正直言って、自分も「ロビン」は好きじゃなかった。ティムセイルが冒頭で言ってたように。
子供の好きそうなカラーリングの衣装にスパイダーマンを子供にしたような軽口と軽い雰囲気。
重苦しくて孤独感溢れるバットマンのハードな雰囲気を簡単に崩してしまうし
「バットマン」世界のギリギリ踏みとどまってたような(勿論色んなことに目をつむってだけど)リアル感を一人で台無しにする存在。
そう思ってたけど、このダークビクトリーを読んで訂正したい。
ロビンの存在も描き様によってはバットマンワールドを成り立たせられると。
内容(「BOOK」データベースより)
ゴッサムシティを震撼させた“ホリデイ連続殺人事件”から約1年。犯罪王カーマイン・ファルコーネの死を契機に、ゴッサムの裏社会の実権は、ファルコーネ一家に代表されるギャングファミリーの手から離れつつあった。1年前、彼ら組織犯罪を根絶すべく立ち上がったバットマンとジム・ゴードンにとっては歓迎すべき事態ではあったが、共に誓いを立てた地方検事ハービー・デントのトゥーフェイスへの変貌は、なおも二人の心に暗い影を落とす。時代が大きく動こうとする中、新たな連続殺人事件が発生する。警官ばかりを狙う犯人“ハングマン”の目的とその正体とは…。大ヒットミステリー大作「バットマン:ロング・ハロウィーン」、待望の続編。
このダークビクトリーの感想で書きたいことは多分三つ。
ロビンとバットマン。
トゥーフェイスとゴードンとバットマン。
本筋である連続警官殺人犯ハングマンによるミステリ。
今日はロビンの話を。
ダークビクトリーvol2、序盤。
事故に見せかけてディック(12歳)の両親が殺される事件があり、ブルース(バットマン)は彼を引き取る。
ブルースとアルフレッド(執事)の対応も空しくディックは心を開こうとしない。
ここでの「一人になってしまった事を嘆く自分」をディックと、両親を強盗に殺された頃のブルースに重ね合わせて
全く同じ構図・構成で描く演出はすごい!
また、対比の最後のコマ。
その頃のアルフレッドは若く、立ち去るブルース少年に何も声をかけられなかった(もしかしたら後で同じことを言ったのかもしれないが)のに対して
今ブルースと共に年を重ねてきたアルフレッドがディックに
「あなたは一人ではない。もうそんな思いは二度とさせません。」
と強く言い切ってたのが好きだな。
アルフレッドがいてくれて本当に良かった。孤独に思えるバットマンの傍らに常にアルフレッドが居て支えてくれる。
個人的にはバットマンが死ぬシーンよりアルフレッドが死ぬシーンの方が耐えられないと思う。
そしてブルースは色んな思いをディック少年に託し始める。
両親が殺されてひとりになった頃の自分、信じきれず正体を明かさなかったために堕ちてしまった友人ハービーの事。
一人で復讐を遂げようとするディックに全てを話す事を決め
マスクを取りディックに正体を明かすシーンはダークビクトリーで最も好きなシーンだ。
友人を投獄し、セリーナとも距離が出来、再び孤独に飲み込まれそうなブルースが
新たに心を開く(しかも自分から)相手が出来た。こんな喜ばしいこともそうそうバットマン世界にはない。
多分ブルースは大人になれていない。
心はずっと両親が死んだあの頃のまま。
人を本心からは寄せ付けず、性根は重苦しい。
イヤーツーはなかった事になってるので復讐も遂げていない。
ディックはバットマンのおかげで復讐を遂げてからは大人への道を進んでいるように見える。
沈みがちで重苦しかったのが明るく闊達に。
そしてロビンになるに当たってディックはバットマンのマネをせず、明るいカラーリングの自分独自の衣装を選んでる。
まだロビンになっていなかった頃のディックは復讐行動の時、バットマンに会ってからは上下真っ黒な服(ヒーロースーツではない)を着ていたし
バットマンの相棒になると決めてからはバットボーイだとかバットマイトのネーミングと共に
ミニバットマンみたいなヒーロースーツをデザインしてた。
けど、ブルースの人格を見極めて別の道を選択しロビンの名前とバットマンとはまったく趣旨の異なった衣装(親の遺品)に身を包んだ。
そんなかつての自分とは違うけど、自分のおかげで前に進む事のできたロビンとならブルースも成長できるんじゃないかな。
ロビンは救いも与えてくれてるようだし。
相棒としてのロビンも中々ナイス。バットマンと共にトゥーフェイスとジョーカーを同時に殴りつけ
「ダイナミックデュオだ!」って名乗りを上げるとこはスカッと爽快。
作品最後のコマでバットマン&ロビンだ!ってコンビを結成するとこも中々。
ダークビクトリーのおかげでロビンの意義を初めて理解する事ができた。
そういやロビンのオリジンで邦訳されたものって今までなかったらしい。
そういうことでいつも唐突にいたり居なかったりするんで、なんとなく邪魔な感じだったんだけど
孤独に飲まれすぎるバットマンを精神面で支えるのに必要なんだね。ロビンが居ると明るくなるし。
でもそれがバットマンの面白さである孤高さやハードさを簡単に損なわせられるわけで取り扱いが本当に難しい。
今回みたいにバットマンの孤独を描く→ロビン加入だとヤッター!バットマンの味方が増えたヨー!
ってなるけど、最初からロビンいるとウゼー!ダークな雰囲気ゼロじゃネーカ!ってなるし。
でも少なくとも俺は、これからロビンが出てたら「このバットマンは少し、彼のおかげで救われてるんだな…。」
と思ってやさしい目で見るようになってると思います。
と、言うわけで明日のダークビクトリーの感想2に続きます。