性被害に遭ったが「不純異性交遊」で停学処分に
もともと歴史や政治に関心を持っていたこともあり、マルクスとエンゲルスが書いた『共産党宣言』を読み始めた。だが内容が難解だったので、今の全学連委員長の矢嶋さんに連絡し、勉強会に参加した。そこで戦争が起きる原因について学ぶとともに、「被害者を責めるような社会を団結して粉砕しよう」と寄り添ってくれたことが、全学連に加わる決め手となった。
ニノミヤさんは関東地方の出身で、中学受験をして中高一貫の女子校に進学した。しかし、高校1年の3学期、ネットゲームで知りあった男性と直接会い、カラオケボックスで性被害に遭った。相手はネット上では「女性」を装っていたが、実際は男性だった。被害を両親や学校に相談したが、両親は「事件を大ごとにしたくない」と示談で解決。学校は「不純異性交遊」として停学処分となった。「ついていったあなたも悪い」と責めた大人たちもいた。
結局、自主退学を選択。その後、通信制の高校に通いフェリス女学院大学に進学して国際関係を専攻した。
大学では、なぜ戦争が起きるのかを知りたかったが、「お金が絡んでいるから」などと表層的なことしか教えてくれなかった。そんな時に出会ったのが、全学連だった。
「実力で闘うとなった時、逮捕もあり得ます。 それでも、自分のためでなく抑圧や搾取されている人たちと連帯して闘う姿がかっこいいと思いました」(ニノミヤさん)。大学には通う意味はないと考え、昨年1月に中退した。
繰り返してきた整形手術をやめた
一方で、これまでの環境により自己肯定感が低かった。高校卒業後は整形手術を繰り返し、総額400万円ほどを費やした。だが全学連と出合ってからは、外見の美しさや美意識を押しつけ高額な医療費を負担させる社会のあり方に疑問を抱くようになり、一度も整形をしていない。
現在はSMクラブでいわゆる「女王様」として働きながら、全学連の活動を続ける。この仕事を選んだ理由は、高収入を得られ、身体的接触がなく男性に媚びずに済むため、自らの主体性を保てると感じたから。この働き方は、夜間労働や不安定な仕事を強いられる多くの女性労働者の現状とも重なる、という。
「私のように性被害を受けたり、夜の仕事をせざるを得ない人は世の中に大勢いると思います。そうした状況に置かれている人たちと連帯し、抑圧や搾取、女性差別のない社会をつくりたいです」(ニノミヤさん)
「革命」という言葉は、遠い過去の出来事のように響く。しかし、差別や抑圧に抗う女性たちにとっては、いまも切実な選択肢であり続けている。これは、この社会に生きる私たち全員に突きつけられた問いだ。
(AERA編集部・野村昌二)
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