2002年ごろのマンガ古書市場の事情を書いた本です。
赤本から貸本、月刊・週刊漫画雑誌や新書版の単行本といった主要なマンガ媒体の歴史にそって紹介されているので、くわしくなくてもスッと入っていける構成になっています。
「そっか~」と思ったのが、マンガ古書の世界に、二十代後半の人が、昔読んでいたマンガを古書市場で買おうとするという購買パターンがあるらしいということです。仮面ライダーの変身ベルトや、オールドファッションなたまごっちを大人になってから買うようなのと同じ現象が古書市場にもあるのだとか。
そのため、「古けりゃ高い」というわけでもなく、「今のコレクターが昔読んでいたマンガが高く、それより前の世代のマンガは次第に安くなっていく」という値動きがあるみたいです(今はどうかはしりませんが)。古さという歴史的価値だけでなく、市場の人気というのがかなり重要なのは、学者のコレクションとはちがった雰囲気で面白いです。
そのほか、
①知らないマンガの紹介が目白押し
②コレクターが求めるニッチなポイントの連続
でかなり面白いです。
①知らないマンガの紹介が目白押し
2002年のマンガコレクターが高値で取引していた作品が大量に紹介されるのですが、知らない作品だらけで、「うわー!全く知らないマニアの界隈で、知らない作品が引っ張りだこになってるんや・・・!」と思えて胸が高鳴ります。
中には読んでみたいものもちらほら。
特に読みたくなったのがジョージ秋山『シャカの息子』です。
「シャカの息子」と名乗る謎の男が田舎の村に現れ、カリスマ性で村人を翻弄していくというミステリーらしいです。表紙の絵、なんなんでしょうね・・・。お、おもしろそう・・・!
1981年のジャンプに載って、あんまり人気は出なかったみたいですけど(全二巻)、すごく気になります。いまやKindleで読めるなんてありがたいですね・・・
②コレクターたちが重視するニッチなポイントの連続
初版本・きれいな状態といった条件ならまだわかりますが、
ほかにも様々なこだわりがあるようで、それに「ク~」となります。
同じ作品でも、掲載された雑誌、単行本、レーベル違いの単行本を集めたり、初版の帯を付きの物を求めたり、口絵がついているバージョンを求めたり・・・とこれらのこだわり自体は理解ができるのですが、「作品ごとにどのようなバージョン違いがあるか把握されている」のめっちゃよくないですか。
「このレーベルは途中から口絵を付けなくなっているから、口絵がついている方がいい」「このマンガの初版帯は高値の条件」というのが、売買する人たちの間で共有されている、この狭い狭い世界の知識の濃密さ・・・!
私は「内容が読めたらそれでいい」派なんですが、こういうこだわりの世界を外から見ていたい・・・という気持ちはあります。内にいる人はイヤでしょうが、私は見続けますよ!
美術史の研究室で大学院生をやっていたころ、画商の人や古書商の人に絵や本を見せてもらうことがありました。「本物と偽物の違いについて」という点は美術史の研究者と同じ興味ではあったのですが、彼らはやはり「今何が売れるか」という話が多かったように思います。
評論家の書評と、古書店の人が書いた本の紹介はノリが違うので、読み比べるのたのしいですよね・・・!
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