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Conversation

「SNS万博」と今でこそポジティブな空気と言われていますが、4年前から発信を始めた僕は途中泣きたくなったり、もうやめようと思ったことも何度もあります。でもなぜ発信をやめなかったのか?あたらめて、その背景についてちゃんと説明しておきたいと思います。当時は東京五輪の炎上が記憶に新しい時期だったと思います。僕は五輪にも万博にも内外から関わった日本で唯一のデザイナーだと思います。僕は一時期組織委員会に出向していた時期もありました。その時に感じたこの国と創造性の関係性に対する葛藤がありました。 ロゴの撤回、建築案の白紙化、開閉会式の混乱など、炎上の連続で、建築家やデザイナーへの信頼は大きく揺らいでいました。キャンセルカルチャーが広がる中で、「この国ではクリエイターは嫌われ者なのではないか?」と感じるほどでした。このままではこの国の公共に関わるクリエーターは誰もいなくなる。そうなったら、それはクリエーターにとってもこの国にとっても不幸でしかない。僕は「どうすれば失われた信頼を回復できるのか?」を、デザインの視点から考え続けました。 添付の資料は先日のddd展覧会でも展示され多くの人たちから反響があったプロセス資料の資料ですが、開かれたデザイン構想の背景には、当時わたしが別の万博プロジェクトで提案していた「OPEN 2025」という構想があります。それは、万博をオープンソース的に多様なステークホルダーと共に参加と共創を促すための仕組みとして、そのプロセスを社会へオープンに共有していくという考え方でした。名称自体は採用されませんでしたが、その思想は別プロジェクトのデザインシステムの設計思想へと接続され、最終的に《開かれたデザイン》というポリシーに統合されていきました。 つまり、今回のデザインシステムのデザインポリシーで最も重視したのは、最後の項目に掲げた「参加と共創を促すプラットフォームとしての《開かれたデザイン》」という視点です。万博という公共プロジェクトを一部の専門家や組織だけで完結させるのではなく、デザインシステムに「余白」を残すこと。参加や共創のための器としての余白を意識的に設け、そのプロセスや思い、知見を社会に開き、共有・交換していくことで、共感や愛着を多くの人々と共に育てていくことを目指していました。 そして、この参加と共創を促すオープンなプロトコルを内包したデザインシステムはプロポーザルで選ばれ社会に発表されました。そして、当初の僕が考えたデザインポリシーの「開かれたデザイン」を守り続けるために僕はその説明をSNS上でし続けていました。最初の方こそデザインのプロフェッショナルな方々から良い評価をいただき、とても嬉しかったことを思い出します。 しかし、その後皆さんもご存知のように、万博そのものは社会的に逆風が吹き荒れることとなります。デザインシステムも心無い言葉を投げつけられるようになっていきました。しかし、何より悲しかったのは、自分の構想した「開かれたデザイン」というコンセプトとは真逆の空気となっていく様は見ていて辛かった。「ああ、また五輪の時と同じような空気になってしまうのだな...」という想いでした。でも、決して諦めることなく発信をして続けていたことを思い出します。ただこの時期は本当に辛い不安な気持ちで発信していました。 そんな中で、藤本さん は「説明をし尽くす」というオープンなスタンスでこの逆風の中誠実に世の中に発信させていました。当時、この姿にどれだけ勇気づけれ、そしてうれしかったか。「開かれたデザイン」というコンセプトをそのまま体現している姿を見て、自分もこのまま諦めずに続けようと腹を決めました。 僕はどんなに煽られても、決して怒らず、誠実に説明をし続けることをルールとして決めていました。対立を煽らない。同じ土俵に乗らない。信じたことを伝え続ける。このルールを自分に課して、やり続けようと思いました。僕らの姿勢は必ずデザインを志すもっと若いデザイナーや学生も見ていると思っていましたから。 そんなことを続けていたら応援してくれる「仲間」が現れました。Xである日デザインシステムのIDを僕が愛称を考えようと投稿しました。たくさんのアイデアから「コミャクたち」と呼んでくれる人が現れました。ひらがなが可愛いから「こみゃく」にしようという感じではじめはささいなやり取りだったが、この愛称がSNSで人気を得るに従ってリアルでも「こみゃく」と広く呼ばれ始めました。最初は僕と僕のフォロワーさんくらいで呼んでいた名前が、僕の周りのクリエーター、最終的には企画書や協会の担当者の方までもこみゃくという名前で呼び始めていました。 そして、開幕の直前の今年の2月。それはまるで当初の「開かれたデザイン」の想いがこぼれ落ちているように一気に、多彩な花が咲き始めたようでした。こみゃくの二次創作が一気に世の中に広がり始めていきました。そしてその多くが万バズするような大きな広がりとなり、拡散装置となって広がり続けていきました。 