仮名の分類とシフト構造
文字ベースでもモーラベースでも、仮名を分類するかという問題がある。濁音(半濁音)や小書きをまとめる、あるいはペアリングするかどうか。
全部ごちゃまぜで最適化:運指は練れるが覚えづらくなる
濁音(半濁音)や小書きをペアリング:覚えやすいが運指の最適化に限界
シフトの種類
ここでいう「種類」とはシフト判定の仕組みではなく、同じ物理キーに何をペアリングするかという話。
互いに関連しない仮名同士をペアリングする場合、仮名が配置された「面」を切り替えるイメージで、面シフトと呼ぶことにする。キーボードのレイヤーシフトとほぼ同じだが、それと区別する意図もある。
清音と濁音(半濁音)、通常の文字に対する小書きのように、関連する仮名同士をペアリングする場合、同じ「族」の仮名を切り替えるという意味で族シフトと呼ぶことにする。
面シフト
族シフト
濁音シフト
半濁音シフト
小書きシフト
濁点(半濁点)後付けをシフトとみなすかについては、個人的には否定的。
文字ベースだと「拗音そのものは配置されていないが入力はできる」というのと同じで、濁点(半濁点)後付け型は「濁音・半濁音そのものは配置されていないが入力はできる」とみなしている。
(「ローマ字入力にはどの仮名も配置されていない」といえば、それは当たり前だろう)
同様に、拗音合成もシフトではないと考えるが、「仮名に符号を付加する」という観点では、族シフトに近しいものと言えるだろう。
同置と排他
族シフトする場合、清音と濁音(半濁音)、通常の文字と小書きが同じキーに割り当てられる。これを同置と呼ぶ。JISかなは小書き同置である。
同置しない場合を別置と呼ぶ。新JISかなは小書き別置である。
文字ベースでも仮名総数は80以上になるから、モダンかな入力(新配列)では物理キー1つには3以上の仮名が割り振られるのが通常である。
つまり、例えば濁音同置の場合、あるキーには、
メジャー仮名
マイナー仮名(面シフト)
濁音(濁音シフト)
が割り振られることになる。
ここで、メジャー仮名とマイナー仮名の両方が濁音とペアリングされる場合、
メジャー仮名
マイナー仮名(面シフト)
メジャー仮名の濁音(濁音シフト?)
マイナー仮名の濁音(濁音シフト?)
となってしまう。
すると、「どちらの濁音か」という区別が必要になるから、マイナー仮名の濁音を入力するには、面シフトと濁音シフトの両方が必要になる。(新JISかなはこの方式)
しかし、メジャー仮名とマイナー仮名のうち一方のみが濁音とペアリングされているなら、それがマイナー仮名であろうとも、濁音シフトだけで濁音入力としても問題ないことになる。これを、濁音に関して排他的配置と呼ぶ。
同様に、拗音合成においても、「拗音の第1字同士」と「小書き(捨て仮名)」同士を排他にすることで、「区別のためのシフト操作」を省くことができる。
同置方針ごとの例
全別置(面シフトのみ)
濁音、半濁音、小書き(拗音)の全てが、互いに関連なく配置されている。
運指は最適化できるが、覚えにくい。
特筆すべきは飛鳥配列の拗音周りで、「イ段が左手」「ゃゅょが右手アンシフト」により、伝統的拗音は最大1シフトの左右交互、かつ「ウが左手」により超頻出連接の「ゅう」「ょう」まで左右交互となるよう配慮されている(左右交互がベストかはおいといて)。
全同置
文字ベース
モーラベース
見つからなかった
濁音、半濁音、小書き(拗音)の全てがペアリングされている。
覚えやすいが、運指の最適化に限度がある。
前述の通り、小書きまで排他であることにより、拗音合成を可能としている。
濁音(半濁音)のみ同置
文字ベース
見つからなかった
モーラベース
小書きのみ別置だが、モーラベースなのでそもそも基本的に使わない想定だろう。薙刀式も拗音合成前提の設計なので、あまり変わらないとも言えるし、そうてもないとも言える。
小書きのみ同置
文字ベース
JISかな
モーラベース
見つからなかった
濁音が「別置」というわけではないが一応
シフトの構造
各族について同置するかどうかで、かな入力の構造が違ってくる。
ここでは、簡単のため、新下駄配列、薙刀式、飛鳥配列の3つを比較する。
英語では、指(digit)を親指(thumb)とその他の指(finger)に分ける。
全別置の配列では、異なる種類のシフトが混在していないので、親指とフィンガーのいずれかに全てのシフトを割り振る選好が強い。
問題は、面シフトと族シフトが混在する同地方配列がどういう構造になるかだ。
飛鳥配列(文字ベース、全別置、3面)
全別置であるから、シフトは面シフトのみ。左右の親指でシフトする。
(仮名同士の繋がりやすさを含めた)頻度のみによって割り振られており、左シフト・右シフトの間に意味的な違いもない。
ある意味、最も単純なかな配列(その単純な仕組みで運指を最適化することは全く単純ではないが)。
新下駄配列(モーラベース、全別置、5(6)面)
飛鳥配列の収録仮名に加えて拗音があり、アンシフトを含めて6面だが、片手のみの面が2あるため実質5面とも言える。親指は使わず、左右の中指・薬指でシフト。
片手のみの面は拗音+ゆ+よ収録で、微妙に性質による分類がなされている。
薙刀式(文字ベース、全同置、2面)
本題。親指で面シフト、人差し指で濁音・半濁音シフト、小指で小書きシフト。拗音は合成メインで、小書きシフトは補助的。
面シフトのみが親指で、族シフトはフィンガーだ。
・マイナーカナは通常シフトで面(レイヤー)が変わるイメージ
(連続を許容)
・濁音、半濁音、拗音、外来音は、
清音に和音を重ねて色をつけるイメージ
(実装上は連続を許容してるが、意外と毎回同時押ししてしまうのは、
和音は都度鳴らすものだから、的な感覚。
例 じょじょ (RJI)(RJI)
「JIを押しながらRR」でも出るけどやらない。
指のエネルギー的には無駄だが、
脳の認識は楽だと思う)
このように、面シフトと族シフト(+拗音合成)では言語的認知が異なることが語られている。
中指シフト版薙刀式を作る人はたまにいて、拗音合成の濁音を考えるとフィンガー面シフト親指濁音(半濁音)シフトもあり得るが、「性質の異なるシフトを全部フィンガーでやるのが"楽"なのか」ということは考える必要があろう。
シン蜂蜜小梅配列では、半濁音シフトをフィンガーに逃がすことで同置を実現しているが、僕はこの点には批判的で、濁音シフト・半濁音シフトのdigit typeは揃えるべきという考えだ。
まとめ
面シフト同士、族シフト同士のdigit typeは揃えるべき。
この記事はメビウス式で書きました。
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