生き直すと決めた夜。ぼろぼろだった私が、もう一度立ち上がるまで。
ステロイド依存から抜け出し、
ぼろぼろだった心と体を、
もう一度自分の手で、わたしはそっと抱きしめた。
あの夜、わたしは決めた。
「生き直す」と。
あれから今日まで、私はどんなふうに歩いてきたのか。
何があって、何を越えて、どこまで来たのか。
そのすべてを、取り繕うことなく、ここに綴りました。
もしあなたにも、
「もう一度、歩き出したい」と願った夜があったのなら。
あの夜から始まった小さな道のりが、
そっと、あなたの胸にも、小さな灯りをともせたらと願っています。
そしてその灯りが、
これからのあなたの道を照らす、
やわらかな光となりますように。
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【はじめに】
これを読んでいるあなたは、
もしかしたら今、どこかに、
小さな違和感や、言葉にならない痛みを
抱えているのかもしれません。
わたしも、かつてそうでした。
最初は、小さなかゆみでした。
ほんのかすかな違和感。
それを「大丈夫、大したことない」と自分に言い聞かせながら、
何日も、何週間も、やり過ごしていました。
でも気づけば、
立ち上がることさえできないほど、
深い場所まで落ちていたのです。
この話は、
そんなわたしが「ゼロから生き直す」までの記録です。
病気の話だけではありません。
これは、「生き方」と向き合い直すための話です。
生き方を変えない限り、
本当の意味での「救い」は訪れない。
わたしは、あの痛みの中で、それを知りました。
もし今、あなたの心のどこかに、
小さな声があるのなら。
「このままじゃいけない」と感じる瞬間が、
ほんの少しでもあるのなら。
ここに綴った想いが、
そっと、あなたの背中を押せたら。
それ以上に、嬉しいことはありません。
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【プロローグ】
生き直したい。
そんなふうに思った夜が、私にはあった。
誰にも言えなかった。
言いたくても、言えなかった。
苦しみの果てだった。
肌も、心も、ぼろぼろだった。
ステロイドは、たしかに効いた。
患部の赤みも、かゆみも、一時的にはおさまった。
でも、それはただ蓋をしていただけだった。
体の内側で、何かが確実に壊れていくのを、どこかで感じていた。
それでも、私は薬を手放せなかった。
怖かったからだ。
やめたら、もっと酷くなる。
やめたら、社会復帰できない。
やめたら、誰にも見捨てられる。
そんな恐怖が、
毎日、心と体を、じわじわと締めつけていた。
生きた心地なんて、しなかった。
それでも私は、
「今日もなんとか生き延びた」
そう自分に言い聞かせながら、
ただ必死で、しがみついていた。
そして、あの夜。
私はすべてを手放して、
「生き直す」ことを選んだ。
でもその決断は、
想像を超える孤独と、痛みのはじまりだった。
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【目次】
はじめに
プロローグ
第1章:小さな違和感を見て見ぬふりしていた
第2章:ステロイドにすがった日、すべてが始まった
第3章:やめられない地獄のはじまり
第4章:ほんとうに「怖かった」のは
第5章:鏡に映った“本当の自分”と向き合った夜
第6章:ステロイドをやめた日。リバウンドとの闘い
第7章:わたしを救ったのは、わたしだった
第8章:未来へ、ただ一歩ずつ
エピローグ:そして、ここから
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このnoteでは、
・ステロイド離脱後の壮絶なリバウンド
・生きることすら苦しかった日々
・それでも、自分を裏切らなかった理由
・「本当に生き直す」とはどういうことか
……そのすべてを、赤裸々に綴っています。
もしあなたにも、
「自分を救いたい」と願った夜があったのなら。
もし、あきらめたくない自分が、
胸の奥で、まだ小さく息をしているのなら。
わたしが、あの夜から今日まで歩いてきたこの記録が、
あなたにとっての灯りになれたら、心からうれしく思います。
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【第1章】
小さな違和感を、見て見ぬふりしていた
最初に異変を感じたのは、ほんの小さなことだった。
首のあたりに、うっすらとかゆみがあった。
赤みも、かすかに出ていた。
でも私は、深く考えなかった。
「寝不足かな」
「ストレスかな」
「そのうち治るだろう」
そんなふうに、軽く受け流していた。
本当は、心のどこかで気づいていた。
このまま放っておいたら、
よくないことが起こるかもしれない。
