「地方の会計屋」さんのColaboのnote記事の検証
R2東京都若年被害女性等支援事業で、colaboの提出したホテル宿泊の内訳に疑義があり地方の会計屋さんに質問したところ、質問の主旨とは異なるが会計屋さんのnote記事が紹介された。
→Xの関連ポスト
紹介された会計屋さんの記事は4編であるが、再調査結果を受けた記事も一編あった。
東京都の監査を受けて保健福祉局が実施した再調査結果について「意図的な不正行為の証拠は見つからなかったと解釈するのが妥当」と結論する内容となっている。
折角紹介いただいたので、僭越ながら会計屋さんの記事について検証してみたいと思う。
Ⅰ 再調査・実際の給与と法定福利
会計屋さんの記事は再調査等の各費目について述べられているが、全て検証するのは大変なため、私が一番気になっている「給与と法定福利」に絞る。
(1)法定福利の対給与の比率
法定福利とは法律で支払いが決まっている健康保険、雇用保険等の福利厚生のための費用であり、給与に対する率が決まっている。また、会社負担分と個人負担分があり個人負担分は給料から天引きされることが多い。
給与に対する会社負担の比率は会計屋さんが用いている「給与額の10~15%」をそのまま用いることとする。
また、会計屋さんの記事のとおり雇用形態や年齢によって若干のバラつきは生じるが、例えばR3colaboの事業活動において都事業は8%、自主事業は17%でcolabo全体として14%という不均衡が生じることはまずない。
(2)法定福利と給与の算定
監査の表3も再調査も都事業分の法定福利や給与の額が直接掲示されていない。このため、福祉保健局が行った再調査の法定福利と給与を都事業と自主事業別に推定する。都事業は再調査結果を主体とするが、必要に応じて住民訴訟でcolaboが提出した「実際」の数値を用いる。また、自主事業分は活動報告書のcolabo全体の数値から都事業分を控除して算定することとした。算定結果は以下のとおりである。
(2)法定福利の比率と事業別割合
colaboが裁判に提出した「実際」も加えて、都事業、自主事業別に給与と法定福利及び給与に対する法定福利の比率を以下に示す。
福祉保健局の再調査の法定福利の比率をみると都事業は30%に及び自主事業は僅か4%に過ぎない。前述のとおり事業に寄らず法定福利の比率は給与に対して10%~15%程度であり再調査の数字は明らかに異常である。その反面、colaboが裁判で提出した「実際」は範囲内に収まっている。
続いて事業別の割合を以下に示す。
法定福利は給与の割合から算出されることから、両者の事業別の割合はほぼ同じになる。また、税理士・社労士も都事業と自主事業で按分したとのことであり、これも給与の割合に準じるはずである。福祉保健局の再調査では給与と法定福利の事業割合が全く異なっており、都事業の法定福利は78%に達している。colaboは仁藤氏の講演活動やcolaboの管理の他に「中長期シェルター」を自主事業とし長期保護者の自立支援計画も提出してない。これら自主事業が22%とは考え難く自主事業と都事業の適切な案分がされてないと考える。
colaboが裁判で提出した実際は給与と法定福利共に80%程度であり比率のバランスはとれているが、中長期シェルターを除いて80%という数字に現実味が乏しい。
また、再調査の都事業の給与について保険福祉局は管理台帳に記載されているものを計上したとするが、colaboは裁判で以下のように述べている。
Colabo自身は、必要な経費の総額が29,057千円または27,131千円であるという形で特定して主張してきたわけではないし、東京都の監査委員や担当部署がどのような判断過程で29,057千円や27,131千円という具体的な金額に至ったのかを知らされているわけでもない。
東京都が勝手にcolaboの都事業管理台帳を作成したとも考えられず、両者の言い分がすれ違っている。また、裁判で提出された実際はcolabo以外は誰もチェックを受けておらず、給与の80%が都事業とは俄かに信じがたい。
(3)保険料
保険料はシェルター等の火災保険料とのことであるがほぼ全額を都事業として計上している。不動産として短期シェルターは都事業だが、colabo事務所は自主事業も実施しており、中長期シェルターは拗ねて自主事業・このため、全額都事業とするのは不適切だと思われる。
(4)まとめ
事業精算時の実施状況報告書、監査の表3、福祉保健局の再調査は、給与に対する法定福利の比率が計算上求められる範囲を大きく逸脱している。原因は不明で全く信憑性がないと言わざるを得ない。colaboが提出した実際も都事業と自主事業の比率が非現実的である。
