映画
『ひゃくえむ。』魚豊×岩井澤健治が語る「死ぬと思って描いた」原作と、映像だからできた生々しさ

劇場アニメ『ひゃくえむ。』公開記念対談! 魚豊さん(原作)×岩井澤健治さん(監督)が語る“走ること”と“生きること”

昨年秋から今春までアニメが放送されて話題になった『チ。―地球の運動について―』の原作者、魚豊(うおと)さんの原点とも言われる『ひゃくえむ。』がついに劇場アニメになって、2025年9月19日より全国公開!

生まれつき足が速く、小学生の頃から全国大会に出場し、注目されていたトガシ(CV.松坂桃李)と、小学6年生の頃に転校してきて、現実を忘れるために闇雲に走っていた小宮(CV.染谷将太)。トガシが小宮に走り方を教えるようになったことをきっかけに、大人になるまで100m走に青春や人生を懸けていく――そんな生々しくも熱い人間ドラマです。

映画の完成を記念して連続対談企画をお届けします。第一弾は原作者の魚豊先生と今作を手掛けた岩井澤健治監督です。岩井澤監督は約7年をかけて1人で手描き長編アニメ映画『音楽』(大橋裕之さん原作『音楽 完全版』)を公開すると一躍話題になったクリエイターです。二人のクリエイターが交わった『ひゃくえむ。』について語っていただきました。

 

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ひゃくえむ。
生まれつき足が速く、「友達」も「居場所」も手に入れてきたトガシと、辛い現実を忘れるため、ただがむしゃらに走っていた転校生の小宮。トガシは、そんな小宮に速く走る方法を教え、放課後2人で練習を重ねる。打ち込むものを見つけ、貪欲に記録を追うようになる小宮。次第に2人は100m走を通して、ライバルとも親友ともいえる関係になっていった。数年後、天才ランナーとして名を馳せるも、勝ち続けなければいけない恐怖に怯えるトガシの前にトップランナーの一人となった小宮が現れるー。作品名ひゃくえむ。放送形態劇場版アニメスケジュール2025年9月19日(金)キャストトガシ:松坂桃李小宮:染谷将太仁神:笠間淳浅草:高橋李依椎名:田中有紀トガシ(小学生):種﨑敦美小宮(小学生):悠木碧沼野:榎木淳弥経田:石谷春貴森川:石橋陽彩尾道:杉田智和樺木:内田雄馬財津:内山昂輝海棠:津田健次郎スタッフ原作:魚豊『ひゃくえむ。』(講談社「マガジンポケット」所載)監督:岩井澤健治脚本:むとうやすゆきキャラクターデザイン・総作画監督:小嶋慶祐音楽:堤博明美術監督:山口渓観薫色彩設計:松島英子撮影監督:駒月麻顕編集:宮崎歩音楽ディレクター:池田貴博サウンドデザイン:大...

 

映画を観た魚豊先生は感性の描写のすごさと生々しさに感動!

──お互いの作品をご覧になった感想をお聞かせください。

監督 岩井澤健治さん(以下、岩井澤):地元の書店に魚豊さんの『チ。』が平積みされていて、表紙が他のマンガにはないデザインやタイトルの奇抜さに「このマンガ只者ではないな」と気になりました。程なくして『チ。』がおもしろいという評判を耳にするようになり、コミックスが3巻まで発売されたところでまとめて買いました。読んでみたところ、おもしろさと新しさを感じて、「描いたのはどんな人なんだろう?」と思って、いろいろ調べていくと20代前半ということを知って驚きました。そして「他に何を描いているのかな」と思って調べたら『ひゃくえむ。』という陸上をテーマにした作品で。なので今回のお話をいただく前から魚豊さんの作品に興味を持って読んでいました。

 

 
原作 魚豊さん(以下、魚豊):僕は『音楽』が公開されたことは知っていました。タイミングが合わず当時は映画を観ることはできなかったけど、僕が信頼してる人たちからの評判が凄く良かったので、「絶対におもしろいんだろうな」と思いました。1人で手描きして長編アニメを作るという制作方法もユニークで気になっていました。

