東京都がエジプトの経済団体と結んだ雇用分野に関する合意書について「移民受け入れを進めようとしている」といった誤情報が広がっている問題は、合意書の撤回を求めるデモが都庁前で行われるなど混乱が続いている。
合意書の内容を理解していないとみられるケースもある中で、都にはメールや電話での問い合わせが相次いでおり、担当者らが説明に追われている。(小林由比、奥野斐)
◆エジプト国内での労働者研修プログラムに助言、情報提供
都は8月、アフリカ開発会議(TICAD)に合わせ来日したエジプトの政府関係者らと合意書・覚書を締結。内容は特別支援教育に関する情報交換など教育分野や、グリーン水素の社会実装化に関する知見の交換など4分野にまたがる。
「移民受け入れ」といった誤情報が広がっているのは、このうちの一つで「エジプト人労働者の日本での雇用に有益な研修及び情報提供に関する協力に係る合意書」についてだ。
合意書に基づく都の役割は、エジプト側が国内の労働者に対して実施する研修プログラムをつくる際の助言や情報提供など。都産業労働局によると、具体的には、日本で働く場合に必要な在留資格制度についての情報や、有効求人倍率など雇用情勢のデータなどを提供することが想定されるという。
◆「都が交流する都市と合意書締結」は珍しくない
同局は「都内の中小企業にも、外国人人材のニーズがある」とし、「東京で働きたい外国人について、都から企業に情報を提供することにもつなげられれば」と話す。
都が特定の分野について交流する都市などと合意書を締結することは珍しくない。今回のように局長や教育長などのレベルで署名するケースが多数あるほか、トップの知事名で締結した合意書は14ある。
今回は昨年11月に小池百合子都知事がエジプトの首相と面会し、友好関係の発展を確認。「ハイレベルの会談で協力分野を特定するということはなく、その後、実務レベルで協議を重ねて4つのテーマでの締結が実現した」(都担当者)という。
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◆「撤回して」都庁前でデモ…批判的な電話、メールも
X(旧ツイッター)では9月4日ごろから、合意書を批判する立場から、都に問いただすよう呼びかける内容の投稿が見られるようになった。
都によると、このころから問い合わせが増え、12日などには都庁前で合意書の撤回を求めるデモが行われた。産業労働局の広報担当で受けた電話は多い日で数十件、メールは数百件に上る。
Xでの誤情報を基に「移民を受け入れるのか」「合意書を撤回して」といった声が目立ち、担当者が業務の傍ら、連続して電話対応に追われる日もあるという。内容などを説明すると納得して切る人もいた。
◆「エジプト労働者を積極的に誘導するものではない」
外国人関連の施策をめぐっては、国際協力機構(JICA)が8月、千葉や新潟などの4市をホームタウン認定したことについて「移民が増える」との誤情報がSNSで広がり、自治体に抗議が殺到した。
都は批判などを受け、ホームページでも「エジプトの労働者を都へ積極的に誘導するものではなく、移民の受け入れを促進するものでもありません」などの説明を掲載。
担当者は「寄せられた疑問には丁寧に答えるようにしたい」としている。
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