35億円の借金の窮地を生々しく

 一方の矢沢は、35億円もの借金を背負って窮地に陥ったときの心情を生々しく語っていた。

「俺はもうダメだ。あっ、もうダメだ。でも、ダメだと言っても死ぬわけにはいかないから、酒飲むだけ飲んで。そしたらまあ、本気でヤザワが返そうと思ったら返せない数字じゃないんだと。『大変なお金だけどもがんばろうよ』って言われたときに、返せるかな?……わかった、返せる。よし、わかった、返すよってことで、そっちにまっしぐらに行った」

 矢沢は一心不乱に仕事に打ち込み、6年後に借金を完済した。トラブルを乗り越えたことで周りの目も変わっていたという。

「それで返し終えたら、冗談抜きで世間の見る目も変わった。自己破産したわけじゃないと。ちゃんとヤザワ返した、と。やるね、ヤザワ、って。がんばれよっていう気持ちにも皆さんなってくれたでしょうし。だから失敗、やられた、そこからまたそれを上手く乗り越えたら、またいいことが待ってるかもしれない。まあ、この繰り返しなんですね」

 普通の人なら一生働いても返し切れないような巨額の借金を返済したことで、人からの信頼という財産を築くことに成功した。失敗を失敗のままで終わらせないことで、彼はスターの地位を保ってきた。

76歳で矢沢が現役にこだわる理由

 番組後半では、76歳となった今も現役で音楽活動を行っている矢沢が、なぜそんなに長く続けることにこだわるのか、という話題になった。矢沢は、ミック・ジャガーをはじめとする年上の海外アーティストが今も現役を続けていることに触れた。

「あれ見たときに、わかりましたね。ああ、この人たち、生きるためにやめないでいるんだ、ということがわかったんですよ」

 体力的にどうしても無理になったらやめるしかないが、生きるためにはやめるわけにはいかない。矢沢は力強くそう語った。これは単なる意地やプライドの話ではない。彼にとって、止まらないことは生きることそのものなのだ。

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