それから『ひゃくえむ。』の劇場アニメ化のお話をいただいて、岩井澤さんに監督していただくことになって、『音楽』を遅ればせながら観てみたら、とても良くて、なんというか、画面からアニメを作る喜びが伝わってきて、観ている側も作りたくなるような感じがしました。『音楽』を見ると、「頑張ろう!」とよりやる気が出てくるんですよね。

それと、『音楽』は幅広い層の方が評価してる。コレも凄いと思う点で、誰が観ても楽しめる作品を作る、厚みや強度があるクリエイターさんだなと思いました。なので、今回『ひゃくえむ。』のアニメ化を手掛けていただけて光栄です。

──魚豊先生には『ひゃくえむ。』の劇場アニメ化のお話が届いた時の心境と、岩井澤さんが監督をされると知った時の感想をお聞かせください。

魚豊:アニメになることも嬉しかったけど、作家性のある監督に作ってもらえることはすごく光栄なことで、何よりも嬉しかったです。

 

 

──岩井澤さんは、ご自身の元に監督のオファーが届いた時の感想をお聞かせください。

岩井澤:お話をいただいた時にはちょうど、『チ。』、そして『ひゃくえむ。』を読んで、自分の中で魚豊ブームが起きていて。『チ。』の新刊を待ちわびていたところにポニーキャニオンさんから「一緒にやりたい企画があるんですけど」とお話をいただいて、その作品が『ひゃくえむ。』でした。「つい最近、読んだばかりですし、魚豊さんは今一番注目している作家さんです。ぜひやらせてください」とお返事させていただきました。

OKしたその場で「映画にするならどんな構成にするのか」などかなり具体的な話もしました。陸上はみんなが知っているけど、野球やサッカーなどに比べるとあまり注目されていないし、100m走は個人種目で、わずか10秒の中で勝負が決してしまうところをどうエンタメ化するかという話も割とすぐにしていたと思います。

──劇場アニメ化にあたって、魚豊先生からリクエストされたことはありますか?

魚豊:特になかったです。ただマンガではモノローグが多かったり、レース中の10秒でいろいろ表現できますが、映像でそれをやるとチープになってしまう可能性もあるので、懸念点としてお伝えさせていただきました。制作スタッフの方からは「当然です」と言っていただいたので、心配はありませんでした。

岩井澤:僕は心配でした(笑)。魚豊さんのマンガは強烈なので、お会いするまでは「どんな人なんだろう?」と不安でした。

 

 

──『ひゃくえむ。』を劇場アニメ化するにあたって意識された点やこだわられた点を教えてください。

岩井澤:まず原作があるものなので、中途半端なものにはできないなというのがありました。原作ファンの想いを無視して自分がやりたいように改変するのだけは絶対にやってはいけないと。それと同時に、原作をただダイジェストにしても良い映画にはならないとも思いました。

自分の中で変えていけないところとアレンジするところのバランスを決めて、構成案を魚豊さんに見ていただいて、フィードバックを受けて、また構成を直すというやり取りをしました。

最初の構成を見ていただいた時、「これでは全然ダメです」とNGを出されてしまうかもと内心覚悟していましたが、そんなことはなく、むしろ細かいところを指摘していただいて、「そんな細かいところまで見てもらえるんだ」と嬉しかったです。今振り返ってみると最初の構成案からそれほどズレていなかったのかなと思っています。

──走る描写はどれも迫力や生々しさがあって、かなりこだわられたのかなと思いました。

岩井澤:『ひゃくえむ。』の映画に携わるまでは100m走にあまり興味を持って見てはいませんでした。なので自分の中でどう映像の中に落とし込めるのかというのは漠然としていましたが、作中での見せ場の一つではあるので、見せ方は意識しました。

魚豊:マンガでは運動を厳密に描くことはできないし、僕もあまり絵が上手なタイプではないので、映画を観た時、ロトスコープ(実写映像を1コマずつトレースして描く技法)ならではの慣性の描写がすごくて。あぁいう運動の生々しさを描くのは静止画だとなかなか難しいので、それができるのは映像ならではだなと思って良かったです。僕は生々しいもの好きなので(笑)。

 

(C)魚豊・講談社/『ひゃくえむ。』製作委員会

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