91歳母親殺害の罪 68歳息子が介護苦供述 兵庫 南あわじ

先月(8月)、兵庫県南あわじ市で、91歳の母親を殺害したとして逮捕された68歳の息子が警察の調べに対し、「おむつを替えているときに自分の手にしびれを感じ、介護できなくなったら、どうなるのだろうと思った」と供述をしていることが分かりました。
検察は19日、息子を殺人の罪で起訴しました。

起訴されたのは南あわじ市の新居義典被告(68)です。

起訴状などによりますと、被告は先月30日、自宅で介護していた91歳の母親の首をタオルで絞めて殺害したとして殺人の罪に問われています。

警察によりますと、被告は逮捕後の調べに対し、「おむつを替えているときに自分の手にしびれを感じた。介護をできなくなったら、どうなるのだろうと思い、殺してしまった」と供述していたということです。

これまでの調べで被告は、十数年前から母親の世話をしていて、おととし(2023年)、母親が歩くことができなくなったあとはつきっきりで介護していたということです。

当初は、内縁の妻と一緒に介護していましたが、事件の1か月前からはその妻も体調を崩したため1人で担うようになり、行政などからの支援も受けていなかったということです。

一方、「母親の介護が邪魔だった。誰かに相談することも面倒だった」とも供述しているということで、警察は、介護の状況など詳しいいきさつを調べています。

【母親と幼なじみの女性「息子は大変そうでした」】
近くに住む殺害された母親と幼なじみの90代の女性は「亡くなった母親は社交的で明るい人でした。元気だったときはよく家に来てもらったりご近所付き合いしていたけど1年ぐらい前から会うことはなくなってしまいました。息子はおとなしくて口数が少ない印象です。よく料理をおすそ分けしていて定期的に顔を合わせていましたが、半年前ごろから、息子も体調を崩したようで徐々に痩せていきました。最近では、かなり痩せてしまいました」と話していました。

そのうえで「以前、母親は『近所の人に介護施設に入るのを勧められたが、ずっと家にいたいから入るのはいやだ』と話していました。息子は大変そうでしたので行き詰まってしまったのではないかと思います。みんな高齢でどうしようもなかったと思います」と話していました。

【老老介護は全国的にも増加】
高齢化が急速に進む中、老老介護は全国的にも増加しています。

厚生労働省が3年に1度行っている国民生活基礎調査によりますと家族や親族による在宅介護のうち介護をする側と受ける側がいずれも65歳以上の「老老介護」の割合は増加傾向が続いています。

3年前に公表された直近の調査結果によりますと、老老介護の割合は63.5ポイントとなり、統計を取り始めた2001年以降、初めて6割を超えました。

さらに介護する側もされる側も75歳以上の後期高齢者同士の介護についても増加し続けていて、直近の調査結果では35.7ポイントとなっています。

【南あわじ市役所「行政の限界を感じる」】
高齢者の介護の支援などの相談窓口を担う南あわじ市役所の地域包括支援室係長、細川隆弘さんは今回の事件について、「今回のような事件が起こらないように少しでも介護で悩んでいる人たちを取りこぼさない取り組みが必要だと思います。ただ私たちだけでは本当に困っていることが全ては見えない現実もあり、難しい問題です」と振り返りました。

そのうえで「介護の支援をした方がいいとこちらで判断した人でも、本人から支援を拒まれることがあります。その場合、こちらから強制的に支援を勧めることは難しく行政の限界を感じます」と話しました。

拒まれる理由について細川さんは「支援を拒む人は介護をする側とされる側どちらもいて、拒む理由は主に『今まで自分1人でやってきたから他の人の手を借りたくない』や、『行政を頼ることは恥ずかしい』といったことがあげられます。周りの人から支援が必要なのではないかと相談を受けても当事者に拒まれてしまうジレンマもあります」と話しました。

そして、「介護の悩みについてご本人だけでなく、介護する家族や近隣の住民で、何か気づいたことや気になることがあったら、気軽に相談していただきたいです」と呼びかけました。

【専門家「介護する側への支援必要」】
介護における家族ケアなどを研究をしている立命館大学産業社会学部の斎藤真緒教授は、今回の事件をうけて「介護は家族が面倒を見ることが当たり前だという考えが今も社会全体としてある。誰かに頼ることは自分を弱いと認め、出来ないということを受け入れることになってしまうため結果的に1人で抱え込んでしまうことにつながっている」と話しました。

そのうえで「まずは社会全体として家族が介護をすることが当たり前だという認識を払拭(ふっしょく)し、周りの人に頼ることのハードルを下げていく必要がある」と指摘しました。

そして、現在の介護の支援制度について「介護する側へのサポートがほとんどない。収入面の不安やキャリアの犠牲など一人一人複雑な事情を抱えたまま、介護をする状況が増えており、介護する側へのより多様な支援制度が必要だ」と話しました。

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