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進次郎大臣の強引な備蓄米放出が新米を高騰させた

つまり、進次郎の備蓄米放出対策は、米価を引き下げるどころかかえって米価高騰をもたらす極めて不条理な対策だったのです。

ついては以下にその理由を、順をおって解説いたしたいと思います。

1)まず、進次郎は焦って兎に角、備蓄米を30万トン一早く売りさばこうと、通常の「米流通ルート」を使わず、スーパー等の「小売り業者」に備蓄米を直接売りさばいた。

2)その結果、「卸業者」が(備蓄米放出前に)大量に「高値」で買い込んでいた銘柄米が大量に売れ残った。

3)「卸業者」は、その売れ残りを販売する際に、「購入した値段以上」で売らなければ赤字になってしまう。だから彼らは今、赤字を避けるために、「売れ残りの価格を、購入価格以上にしよう」と躍起になっている。

4)ただし、その「売れ残り米」は今年の「新米」よりも高い値段で売るわけにはいかず、「新米」よりも少々安い価格で売らざるを得ない。だから、「売れ残り米」をできるだけ高く売るためには、「新米」はそれ以上に高い価格で売らなければならない、という状況になっている。

5)その結果、卸業者は、売れ残り米を(赤字が出ない程度に)高く販売するために、新米を意図的に引き上げて販売する、という戦略をとっている。

以上により今、新米が昨年以上に高騰してしまっている、というのが実態なのです。

さらには、米の一般的な流通ルートであるJA全農は、米農家から米を預かり、その代わりに「仮渡金」(注1)を米農家に手渡すのですが、その「仮渡金」は、卸業者の販売価格が基準となるので(注2)、結局、「仮渡金」も引き上がってしまっているのです。

以上纏めるなら、進次郎が30万トンもの備蓄米を過剰に安い価格で流通させたものだから、卸業者に米の在庫が余り、彼らはその在庫を処分するために新米を過剰に高く引き上げる――ということとなってしまったのです。

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(注1)少々ややこしいのですが、「仮渡金」は、文字通り「仮に渡しているお金」のことで、実際には、JA全農が米を「販売」した際の価格に一定の手数料を足し合わせた金額を、農家に実際の支払いとして支払うことになります。つまり、「仮渡金」と「実際の販売価格+手数料」との差額を、JA全農が追加で支払ったり、農家から支払って貰うことで事後の調整しているのです。こうしているのは、農家の収入は実際に米を「売った」時にしか手に入れられないのですが、それでは農家の人が困るだろうということで、JA全農が一旦おおよその価格を農家に支払って、後で調整する仕組みにしているのです。

(注2)一般的な米の流通ルートは、

     農家⇒JA全農(集荷業者)⇒卸業者⇒小売り(⇒消費者)

というものです。ここで、卸業者が「高値」で買い取ると農家に提示すると、農家はJA全農に米を回さず全て卸業者に売ってしまうということになってしまいます。そうなると、JA全農が扱う米の量が大幅に減ってしまい、それが、米価の不安定化に繋ってしまいます。

JA全農は民間企業の卸業者と違って「利益の最大化」を目標としておらず「価格を安定化し、消費者と農家の双方の利益が共に最大化すること」を目標としているそしきです。だから、JA全農が扱う米の量が減れば必然的に米価の不安定化に繋がり、過剰に米価が高くなったり過剰に安くなったりします。前者の場合は米離れが進み、後者の場合は農家の廃業が増えます。そうした事態を回避するためにJA全農が存在するのです。

だからJA全農は、卸業が過剰に高い値段で農家から米を買い取る現下の状況では、米価を可能な限り安定化させるために、卸業者と同程度の高値を「仮渡金」として農家に渡すことを提示し、一定以上の米がJA全農に回される状態を確保しようと、せざるを得なくなるのです。

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