総務省が14日公表した人口推計によると、65歳以上の高齢者は3619万人だった。総人口に占める割合は29・4%で過去最高となった。高齢者の就業者数も930万人と21年連続で増加し、過去最多である。実に働く人の7人に1人が高齢者という時代になった。元気なお年寄りが増えていることに加え、少子化による働き手不足も背景にあるのだろう。
私事であるが、筆者は過日、70歳になった。高齢者に含まれるのだろうが、大学に勤務しているので就業者でもある。大学からはさまざまサポートを受けており、それなりに教授職を全うできている。個人的にはそろそろ引退モードで、基本的には月曜と土曜だけ働き、火曜から金曜は余暇に充てている。余暇は旅行、温泉、映画・スポーツ観戦などだ。
筆者の経験でいえば、一昔前に比べて高齢者は働きやすくなった。コロナ禍以降オンラインによる講義がかなりやりやすくなったので、大学に行かずに済むのは筆者としてはかなり助かっている。また、テレビ出演や講演でも、オンラインが可能になったのはいい。今年前半に肩と腰を骨折し、かなりの期間動けない状況になったが、それなりに、大学、テレビ出演、講演、連載、YouTube配信をこなすことができた。
筆者の例を一般化するのは慎重であるべきだろうが、技術によって高齢者でも就業機会が増す可能性があるといっていい。
筆者は、人口減少をあまり心配していない。というのは、人口減少はかなり予測可能であるので、もし弊害があるのであれば、事前準備ができるからだ。その対策として、まず機械化・人工知能(AI)の活用である。
人口減少の対策として移民を掲げる人もいるが、それは間違っている。世界で人口減少している国は30~40カ国あり、成長率の高いところは機械化・AI化が進んでいる。
経済理論からいっても、機械化・AI化すると、1人当たりの生産性は高くなる。ちなみに、人口増加はあまり対策はないが、人口減少は対策があるというのが、マルサス人口論からの経済学的帰結でもある。
人口4千万人以上の38カ国中、総人口に占める65歳以上の割合は日本がトップで、2位がイタリア25・1%、3位はドイツ23・7%となっている。日本の技術を発揮し、世界の好例となったら素晴らしい。個人ベースでは、それぞれ自分に応じた新しい技術を取り入れて、高齢者は若者に負けない労働力になったらいい。
(たかはし・よういち=嘉悦大教授)