成田空港周辺の不動産投資商品 分配金滞り 出資者5人が提訴
千葉県の成田空港周辺の開発用地に出資を募り1500億円以上を集めている不動産投資商品で、分配金の支払いが滞り、一部の出資者が資金の返還を求めて19日までに裁判所に訴えを起こしました。
開発を手がける会社はNHKの取材に対し「誠実に訴訟に対応して参ります」とコメントしています。
訴えを起こしたのは、東京・千代田区の不動産会社のグループが手がける不動産投資商品「みんなで大家さん」の「シリーズ成田」の出資者5人です。
会社側の説明によりますと、この不動産投資商品はホテルや商業施設などの建設を計画している千葉県の成田空港周辺の45万平方メートル余りの開発用地に、個人の投資家などを対象におよそ5年前から1口100万円で出資を募っているものです。
年7%の想定利回りで分配金を支払うとして、先月時点でおよそ1560億円を集めているということです。
しかし開発を許可した成田市によりますと、当初4年前に完了する予定だった土地の造成工事は3回にわたって期限を延長し、今も終わっていません。
再来年冬には一部施設のオープンが予定されていますが、ことし1月時点で県に報告された計画全体の進捗率は2%余りにとどまっているということです。
ことし7月以降は分配金が支払われておらず、原告5人は契約の解除と出資金あわせて6000万円の返還を求め、19日までに大阪地方裁判所に訴えを起こしました。
不動産会社のグループで、開発を手がける「共生バンク」はNHKの取材に対し「分配金の原資となる賃料の支払いが遅れており、まずはグループが保有する不動産の売却を進め、原資の確保に努めたい」としたうえで「訴状が届きましたら誠実に訴訟に対応して参ります」とコメントしています。
【過去には行政処分も】
「みんなで大家さん」の「成田シリーズ」をめぐっては去年6月、東京都と大阪府がそれぞれ販売を行う東京のグループ会社と運用を行う大阪のグループ会社に対し「開発計画に変更があったのに投資家に対し十分説明していなかった」などとして、業務の一部を30日間停止するよう命じる行政処分を出していました。
会社側は処分の取り消しを求めて裁判で争い、1審で認められたものの、2審の高等裁判所で訴えが退けられました。
【出資した男性「行政が開発を許可 信用する一因に」】
原告の1人で関東地方に住む70代の出資者の男性はNHKの取材に不安な胸の内を語りました。
定年退職した後、年金に頼る生活を不安に思っていた男性は去年1月、インターネットでこの開発プロジェクトを知り「計画の実現が期待でき、利回りも高い」と感じ、400万円を出資しました。
はじめは2か月に1回分配金が支払われていましたが、ことし7月から支払われなくなり、解約を申し出たところ「現在解約には半年から1年かかる」と説明され応じてもらえなかったということです。
男性は「コロナ禍が終わってインバウンドが回復する中、成田空港周辺の開発に期待を抱いてしまった。投資は素人だったが、行政が開発を許可していることも信用する一因になった。お金が戻ってこなければ生活水準を下げざるを得ず、今後がとても不安です」と話していました。
【会社「行政処分以降 資金調達が遅延」】
「共生バンク」はNHKの取材に対し、開発が遅れている理由について、新型コロナウイルスの影響やロシアのウクライナ侵攻による建設資材の高騰などを挙げ「プロジェクトの価値を上げるため、事業計画のブラッシュアップを行った。その期間の工事の休止と設計の変更が最大の要因だ」と説明しています。
また分配金の支払いの遅れについては「行政処分を受けて以降資金調達が遅延し、分配金の原資となる開発事業者からの賃料の支払いが遅れている。まずはグループが保有する換金性が高い600億円ほどの不動産の売却を進め、原資の確保に努めたい」としています。
そのうえで「訴状が届きましたら誠実に訴訟に対応して参ります」とコメントしています。
【成田市長「投資トラブル 当初全く想像せず」】
会社側のホームページによりますと、東京ドームおよそ10個分にあたるこの土地では、ホテルと商業施設に加え、食をテーマにした複合施設が建設される計画で、2027年冬には一部施設のオープンを予定しています。
今月現場を訪れたところ、土地の造成工事は行われていましたが、建設中の建物はありませんでした。
この土地は成田空港会社がおよそ4割を所有し、原則として建物を建てられない「市街化調整区域」ですが、会社側が提出した開発計画の案を審議した結果、2019年に成田市が土地の開発を許可しました。
成田市の小泉一成市長は先月の定例会見で「きちんと計画を精査し、条件を満たしていることを確認し許可した。投資をめぐるトラブルは当初全く想像していなかった」と説明していました。
市は土地の造成工事の期限を11月末としており、工期の延長を認めるかどうかは「計画の実現性などを踏まえ検討する」としています。
また成田空港会社も同じく11月末までとしている土地の契約について「工事の継続能力などを踏まえ延長するか検討する」としています。
【小池都知事「これまでも繰り返し指導」】
この投資商品の販売会社に対する監督権限を持つ東京都の小池知事は「この会社には投資家が適切に判断ができるよう十分な説明を求めていて、これまでも繰り返し必要な指導をしてきている。対象の不動産は非常に広域に及ぶということから、国の責任においての適切な判断、必要な対応を行う仕組みにすることなどを国に要望をしている」と述べました。
そのうえで今後の対応については「国や大阪府と引き続き法律に基づき適切に対応していく」と述べました。