残業しても「残業と認めない」…政府通達が過労死遺族を苦しめる 労災申請150時間を「5時間」にカットされ

2025年9月18日 06時00分 有料会員限定記事
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 2019年4月に導入された罰則付きの時間外労働(残業)の上限規制を巡り、「労災の申請が認められづらくなっている」と過労死弁護団などが訴えている。厚生労働省が労働基準監督署(労基署)に出した2021年の通達以降、「労働時間がより過少に算定されるようになった」とみる。(竹谷直子)

 働き方改革関連法 社会問題化していた長時間労働や過労死を防ごうと、2019年4月に順次施行。青天井だった残業時間に初めて規制が設けられた。上限は月45時間、年360時間が原則。繁忙期でも年720時間以内、月100時間未満、2〜6カ月平均で80時間以内と定め、労災での「過労死ライン」と同水準に設定された。

◆休日出勤しても「会社の指揮命令に基づいていない」

厚生労働省などが入る中央合同庁舎第5号館

 「こんなに証拠がそろっているのに、なぜ認められないのか」。2017年に夫=当時(35)=が自殺したのは長時間労働が原因として、労災保険の給付を求めて裁判で争っている神奈川県藤沢市の女性(43)は訴える。
 判決によると、男性は2013年「リボルブ・シス」に入社、自動車保険のシステム開発などを担当した。2016年9月ごろにうつ病を発症。翌年5月、自殺した。
 遺族は、男性が2016年5月以降、多い月で残業が120時間を超えていたなどと労災を申請した。残業規制が導入された後の2019年8月に不支給となったのを不服とし、国を提訴した。東京高裁は2025年6月、一審判決(2024年4月)を支持し請求を棄却した。
 遺族側代理人は、厚労省の通達が判決に影響したとみる。過去の判断が分かれた労災の労働時間について「労働基準法32条で定める労働時間(使用者の指揮命令下にある時間)」と明記し、国側も裁判で同様の主張をした。原告側は判例を参考に「指揮命令の有無で労働時間を判断すべきではない」と反論したが、裁判所は男性の休日出勤を「会社の指揮命令に基づいて労働したと認めるに足りる証拠がない」とした。

◆「事業所にいても仕事をしていたとは限らない」なんて

 通達では、自己申告より後の退社時刻の記録について、使用者の指示や認識の確認を求めている。男性の事例では、パソコンはログイン状態だったが、作業部...

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    みんなのコメント1件

  • ユーザー
    クレヨン伯 19 時間前

    記事内容からは外れますが。
    「(写真はイメージです)」の、本記事だと「悩んでいるようなポーズの女性のシルエット」の写真、最近の流行りなのか同様のイメージ写真をweb記事一般でよく見ますが、要らないと思います。
    「なんとなくのイメージを強調して、読者の情念に訴える」手法。
    文章から論理的に考える過程をすっ飛ばして一足飛びに結論のイメージに誘導するやり方は、極端に言うと政治的デマの横行を許す読み手のリテラシー低下と無関係でない気がします。むしろ有害だと思います。
    「文章だけだと飽きるから」「目を楽しませるため」なのかも知れませんが、見当外れのサービスに逃げず、文章と図表で勝負してください。

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