中田クルミなかたくるみ
俳優
1991年生まれ、栃木県出身。17歳で、モデルとしてデビュー。さまざまな雑誌でモデルを務めるほか、DJ、ラジオMC、俳優としても活躍の場を広げる。主な出演作品はドラマ『凪のお暇』『リコカツ』『ブラッシュアップライフ』『ガチ恋粘着獣』、映画『こんな夜更けにバナナかよ』『事故物件 恐い間取り』『あの頃。』『マイライフ、ママライフ』など。NHKでは夜ドラ『おとなりに銀河』、テレビ70年記念ドラマ『大河ドラマが生まれた日』、特集ドラマ『満天のゴール』、『すてきにハンドメイド』など。BS時代劇『雲霧仁左衛門6』では雲霧一党の胡蝶役を演じた。
- 出身地
- 栃木県
「ロード・オブ・ザ・リング」や「ゲーム・オブ・スローンズ」といったヒストリカル・ファンタジーが好きなんです。歴史を下敷きにしてはいますが、実際には誰も見たことのない時代の出来事なので想像力がかき立てられますし、現実よりも少し誇張して描かれる世界観にもひかれるんですよね。日本の時代劇も同じような理由で興味があってよく見ていました。ですから「雲霧仁左衛門6」でその世界にどっぷりとつかることができ、とてもうれしいです。
私が演じるのは雲霧一党の胡蝶。芸者に扮し、お座敷で見聞きしたことを一党に伝えるスパイの役目を担っているのですが、役柄上、お酌をする場面や舞の披露などもあって、撮影の少し前から日本舞踊をお稽古して撮影にのぞみました。例えば、右側にあるものを取るときに、あえて左手で取ると体が斜めになって美しく見えるなど、時代劇をやってみないと分からないことも多く、とても勉強になりました。
雲霧は盗賊の一味。言ってみれば悪役ですよね。不正でもうけた大店(おおだな)から誰も傷つけずに大金を盗み取る、悪役が世間の味方というような美談に憧れがあって、演じていても「かっこいいな」とつくづく感じます。配役が決まった当初は「あの黒い装束が着られるのかな」と楽しみだったのですが、残念ながら胡蝶にはそういう場面はないようです。ですから一挙一動が華やかに見えるような目を引く女性を演じられたらと、胡蝶役では華やかさを意識したつもりです。
撮影中、印象に残ったのはやはり主演の中井貴一さんの存在感。その場にお頭(雲霧仁左衛門/中井貴一)がいるだけで一味が緊張するように、中井さんがいらっしゃるだけで撮影チーム全員の空気が締まるというか。私もせりふで「胡蝶」と一声かけられるだけでドキッとしてしまい、舞いあがってせりふを忘れそうになりました。こんな体験をしたのは初めてで、そういう張り詰めた空気が作れる中井さんはすごい方だと改めて感じました。迫力さえ感じ、中井さんが身長2メートルくらいに大きく見えたほどです(笑)。
京都の松竹での撮影も本当に貴重な体験でした。松竹のベテラン監督5名が勢ぞろいで、撮影チームも担当回ごとに全て入れ替わるんです。それぞれに個性があって5本分映画を撮ったような感覚になりました。よく映画で○○組と言いますが、まさに「こういうことなのか」と実感しました。また京都はふだん東京で暮らす私にとって、街自体が非日常で、撮影のあった2か月間、着物を着て街を歩くだけでファンタジーの世界の一員になったような気持ちになれました。
流れ星の民の姫がやって来たり部屋が宇宙空間になったり、不思議な物語。でもキュンとして、どこか自分と重なる部分を感じられる、ファンタジーのそういうところが好きです。私は主人公の一郎(佐野勇斗)君が営むアパートの住人・穂波茉莉花を演じました。初めて作品を読んだとき、人が人を思う気持ちがつまった温かい雰囲気の作品だなと思っていました。撮影現場はさらに温かい場所でしたね。久しぶりに実家に帰って、親戚が集まったかのような空気だったんですよ。子どもたちがはしゃいでいて、それを撮影部の皆さんが縁側で眺めていて。
私はイベントのタイミングで登場しています。クリスマス、お正月、お花見、グランピング、夏祭りというふうに、1年間の楽しい部分をついばむように出演したのでずっと楽しかったです。しかし時には切ない場面も。一郎君が入院するとき、妹のまち(小山紗愛)ちゃんが身元保証人に名乗り出るけれど断られてしまう場面を見て、大泣きしてしまいました。そういうときに暗くなりすぎないためにも、私は軽い感じのキャラクターでいられたらいいなと思いながら演じていました。
佐野君は実際にご兄弟が多いらしく、年下の子どもたちの相手をするのがうまかったです。妹・まちちゃん役の小山紗愛ちゃんと弟・ふみお君役の石塚陸翔くんがとてもなついていて、2人がクランクアップしたら佐野君はさびしいだろうなと思っていました。逆に、しおり役の八木莉可子ちゃんは一人っ子で、最初は子どもたちとの付き合い方に戸惑っていました。だからこそ、だんだん家族のようになっていく距離感の変化がよかったです。
毎週末に撮影に行っていたのですが、1週間の疲れが浄化されるような癒される現場でした。みんなで風船をふくらませたり、いろんなものを作ったり。アパートなのですが、シェアハウスのはしりみたいな感じで、栗津さん役の大津尋葵さんと、畳でくつろぎながら「すごい幸せだね」なんて話していました。
