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「公取が入ったところで何も変わっていない。今後もおそらく同じ状況が続くだろう」。ある自動車部品会社の社長が諦めたような表情で、吐き捨てるように発した言葉だ。
勧告数は過去最大
自動車産業にはびこる因習が消える気配がない。公正取引委員会(公取委)は5月、2024年度に下請法違反で事業者へ勧告した件数が21件だったと発表した。23年度の13件から大幅に増え、勧告の件数としては過去最多となった。
21件の違反のうち9件を占めたのが「金型の無償保管」だ。製品や部品の製造に使う金型を保管する際、本来ならば発注側がその費用を負担しなければならない。だが、長年の取引慣行や取引上の立場の優劣を背景に、受注側が無償での保管を強いられるケースがいまだに多いのが実情だ。
24年7月には、トヨタ自動車の子会社が下請け企業49社に計664個の金型などを無償で保管させていたとして公取委が勧告した他、同年11月には住友重機子会社にも同様の勧告がなされた。
参考記事:トヨタ子会社が金型を“押し付け” 取引先が語った実態、ガバナンス不全露呈
「保管費用を請求したところで無視されるだけ。20年間続いてきた取引を変えるのは簡単ではない」。ミラーやハンドル用部品などの製造を手がける部品会社の社長はそう話す。
同社では、取引先のA社から部品の発注があるたびに新たな金型を保管してきた。自社工場に置くには既にスペースが足りないため倉庫を借りている。賃料は毎月20万円以上になるという。A社から賃料の補填はない。年間の売り上げは3億円ほどで、何とか赤字は回避し続けている。それでも直近では人件費や資材の高騰、自動車メーカーの台数減の影響などが押し寄せ、経営を圧迫している。
金型の保管期間も問題だ。自動車メーカーが車をモデルチェンジし、生産が終了した後も長期にわたって金型の保管が必要となる。保守部品として発注される可能性があるためだ。モデルチェンジの頻度が乗用車に比べて少ないトラック用部品の発注も請け負っており、廃棄が許されない金型の数は増え続けるばかりだ。
公取委から勧告後も変わらず
実は前述したA社、既に公取委から金型の無償保管を巡って勧告を受けている。その後、部品会社の社長が改めてA社に保管料を請求してみると、対応は予想に反していた。「保管料の請求書を送ったが、完全に無視。担当者に直接話してもしらを切るばかりだ。公取委が入っても変わらないとなると諦めるしかないのか」と部品会社の社長は肩を落とす。
納得いかないことは他にもある。一方的な値下げ要求だ。A社からは「合理化」の名の下、年間受注額のうち5%の値引きを毎年要求されているという。
下請法において合理的な理由のない原価低減は法令違反とされている。部品会社の社長は何度かA社の購買部長に対して、値下げの見直しの交渉を試みたが、「値引きできないようであれば新規の発注を出せない」と拒まれたという。
「うちは全然マシなほう。もっと買いたたかれている会社はたくさんある」と部品会社社長は話す。
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