小泉農林水産大臣は20日午前、東京都内で記者会見しました。
この中で、小泉氏は、与党が衆参両院で過半数を失った現状について「国民の不安に向き合わず、物価高で苦しむ人への想像力が欠けていた。もう1度、国民の声を聴き、思いを感じ取り、不安に向き合う。国民の求める安心と安全を実現する政党に自民党を立て直すため、先頭に立つ決意で総裁選挙に挑戦する」と述べました。
そして、「まず優先すべきは物価高で生活が苦しい国民の切実な声に向き合うことだ。ただちに物価高対策を中心とする経済対策を検討し、裏付けとなる補正予算案を臨時国会に提出する」と述べ、経済対策の実行に最優先で取り組む考えを示しました。
具体的にはガソリン税の暫定税率の速やかな廃止や、手取りを増やすため、物価や賃金の上昇に合わせて所得税の基礎控除などを調整する仕組みの導入を進め「年収の壁」を引き上げること、それに医療、介護や、保育、福祉、教育で働く人の、物価上昇を上回る処遇改善の実現などを挙げ、財源は税収増の活用や歳出改革も含め柔軟に検討するとしています。
経済政策では、インフレに対応する新たな経済運営を打ち出し、2030年度までに国内投資135兆円、平均賃金100万円の増加を目指すとしています。
また、地方活性化や農林水産物の輸出拡大、それにコメ政策として生産者の所得が確保され不安なく増産に取り組めるセーフティーネットの構築を盛り込みました。
防災庁の設置など石破政権が重視する防災の取り組みは継続し、外国人問題での司令塔機能の強化とアクションプランの年内の策定、ストーカー対策など治安強化も訴えています。
外交・安全保障では防衛力の着実な強化や日米同盟を基軸とし韓国、インド、オーストラリアを含む多様な同志国連携の拡大を図るとしています。
さらに、憲法改正の議論を推進し、政治資金の透明化の徹底で「政治とカネ」の問題が起きない土壌を整えるとともに、野党時代に当時の谷垣総裁が進めた国民の生の声を聴く全国での対話集会を再び実行し、自民党を1つにまとめ政治を前に進めるとしています。
記者会見では、野党との連携について「幅広く政策協議を呼びかけ、合意を模索する努力を行う。政策や理念の一致を慎重に見極めながら、政権の枠組みのあり方について議論を深める」と述べ、連立政権の枠組み拡大も検討していく考えを示しました。
また、参議院選挙で与党が掲げた国民1人あたり2万円の現金給付については「選挙で国民の賛同を得ることはできなかった。野党からも反対が出ていて、実現はなかなか難しい状況だ」と述べました。
一方、去年の総裁選挙で、「選択的夫婦別姓」を認める法案を国会に提出する方針を示したことについて「考えが変わったことはないが、政治の役割は政策の優先順位を明確にして取り組むことだ。去年の総裁選挙のあと、自民党内で結論に至ることはなく、野党も1つの案でまとまらなかった。家族観や人生観に関わることは引き続き、国民とともに理解を深めていく必要がある」と述べました。
同じく、去年の総裁選挙で掲げた解雇規制の見直しについては「成長分野に人が移動しやすい労働市場をつくっていかなければならないとの思いは変わらない。ただ、国民に不安を与えてしまったことも事実で、反省しつつ、まずはジョブ型雇用の推進やリスキリングの拡充を強化したい」と述べ、現時点で見直しを進めることはないという考えを示しました。
小泉氏の総裁選挙への挑戦は去年に続いて2回目です。
自民総裁選 小泉農相 立候補を正式表明「自民党を立て直す」
石破総理大臣の後任を選ぶ自民党の総裁選挙について、小泉農林水産大臣は、国民の不安に向き合い政策を前に進める先頭に立つとして、立候補することを正式に表明しました。小泉氏の総裁選挙への挑戦は2回目です。
《小泉氏のプロフィール》
小泉進次郎氏は衆議院神奈川11区選出の当選6回で44歳。
総裁選挙は去年に続いて2回目の挑戦です。
大学卒業後、アメリカのシンクタンクCSIS=戦略国際問題研究所の研究員を経て、父親の小泉純一郎・元総理大臣の秘書を務めました。
2009年の衆議院選挙で純一郎氏のあとを継いで立候補し、28歳の若さで初当選しました。
党の農林部会長として農協改革に取り組んだほか、子育て支援にも力を入れ、保険料を財源に幼児教育を実質的に無償化する「こども保険」の導入を提言しました。
38歳で環境大臣として初入閣
2019年に、安倍内閣で戦後3番目の若さとなる38歳で環境大臣として初入閣し菅内閣でも再任されました。
早くから将来の総理大臣候補の1人と目され、党の総裁選挙では常に動向が注目されてきました。
