にして大正九年より今日までに既に八十二円五十銭を掠奪されて居り、之に利息を加ふれば百円以上となるのである。
而して日本帝国主義の野心は之れのみでなく、彼等は土地集中工業化の目的を達するに非ざれば永久搾取の偉大なる大目標を廃めないのである。看よ、彼らが三年輪作制度を採りし目的は只単に税金を搾取するのみではなく、実際は前記の如き目的を達せんとするものなることを。
日本帝国主義は土地所有者を斯くも残虐に掠奪するが故に、其の土地は大資本王国たる製糖会社の有に帰せざるを得ざるに至るのみか、遂には妻子迄も水租に充てねばならぬのである。(略)
李登輝が植民地時代の嘉南大圳と八田与一について語りながら、植民地支配そのものについて語らないのはなぜか。2002年慶応大学で予定されていた李登輝講演の草稿には、日本による植民地支配については、一言「私はかつて日本の植民地・台湾で生まれ」と語るのみで、完全に封印している。
この草稿は台湾の政治家李登輝の「政治的文書」であり、八田与一生誕地では素朴に受け止められたが、歴史修正主義はこの講演を利用して、台湾植民地支配を正当化する根拠にしている(自由社の歴史教科書など)。
李登輝講演草稿を単純に台湾の世論・意志として読むことはできない。当時、命がけで植民地支配とたたかいぬいた人々は決して嘉南大圳と八田与一を手放しで称賛することはないであろう。「八田与一物語」の虚構性を明らかにするためには、当時の台湾農民に語ってもらうのが一番である。(『現代史資料 台湾(一)』みすず書房390P )
埤圳管理権奪回の闘争
農民大衆よ! 一斉に起て!
埤圳管理権を奪回し! 乱掘乱鑿に反対し! 水租減免運動に立て!
(略)台南州下に於けるが如き民衆の生死を顧みず、恰も秦の始皇帝が万里の長城を造りしが如き残酷なる手段を用ゐて莫大な資本を絞り出し、嘉南大圳を開鑿し一望際涯なき十五万甲の地を変じて田とせる目的も亦此の問題を解決せんが為であり、又一面土地を集中して工業化政策を達せんとして居ることも其の理由は極めて明瞭なことである。
看よ、帝国主義の手段を! 大正八(1919)年特に法律を発布して嘉南大圳組合を組織し、台南州下の土地所有者を強制加入せしめ現在の大圳を開鑿したのである。其の組織法は此の大組合の中に更に百五十甲を以て単位とする小組合を設け、其の小組合を更に三区に分って居る。其の組合長評議員其の他事務を取り扱ふ者は総て政府が自由に任命せるものである(故に全部が官の狗である)。
其の目的を描けば興味津々、容易に「水租負担額表」を作り得るのである! 大正九(1920)年度は一甲十円、同十年は一甲六円五十銭、大正十一年より本年までの八ヶ年間は毎年一甲五円五十銭で、明年よりは一甲三十円であるが、注意すべきことは明年よりは給水をうけるのであるけれ共、三年一回(三年輪灌)灌漑で、灌漑せざる年も一甲三十円を納めねばならぬのである。又此の外に小給水路負担金として一甲二十二円がある。斯様にして大正九年より今日までに既に八十二円五十銭を掠奪されて居り、之に利息を加ふれば百円以上となるのである。
而して日本帝国主義の野心は之れのみでなく、彼等は土地集中工業化の目的を達するに非ざれば永久搾取の偉大なる大目標を廃めないのである。看よ、彼らが三年輪作制度を採りし目的は只単に税金を搾取するのみではなく、実際は前記の如き目的を達せんとするものなることを。
日本帝国主義は土地所有者を斯くも残虐に掠奪するが故に、其の土地は大資本王国たる製糖会社の有に帰せざるを得ざるに至るのみか、遂には妻子迄も水租に充てねばならぬのである。(略)