“最古の石器”出土の遺跡で追加調査始まる 広島 廿日市
去年、国内最古とされる石器が出土した廿日市市の遺跡で追加の発掘調査が始まりました。
石器の年代の裏付けなどにつながるか注目されます。
廿日市市にある冠遺跡では、去年、奈良文化財研究所の研究チームがおよそ4万2000年前の石器を発掘したと発表しました。
国内で見つかった石器のうち、多くの研究者が最も古いと考えていた3万7000年余り前のものより5000年ほど古いとしていて、研究チームでは、石器の年代などをさらに裏付けようと先週から追加の発掘調査を始めました。
去年、石器が出土した地層の地質などを調べ、その年代を確かめるとともに、当時の人の生活を知るための史料を集めたい考えで、18日までにおよそ200点の石器が新たに出土したということです。
調査は一般の人たちが見学することもでき、訪れた地元の70代の夫婦は「4万年以上も前にここで人が暮らしていたと思うと驚きます。冠遺跡に注目が集まり地元の活性化につながればうれしいです」と話していました。
奈良文化財研究所の国武貞克主任研究員は「去年石器が見つかった時は興奮して眠れなかった。日本列島に最初に到達した人類が広島にいたかもしれないことを多くの人に伝えたい」と話していました。
追加の発掘調査は今月26日まで行われるということです。
【冠遺跡とは】
冠遺跡は廿日市市吉和にある旧石器時代の遺跡です。
去年の調査では「黒色安山岩」で作られた石器がおよそ370点見つかり、中国大陸や朝鮮半島で出土している4万年以上前の「中期旧石器時代」の石器と特徴が似ているものも含まれていました。
「後期旧石器時代」よりも前の時代の石器をめぐっては、2000年に発覚したいわゆる遺跡発掘の「ねつ造問題」で見直しが迫られましたが、去年見つかった石器はその時代のものの可能性があり、日本列島に人類が到達した時期を考えるうえで貴重な発見だとされています。
現在の冠遺跡の場所は当時の人類が拠点としていたとみられていて、奈良文化財研究所の国武主任研究員はその背景について、直径2キロほどの盆地で平らな土地が広がっていることや地下水が湧き出ていた可能性があること、それに石器の材料となる安山岩を多く集められることなどがあったのではないかと分析しています。
国武主任研究員は「当時の人類が暮らすには条件が整っていた場所で“一等地”と言える。これまで知りたくても分からなかった4万年以上前の世界がこの場所で少しずつ明らかになっていくと考えるとわくわくする」と話していました。
【期待される成果は】
今回の追加調査で期待される成果は大きく2つあります。
まず1つ目は、去年、石器が出土した地層が4万年以上前のものだと裏付けることです。
研究チームでは、石器が出土した地層から見つかった木炭を放射性炭素で年代測定した結果、およそ4万2000年前のものだと判断しています。
今回の追加調査では、地層に含まれる石英の粒を分析するなど地質学の観点からも検証し、石器の年代を確かめることにしています。
また、当時の人類の生活を知るための史料を集めることも追加調査の狙いです。
去年見つかった石器はどこで作られ、どのように使われていたかはまだ分かっていません。
研究チームでは今回、石器の「工房」の痕跡などを見つけたいとしていて、新たな知見が得られるか注目されます。