何れにしても異なる実績額の集計が時が経つにつれ整合性もなく多数出現し、按分の根拠も提示されず、数字の変更理由や経緯の説明も全くされていない。このような状況で「不正がない」とする合理性はない。
Ⅱ 地方の会計屋さんの給与・法定福利検証
(1)監査による表3に基づく記事
colaboの委託事業実施に係る収支に関する帳簿、領収書その他の諸記録を監査がまとめたのが表3である。表3はcolaboの台帳をそのまま転記・集計したものであり、過大な請求等の問題は文書にて具体的な数字を用いることなく指摘する形態となっている。人件費・法定福利において監査の指摘は以下のとおりである。
人件費:事業按分が不適切、税理士等が全額計上、所得税分が過少計上
法定福利:colaboの法定福利が全額計上されている
表3の人件費と法定福利の比率は理論値から大きく外れており、会計屋さんは以下の仮定条件を設定し、人件費と法定福利の再現を試みた。
簡略化のため労働保険を割愛すると、あるべき法定福利費は
3,601千円÷2=1,800千円
この数値から人件費を逆算すると、
1,800千円÷15%+税理士・社労士報酬1,000千円=13,000千円
会計屋さんは「事業按分されずに全額計上」という監査の指摘を見落とし、過剰な法定福利について「個人負担分も計上されていた」と仮定し実際の法定福利が半分であるとの仮定で以下の計算をした。
会計屋さんの仮定条件によれば人件費13百万、計上忘れの源泉徴収が3百万で、源泉徴収÷人件費が23%となる。給与に対する源泉徴収の比率は扶養等によって異なるが、扶養なし+給与50万で10%程度である。23%では乖離が大きすぎ、この仮定は棄却さるべきであろう。
源泉徴収だけでなく法定福利(個人負担分)や住民税も計上し忘れ等の仮定を重ねれば23%に近づけることができるが、監査が源泉徴収と法定福利を混同するとは考えにくく、数字遊びでしかない。
何れにしてもこの会計屋さんのシミュレーションでは「給与と法定福利の矛盾」について何の結論も導き出せない。
その後、会計屋さんは「事業按分が不適切」という監査の指摘の見落としに気が付いた旨を追記したが、検証の見直しはなされていない。
(2)再調査結果を受けた会計屋さん記事の検証
「Ⅰ再調査・実際の給与と法定福利」のとおり、再調査でも驚くべきことに「給与と法定福利の矛盾」はそのままであった。また、会計屋さんの仮定条件も間違っていたことが判明した。
この再調査結果を踏まえて会計屋さんが書かれた記事を検証してみる。
1)「給与と法定福利の矛盾」の放置
会計屋さんは監査時の記事で法定福利の矛盾についてシミュレーションをしつつ、その限界から「別途検証いきたいと思います」と結んでいた。しかしながら、再調査でも解消されなかった給与と法定福利の矛盾について、一切触れていない。
矛盾が維持されたことに気が付かなかったのか、矛盾を把握してたが自説に都合が悪いため触れなかったのかはわからないが、会計士の名を語るには杜撰な記事と言わざるを得ない。
2)事業按分
会計屋さんは人件費の事業按分について以下のようにコメントしている。業務日報に基づき人件費を事業按分したのであれば、法定福利も同じ按分を用いることになる。法定福利の矛盾によって人件費の事業按分の信頼性が大きく棄損されていることに触れないのはいかがなものか。
別紙においては具体的な按分基準は明示されていませんでしたが、税理士等報酬と給与とでは按分比率が一致しなかったため、給与台帳や業務日報などに基づいて税理士等報酬以外の人件費は算出されたものと推測されます。
また、再調査で人件費は「事業の管理台帳への記載の有無」で判定したことが明記されており、業務日報などから(事業按分を)算出したとする会計屋さんの推測は希望的観測にすぎないように思われる。
これまでのcolaboの住民訴訟関係資料でも業務日報の存在は確認されておらず、若草プロジェクトの訴訟では事業按分が聞き取りベースであることを東京都が陳述している。
タイムカードや給与台帳は勤務や支出の証憑である。事業兼務者の給与台帳が事業ごとに作成されることはまずなく、事業按分の証憑としては会計屋さんも述べたとおり業務日報となろう。仮に業務日報がないとなるとWBPC訴訟で都は厳しい立場にたたされるのではなかろうか。
複数の事業をまたいで発生する経費については、施設の床面積・利用者数・従業員の作業時間など一定の客観的な基準に基づいて按分しなければなりません。
3)裁判でcolaboは領収書提示に応じる?
