東京都若年被害女性等支援事業(WBPC)の業績評価

東京都が実施している「東京都若年被害女性等支援事業」について入手できたデータから見える化及び業績評価をしてみる。

Ⅰ はじめに

(1)東京都の事業者評価の課題

東京都でも評価委員会を組成し、東京都若年被害女性等支援事業の受託事業者の評価を実施している。この評価結果が次年度の当該団体との契約理由ととしている年度もある。しかし、東京都が実施しているこの事業者評価には以下の課題がある。

  • 第3四半期までの実績でしか評価していない

  • 単年度での評価であり経年的な評価がされてない

  • コスト(事業費)面での評価がなされていない

  • 定量指標の比較表は作成されているが定性的な評価をしており、定量指標と評価の因果関係が明確ではない

  • 受託事業者別の評価しかしておらず、事業全体の評価はされていない

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令和3年度東京都若年被害女性等支援事業受託事業者評価委員会

(2)評価指標等

この事業の重要目標達成指標(KGI)は、「夜間見回り等による被害の未然防止」と「被害者の自立」にあると考える。しかしながら前者は計測困難であり、後者のデータは取得されていない。
既に東京都が取得済みで一定のデータ精度を有する以下のデータを重要業績指標(KPI)として用いることとする。他に「自立支援」が事業内容としてあるが適切なデータがない。

【アウトリーチの事業指標】
・夜間見回り回数
・声掛け人数(夜間見回り)
・相談回数(延べ)
【居場所提供の事業指標】
・短期宿泊者数
・長期宿泊者数
・宿泊数

また、事業項目(仕様書項目)毎のコストのデータがないことから、費用面については総額を用いることとする。

Ⅱ 団体別の業績評価

(1)夜間見回り(アウトリーチ)

各団体の夜間見回り回数及び声掛け人数の推移は以下のとおりである。なお、若草の大学へのリーフレット配布は夜間見回りとは異なるため、加算していない。

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夜間見回り回数及び声掛け人数の推移
  • BOND:回数は多いが1回あたり声掛けが10人未満。事業計画書の2~3人体制での実施に見合わない。週1回以上という仕様書を満足する必要最小限の活動となっている。

  • 若草:メイド喫茶の客引きへのアプローは事業の趣旨と違うのではないか。また、拠点のまちなか保健室が20時までであり昼から夜にかけての活動の可能性が大。

  • ぱっぷす:夜間見回りについては最も活発である。しかしながら、SNS等での目撃や接触報告がない。

  • 夜間見回り仕様書の週1回に達しているのはBONDとぱっぷす2団体である。(常設の相談室除く)

  • BONDはコロナの影響でH31.4Qに実施回数・声掛け人数とも激減したが、行動制限緩和後も回復してない。Colaboについてはコロナの行動制限や緩和の影響を受けてないように見える。

  • 4団体とも委託費の増額や習熟による業績向上が見られない。

(2)相談回数(アウトリーチ)

各団体の相談回数(延べ)の推移は以下のとおりである。

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相談回数(延べ)の推移
  • BOND:自殺対策事業との合算値を報告しており、東京都は単独値とするよう指導する必要がある。

  • colabo:R3.4Q突出原因は不明である。

  • 4団体とも委託費の増額や習熟による業績向上が見られない。。

  • 件数的にはネットでの相談が多いが活動実態は不明である。

(3)居住支援

各団体の短期・長期宿泊人数及び宿泊数の推移は以下のとおりである。なお、仕様書において長期宿泊支援は2週間以上とされている。

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居住支援業績の推移
  • 若草:長期(2週間以上)のみで短期がない。他団体からの紹介か。

  • colabo:短期のみで長期は自主事業とのこと(弁護団説明書)。

  • BOND:短期を増やしつつある。

  • ぱっぷす:ほとんど活動してないが、R4は委託事業費で賃貸を拡充

  • 4団体とも委託費の増額や習熟による業績向上が見られない。ニーズ自体がない可能性もある。

(4)コスト

コストの団体別費目別の推移は以下のとおりである。なお、Y軸のスケール及び費目は各団体で異なるので注意が必要。

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団体別費目別のコスト推移
  • colabo:H31,R2と第4四半期でコスト減となる状況はR3で解消。R3の2600万が現体制に見合った費用か。

  • BOND:R3.4Qで支出が突出。賃貸以外に雑費、消耗品費も激増しているが、これも賃貸に伴う家財道具等の可能性がある。H31、R2も消耗品費が第4四半期に増加しており、単年度事業との整合性に疑問がある。R4.2Qの人件費の激増も含めて全体的に不明朗である。

  • ぱっぷす:大半が人件費となっている。業務委託費の内容は不明である。

  • 若草:謝金、委託費(弁護士報酬及び専門家・スタッフの謝金等)が多い。

(5)団体の特性

各業績指標の各団体シェアを用いて団体の特性を抽出する。

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業績指標毎の各団体シェア
  • colabo:支援事業のベース団体(仁藤氏ツイート)であり、満遍なく活動している。長期宿泊が少ないが自主財源で実施とのことである。

  • BOND:夜間見回りは仕様書を満足する最低限の活動に抑えているように見える。相談回数については他事業との合算であり実態から乖離している可能性がある。

  • 若草:「まちなか保健室」と「長期居住支援」がこの団体のコア事業であり、他の事業には力を入れてないように思う。

  • ぱっぷす:夜間見回りに特化しているが、第三者にその活動が補足されてない。

Ⅲ 事業の全体評価

4団体を合算した業績指標及びコストの推移は以下のとおりである。なお、平成31年度~令和2年度に受託していたライトハウスはデータがないため、対象外である。

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支援事業全体の業績評価指標とコストの推移

各業績指標とも令和3年度に一旦上昇したがコストと比例した増加とはなっていない。令和3年度から団体数が4団体に増加していることから、以下に団体数、費用と業績指標との関係を示す。

