続 colaboとの委託契約は「公法上の契約」?

colaboと東京都の契約に関して予定価格算定資料の開示請求を行った所、「公法上の契約のため存在しない」との回答を得て、昨年12月19日に公法上の契約に関する記事を書いた。
記事から半年が過ぎたが、令和4年度に福祉保健局が締結した9件の「公法上の契約」の資料を入手できたため、改めて記事にする。
なお、断りをいれないかぎり、本記事の「公法上の契約」には「公法上の契約に類する契約」も含むものとする。

Ⅰ 東京都福祉保険局の「公法上の契約」

(1)若年被害女性支援事業に見られる「公法上の契約」

各年度の契約締結の起案を見ると、「公法上の契約に類する契約」とされているのは令和4年度のみであり、他の年度は公法上の契約とも随意契約とも書かれていない。

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各年度の支援事業契約締結起案

また、令和2年度に実施された令和3年度事業の企画競争による選定起案書類においては「企画競争+公法上の契約」とされた。通常、企画競争は「企画競争+随意契約」である。なお、この資料では「類する契約」との文言はない。

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R2東京都若年被害女性支援事業委託事業者選定起案

(2)福祉保健局の「公法上の契約」に関する規定

「公法上の契約」は東京都でも福祉保健局限定で運用されてきた模様である。内規として前述の事業者選定の起案にある「契約事務の手引」及び平成18年度の管財課長の事務連絡があることがわかっている。契約の手引はこの2頁しか開示されず作成者が不明であるが、開示窓口が福祉保健局総務部であることから福祉保健局内の手引であると思われる。

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「公法上の契約」に関する福祉保健局の内規

契約事務の手引にある「公法上の契約に関する通則的な規定はないため、その性質に反しない限り私法上の契約に準じて処理する」の文言が注目される。公法上の契約は地方自治法234条(契約)に規定されないが可能な限りそれに準じる(=必要があれば準じなくよい)との認識が伺え、若年被害女性支援事業で随意契約の規定を尽く逸脱した契約を行っていた事実とも一致する。
なお、契約事務の手引にある「参考資料1 公法上の委託契約と私法上の委託契約」を知りたいところだが、開示されなかったため東京都と協議中である。

(3)随意契約に関する規定

こちらの記事で随意契約に関する規定を整理したが、財務局長通知の原本を入手したので掲載しておく。予定価格については想定よりも厳密な運用が規定されていた。

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「入札契約制度改革の本格的実施」により実施する具体策に関する基本的な取り扱いについて
H30.5.23財務局長通知


Ⅱ 令和4年度「公法上の契約に類する契約」

令和5年4月11日に東京都福祉保健局は令和4年度に締結した合計13件の「公法上の契約に類する契約」を公表した。入手済みだった若年被害女性支援事業4件を除いた9件の契約手続きの資料が開示されたので随契手続きとの整合性について検証する。
なお、公表資料の契約件名を「○○の委託契約締結について」とするものがあるが意味不明であり、案件名さえ杜撰な運用をしていたことが伺える。

(1)予定価格の策定と見積の確認

契約事務規則、財務局長通知に基づき、東京都の随契では契約額の決定に際して以下の事項を実施しなければならない。

  • 取引の実例価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮した予定価格を必ず作成

  • なるべく2人以上のものから見積を徴収

  • 契約の相手方の見積書が予定価格の範囲内であることを確認

予定価格・予定価格算定資料は開示請求したが、予定価格の開示資料はなく、非開示ともされてないことから全ての業務において予定価格を作成してないものと考えられる。過去の裁判例(大阪高等裁判所平成28(行ウ)244)では予定価格はなくても、契約額の妥当性の評価をしていれば良いとされている。
そこで、福祉保健局の令和4年に締結した公法上の契約について、積算・見積の状況を整理した。