こみゃく二次創作まとめvol.1 note.com/hikichikouta ネット上ではその様子を見て「いいインターネットが帰ってきた」と大盛り上がりの状況が万博開幕まで続き、その頃から急に万博そのものの空気も一気にポジティブに触れていったような気がしています。こみゃくの二次創作もアートやイラストから、ネイルアートやキーホルダー、アクセサリーやグッズ、お弁当や万博コーディネート、またこみゃくそのものをつくるためのツールにまで広がり、ひとつのムーブメントに発展していきました。 今回の万博は「SNS万博」と呼ばれています。建築家やデザイナーが市民と直接対話し、物語を共創した、史上初の国家的イベントだったのではないでしょうか。公式のデザインシステムからこぼれ落ちた愛称「こみゃく」が市民文化として芽吹き、やがて逆輸入されて公式にも広がっていった。その間に生まれた「デザインコモンズ」こそが今回の革新でした。 日本人は昔から調和を重んじ、浮世絵のように「集団創作」を得意としてきました。そこに万博というお祭りとSNSというツールが掛け合わされ、かつてない規模で集団創作が展開された。それが今回の万博だったと思います。 僕は最近「庭師のようだ」と言われたことがありました。これはブライアン・イーノが語った「これからのデザイナー像」を示す比喩でもあります。固定された静的なヴィジョンをトップダウン的に掲げるのではなく、ボトムアップとしての文化を有機的に変化し続ける生態系のように育む姿勢。僕はこみゃくの庭をデザインし続ける庭師のようにありたいと思っています。そして自分の名前のようにデザインを通じて社会という土壌を「耕し続ける」姿勢で取り組んでいきたいと思います。 OPEN DESIGN 2025は万博だけでは終わりません。教育や地域、行政へ──社会のさまざまな領域へと応用できる未来社会のプロトタイプです。国家と市民、制度と文化、リアルとデジタル。その“あわい”に生まれたこの仕組みは、誰もが問い、参加し、共創できる「文化のOS」として継承し、2025のその先へとつなげていきます。 OPEN DESIGN 2025は終わりではなく「始まり」です。 万博デザインシステム制作者 クリエイティブディレクター 引地 耕太 WIRED:万博で人気の「こみゃく」は、いかにして誕生したのか? その制作プロセスと“オープンデザイン”の思想 wired.jp/article/the-de #OPENDESIGN2025
A circular logo with multiple red eyes arranged in a ring, resembling a stylized design. Text reading "OPEN 2025" in large red and blue letters. Additional text in Japanese and English about design processes and Osaka Expo.
A circular logo with multiple red eyes arranged in a ring, resembling a stylized design. Text reading "OPEN 2025" in large red and blue letters. Additional text in Japanese and English about design processes and Osaka Expo.
A circular logo with multiple red eyes arranged in a ring, resembling a stylized design. Text reading "OPEN 2025" in large red and blue letters. Additional text in Japanese and English about design processes and Osaka Expo.
A circular logo with multiple red eyes arranged in a ring, resembling a stylized design. Text reading "OPEN 2025" in large red and blue letters. Additional text in Japanese and English about design processes and Osaka Expo.
Quote
引地耕太 | VISIONs CEO / COMMONs 代表
@kouta_hikichi
【万博で人気の「こみゃく」は、いかにして誕生したのか?】WIREDに今回のこみゃくのムーブメントとその裏にある「オープンデザイン」の構想や土壌となるデザインシステムについて取材を受けた記事が公開されました!なぜ僕がここまでオープンに発信し続けているのか?そこには実は「東京五輪の影」が x.com/wired_jp/statu…
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