145メートル先から一発の銃弾 カーク氏殺害はどう実行されたか

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ニューヨーク=田村剛
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 トランプ大統領の盟友とされる異才の政治活動家の命を奪ったのは、約145メートル離れた場所から放たれた一発の銃弾だった。米西部ユタ州のユタバレー大学構内でチャーリー・カーク氏(31)が射殺された事件は、白昼に大勢の学生らがカーク氏を取り囲むイベントのさなかに起こった。容疑者として拘束された22歳の専門学校生は、どのように銃撃を実行したのか。

 事件発生から30時間以上を経て拘束されたのは、同州南部の町セントジョージに住むタイラー・ロビンソン容疑者。家族がいる実家近くのアパートで暮らしていた。

 捜査当局が裁判所に提出した資料によると、容疑者の姿が大学の監視カメラに最初にとらえられたのは、事件発生約30分前の10日午前11時50分ごろ。カーク氏のイベントが開かれた中庭に面する建物に向かって歩く様子が映っていた。

 容疑者はその後、階段を上ったり小さな壁を乗り越えたりして、この建物の屋上に到着。午後0時22分には屋上を走り、腹ばいになって射撃するような姿勢を取ったとされる。

 カーク氏が銃撃されたのはその1分後。発射された銃弾は1発とみられ、数百人のイベント参加者の目の前で、カーク氏は首から血を流して倒れた。

 監視カメラの映像には、直後に容疑者が立ち上がって屋上を走り、芝生の上に飛び降りて逃走する様子が映っていた。

 捜査当局によると、狙撃場所からカーク氏までの距離は約145メートル。現場の状況について、捜査当局の資料は「屋上からは、イベントが行われていた中庭を見下ろせた」と指摘している。容疑者は視界を遮られることなく、ほぼ正面からカーク氏の姿をとらえることができたとみられる。うつぶせになっていたことで、カーク氏の側からは容疑者の姿がよく見えなかった可能性がある。

 NYTは、現場で警備にあたっていたのは6人の警官とカーク氏のボディーガード数人だけだったと報道。カーク氏はその発言で物議を醸すことが多く、「賛否が分かれる人物を招いた屋外イベントにしては警備が手薄に感じられた」とする参加者の声を伝えている。

約145メートル

午後0時23分

カーク氏が銃撃される

ロビンソン容疑者が

腹ばいになって射撃

ユタバレー大学

©Google

屋上からの眺め

カーク氏

ロビンソン容疑者がいたとみられる位置

ロイター

145メートルの距離から狙撃は可能か

 ここでなお、一つの疑問が残る。専門学校に通っていた22歳の若者がどのようにして、たった一発の銃弾で、145メートルも先の標的を撃つことができたのか。

 今回の犯行に使われたとみら…

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    堂本かおる
    (ニューヨーク在住ライター)
    2025年9月18日14時50分 投稿
    【視点】

     政治家の暗殺および未遂事件はアメリカでは頻繁に起きてきた。  今年6月、ミネソタ州の州議会議員2名がそれぞれ配偶者と共に銃撃され、メリッサ・ホートマン議員とその夫が亡くなっている。4月にはペンシルベニア州知事ジョシュ・シャピロの官邸が放

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