北広島放火殺人事件 70歳被告に無罪判決 札幌地裁

3年前、北広島市で生活困窮者向けの共同住宅が放火され、2人が死亡した事件で、殺人などの罪に問われた70歳の被告に対し、札幌地方裁判所は、刑事責任能力がなかったと判断し、無罪を言い渡しました。

無罪判決を受けたのは、住居不定の荻野正美さん(70)です。

2022年9月、北広島市にある生活困窮者の自立支援のための共同住宅を放火し、管理人の当時71歳の男性と住人の当時51歳の女性を死亡させたとして、殺人と放火の罪に問われました。

裁判では事件当時、刑事責任能力があったかどうかが争点となり、検察は、起訴前に医師が行った精神鑑定をもとに刑事責任能力はあったとして懲役30年を求刑したのに対し、被告側は、起訴後に別の医師が行った2回目の鑑定をもとに、「心神喪失の状態だった」として無罪を主張していました。

17日の判決で、札幌地方裁判所の井戸俊一裁判長は「事件当時、被告が重度の『急性一過性精神病性障害』の影響を強く受けていたとする2回目の鑑定の医師の見方は、不合理なものとして排斥することはできない」と指摘しました。

その上で、「善悪の識別に従って自分の行動をコントロールできる能力が失われていた疑いが残るといわざるをえず、心神耗弱であったとも認められない」として被告は、心神喪失の状態で刑事責任能力がなかったと判断し、無罪を言い渡しました。

判決について、被告の弁護士は、「弁護側が一貫して主張してきたことを認めていただいた」と述べました。

一方、札幌地方検察庁の森田昌稔次席検事は、「検察官の主張が受け入れられなかったことは残念である。今後については、判決内容を精査し、上級庁と協議の上、適切に対応したい」とコメントしています。

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