大河ドラマ第1作の『花の生涯』がどのようにして誕生したかを描いた作品で、当時のテレビドラマ制作の舞台裏を描きました。演じたのはテレビ放送がスタートして間もない頃に活躍した女優さんの役。私自身、知らないことばかりで驚きましたし、勉強にもなりました。今では同じセットのシーンをまとめて撮るのは当たり前ですが、それを思いついた当時は画期的なアイデアだったりと、創意工夫が積み重なって今があるのだと感じました。実際の『花の生涯』の映像はごくわずかしか残されていませんが、とても貴重な映像で学べることも多いので、できれば始めから終わりまですべて観てみたいですね。
番組の冒頭のシーンで登場する役は初めてだったので、ものすごく緊張してあがってしまいました。そんななか、ご一緒させていただいた主役の生田斗真さんや阿部サダヲさんたち先輩方は、私がどんなお芝居をしてもきちんと受け止めて的確なリアクションを返してくださったので、本当にありがたかったです。
衣装もすてきで印象に残っています。1960年代の流行のファッションを身につけさせていただいたのですが、私以前古着屋さんで働いていた経験があるので、とても懐かしい気持ちになりました。衣装さんが何パターンか用意してくださっていて、その中から自分でも選ばせていただいたんですよ。ヘアメイクもそれに合わせてレトロな雰囲気に仕上げてくださり、現場の丁寧なお仕事にも感動しました。
ワンシーンだけの出演でしたが、実はこれまで経験した現場のなかで一番緊張しました。自分でも理由はよく分からないのですが、這うようにして撮影現場に行ったのを覚えています。でも、ドラマにはめずらしく事前にリハーサルがあったり、一色隆司監督が私の緊張を理解しつつ撮影を進めて下さり、すごくすてきな現場だと感じました。
人の死をテーマにした作品でした。こういう題材を扱うと暗くなりがちですが、死は当たり前に全員の人生にあって誰もが通る道なので、それを悲しいだけではなく、どう向き合うかという視点で丁寧に描いているのがすばらしいと思いました。
周囲の人との関係や、これから訪れるかもしれない死別、それに自分の人生を見つめ直すきっかけにもなりました。そうしたあれこれを考え出すと怖くもなりますが、この番組を通して改めて向き合うことも大切だと感じます。
私が演じたのは余命宣告された父・徳仁(徳さん/柄本明)の介護のために実家に戻り、共に生活する娘。柄本さんと父娘役で共演できたことがうれしく、この経験は一生の宝物だと思いながら一緒にお芝居をさせていただきました。一度、私がセリフを飛ばしてしまったことがあったのですが、柄本さんは「この年になっても芝居しよう、いいとこ見せようって思っちゃうんだよね。なんでかね」とおっしゃってくださったんです。キャリアを重ねてこられた柄本さんにそうおっしゃっていただき、とても勇気をもらえました。
柄本さんとのシーンで特に印象的だったのは、徳さんが風吹ジュンさん演じる早川さんのところに歩いていく、夕日をバックにしたシーン。空き時間はどちらかというと寡黙だった柄本さんが、お芝居になると急にふざけ出して「今日のごはん食べたっけな?」などとボケ出し、「おじいちゃん、もう食べたよ」なんて返したりしていました。これだけベテランになっても役を楽しまれている様子を目の当たりにし、すごく良い経験をさせていただきました。
手術をひかえた早川さんのところへやって来た徳さん 万里子に支えられながら帰っていく
手芸が大好きなので、『すてきにハンドメイド』に出ることは目標でした。呼んでいただいて本当にうれしかったです。
子どもの頃に折り紙や刺しゅうを祖母や父の兄弟が教えてくれたのが手芸との出会い。高校時代にはアクセサリーを作ってネットで売ったこともあります。ずっと何かを作ってきたんです。手芸が自分の生活に合っていて、ストレス発散になっているんだなと気づきました。撮影の空き時間でもよく、せりふを言いながら編み物をしています。
オートクチュール刺しゅうを扱った回では、裏側の見えないところを手探りで作っていくのが難しかったです。パラグアイのニャンドゥティも衝撃でした。縫ったあとに、後ろの布を全部剥がしていくのですが、どんなつくりになっていたのか今でも完全には理解できていません。世界には知らない手芸がいっぱいあるんだと実感しました。アイヌの刺しゅうは何でも作っていいんだという自由度の高さが面白かったです。切り紙を体験したときは、「大人の塗り絵」が流行したのと似ていて、大人も本当は手を動かしたいんじゃないかなと思いました。
買うと高いものを自分でも作れるのが手芸の醍醐味。ハイブランドならニット1枚が8万円とかしますが、「ひょっとしたら自分で作れるかも!」と思えるのがいいところです。道具を集めるのも楽しい。毛糸や編み針・棒をやたら買ってしまって、材料いっぱいで編みかけのものばかりです(笑)。
私、実は機械編みをやったことがなくて。写真を編み物にする編み物☆堀ノ内さんという方や、知人の男性で急に機械編みを始めた方の影響もあり、すごくやってみたいんです。『すてきにハンドメイド』でも取りあげてくださるとうれしいですね。
「趣味がない」って言う人、結構いますよね。手芸はハードルが高いし、年配の方がするものだというイメージを持っている方もいるかも知れませんが、ものづくりは年齢も性別も関係ありませんから。私の周りでも「クルミちゃんの編み物をインスタグラムで見たのがきっかけで始めました」と言ってくれる方がいて。手芸の伝道者になれたらと思います。