会計屋さんの推察と異なり、住民訴訟で東京都及びcolaboは領収書の提示を拒んでおり、裁判所の文書提出命令の心象開示を受けてようやく「金額以外黒塗りだらけの領収書」を任意提出した。金額だけでは支援事業の実際の支出判断はできないことは会計屋さんならおわかりであろう。
もし仮に裁判や警察の捜査において、当該支出が実際になされたかどうかが論点となった場合であれば、おそらくColaboは提示に応じたでしょう。
4)委託事業で悪意をもった運用はなされていない?
契約においてcolaboには善良な管理者としての注意義務が課せられており、悪意とは私腹を肥やすだけでなく、自らの都合で「必要な処理を意図的に省略する、杜撰であるとわかった上で報告する、契約違反とわかった上で請求する」も該当すると考える。
あくまで私個人の感想に過ぎませんが、具体的な裏付けをもってこれらを証明した話は未だ寡聞にして聞きません。
少なくとも今回の監査及び結果報告で、誰かが不当に利得を得て公金の適正な運用がスポイルされていることを裏付ける記載は観察されていません。
(中略)
悪意をもった運用はなされていないと確信していますが、その目的を達成するために必要な業務体制については、少なからず問題点があると言わざるを得ないでしょう。
現時点で、悪意を裏付けるものはないが、悪意がないことを裏付けるものもない。悪意がないことの裏付けは悪魔の証明だと考える人もいるかもしれないが違う。
四半期の実施状況報告書、清算した通年の実施状況報告書、表3、再調査、colaboが住民訴訟で主張した実際の間で、数字が全く整合がとれない。「期ズレがある、条件が違う等」の曖昧な言い訳をしているが、単式簿記の経費清算レベルの話であり、数字が異なる理由を含めて十分に再現が可能である。事業按分も業務日報で正当性を担保できる。
公金を使用したにも関わらず、これらの常識的な説明責任が果たされていない。
Ⅲ 地方の会計屋さんと職業的猜疑心
(1)職業的猜疑心
会計士には職業的猜疑心が求められる。
職業的懐疑心とは、誤謬又は不正による虚偽表示の可能性を示す状態に常に注意し、監査証拠を鵜呑みにせず、批判的に評価する姿勢をいう。監査という業務の性格上、監査計画の策定から、その実施、監査証拠の評価、意見の形成に至るまで、財務諸表に重要な虚偽の表示が存在する虞に常に注意を払うことを求めるとの観点から、監査基準において特に強調して定められている。
(2)R2ホテル宿泊費と会計屋さん
請求期間が過ぎていたため暇空氏は監査請求をしなかったが、令和2年のホテル宿泊費でcolaboは極めて不自然な請求をし、支払いを受けている。
宿泊費に加え居住地で必要となったその他費用を1泊1万を上限に支払うという契約である。
colaboは、170泊全てにおいて「宿泊費+その他経費」が1万以上だったとして請求を行った。宿泊費とその他経費の分布から170連続で1万以上となる確率は極めて低く、複数の生成AIも声を合わせるように恣意的な調整を示唆する。
会計士以前に経費清算の決裁をしたことがあれば、その他経費の不正を疑うようなケースである。このケースで「不正を疑うか」を会計屋さんにXで確認したのだが(参照 該当ポスト)、会計屋さんは質問をすり替えた回答を続けた。
「不正を疑わない」とすれば会計士に必要な職業的猜疑心を有していないことになり、反対に「不正を疑う」とすればcolaboの悪意の可能性も認めざるを得ず自説が崩壊する。会計屋さんはこのようなジレンマより質問に答えないという選択をしたのではなかろうか。ただ、このような対応は会計屋さんの公平性に疑義が生じるばかりか会計士という資格にも傷をつける。
Ⅲ 総括
自らが問題視しかなりの文面を割いてきた法定福利の比率について、再調査結果に基づく自らの仮説の検証・評価もせず、疑問点が残っている状態で結論を急ぐのは会計士を名乗った記事として不適切ではなかろうか。
監査はこの按分問題について「おかしい」との指摘に留まり、具体な確認・修正は福祉保健局に投げ返している。
私はこの監査の対応こそ事実を反映したものだと考える。仮に後年になって法定福利の過大計上が発覚しても、「指摘したが福祉保健局が適切な再調査をしなかった」と責任を逃れることができるからである。
なお、勘違いしている人が多いが再調査は福祉保健局が実施し監査室に報告し、監査は受け取った再調査結果をそのまま通知・公表したにすぎない。監査には再調査結果を確認・承認する権限はない。
修正履歴
2025/05/11 会計屋さんの①~④までの記事が再調査前だったことを踏まえて修正
2025/05/18 会計屋さんのシミュレーションに誤読があったため修正


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