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アジアと小松

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小松基地問題研究会

20000810 「10・4協定」について

2025年07月28日 | 小松基地(騒音、訴訟)
20000810 「10・4協定」について 小松基地問題研究会

7・24小松基地爆音訴訟口頭弁論傍聴後、古い資料をパラパラと覗いていたら、第3・4次訴訟判決(2002年)直前に「10・4協定」について書いた論考(2000年)が見つかった。以下再録する。

「10・4協定」について
 「10・4協定」は竹内伊知さんの証言を軸にして、今回の裁判でも、飛行差し止めを求める根拠として、ひとつの焦点になっています。しかし、公害防止協定の勉強を進める過程で、竹内さんの証言だけで十分なのかという疑問を持ち始めました。
 すなわち、「10・4協定」に法的拘束力があるのかということが問題になるからです。1・2次訴訟の金沢地裁判決では、「10・4協定」について、「周辺対策の指針を定めたものに過ぎず、環境基準の達成を約束したものとして、法的拘束力を認めることはできない」と書かれていますから、この判決を行政法理論のレベルで、覆さなければならないと思います。金沢地裁判決を批判しないで、竹内さんにどれだけ語っていただいても、この壁を突破できないと思います。

二つの判決
 下記の判決は、結論としては原告住民の請求を却下していますが、公害防止協定については、「紳士協定ではなく、公法的契約であり、拘束力がある」と結論づけています。したがって、この二つの判例を根拠にして、「周辺対策の指針を定めたものに過ぎず、環境基準の達成を約束したものとして、法的拘束力を認めることはできない」という金沢地裁判決を批判し、「10・4協定」に法的拘束力があるということを正面から主張しなければならないと思います。

 札幌地裁判決(1980/10/14)
 金沢地裁判決を前に、伊達火力発電所建設差し止め訴訟の札幌地裁判決があります。『判例時報』(988号)によれば、「本判決は、公害防止協定を一般的には『公害防止……という行政目的を達成するため、行政活動の手段として用いられる特殊な法形式である』とし、公法契約説に近い見解を示した」と解説されています。
 しかし、「公害防止協定に基づいて、市が取得する権利は市に専属するもので、譲渡や代位行使することはできない」として、原告による代位請求を却下しました。

 名古屋地裁判決(1978/1/18)
 名古屋地裁判決では、「(渥美町と中部電力の間で結ばれた公害防止協定の)第5条は、中部電力は渥美町の同意を得なければ発電所の主要施設または公害防止施設の増設または変更をおこなうことができないという具体的な不作為義務を定めているのであるから、本件協定のうち少なくとも第5条第1項の定めは、公法上の契約と解するのが相当である」とし、公法契約説を取り入れています(注:『判例時報』893号)。
 しかし、「非権力行為に関して国民の利益救済を図るには、それに即した訴訟形態を利用すべきであって、公権力を争う取り消し訴訟を利用することは許されない」として、却下判決を下しています。

注:原告代理人の主張(『判例時報』893号)
 公害防止協定は、地域住民の健康の保護、生活環境の保全という公共の利益のため締結されるものであり、公害規制のための行政手段としての性格を有するものであるから、民事(司法)契約ではなく、行政(公法)契約である。

 この二つの判例以外にも、今村成和さんは『行政法入門』(2000年発行)で、「協定の効力を認める以上、その不履行に対しては、裁判の手続による強制が可能であることは、当然といってよい」と積極的に主張しています。また、原田尚彦さんは公法契約説を採っている行政法学者であり、『行政法要論』(1994年発行)、「公害防止協定とその法律上の問題点」(『ジュリスト』458号)などを著しています。

小松の場合
 「10・4協定」には、「達成を期する」という精神的規定が見られ、契約説をとるのに不利な用語が使われています。これを根拠にして、「紳士協定説」を主張する学者もいるとは思いますが、小松市(竹内伊知)にとってきわめて強大な法人格(国=防衛庁)との間で、協定を結ぶときに、やむを得ず「強制された表現」なのではないでしょうか。
 小なる地方自治体が巨大なる国家=防衛庁との間で、すなわち平等な関係が成立しない状態で、協定を結ぶときに、このような表現が避けられなかったということです。竹内さんからお話を伺うと、もともと「達成する」という原案を小松市として提示したのですが、防衛庁はどうしても首を縦に振らず、副知事の杉山さんの「助言」で、「期する」という言葉を挿入して、「10・4協定」が成立したという経緯があります。



 「期する」という表現にすれば、精神的規定性が強くなることはわかっていても、公害防止協定を成立させなければ、F4ファントムの爆音公害が野放しになってしまうと判断し、やむを得ず、妥協して、「期する」という言葉の挿入を認めざるを得なかったのです。
 そして、「10・4協定」締結から25年を経て、公害防止協定の法的性格そのものが、二つの判例に見られるように、紳士協定から公法的契約へと進歩しています。にもかかわらず、ファントム訴訟判決では「周辺対策の指針を定めたものに過ぎず、環境基準の達成を約束したものとして、法的拘束力を認めることはできない」という、時代に逆行した判決が出され、「10・4協定」の効力を否定しています。これを元に戻すことが、第3・4次小松基地爆音訴訟の役割だと思います。


<M資料(『10・4協定への1年間』所収)に表れた表現>
1975/7/4 防衛庁確認書案「環境基準の達成を期すべきもの」(資料56頁)
     防衛庁協定書案「達成に勉める」(資料58頁)
1975/7/17 小松市基本方針案「達成期間内に達成する」(資料60頁)
1975/8/27 防衛庁解決促進案「達成する方針である」(資料63頁)
1975/9/23 防衛庁解決促進案「速やかに達成する方針である」(資料71頁)
1975/10/4 10・4協定「環境基準の達成を期する」(資料10頁)

(上記は25年前の論考であり、第7次訴訟の第5準備書面を閲覧後、再考する予定である)
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