薙刀式はなぜ最強であり、そして理想ではないのか
本記事は他の「かな配列」と比較するものではないので、大岡氏に敬意を評し、配列ではなく日本語入力メソッドと呼ぶ。
薙刀式は、研究すればするほど練り上げられた日本語入力メソッドであり、現状かな入力として抜きん出た存在であると思う。最強である。
しかし完璧ではなく、もちろん理想でもない。特殊な小説を書くのにちょっと都合が悪いとこがある以外にも、色々言いたいことはある。
最強の理由と、理想でない理由、それをまとめて言ってみよう。
薙刀式最強の理由
最小の認知負荷
文字ベースの極地、全同置。そして拗音合成。
ローマ字は26文字覚えればいい、なんなら覚えなくていい論は、学校教育に依存しているだけだし、そもそも「記憶負荷」と「認知負荷」を履き違えている。
要するにローマ字脳内変換の話だ。その負荷は永遠に消えることはない。無視できるほど小さくなる人もいるだろうが、僕を含めて大抵の人はそうではない。
かと言って、かな入力でシフトをごちゃごちゃやるほうが楽という人ばかりでもあるまいし、脳は文章を考えるのに使うべきなのだから、認知負荷が低いに越したことはない。
その点、清濁同置と拗音合成は、覚えやすく、思い出しやすく、意識を割かない。
連濁等の観点からは、覚えやすいだけでなく言語的に自然とも言える。
モーラ等速
拗音合成は、文字ベースの欠点である打数を克服している。
濁音が2打でないのは当然として、拗音が1打のメソッドは希少であり、その中ではダントツで覚えやすい。
モーラベースでは拗音が直接配置されているのが強みであり欠点。つまり、覚えられない。
いっぺんに入力できることが重要であり、モーラそのものが配置されてる必要はないと考えるなら、拗音合成こそスマートな解決と言える。
日本語の構造との一致
この点については大岡さんのブログに無数の言及があるので、代表的なものに留める。
膠着語としての日本語を特徴づける、「繋ぎの語」がスムーズであること。
格助詞を始めとして、日本語の「骨組み」をなすパーツが「強い指」にあること。
活用形による左右分別。
これらの特徴から、薙刀式はタイピングゲームではなく、「日本語を書くこと」に特化し、「日本語の思考」に一致する。
身体操作との一致
これも代表的なものに留める。
脱力できる伸展打鍵を前提とし、全体的に「手前から奥へ滑らせる運指」を想定した配置。
回内を解消する外ローリングを重視したアルペジオ。
右利きの「左→右」選好に寄り添った配置。
(補足:日本語教師が教える!教養のための「漢字の読み方」ルール5選(高橋亜理香) - エキスパート - Yahoo!ニュース)
エネルギー効率よく、思考を解放する脱力へ導き、自然な身体操作に寄り添う。
思考の連続性(サイクル打鍵)
思考と一致し、動作と一致するメソッドは、すなわち思考と動作を連動させ、動作が思考を導く連続思考を可能とする。
ここで、薙刀式の極めて特徴的な点として、「ブレーキング」がある。
助詞や句読点といった、通常頻度の高さからアンシフトにされる文字をあえてシフトにすることで思考時間を稼ぎ、「思考を切らさない」ことで逆に「早く」なる。
運指的にも、「節」で手前に切り返すことでリスタートをかけ、再び伸展の流れに向かっていく。いわばサイクル打鍵だ。
意味わからんほどすごい。僕には都度奥まで駆け抜けるという発想しかなく、だからフタワフタバの句読点はruの位置だった。
この点を理解したとき、ベースは薙刀式以外にないと覚悟を決めた。
逆に言うと、気に食わない点を全部何とかすると決めた。
気に食わない点
しかし、これらの多数の利点を同時に実現するため、捨てている部分もある。
薙刀式はその圧倒的に優れた設計ゆえ、広く受け入れられるポテンシャルを持っているが、性質的には相当ピーキーなメソッドだと思う。
日本語専用バックスペース
いやまあ、わかるわかります。バックスペース遠すぎやもんね。でもだからこそ英数モードで使えやんの困るし、自作キーボードでバックスペースそのものを置かない意味あります???
コンボエンター
逆にエンターは同時押しなんかい、と。オリジナルの薙刀式では句読点に確定が付いてくるんでエンターは相当減るんだが、自分の原稿で改行数えたらそれだけでどうしようもないほど多いとわかった。単打でしょ。
親指スペース
スペースつうか変換ね。自キ的に親指である必要はないし、シフトとの使い分け普通にだるいんだよな。(変換は)フィンガーにしたーい
濁拗音のフィンガー3キー同時押し
やっぱ「゛ゃ」が標準運指で取れないのは嫌っす俺は
中指の過小負荷、人差し指の過大負荷
拗音合成の都合で濁音シフトを中指にできないのもあってちょっと中指軽い、つか人差し指重すぎ。右なんかバックスペースの裏に文字乗ってんよ、さすがにやばすぎじゃね?
あと、キーボードのレイヤーシフトも乗るんだよね。というのは、僕は基本的に親指レイヤーフィンガーMOD派なんですけど、
親指シフトでレイヤーも親指だと流石に折れるから、レイヤーはフィンガーに振るしかない。レイヤーとMODの同時押しもある以上、2レイヤー以上あったらもう人差し指以外振りようがない。つまり人差し指にはレイヤーも乗るから多少軽くしないとまずい
句読点確定
これは批判というほどでもないが
句読点変換とどっちが楽かは微妙
ならIME標準でもいいのではないか
編集モード
これは他の選択肢もあるよね程度
日本語以外でも必要だからキーボードで実装すべき
コンボのホールドではまだ負担が大きい
脚本マクロ的な部分はエディタに実装するのが筋
付け加えたい点
これは批判ではない
ア行の扱い
特殊文筆家としては母音シフトは許容せず
ア行アンシフト
小書き同置
変換キー
別にスペースで変換してもいーんだけど
分けとくと「!?」の後に変換挟まずにスペース入力できていーよねとか
変換キートリガーでVimモード入ったりしたさある
まとめ
薙刀式は最強のかな入力なのだが、そうはならんやろもいっぱいある
そうはならんやろはたいてい別のところにこだわった結果なので、一概に否定できるものではないが、万人向けとは言い難い部分もある
オレオレ薙刀式、しよう!
この記事はメビウス式で書きました。
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