(三谷幸喜のありふれた生活:1248)連ドラ、若く賢い俳優たち

 僕の新作ドラマ「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」。出演者の主要メンバー四人は、僕よりかなり下の世代の人たちだ。

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 菅田将暉さんは、「鎌倉殿の13人」以来。あの時は、ほとんど直接会話をしていないのに、僕の思い描いていた義経像を完璧に具現化してくれた。今回はパワフルな演劇青年久部(くべ)役。熱量の高い演技で、作品全体を引っ張ってくれた。先の話になるけど、第八話における彼の渾身(こんしん)の芝居は、テレビ史に残る驚愕(きょうがく)の名演技です。

 今回はいろいろ語り合うチャンスがあった。菅田さんとは感覚的に共通するものがあるのか、話しやすい。向こうが相当気を使ってくれているのかもしれないが、人見知りの僕としては珍しいパターン。

 放送作家蓬莱(ほうらい)を演じる神木隆之介さんは、今回が初めて。生真面目な印象を抱いていたが、実際の彼は根っからのエンターテイナー。常に周囲を楽しませようと尽力する。笑いの間が抜群だし、動きにもキレがある。次代を担うコメディアンは彼かもしれない。

 役作りにも熱心で、細かい質問を積極的に投げかけてくる。聞かれればこちらも答える。撮影期間中、出演者の中でもっとも深くコミュニケーションを取り合った役者さんだった(かなり気を使ってくれたとは思うけど)。

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 二階堂ふみさんも初。クールで冷静、でも内には熱いものを秘めているダンサーのリカ。一九八〇年代が舞台のこの作品で、当時の雰囲気をもっとも体現していたのは彼女かもしれない。素顔の彼女は、映画マニア。古い作品もかなり観(み)ていて、僕とも話があった(かなり気を使ってくれていただろうが)。

 巫女(みこ)樹里役の浜辺美波さんは以前、平野レミさんの料理番組でご一緒したことが。子役の方を除けば、今回最年少。しかし常に堂々としていて、肝も据わっている。どんな難しいシーンでもきちんと成果を出す。品があって、大ベテランの風格。控室で見かけたはしゃぎっぷりが、むしろ意外だった。それでいて僕と話す時は、気を使ってくれているのだろう、ベテランの風情に戻って、落ち着いた空気を醸し出す。

 四人に共通するのは、とてもクレバーだということ。雑談している時も取材の時も、常に空気を読むし、それでいてきちんと自分の意見も言う。この世代の特徴なのか、彼らが特にそうなのか。総合的な印象は「立派な若者たち」。この先が楽しみだ。また一緒に何かやりましょう。

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 さて、僕にとって二十五年ぶりの民放連ドラ。自分が書きたいものと、世間が観たいものの間に乖離(かいり)を感じ、それがドラマの世界から離れた理由のひとつでもあった。今回はどうか。不安はない。いずれにせよ、僕にはこれしか書けないし、そして僕自身は書いたものに満足しているのだから。

 ともあれ、これを逃すと次に僕の書いたドラマが観られるのは、また二十五年後の二〇五〇年になるかもしれません。観ておいた方がいいと思いますよ。

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連載三谷幸喜のありふれた生活

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