リニア山梨県駅、完成時期明確化で部分開通待望論が強まる 実験線駅としての活用案など
JR東海がリニア中央新幹線の山梨県駅(仮称)の建設工事契約を17日に結び、令和13(2031)12月に完成させる計画を示したことで、山梨県駅と品川駅などへの先行部分開通の待望論が強まることになりそうだ。現在の計画では、静岡工区の遅れで山梨県駅が完成しても全線開通できない期間が長期化することは必至なだけに、リニア効果による活性化を求める行政や経済界からも部分開通を求める声が強まりそうだ。 リニア中央新幹線の工事で、JR東海は静岡工区については着工から工事完了まで少なくとも10年かかるとみているが、現時点で静岡工区は着工に至っていない。そのため、最短でも開通は令和17(2035)年となり、甲府市と中央市にかかる山梨県駅は完成しても少なくとも4年は未開業駅となるほか、4年で済むとの保証もない。 山梨県の長崎幸太郎知事は従来から「全線開通が大前提だが、(品川・山梨県駅間の)部分開通は歓迎する」との姿勢を示している。同時に「JR東海がそういった経営判断ができるように環境を整える現実的な対応を考えたい」とも踏み込んだ発言をしていた。 それ以上に現実的な案を出しているのが、甲府商工会議所だ。リニア実験線を山梨県駅までの約8キロを早期につなげ、山梨県駅を実験線の駅として使うというものだ。現在、実験線は都留市の山梨実験センターだけで乗降する形態だ。これを都留の実験センターでも、山梨県駅でも乗降できるようにするというアイデアだ。リニア実験線自体が観光の目玉になると同時に、観光客の甲府盆地流入につなげるというものだ。 山梨県内では中央市などでリニアの橋脚や橋げたが完成に近づいており、リニア開通への期待は高まっている。しかし、静岡工区の遅れで、実現は少なくとも10年後となる中で、部分開業への模索は強まっていくことになりそうだ。(平尾孝)