便宜的に指名委員会や選定委員会の資料にある見積を発注者側積算としたが、通常は発注者側で検証等をして組み直すため、団体側見積と全く同じ書式・金額であることはない。
また、費用の検証が可能な見積もりとなっているのは、「花粉等患者等基礎情報調査」、「東京都主治医研修事業」、企画競争を実施した「ひとり親家庭就業推進事業その2」くらいである。
例えば形式的に揃っているように見える「ひとり親家庭就業推進事業」の発注者側の積算は以下のとおりであるが、この人件費が「どのような作業を、どの単価のスタッフが、どれだけの時間働くことによって生じる人件費」なのか不明である。このため、これが安いのか、高いのか、適切なのかの判断はできない。

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ひとり親家庭就業推進事業の発注者側の積算

準委任の事業でも「どのような作業を、どの単価のスタッフが、どれだけの時間働くか」を見積もることは可能である。東京都若年被害女性支援事業は、形式を整えることさえ放棄しており、随意契約に関する東京都の内規に違反していると共に地方自治法2条第14項に定める「最少の経費で最大の効果を挙げる」責務を放棄している。

(2)随契理由

財務局長の通知により、随意契約にあたっては、以下の事項を実施しなければならない。

  • 合議制の委員会で必要性・特命理由について慎重に判定すること

東京都若年被害女性支援事業を除き、指名・選定委員会において特命理由が諮られていた。内、3事業については地方自治法の随意契約であることが明記されている。

東京都若年被害女性支援事業については、特命理由以前に次年度契約に関する資料さえ見当たらず財務局長の通知に反することは明らかである。
なお、「ひとり親家庭就業推進事業」は、前年度に準備事業を受託していることを特命理由としている。このような随意契約を「後随契」と呼んだりするが、後随契を行う場合は透明性・公平性を確保するため先行事業の発注時に後随契がある旨を公告することが必要となる。R3の準備事業の契約手続きの書面等を入手してないが、後随契を明示してないとなると不適切であろう。「ひとり親家庭就業推進事業その2」を企画競争で調達していることを考えると、後随契を明示していなかったのであれば、あわせて企画競争を行うべきであったと考える。

(3)契約期間外の行為に対する支払い

公法上の契約と称して随契に必要な手続きを省略していることは想定内であったが、これは想定もしていなかった。契約前の行為に対して支払いを行うという仕様書である。
債務がないのに支出負担行為をしたとするのか、地方自治法234条だけでなく公法上の契約も無視して契約前に事業を実施させたと解釈するのかは不明だが地方自治法違反である可能性は極めて高いであろう。実際に契約前の行為に支払いを行っていたら、職員の賠償責任(地方自治法243条の2の2)が問われる事態になってもおかしくない。

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契約外行為に対する支払い

(4)随意契約に関する情報公開

財務局長通達において随意契約については「見積経過調書」「特命理由」について電子調達システムによる公表を義務付けているが何れもなされていない。

(5)時代遅れの契約書

民法改正に対応してないどころか、「甲乙」表記の契約書が用いられている。善管注意義務も瑕疵担保も設定されておらず、契約トラブルが生じたら都民、国民に不要な負担を強いる可能性がある。福祉保健局の怠慢及び重大な瑕疵としか言いようがない。

(6)必要な随意契約手続きとの対比

東京都福祉保健局は「公法上の契約」は地方自治法違反はないとする。このため、地方自治法を遵守するため東京都が定めた随意契約に関する各種手続きとの整合性を下表に整理する。

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地方自治法の随契のために必要となる手続きの遵守状況

規則からの逸脱の程度は案件によって異なるが、少子社会対策部(全て育成支援課)の案件は逸脱の度合いが高い。特に若年被害女性支援事業は守っている規定が存在しないという状態であった。
なお、見積経過調書については当初の開示時にはなく、CDへの格納忘れとのことで後日追加された。「東京都主治医研修事業」以外の調書はワードやエクセルから出力したようなpdfであり、綴じ穴の跡、歪みや滲みが一切ない。通常、このような文書は印刷の上文書保管されているはずである。後出しで作成したのではと疑わざるを得ない。

Ⅲ 「公法上の契約」のまとめ

(1)東京都福祉保健局の「公法上の契約」とは?