それでも私は、忙しさを言い訳に、
その小さなサインから目をそらした。
季節が変わり、仕事が立て込む日々が続いた。
気づけば、かゆみは首だけでなく、
腕も、背中も、顔にも広がっていた。
赤みは濃くなり、かゆみは鋭さを増していた。
それでも私は、生活を優先した。
「こんなことで休めない」
「みんなも頑張ってる。私だけ甘えてられない」
そう思い込みながら、コンビニ弁当で食事を済ませ、
夜遅くまで働き、眠る時間も削った。
身体の悲鳴は、どんどん大きくなっていた。
でも私は、その声に耳をふさぎ、走り続けていた。
そして、ある朝。
鏡に映った自分の顔を見たとき、私は凍りついた。
そこにいたのは、私が知っている「私」ではなかった。
赤く腫れ、乾燥し、表情さえもぎこちなくなっていた。
それでも私は、何事もなかったようにマスクをして、出社した。
誰にも、弱いところを見せたくなかった。
自分自身にすら、認めたくなかった。
「大丈夫、大丈夫」
「きっとすぐに良くなる」
何度もそう言い聞かせながら、
崩れかけた心と体に、私はさらに鞭を打ち続けた。
あのとき。
あの小さな違和感に、ちゃんと耳を傾けていたら。
きっと、私はここまで傷つかずに済んだのかもしれない。
でも私は、それをしなかった。
それが、長く続く「闘いのはじまり」だった。
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【第2章】
ステロイドにすがった日、すべてが始まった
かゆみは、もう我慢できないほどになっていた。
夜は眠れず、仕事中も、かきむしりたくて、何度も席を立った。
それでも私は、無理やり「普通の生活」を続けようとしていた。
でも、もう限界だった。
私は、皮膚科に駆け込んだ。
「これは、よくあることですよ。すぐ良くなりますから」
診察室で、先生はこう言った。
そして、処方されたのは、ステロイドの塗り薬だった。
私は、ほんとうは怖かった。
ステロイドには抵抗があった。
聞いたことがあったからだ。
「使いすぎると副作用がある」
「肌が弱くなる」
頭の片隅に、そんな言葉が残っていた。
「指示通りに使えば、まったく問題ありませんよ」
先生は、穏やかな声で言った。
私は信じたかった。
誰かを、何かを、信じたかった。
藁にもすがる思いで、処方された薬を持ち帰った。
初めて薬を塗った夜。
驚くほど、かゆみが治まった。
赤みも引き、肌はつるんとなめらかになった。
「すごい……」
私は、ほっと胸をなでおろした。
これでまた、普通に暮らせる。
仕事にも行けるし、人目も気にしなくて済む。
そう思った。
そして、それが、すべての始まりだった。
薬を使い続けるうちに、私は気づき始めた。
ステロイドは、たしかに効く。
でも効き目は、だんだんと弱くなっていった。
最初に使っていた薬では追いつかなくなり、
さらに強い薬が処方されるようになった。
強いステロイドに変わるたび、
胸の奥に、うっすらとした恐怖と、
どこかで諦めるような気持ちが積もっていった。
「これ、ぜったい、よくないな」
「でも、やめたらもっとひどくなる」
そんな葛藤を抱えながらも、
私は薬を手放すことができなかった。
薬なしでは、日常生活すら送れなかったからだ。
私は知っていた。
もう、引き返せないところまで来ていることを。
ステロイドが、
麻薬のように、
私の体と心を、じわじわと蝕んでいることを。
それでも、私は目をそらし続けた。
「大丈夫」
「まだ大丈夫」
そう言い聞かせながら、
気づけば私は、薬に縋りながら、
ただ、生き延びることだけを願うようになっていた。
今の私が、あの頃の私にひとことだけ言えるなら、
きっと、こう伝えるだろう。
その違和感を、どうか見過ごさないでくれ。
本当に必要だったのは、
“症状を抑える薬”じゃなかった。
“生き方そのもの”を、
立ち止まって見直すことだった。
でも当時の私は、
それがどうしても、できなかった。
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【第3章】
「やめられない地獄」のはじまり
いつからだったろう。
薬を塗っても、すぐにかゆみがぶり返すようになったのは。
鏡に映る自分の顔は、もはや「治す」ためじゃなかった。
「隠す」ために薬を塗り重ねた、そんな歪んだ姿になっていた。
それでも、やめられなかった。
塗らないと、もっと悪化する。
塗らないと、外にも出られない。
塗らないと、もう、誰にも会えない。
そんな恐怖が、頭から離れなかった。
私は、ステロイドを手放すことができなかった。
朝、起きるたびに、
肌が割れて、血がにじんでいた。
顔も、首も、腕も、服に張りついていた。
かゆみで夜中に何度も目が覚めて、
ろくに眠れなかった。
それでも、私は出勤した。