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団体数、費用と業績指標との関係

1団体あたりの費用増に対して業績指標の反応はない。反対に団体数増は業績指標の向上に結びついている。

Ⅲ 業績向上のための対策(案)

事業費総額の増加に見合った業績向上は得られていない。業績向上のための対策を以下に示す。

  • 1団体あたりの費用を抑え団体数を増加させる

  • 仕様書に業績指標を落とし込む・費用に見合った目標設定する
    現在の仕様書で数値目標は「週1回の夜回り」だけであり、これも委託費が4倍増に反して1回のままである。

  • 企画競争において業績指標の目標値を提案させ評価する
    例えば「夜回りの回数」を提案させ、提案回数そのものを企画競争の評価項目とする。なお、提案事項は契約上拘束力を持つことを公募資料に明記する。

  • 他団体と比較結果を提示し競争を促進させる

Ⅳ 業績評価にあたって収集データの課題

現在は、厚労省の要綱の書式に基づいて実施状況報告書を提出させているが、正確な業績評価にあたっては大幅な書式の見直しが必要である。現在の書式や運用の課題等について以下に整理する。

(1)4半期の実数・累計が混在

  • BONDの経費は当該四半期までの累計、その他の団体は当該四半期単独

  • 第1~第3四半期は当該四半期のみの数値、第4四半期単独はなく通期累計から逆算せざるをえない。ただ、長期宿泊等の四半期を跨ぐものは逆算もできなない。

(2)仕様書項目別のコスト把握が不可

コストの費目が団体で全くことなるため比較ができない。また、若草のように同一団体でも年度間で費目が異なる団体もある。費目の統一及び仕様書項目別の按分が必要である。

(3)書式を逸脱した報告

例えば、以下のような書式を逸脱した報告がされており、集計の手間が増えると共に不正確な集計となる。

  • BOND:他事業の数値を合算して報告

  • colabo:「居場所提供」と「アウトリーチの相談」と別々に報告しなければならない関係機関の連携状況を合算の報告一つのみ

  • 若草:若草ハウス等、拠点別に報告

  • ぱっぷす:延べと実数が混在して報告

(4)定義が曖昧

例えば、「公的機関へ繋いだ件数」の報告をさせているが、公的機関に親が入ったり弁護士が入ったりしている。また、「繋いだ」という定義も曖昧であり、「公的機関に今後の対応を委ねた」件数と「相談した」件数が混在していると思われる。

(5)Wordによる報告

恐らくマイクロソフトのWordで報告させているものと思われるが、数値的なものはExcelかCSVで提出させるべき。Excelであれば各種チェックの関数等を組み込めばデータの精度が向上する。

(6)ネット関係

ネットでのアウトリーチや相談については「いいね」や「テンプレートの貼り付け」から「個々の相談者に応じた対応」とは全くレベルが異なる。「数稼ぎ」をすることも容易いことから対面での対応とは別集計とすると共にログ等での実態把握が必要と思われる。

(7)担保の確保

基本的には集計結果だけの報告となっており、その信憑性の担保がない。夜間見回りであれば、実施回毎に「日時、参加者氏名、場所、活動概要、活動状況写真」等からなる報告書が必要である。また、仕様書に規定する担保ともなる書類も提出されていないのは問題である。

(8)業績指標の充実

自立者数、居住支援の宿泊数等の必要な業績指標データが欠落していると共に、シェルターの定員や稼働状況等の投資判断や評価のための補足データも不足している。


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colabo問題

  • 86本

コメント

10
opp
opp

相談や居住支援で「相談に訪れたきっかけ」の調査は必要だと思いました。今収集してるデータは各事業項目に閉じた情報項目しかないので事業全体のフローに沿った利用者の動向がつかめないんですよね。

Mackey4444
Mackey4444

内容がますます充実してきたようにおもいます。
素晴らしい分析に敬意を表します。
確かに相談に訪れたきっかけ等のの調査は必要ですね。

この活動は、声かけをして相談し必要に応じて宿泊支援をすれば、若年女性を助けられるはずだとの仮定によって実施されているが、5年もやった割にはその仮定の検証が行われていない。東京都だけで無く厚労省の責任も重い。

助けられた人数とその詳細な経緯を網羅的にかつ時系列的に調査するべきであり、その成果に至った手段としての活動実績を紐付けする事により、どんな活動が本当に効果があるのかを検討しなおすべきだろう。

Mackey4444
Mackey4444

続き)
それぞれの団体の活動報告やネットにおける調査等を見ると、都に前提となる手段としての活動(声かけ、SNS等)を報告するためにやった事にしておくというような、いわば形骸化しているものが多数見受けられる。目的はアウトリーチの回数やSNSの回数ではなく、それらによって問題を抱えている子をどれだけ見つけ出し、さらに、どのように支援してどのように助けたのかという事であり、厚労省の事業報告フォーマットは、目的と手段を履き違えたもになっている。

簡単に言えば、手段としての声かけ回数だけでなく、最終目的である助けられた子とそこに至る経緯を報告し、手段が効果を挙げないのであれば、もう一度手段も検討しなおせという事だ。

東京都はoppさんに活動評価、分析を委託したらどうか?

opp
opp

ありがとうございます。補助事業化に伴い「福祉保健局として平成30年度から令和2年度の事業実績等について改めて検証」としてます。彼らの目に触れ参考(プレッシャー)にしてもらえることを期待してます。
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/jakunenjosei/moderu.html

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