令和4年度に契約された13件の公法上の契約を検証した結果、福祉保健局における民間団体との委託における公法上の契約とは以下と考えられ、「契約事務の手引」のとおりであった。

  • 「地方自治法234条随契の規定」及び「同規定を遵守するための都手続き」に準拠するが、拘束するものでなく必要に応じて逸脱が可能な私契約

福祉保健局は「地方自治法の問題はない」としているが、東京都の規定は東京都として地方自治法を遵守する上で必要な手続きを定められたものであり、それを尽く反古とした契約に地方自治法上の問題はないのであろうか。過去の裁判例においては随契であっても見積の検証作業や積算という行為をもって合法としている。適正価格であることの検証を一切してない契約が「契約手続き上の課題」と矮小化できるのであろうか。
また、仕様書で契約前の行為について支払いを約している契約も違法である可能性が高いのではないか。

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福祉保健局の公法上の契約に関する声明

なお、契約前の行為に対する支払いの有無については別途開示請求する。

(2)地方自治法の価格統制機能を回避した契約

公法上の契約の事例では、以下の運用をしているものが多数ある。

  • 「人件費」、「消耗品費」等、価格の検証ができない見積内訳しかない

  • 総額を決めて契約した後に、事業の数量(作業量)を提出させる

例えば通常の調査の契約では「1箇所100万で10箇所調査するから1000万」という見積をし、発注者も1箇所100万が適切か市場調査をする。しかしながら、福祉保健局の公法上の契約の建付けでは「1000万で契約した後に、何箇所実施するかを受託者が決定」していることが多い。契約後に「1000万で1箇所しかしません」と言われても断れないし、実際にノンビリしたり不必要に人数を投入すれば1箇所で1000万の支出をすることも可能である。
このような穴の空いたバケツに水を貯める建付けでは発注者は価格の統制手段を一切失うし、地方自治法に定める「最少の経費で最大の効果」は期待できない。

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契約手続きにおける価格の統制機能

福祉保健局もそうだが、このような建付けのスキームが抱える問題点を指摘しない監査の資質及び能力に疑問符がつく。

次に、随意契約により締結する場合に行うべきとされる予定価格の決定及び 見積書の徴取をしていないとの主張について、請求人の指摘のとおり、監査対象局において当該決定や当該徴取をした形跡は見当たらないが、監査対象局の 説明によれば、本件各契約は、国の若年被害女性等の予算等を踏まえ1団体当 たりの委託料上限額を決定したこと、及び本件事業計画書1ないし4の提出に より事業所要額の確認をしているとのことであった。

東京都若年被害女性等支援事業の各委託契約等は地方自治法等に違反しているとして、各委託料の返還を求める住民監査請求監査結果

予定価格は契約・特定前に発注者で積算・検証するから効力があるのであり、契約や特定した後に提出する事業計画書に価格統制や過剰請求の防止機能はない。「贅肉ばかりの事業計画」を出しても契約違反に問えない。しかも、その事業計画を反古にする運用をしている。
監査の主張は、通常の事業、業務や工事の積算や数量出しに苦労し、違算があれば矢面に立たざるを得ない一般の職員を愚弄するものである。「積算なんかやめてしまえ」と言いたいのであろうか。

Ⅳ その他

(1)公法上の契約の開示資料

開示資料のファイルをダウンロード→ここをクリック

(2)見積もり経過調書

開示資料のCDに格納し忘れたとして見積もり経過調書のファイルが後から送られてきたが、パンチの穴もなくエクセルからそのまま出力されたと思われるきれいな出力ファイルとなっている。開示請求後に取り繕ったとしか思えない。


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