モーラ等速入力とその意義
かな入力は文字ベースとモーラベースに分けられる。
拗音は2文字で表されるモーラである。
「獣」という漢字は、「けもの」と読めば3モーラ、「じゅう」と読めば2モーラ。
文字ベースでは拗音の入力に最低2打必要だから、入力するモーラ数と打鍵数が原理的に一致しない。
入力するモーラ数と打鍵数が一致する入力方法を、ここではモーラ等速と呼ぶ。
1モーラ1ストロークとか、1モーラ1アクションとか言ったりするが、タイピングの方の単位がどこからどこまで1拍なのか分かりづらいからだ。
とにかく一旦、タイピングとテキストの「拍」が合うものがモーラ等速であるとする。
では、タイピングはどこまでを1拍と認めるべきか。
配列界隈では、概ね同時押し、つまり「区間シフト」「同時シフト」および「相互シフト」だと考えられていると思う。僕もこれに同意する。
逆に言うと、前置シフト、後置シフト(濁点後付け)は1拍ではない。
対象のキー+シフトキーではなく、特定の2キー同時押しに仮名を割り当てる例も少数ながらある。QMKのコンボと同じだ。これは単打に準ずるものとして1拍扱いでよかろう。
また、文字ベースでも拗音合成により拗音を1泊で打てるものは該当する。
まとめると、モーラ等速の条件は、
仮名ベース
モーラベース
拗音合成採用文字ベース
シフト方式
区間シフト
同時シフト
相互シフト
となる。
モーラ等速の意義
> あ、拍子か。1小節の長さは変わらんでも、4つ打ちと8ビートは違うわけだ。運動機能的というより音韻的な
> 脳内発声ありだと、拍子はそこで取れてるから指で取る必要はない。指はセカンダリ拍子。でも脳内発声なしだ
結論から言うと、そう。
逆に脳内発声がある人は、
脳の声をメインボーカルと考えれば、
手はサブリズムを刻んでも平気なのか!
こっちから見たら変だよ。笑
こっちは4カナ書くのに8打は違和感バリバリ。
そこがローマ字を捨てた理由だな。
スマホのフリックもそれが便利よね。
(スマホのqwertyが仮に打ちやすいデカいボタンだったとしても、
僕は使わんだろう)
結局qwertyの配置を合理的な行段系に変えても、
僕は日本語を書くのに違和感があったので、
根本的にはサブリズムを許容できない体質らしい。
合理性云々よりも、生理的な話かもしれない。
ざっくりこういう話。
文章を読んだり書いたりするときに、声を感じる人と感じない人がいる。俗に言う脳内発声、学術的には内声、インナーボイスと呼ぶらしい。
統計的には「内声あり」が圧倒的多数を占める結果で、個人レベルのアンケートでも同様の結果が得られている。
ちなみに、僕は内声化あり=うで体じゃないかとちょっと疑っている。
で、少数派であるところの「内声なし」派からすると、モーラ等速でないのが気色悪いというのが大岡さんの証言。
僕自身は内声ありなので、モーラ等速でなくとも不都合は感じない。ただし、だからこそ、「モーラ等速入力によって内声化を抑制できる」可能性がある。
内声化の影響に関する少数の研究によれば、内声化の有無・多寡により読解に関するスコアには有意差があり、一概に内声なしが優れているとまではいえないものの、「内声化すべきでない状況」がある可能性は高いと考える。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcogpsy/22/1/22_2402/_pdf
その一つが、いろは坂配列、月林檎配列の作者であるめんめんつさんのいう「連続的思考タイピング」だ。
連続的思考タイピング:手を動かす事と考える事を同時進行で行う方法。思考が途絶える事がない一方で、思考とタイピングを緻密に同期する感覚が必要。筆を止めずに書き続けられるような作家などのプロの物書きが行っている方法(と思われる)。
そこで、内声化を抑制するためにモーラ等速を選ぶことがあり得る。
「モーラ超等速」ではない
モーラ単価を2から1に近づけるのが大変なので、モーラ等速=最小打数みたいな感じがするが、2モーラを配置すれば単価1を切るのは簡単にできる。(「です」「ます」を配置するとか)
しかし、テキストと指の拍を一致させるという観点では、「超等速」も望ましくない。
(もっと長い定型文や、固有名詞等を1アクションで出すのは別にいいような気がする)
また、速さという観点では、厳密な同時押しが要求されない前置シフトのほうが、超素早く2打打てて勝る場合は普通にあると思うが、「速く打てすぎる」ことが逆に問題になる可能性をめんめんつさんが指摘している。
創作文で速度を追求するならタイピスト的な速さではなく、連続的思考がしやすいような配列を使うと良いでしょう。ローマ字入力では子音→母音がスキップのようなリズムで不安定になりやすいため思考とタイピングの同期が難しいです。プロの物書きの中では親指シフト入力が今でも人気ですが、これは同時押しで必ず一文字進むリズムが連続的思考と相性が良いからかもしれません。
月配列のような順次打鍵カナ配列でも同じであり、前置シフトを押してから確定するまでは一瞬で打てたほうがよいのでしょう。JISかなや新JISの濁点後置シフトでは打ったのにカナが現れない瞬間が無いので前置シフトほどの違和感はないですが、それでも等速リズムを崩す要因にはなるでしょう。
つまり、順次打鍵配列というのは使用者の指の加減速を前提に設計された配列といえます。指と文字のどちらかを等速にしたらもう片方は変速的になります。
この記事は間欠的思考タイピングで書いたがかなり時間がかかってしまった。2000字ちょいなのに2時間かかった気がする。
つまり、超速く打てるが拍が一致しない方法よりも、指はゆっくりでも柏が一致する方法のほうが、結果的に「早い」可能性がある。
まとめ
モーラ等速:モーラベースまたは拗音合成で「1拍」シフト
内声なしだとモーラ等速が合う可能性がある
モーラ等速だと
内声がなくなりやすい可能性がある
連続的思考タイピングしやすい可能性がある
この記事はメビウス式で書きました。
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