最高益だが客離れ……CoCo壱、“物議の値上げ”は成功か失敗か?
今回の値上げは失敗だったのか
今回の値上げがきっかけで、既存店の客数が5カ月連続で前年同月を下回り、累計では約5%の減少。客離れが起きたのは明らかだ。 しかし、売り上げは「単価×数量」で決まる。数量が多少減っても単価を引き上げて売り上げと利益を底上げすることは、特に成熟フェーズにある企業にとって王道の戦略であり、CoCo壱のように一定のシェアを取った企業には合理的とも言える。実際、足元の売り上げと利益は過去最高を記録しており、これまでの実績を踏まえると、現時点では「戦略的な値上げ」と評価できる。 ただし、値上げを起因としたこれほどの客数減少は前例がなく、今後も減少に歯止めがかからなければ、近い将来、過去最低水準に落ち込むリスクが現実味を帯びてくる。 現時点で成功とも失敗とも断定するのは難しいというのが正直なところだ。しかし、2024年9月の値上げからもうすぐ1年。多くの場合、売り上げや利益へのマイナス影響は1年~1年半で結果が出る。答えが明らかになる日は、そう遠くないだろう。
得られる「3つの教訓」
今回のケースからは、他の飲食店にとっても多くの示唆が得られる。価格改定はもはや避けられない経営課題だが、「どう上げるか」の設計次第で、顧客の反応はまったく変わってくる。以下に、今回のケースから得られる教訓を整理した。 (1)一律値上げは避けよ 全国一律価格の導入は、コスト面ではオペレーションが簡易になるが、価格に対する地域差・顧客層の受容差を無視してしまう。価格の閾値が異なるセグメントに同一価格を当てはめれば、いずれかの層が過剰な値上げと感じて離脱する。 今後は地域別価格、時間帯別価格、チャネル別価格など、セグメントごとの価格設計が必須になるだろう。 (2)集客メニューの価格は据え置け 顧客が価格の印象を決めるのは、いつも「頼み慣れた定番メニュー」だ。今回でいえば、ポークカレーの値上げは価格の印象全体を押し上げる要因となった。 このような価格の基準点となる商品は、むしろ据え置くか、値上げ幅を最小限にとどめ、他メニューやトッピングで回収する戦略が有効である。 (3)高単価メニューの開発で逃げ道を作れ ベースとなるメニュー価格を据え置いたまま、高単価な新メニューを追加するというのも王道の値上げ戦略。消費者心理としては「ベースは変わっていない」という安心感を持ちつつ、10回来たうちの3回はちょっとぜいたくをして、高単価メニューといった消費行動を促せれば客単価は上がる。特別感・期間限定感などを持たせることで、「価格が高くなった」という印象を緩和できる。 (4)来店頻度別に体感負担を想定せよ 値上げのインパクトは「単価」ではなく「頻度」と掛け算で決まる。月に1~2回の来店なら100円の値上げも大きな問題にならないが、週3~4回利用するリピーターにとっては死活問題になり得る。 CoCo壱はヘビーユーザー比率が高い店でもある。そのような来店頻度別の影響度を事前に想定せず、一律の値上げをしてしまえば、ロイヤル顧客を失うリスクは極めて高くなる。