マスクで顔を隠し、長袖で腕を隠し、
何事もないふりをして、笑って、
「おはようございます」と言った。
心も、体も、ぼろぼろだった。
だけど、誰にも言えなかった。
あるとき、ふと気づいた。
肌だけじゃなかった。
心まで、薬に依存していたことに。
「ステロイドさえあれば、大丈夫」
「ステロイドさえあれば、また普通の顔に戻れる」
そう思い込んでいた。
でも、本当は違っていた。
ステロイドがなければ、私はもう自分を保てなかった。
そして、その「支え」すら、
少しずつ、確実に、壊れ始めていた。
薬を塗っても、赤みは引かない。
塗れば塗るほど、肌は硬くなり、荒れていった。
かゆみは、前よりも鋭くなり、容赦なく、私を責め立てた。
なのに私は、それでも薬にすがりついていた。
本当は、気づいていた。
これはもう、「治療」じゃなかった。
これは、ただの「依存」だった。
でも、やめる勇気なんて、どこにもなかった。
やめたら、もっとひどい地獄が待っている。
そう、わかっていたからだ。
心が、どんどん、暗くなっていった。
世界が、少しずつ、色を失っていった。
未来なんて、考えられなかった。
ただ、「今日をなんとかやり過ごす」
それだけが、すべてだった。
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【第4章】
ほんとうに「怖かった」のは
「このままじゃダメだ」
そんな声が、胸の奥で何度も鳴っていた。
でも、それでも、やめられなかった。
怖かった。
ただ、それだけだった。
薬をやめたら、肌はどうなるんだろう。
仕事は。生活は。
もう誰にも、会えなくなるかもしれない。
そんな恐怖が、まるで絡みつく鎖のように私を縛りつけていた。
「これから先も、一生このままかもしれない」
そう思ってしまうことが、なにより怖かった。
どれだけ頑張っても、
どれだけ薬を塗り重ねても、
どれだけ痛みに耐えても、
いつまでも、自由になれない。
その絶望が、心をすこしずつ削っていった。
普通の人みたいに
当たり前に起きて、
当たり前に笑って
当たり前に働いて、
当たり前に人と過ごす。
そんな「普通の生活」が
どんどん遠ざかっていった。
夜、布団の中で泣いた。
静かな部屋で誰にも聞こえないように、
声を殺して泣いた。
「なんで、おれだけ……」
ずっとそう思っていた。
でも、誰を責めたって、何も変わらなかった。
だから私は、泣きながらこう思った。
変わりたい。
でも変わるには、
あまりにも大きな覚悟が必要だった。
その覚悟を決める夜が、
すぐそこまで、静かに迫っていた。
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【第5章】
鏡に映った“本当の自分”と向き合った夜
その夜も、薬を塗って眠った。
でも、肌はもう、何も応えてくれなかった。
かゆみも、赤みも、痛みも。
薬をすりこんだ手のひらから、
すべてが虚しく、こぼれ落ちていくようだった。
夜中、ふと目が覚めた。
寝汗で、パジャマが肌に張りついていた。
かゆみと痛みで、じっとしていられなかった。
私は、這うようにして洗面所へ向かった。
小さな明かりだけをつけて、鏡をのぞき込んだ。
そこには、知らない顔をした自分がいた。
赤く腫れた肌。
乾いて割れた唇。
無理に笑おうとしても、顔の筋肉がひきつっていた。
「……なにこれ」
思わず、そう呟いた。
その瞬間だった。
堪えていたものが、すべて崩れ落ちた。
わかっていた。
ステロイドが、私を救ってなんかいなかったことを。
あれだけ信じた、「医者の言葉」も「薬の力」も、
何ひとつ本当の意味で、私を守ってなんかいなかったことを。
そして何より、一番自分を裏切っていたのは、
誰でもない、「自分自身」だった。
怖いのを理由に、苦しいのを言い訳にして、
私は、自分の内なる声の悲鳴から、
ずっと目をそらしていた。
その夜。
私は、心の底から思った。
このままじゃ、ほんとうに死んでしまう。
助けなんて、もうどこにもなかった。
医者も、薬も、誰も、わたしを救えなかった。
なら、わたし自身が、わたしを救うしかない。
私は、全部、手放す覚悟をした。
それでもいい。
生きたい。
この体で、もう一度生き直したい。
それが、私の「生き直し」のはじまりだった。
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【第6章】
ステロイドをやめた日。リバウンドとの闘い
私は、ステロイドをやめた。
恐怖しかなかった。
でも、あの夜。
鏡に映った、ぼろぼろの自分を見たとき、
わたしは心に誓った。
もう、自分を裏切らない。
それだけを胸に、すべての薬を断った。
そして、地獄が始まった。
リバウンド。
その言葉だけでは到底言い表せない、苛烈な日々。
肌はただれ、
体液がにじみ、