去年の総裁選挙に初めて立候補し、1回目の投票で9人の候補者の中で最も多い国会議員票を獲得しましたが、全体では3位となり決選投票に進めず敗れました。
石破政権の発足に伴い党の選挙対策委員長に起用されましたが、直後の衆議院選挙で敗北した責任をとりたいとして辞任しました。
ことし5月に農林水産大臣に コメ価格安定に取り組む
その後は党の政治改革本部の事務局長を務め、ことし5月にはコメをめぐる発言で辞任した江藤拓氏の後任の農林水産大臣に起用され、備蓄米の放出に踏み切るなどコメの価格の安定に向けて取り組んできました。
一貫して無派閥で活動を続けてきましたが、同じ神奈川県連に所属する菅元総理大臣と近い関係にあります。
《総裁選で訴える予定の主な政策》
小泉農林水産大臣が総裁選挙で訴える予定の主な政策です。
【野党との連携】
幅広く政策協議を呼びかけ、合意を模索する努力を行うとしています。政策や理念の一致を慎重に見極めながら、連立政権の枠組み拡大も検討していくとしています。
【経済政策】
(賃上げ)
年に1%程度の実質賃金上昇を目指すとする石破内閣の目標を引き継ぎ、賃金上昇に向けた政策を総動員するとしています。
インフレに対応する新たな経済運営を打ち出し、2030年度までに国内投資135兆円、平均賃金100万円の増加を目指すとしています。
(物価高対策)
ただちに物価高対策を中心とする経済対策を検討し、裏付けとなる補正予算案を臨時国会に提出するとしています。
所得税制を見直し、物価や賃金の上昇に合わせて所得税の基礎控除などを調整する仕組みの導入を進めるとしています。
一方、参議院選挙の公約に盛り込んだ現金給付は「実現は難しい状況だ」としています。
所得に応じて給付や所得税の控除を行う「給付付き税額控除」は中長期的な課題として議論することに異論はないとしています。
(処遇改善)
医療・介護や、保育、福祉、教育で働く人の物価上昇を上回る処遇改善を実現するとしています。
(中小企業支援)
中小・小規模事業者向けの省力化を支援し、税制面などで賃上げ環境を整備するとしています。価格転嫁の徹底により取引条件を改善するとしています。
【ガソリン税の暫定税率廃止】
速やかに廃止するとしています。
【年収の壁】
引き上げを着実に進めるとしています。
【地方創生】
地方にヒト・モノ・カネを呼び込み産業基盤を再生させることで消費や投資を拡大させるとしています。
2030年に外国人旅行者の数を6000万人に、消費額を15兆円に増やす政府目標の実現に向けて、地方における受け入れ環境の整備やインフラ整備、いわゆるオーバーツーリズムの防止策を検討するとしています。
【外交・安全保障】
防衛力の着実な強化や日米同盟を基軸とし韓国、インド、オーストラリアを含む多様な同志国連携の拡大を図るとしています。
防衛費の予算措置はGDPの2%を着実に進めていくとしています。
【農業政策】
コメの生産者の所得が確保され不安なく増産に取り組めるセーフティーネットを構築するとしています。
農林水産物の輸出を2030年度に5兆円に拡大することを目指すとしています。
【外国人政策】
外国人問題での司令塔機能を強化し、不法滞在や不法就労などの防止や医療・保険制度などの不適切な利用の是正、土地や不動産取得の透明化などの対応を強化するとしています。
徹底した実態把握やルールの見直しに向けて年内にアクションプランを策定するとしています。
ストーカー対策などの治安対策も含め、治安のよい日本を死守するとしています。
【防災】
首都直下型地震などの災害に備えるため東京一極集中の課題に取り組むとしています。
来年度、防災庁を設置し、災害対応能力を大幅に向上させるとしています。
【党改革】
政治資金の透明化の徹底で「政治とカネ」の問題が二度と起きない土壌を整えるとしています。
野党時代に当時の谷垣総裁が進めた国民の生の声を聴く全国での対話集会を再び実行し自民党を1つにまとめ政治を前に進めるとしています。
【選択的夫婦別姓】
認める考えに変わりはないものの政治の役割は政策の優先順位を明確にして取り組むことだとして、家族観や人生観に関わることは引き続き、国民と理解を深めていく必要があるとしています。
【解雇規制の見直し】
去年の総裁選挙で訴えたことで国民に不安を与えたのは事実で反省しているとして、現時点で見直しを進めることはないとしています。
【靖国神社参拝】
総理大臣になった場合に適切に判断するとしています。