高市・自民党と参政党に共通、深すぎる「闇」―合流ならリアル「軍靴の音」
あなたや、あなたの子ども達が徴兵され、戦地に送られる―多くの日本の人々にとって、そんな事態は現実感のないものでしょう。しかし、今、かつてない程、危険な要素がそろいつつあることは御存知でしょうか?自民党と、今回の参院選で勢力を増やした参政党は、それぞれ個人の基本的人権を否定あるいは著しく軽視すること、各人が日本の防衛に協力することを強いることで共通しています。しかも、「台湾有事は日本有事」という主張にもあるように、日本の国民が戦争に巻き込まれるリスクは現実に高まっています。本稿では、参政党と自民党の危険な共通点を解説し、両党の合流の可能性も考察していきます。
〇参政党憲法草案は基本的人権が壊滅状態
参政党をめぐっては、その政策や党関係者らの言動での排外主義が問題となっていますが、同党の問題点はそれだけではありません。参政党は新たに憲法を制定することを、党の目玉政策に掲げていますが、その内容は極めて危険なものです。参政党の公式ウェブサイトにある同党の憲法草案(関連情報)を見てみましょう。驚くべきことに、現行の日本国憲法の三大原則の一つである、基本的人権の尊重に関連する条文(11条~40条、97条)が、参政党の憲法草案では、ほぼ全て失われています。限定された個人の権利(同草案では「権理」)についての条文はあるものの、「公益」によって制限される上、同草案5条の2で、「国民は日本をまもる義務を負う」とあり、さらに脚注で国防への参加の努力義務を明記しています。
現在の日本国憲法では「その意に反する苦役に服させられない」(18条)とあるため、また、兵役は苦役であると解釈されるため、徴兵制は違憲とされます。しかし、この18条に該当するものが、参政党の憲法草案には無い一方で、上述のように国防への個人の協力は義務とされているため、徴兵制を可能とするものだと言えます。
なお、参政党代表の神谷宗幣氏は「徴兵制は党の方針ではない」と火消しに躍起ですが、上述した参政党の憲法草案の内容と矛盾しますし、神谷氏は自身の公式ページでスイスの国民皆兵制度を評価(関連情報)、街頭演説でイスラエルの徴兵制を賛美した等が確認されています(関連情報)。また、同党のさや参議院議員も過去に「兵役は教育的な役割がある」と発言しているなど、やはり徴兵制に肯定的であることがうかがえます。
〇自民党の改憲草案も基本的人権を見直し
自民党も2012年に改憲草案を公表しており、こちらも個人の人権を大幅に制限し得るものとなっています。これは、現在の日本国憲法の「公共の福祉」(個人と個人の権利が衝突した場合の調整機能)と全く異なり、「個人の人権は公益及び公の秩序に反してはならない」としています。これは、「国家の都合で個人の人権を制限できる」とも解釈できるものです(関連情報)。これについて、ポスト石破の最有力候補の一人である自民党の高市早苗氏は、自民党の改憲草案(2012年版)の中でも最も気に入っていると、自身のYouTubeであけすけに語っていますが(関連情報)、後述のような自民党の意図もあり、非常に不気味なものとなっています。
「公共の福祉」を「公益及び公共の秩序」に変えている、自民党改憲草案(2012年版)の危険性は、同党が公表している政策パンフレット「日本国憲法改正草案 Q&A」を読むとさらに実感できます。このパンフレットには、「草案では(中略)天賦人権説に基づく規定を全面的に見直しました」とまで書いてあり、これは控えめに言っても、民主主義国家の政党にあるまじき暴挙です。天賦人権説* とは、「人間は生まれながらにて自由・平等であり、幸福を追求する権利がある」という理念。日本国憲法だけではなく、国連憲章や世界人権宣言、国連人権規約も、全てこの天賦人権説に基づくもの。それを見直した自民党の改憲草案(2012年版)の危険性は、日本弁護士連合会(日弁連)などからも批判されています。
*「天賦人権論」とも呼ばれる。
また、自民党改憲草案(2012年版)は、「国防軍」を明記しており、また国防についても国が「国民と協力して」行うものだとの条文もあるため、徴兵制度につながりかねないと、法学者らや日弁連が指摘しています(関連情報)。これらの規定や条文が、上述の「公益及び公の秩序」による個人の人権の制限と合わさると、もはや徴兵から国民を守るものは何もなくなってしまう恐れがあります。
〇高市・自民、参政党の合流は悪夢
このように、参政党の憲法草案と自民党の改憲草案2012年版は、基本的人権の否定あるいは著しい軽視すること、国防への国民の参加を強く求めることで類似性があり、また、極右としての政治スタンスや、安倍元首相の後継者を自認する高市氏、その支持層に安倍元首相の支持者達が多く含まれることが指摘される参政党の間には互いに相通じるものがあります。
現時点では、政治的スタンスの違いから石破政権に参政党が新たな連立相手として加わる可能性は低いのですが、今後、石破首相が辞任し、高市政権となった場合、参政党が合流することは大いにあり得るのではないでしょうか。そうなった場合、上述したような、日本国憲法の原則を壊すようなかたちでの改憲が推し進められることが危惧されます。
〇「台湾有事は日本有事」の危険性
悪いことに、日本が戦争に巻き込まれる、あるいは主体的に戦争に突入していくという危険性は非常に高まっています。それは「台湾有事は日本有事」、つまり、中国が台湾に軍事侵攻し、それに米国が介入した場合、日本は集団的自衛権を行使、米国と共に中国と戦火を交えるという安全保障政策であり、実際にそうした事態を想定した米軍と自衛隊の演習が繰り返されており、南西諸島の自衛隊駐屯地では、対中国を想定したミサイル配備も進行しています。これらは「台湾有事は日本有事」を前提とした動きですが、そもそも日本の本土が直接攻撃されなくとも、中国側に攻撃(しかも、場合によっては事実上の先制攻撃である「敵基地攻撃能力の行使」)を行い、日中の戦争を引き起こすということは、憲法違反であることは勿論、日本の国民の安全や生活へのリスクも高すぎます。
こうした中、自民党の高市早苗氏は、「台湾有事は日本有事」との主張を繰り返しています(関連情報)。参政党も、神谷宗幣代表が出演する同党のYouTubeチャンネルは「台湾有事は日本有事」との主張をしています(関連情報)。
上述したような、高市氏や参政党の人権軽視・無視の傾向、戦争に国民を協力させようという姿勢から言って、仮に今後、高市政権となり、それに参政党が合流するという政治状況で、台湾有事が発生した場合、日本の国民が実際に戦争による被害を受けるような事態になることも、大いに危惧されます。
〇民主主義を蔑ろにする者達を政治家にしてはいけない
現在の国会内の勢力では、仮に高市政権が発足し、それに参政党が加わったとしても、すぐに改憲を行うことは不可能でしょう。しかし、今後、自民党が勢力を取り戻し、かつ参政党がさらに勢力を拡大した場合、上述したような事態を警戒することが被害妄想だとは言えない、深刻な状況となるのかもしれません。そもそも、憲法とは、国民に基本的人権を保障し、また国家権力の暴走を防ぐためのものです。そうした現代の民主主義社会の核心的なものに反する人物達を、そもそも政治家にして良いのか、有権者としては大いに熟慮すべきではないでしょうか。
(了)
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