#3 CBNが引き起こしたショッキングな事件の真相
最近、ある大学生が大麻成分を含むクッキーを食べた後に、突然2階の窓から飛び降りたとされる衝撃的な報道がありました。報道映像には、「CBN 1000mg」という文字が透けて見えます。
CBN(カンナビノール)は、CBD(カンナビジオール)と非常によく似た名前を持つ麻由来のカンナビノイド成分で、CBDと同様に現在の日本では規制対象外です。ただし、CBNはCBDとはまったく異なる作用機序を持つ成分であり、規制されていないからといって、どのような使い方をしても安全というものではありません。
CBNの作用と「名前による誤認?」
CBNは、大麻草の主成分であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)が、時間の経過や熱、光、酸素などにさらされて酸化・分解されることによって生成される成分です。
THCは過剰摂取により酩酊作用や中毒作用を引き起こすため、現在日本では規制対象となっています。これらの作用は、神経系に存在するCB1受容体を強く活性化させることによって生じます。
一方、CBNも同様にCB1受容体を活性化させる性質を持っていますが、その強さはTHCの約1/10程度と考えられています。
CBNに関しては、その名称がCBDと似ていることから、「CBDのように安全な成分」と誤解され、結果として規制の対象から漏れたのではないかと懸念しています。対照的に、CBDに近い性質を持ちながらも「THC」という文字を含む名称のTHCVは、より強い警戒を受けて規制対象となっています。
このような経緯からも、制度的な判断が科学的根拠よりも名称や一般的な印象に左右されている可能性を否定できません。
THCの使用量と比較して考える:CBN1000mgのインパクト
THCは、海外では医療・嗜好両面で使われており、摂取量と使用目的の関係は以下のようになっています。
CBNはCB1受容体への作用がTHCの約1/10とされます。このことから、CBN1000mgの摂取は、THC100mg相当の(CB1受容体刺激作用の)可能性があります。CBNとTHCでは代謝や作用、持続時間などに違いがあると考えられるため単純換算はできませんが、1000mgという極端な用量が強い影響を及ぼす可能性は高いと考えています。
規制の基準と「相当する数値」の背景
日本では、大麻取締法が改正され、2024年12月よりTHCの許容基準値が明確に定められました。これは、CBD製品を含む麻由来製品におけるTHCの厳格な管理が目的とするものです。
具体的な日本のTHC許容基準値は、製品の種類によって3段階に分かれていますが、その中でも最も高い基準値が設定されている油脂(常温で液体であるものに限る。)および粉末であっても、10ppm(10mg/kg、0.0010%)という極めて低い数値です。
これは国際的に見ても厳格な基準であり、例えばカナダのヘンプ穀物由来製品(ヘンプシードオイルなど)の基準(10ppm)と同等です。日本では、法律改正前はヘンプシードオイル自体がCBD製品の規制対象外でしたが、現在はCBD製品と同じ規制下で注意が必要となるほど、厳しくTHCが管理される状況となっています。
CBNの可能性と、高用量使用への懸念
CBNは、「睡眠補助」として注目されており、20mg程度の使用で睡眠の質の改善が報告された臨床研究も存在します。適正な用量での利用であれば、今後医療や健康分野での活用が期待される成分とも言えます。
しかし今回のように、一度に1000mgという極端な高用量を摂取すれば、CB1受容体の強い刺激によって意識障害などの深刻な副作用が生じる可能性は十分にあります。名前が似ているだけで「CBDの仲間」と見なされている状況は危険です。
まとめ:麻成分を安心して使うために
CBNは、THCのような強い酩酊作用がない分、医療・健康用途でのポテンシャルがある成分として注目されています。特に、睡眠に悩む人にとっての選択肢として期待されている一方で、その作用の仕組みや影響については、まだ十分な理解が進んでいるとは言えません。
CBDでさえ、高用量で摂取した場合には健康上の問題が生じる可能性があることを知っておく必要があります。CBDは高用量摂取しても酩酊作用や中毒作用は生じませんが、炎症を引き起こす性質が強く出てしまうため、下痢などの症状が生じやすくなります。
一方、日本ではTHCに意識が集中し、だいぶ厳しい規制となっています。そのため、THCの疼痛緩和などの医療的な有用性にまで光が当たらない状況です。
その反面、CBNのような成分が無規制状態のまま広く流通している現状は、極めてアンバランスな状態です。本来ならば、成分の性質やリスクを正しく評価したうえで、適切な使用基準が設定される必要があるかと思います。
「規制されていない=安全」ではなく、「どのような量ならメリットを引き出して、安全に使えるか」という科学的な視点を持ち、CBNについてもしっかりと議論が進むことを望みます。また、THCに対しても、再度、有用性とリスクをバランスよく捉えた規制へと見直して欲しいと願っています。
個人で使う際も成分の特性を理解し、自身の健康を最優先に、安全に使用してほしいと思います。
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