外国人労働力の約半分は不要に…
一方で、実質的な「移民政策」の目的とも言える、外国人労働者を、今後も増やしていく必要があるかといえば、そうとも言えない現状がある。
現在、377万人の在留外国人のうち、アルバイトも含めた外国人労働者は230万人(24年10月)。伊藤忠総研では23年10月に「『年収の壁』で就業調整する非正規労働者は445万人 賃金上昇に応じた引き上げで、労働力は2.1%拡大」とのレポートを公開。日本人の「年収の壁」を引き上げるだけで、外国人労働力の約半分は必要なくなるという可能性もあるのだ。
また、近年はAIの発達や合理化で、労働人口の約半分を占めるホワイトカラーのリストラが業績に関係なく進んでおり、直近でも三菱電機やパナソニックが大規模な“黒字リストラ”を発表している。また、データは古いが2011年の内閣府の調査では当時の労働者の8.5%にあたる465万人が「社内失業者」とされ、リストラ予備軍は少なくない。「一般事務従事者」の有効求人倍率も0.31(今年7月分)と、かなり狭き門となっている。一方、外国人のホワイトカラーの在留資格にあたる「技術・人文知識・国際業務」は39万人(24年10月)おり、日本人の競合相手となっている側面もあるのだ。
一般の日本国民に「メリット」はあるのか
その一方で、人手不足とされながら外国人労働者の参入が難しい業界は、賃上げが著しい。例えばタクシー運転手の賃金は、2014~23年で、309万円→418万円(全国ハイヤー・タクシー連合会調べ)となり35%上がっている。ちなみにインバウンドに沸く「宿泊業・飲食サービス業」は外国人労働者も多く、この間の賃金上昇は8%(賃金構造基本統計調査・正規職員)だった。しかし、このタクシー業界も24年から「特定技能」の対象分野に追加され、外国人労働者が増える見込みだ。人手不足が緩和されれば、タクシー業界の賃上げが抑制される可能性もあるだろう。
そもそも、外国人の受け入れ政策は誰のための政策なのか。彼らがいなくなった場合、本当に社会が立ち行かなくなるのか。それは証明のしようが無い。人手不足を補うためと言っても、受け入れ負担やいわゆる「外国人問題」もあり、国民にとってプラスの面が上回るという根拠はない。