痛みと熱で、身動きさえできなかった。
「このまま朝を迎えられないんじゃないか」
夜が来るたび、そんな不安が胸に重くのしかかった。
生きた心地なんて、しなかった。
かゆみは、やがて痛みに変わり
痛みは、また別の苦しみに姿を変えた。
呼吸をするだけで、涙が出た。
一歩も動けない日。
布団の中で、ひとり泣きながら耐えた夜。
何度も、何度も、心が折れかけた。
それでも、わたしは薬に手を伸ばさなかった。
どんなに苦しくても、
どんなに孤独でも、
絶対に、あの夜の「覚悟」だけは裏切らなかった。
わたしを救えるのは、
もう、わたしだけだと知っていたから。
家族がそっと置いてくれた、ぬるい白湯。
ただそれを飲みながら、
「生きてる」と思える瞬間だけを、
手放さないようにしていた。
死ぬほど苦しくて、
生きるのが怖くて、
それでも。
わたしは、わたしを生き直すために、
一歩も引かなかった。
あの頃のわたしは、
どんなヒーローよりも、
どんな強者よりも、
小さくて、弱くて、
それでも、
誰よりも、強かった。
ここまで、たどり着けた。
だから、今のわたしが、ここにいる。
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【第7章】
わたしを救ったのは、わたしだった
リバウンドを越えたあと、
体も、心も、空っぽだった。
だけど空っぽになった私は、
ようやくほんとうの意味で、
「自由」になったのだと思う。
誰かに治してもらうんじゃない。
薬の力にすがるんじゃない。
わたしが、わたしを救う。
その、たった一つのことを、
命を削るような時間の中で、
わたしは学んでいった。
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肌は、すぐには回復しなかった。
痛みも、かゆみも、恐怖も、
簡単には消えてくれなかった。
でも少しずつ、
ほんとうに少しずつ、
心の奥に、
新しい「静かな確信」が灯りはじめた。
わたしは、生きられる。
誰の手も借りずに、
誰かの承認もいらない。
ぼろぼろでもいい。
未完成でもいい。
わたしは、わたしのままで、
もう一度、歩きはじめていいんだ。
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【第8章】
未来へ、ただ一歩ずつ
生き直してから、
わたしの日々は、劇的に変わったわけじゃなかった。
まだ、肌には跡が残っていた。
まだ、痛みが消えたわけでもなかった。
夜にふと、不安が押し寄せることもあった。
でも、
それでも確かに違っていた。
もう、わたしは「絶望」を選ばなかった。
どんなに小さな一歩でもいい。
どんなにみっともなくてもいい。
昨日より、今日。
今日より、明日。
ほんの少しでも、「前へ」
未来なんて、見えなかった。
それでも、わたしは歩いている。
静かに、淡々と、前を向いている。
「完璧じゃなくていい」
「誰かに認められなくていい」
そんなふうに、自分を抱きしめながら。
泣いた日も、笑った日も、
それら全部を抱えたまま、わたしは歩いていく。
たとえ、どんな夜が来ても。
たとえ、何度、つまずいたとしても。
だいじょうぶ。
わたしは、わたしを裏切らない。
それが、
いまのわたしの、
いちばん小さくて、
いちばん強い、
「覚悟」になった。
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【エピローグ】
そして、ここから
この話は、特別な成功の話じゃありません。
誰かに誇れるような、すごい経験でもありません。
ただ、ひとりの人間が、
どん底から、静かに、静かに、
「もう一度、生きてみよう」と思った。
そんな小さな物語です。
わたしは、まだ道の途中にいます。
完治したわけでも、
完璧な人間になれたわけでもありません。
それでも、あの日、
絶望の中で「生き直す」と決めたわたしは、
今も、たしかに、ここにいます。
そして、いまなら言えます。
もし、いま、
あなたが苦しくて、先が見えなくて、
「もうダメかもしれない」と思っているのなら…
心配いらない。
大丈夫。
たとえ、何も変わらない夜が続いても。
たとえ、涙で前が見えない朝を迎えても。
それでも、
きっと、あなた自身を取り戻すことはできる。
ほんとうに小さな一歩でいい。
誰にも気づかれないような、一歩でいい。
それを、どうか、あきらめないでほしい。
生きることは、うまくいくことじゃない。
生きることは、今日を越えていくこと。
あなたの今日が、
たとえどんな一日だったとしても、
それでも、
「生きてる」ということ自体が、
何よりもすごいことだから。


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